現行犯逮捕か、緊急逮捕か? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
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現行犯逮捕か、緊急逮捕か?

2011年11月25日


男子中学生が、ひったくり犯を追跡し、犯人逮捕にこぎつけた事件がありました。

東京都国立市で23日、女性が路上でバッグを奪われる事件があり、「ひったくりです。捕まえて」という声を聞いた男子中学生が、自転車で犯人を追跡し、犯人が自宅に戻ったところを確認し、近くの交番に伝えて、緊急逮捕となったようです。

ニュース
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111224-00000431-yom-soci

今回、「緊急逮捕」ということですが、この「緊急逮捕」というのは、どういう逮捕でしょうか?

憲法33条は、次のように定めています。
何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となっている犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。

つまり、逮捕状による逮捕が原則なわけです。

そこで、警察は、犯人を逮捕しようとするときは、事前に裁判官に逮捕状を請求し、逮捕状を得てから逮捕します。

しかし、わざわざ逮捕状を請求していては、間に合わない場合もあります。

そのような緊急事態に認められるのが、「緊急逮捕」です。

次のような場合に、「緊急逮捕」が認められます。

①死刑又は無期もしくは長期3年以上の懲役もしくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる十分な理由があること。

②急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないこと。

③その理由を告げてから逮捕すること。

今回の場合、ひったくりは、窃盗ですから、長期10年以下の懲役です。そして、逮捕状を待っていては、証拠が散逸したりしますので、急速を要します。そこで、警察官は、逮捕に踏み切ったわけです。

そして、更に急を要する時は、「現行犯逮捕」という制度があります。

これは、現実に犯行を行い、または行い終わった時に、その現場で逮捕するものです。

今回、警察官が、ひったくりの現場に居合わせたら、現行犯逮捕をしたはずです。

しかし、実は、この男子中学生も、場合によっては、現行犯逮捕することができました。

刑事訴訟法213条は、「現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる」と規定しているためです。

ですから、男子中学生は、現行犯逮捕するか、警察に知らせるか、を選択することができたのです。

今回、男子中学生は、現行犯逮捕せず、警察に知らせたわけですが、賢明な行動だったでしょう。

自分で逮捕することもできますが、やはり自分の生命、身体に対する危険がありますので、できれば警察に逮捕してもらった方がよいでしょう。

正義感にかられて、自分で逮捕しようとし、相手を殴ってしまった場合、逆に傷害罪で訴えられることもありますので、気をつけましょう(ある程度の実力行使は許されます)。