ドローンを飛ばす時の法規制について | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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ドローンを飛ばす時の法規制について

2016年05月24日

最近、話題のドローンですが、誰もがどこででも自由に飛ばせることができるのでしょうか?

今回は、ドローンと航空法について解説します。

「祭りでドローン、男を書類送検…改正法初適用」(2016年5月20日 読売新聞)

岐阜県警は5月19日、国の承認を受けないまま、祭り会場で小型無人機「ドローン」を飛ばしたとして、専門学校生の男(20)を航空法違反の疑いで岐阜地検大垣支部に書類送検しました。

男は4月2日午後4時頃、同県大垣市の公園で開催されていた「大垣市すのまた桜まつり」の会場で、国土交通相の承認を受けずにドローンを飛ばした疑いです。

ドローンは墜落しましたが、けが人はいなかったようです。
男は、「桜がきれいで、空撮した映像を見たかった」などと話し、容疑を認めているということです。

同県警によると、2015年12月施行の改正航空法で禁じられた、祭りなど人が多く集まる場所でのドローン飛行を巡って同法が適用されたのは全国で初めてとしています。
そもそも、ドローン(Drone)とはミツバチのオスバチを表す言葉だそうで、急加速や急停止、急転回にホバリングといった飛行性能から名付けられたようです。

ドローンはラジコンとは違い、遠隔操作やコンピュータ制御による自動操縦で飛行する小型の無人航空機で、以前は軍事用に使われていました。
それが小型化、低価格化により民間でも使われるようになり、商業用としてはグーグルやアマゾン、ドミノピザなどが配達のテストを始めているようです。

今では安い物なら1万円以下で買えるようになったため、一般の個人が使い始めたことで墜落事故などさまざまな問題が出てきています。

2015年4月22日に首相官邸に墜落したものは、実際はドローンではなくラジコンタイプのマルチコプターだったようですが、飛ばした男が威力業務妨害罪で逮捕されたこの事件はメディアでも大きく取り上げられたことから覚えている人も多いでしょう。

こうした事件を背景に、日本ではドローンの使用を規制するため、航空法を一部改正した「改正航空法」が2015年12月10日に施行されています。

「改正航空法」
第2条(定義)
22.この法律において「無人航空機」とは、航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船その他政令で定める機器であつて構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作又は自動操縦(プログラムにより自動的に操縦を行うことをいう。)により飛行させることができるもの(その重量その他の事由を勘案してその飛行により航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないものとして国土交通省令で定めるものを除く。)をいう。
遠隔操作や自動操縦で飛行させることができるドローンやラジコンで、機体本体とバッテリーの合計が200グラム以上のものを無人航空機とするわけです。(200グラム未満のものは模型航空機に分類)

次に飛行についてのルールを見てみます。

第132条(飛行の禁止空域)
何人も、次に掲げる空域においては、無人航空機を飛行させてはならない。ただし、国土交通大臣がその飛行により航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないと認めて許可した場合においては、この限りでない。

1.無人航空機の飛行により航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそ
れがあるものとして国土交通省令で定める空域
2.前号に掲げる空域以外の空域であつて、国土交通省令で定める人
又は家屋の密集している地域の上空
「航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれがある空域」とは、①空港等周辺に設定された進入表面等の上空の空域、②地表または水面から150メートル以上の高さの空域です。(「航空法施行規則」第236条の1)

「人又は家屋の密集している地域の上空」とは、国勢調査の結果を受け設定されている人口集中地区の上空で、地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないものとして国土交通大臣が告示で定める区域を除きます。(「航空法施行規則」第236条の2)

これらの空域では、国土交通大臣の許可を受けなければ無人飛行機を飛行させてはいけないということです。

続いて、無人航空機の飛行方法を見てみます。

第132条の2(飛行の方法)
無人航空機を飛行させる者は、次に掲げる方法によりこれを飛行させなければならない。ただし、国土交通省令で定めるところにより、あらかじめ、次の各号に掲げる方法のいずれかによらずに飛行させることが航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全を損なうおそれがないことについて国土交通大臣の承認を受けたときは、その承認を受けたところに従い、これを飛行させることができる。
1.日出から日没までの間において飛行させること。
2.当該無人航空機及びその周囲の状況を目視により常時監視して飛行させること。
3.当該無人航空機と地上又は水上の人又は物件との間に国土交通省令で定める距離を保つて飛行させること。
4.祭礼、縁日、展示会その他の多数の者の集合する催しが行われている場所の上空以外の空域において飛行させること。
5.当該無人航空機により爆発性又は易燃性を有する物件その他人に
危害を与え、又は他の物件を損傷するおそれがある物件で国土交通省令で定めるものを輸送しないこと。
6.地上又は水上の人又は物件に危害を与え、又は損傷を及ぼすおそ
れがないものとして国土交通省令で定める場合を除き、当該無人航空機から物件を投下しないこと。
簡単にまとめると次のようになります。

・空港や住宅地の上空では飛行禁止
・日中のみ、ドローンとその周辺を注意深く監視しながら、人と物の距離は30メートルを保って(「航空法施行規則」第236条の2)飛行させること。
・多くの人が集合しているイベントなど、人が密集している場所の上空も飛行禁止。
・危険物を運んだり、機体から物を落下させてはいけない。

これらに違反した場合は、50万円以下の罰金となります。(「改正航空法」第157条の4)

なお、屋内や網などで四方・上部が囲まれた空間では上記のルールは適用されません。

また、国土交通大臣の許可・承認を受けるには所定の申請書を飛行させる10日前までに国土交通省か各空港事務所に提出する必要があるので覚えておいてください。
ドローンを飛ばして、自分で空撮写真や映像を撮影できるのは楽しいでしょう。

しかし、ドローンが人に墜落すれば死傷事故になりかねません。
また、小型カメラを搭載できることから悪意のある盗撮への懸念や、テロでの使用の危険性も指摘されています。

今後は、さらなる法律の整備や規制があるかもしれませんが、まずはルールを守り、人を傷つけることないようにドローンを楽しんでほしいと思います。

以上は、2016年5月24日時点の法律に基づいています。