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成人した子が起こした交通事故で親の責任を認めた裁判例を弁護士が解説

2019年08月03日

成人した子が起こした交通事故で親の責任を認めた裁判例を弁護士が解説します。

○判決

てんかん発作を起こしたクレーン車の運転者(事故当時26歳)による児童6人の死亡事故について、加害者と同居していた母親の責任も認めた判決(宇都宮地方裁判所 平成25年4月24日判決)

○事案の概要

平成23年4月18日午前7時43分ころ、栃木県鹿沼市内の道路を加害者がクレーン車で進行中、突然てんかんの発作が起きて意識を喪失し、通学のための歩道を歩行していた児童らにクレーン車を追突させ、児童6名が死亡した。

○判決要旨

以下の事情から、加害者の母親の不法行為責任を認めました。

・加害者の母親は、加害者と同居しており、加害者が小学校3年生のとき以来、てんかんに罹患していることを認識していたこと。

・加害者の母親は、加害者が高校を中退した平成13年8月以降は、加害者が抗てんかん薬を処方どおりに服用していなかったときには必ずてんかんの発作を起こしていたことを認識していたこと。

・加害者の母親は、加害者がてんかんに罹患しているため、自動車免許の欠格事由に該当することを認識していながら、加害者に原動機付自転車を買い与えたり、自動車教習所の費用を立て替えたり、普通自動車を買い与え、加害者が実際にてんかんの発作による交通事故を起こして自動車を破損させた後も、さらに新たな自動車を買い与えるなど、自動車の運転を継続することに積極的に加担してきたこと。

・クレーンの免許の取得についても、加害者がそれを取得することを単に黙認していたにとどまらず、運転免許試験当日の朝にてんかんの発作を起こしていた加害者を駅まで自動車で送り、免許の取得に加担したこと。

・加害者が本件事故の前に交通事故を5回も起こし、その原因がてんかんの発作であることを認識しながら、起こした事故の自動車運転過失致傷事件の裁判中に、事故原因について証言を拒むにとどめたのではなく、あえて加害者の供述内容に沿うように事故原因は事故前の寝不足である旨を証言したりするなど、嘘をついて加害者がてんかんであることを発覚するのを阻止したこと。

・事故当日の朝も、加害者の母親は、加害者が前日の夜服用すべきだった抗てんかん薬を服用していない状態で勤務先の会社へ出勤し、クレーン車等の運転を行うことを認識していたのであるから、会社に対して、加害者がてんかんに罹患していること、及び事故当日は抗てんかん薬を服用していないから特に発作を起こしやすい状態にあることを通報するなどしていれば、会社も加害者にクレーン車の運転をさせることはなく、事故を回避することができたと言えること。

○ポイント

民法では、未成年者が他人に損害を与えても、責任能力がない場合には損害賠償責任を負わないと規定されています(民法712条)。さらに、未成年者に責任能力がなく責任を負わない場合は、その監督すべき法定の義務のある者は、未成年者が第三者に与えた損害を賠償する義務を負うと規定されています(民法714条)。
ですので、未成年者が交通事故を起こして他人を死傷させた場合、その未成年者に責任能力が認められなければ、親が責任を負う場合があります。
なお、責任能力は、個別の事情や本人の能力等にもよりますが、おおむね12歳程度になれば認められるとされています

では、成人して責任能力がある子が交通事故で他人を死傷させた場合に、親は責任を負うことがあるのか、という疑問に答えるのが、上記の裁判例です。

この裁判例では、親が、子がてんかんに罹患しており、子の運転行為により歩行者等の生命、身体及び財産に対する重大な事故が発生することを予見することができたこと、事故当日会社に通報することは容易であり、通報していれば事故の発生を防止することができたこと等の観点から、親の不法行為責任を認めたものです。