防犯カメラは見ている。 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
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防犯カメラは見ている。

2011年12月24日


1月16日に大阪市の路上でネパール人男性が、男女4人組から暴行を受けて死亡した事件がありました。

動画のニュース映像があります。
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4933493.html

男女4人組は、逮捕されたようですね。

動画を見ると、男2人が蹴ったりし、うち1人が自転車を担ぎ上げ、倒れているネパール人男性めがけて落としているようです。

逮捕された男性の1人は、「外国人の顔を蹴ったり、自転車を持ち上げて顔から腕のあたりに放り投げた。死なせてしまったことは信じられない」と殺意を否認し、女性のうち1人は、「私は止めようとした」と暴行自体の故意を否認しています。

確かに、映像の最後の方で止めようとしているような行動が見えます。

今後の取り調べでは、この故意がポイントになってゆくでしょう。

女性の方は、最後の方で止めようとしたとしても、初めはどうだったでしょうか?

たとえ、最後の方で止めようとしたとしても、4人が共謀して「やってしまえ」と意思を通じて暴行が始まったとするならば、4人ともが共謀共同正犯になる可能性があります。

「死なせてしまったことは信じられない」という部分は、どうでしょう?

殺人罪の故意が認められるかどうか、がポイントです。

殺人罪の故意が認められない場合、傷害致死罪ということになります。

4人は、別々の警察署に留置され、1人1人別々に取り調べを受けるでしょう。

4人がそれぞれどんな供述をするかで、今後の展開が変わってくるでしょう。

以下は、フィクションです。

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たとえば、次のような取り調べを受けるかもしれません。

警察「殺すつもりだったのだろう?」

「殺すつもりはありませんでした」

警察「でも、死ぬかもしれないとは思っただろう?」

「そこまでも思いませんでした」

警察「でも、ちょっと考えてみろ、自転車が頭に当たれば、打ち所が悪ければ死ぬことだってあるだろう?死なないと言い切れるのか?」

「それは、そうかもしれません」

警察「そうだろう。だから打ち所が悪ければ死ぬかもしれないと思って自転車を落としたんだよ。違うのか?」

「そう言われれば、そうかもしれません」

警察「じゃあ、そのとおり調書に書くぞ」

調書「自転車が近くにあったので、私は、それを自分の頭のあたりまで持ち上げ、被害者めがけて落としました。その時私は、殺すつもりはありませんでした。しかし、自転車が頭に当たれば、打ち所が悪ければ死んでしまうと思いましたが、かっとなっていたこともあり、死ぬなら死んでも構わない、と思ってやったのです」

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こうなると、「未必の」殺意、つまり、「死ぬかもしれないが、死んでもかまわない」(定義に争いはありますが)という故意が認められることになりますので、殺人罪で起訴される可能性があります。

論理的に追及されると、当時思ってもいなかったことでも、「そうかもしれないな」と思い、誘導されてしまうことがあります。

もし、あなたが間違って警察から取り調べを受けるようなことがあれば、自分の気持ちの部分は、その時のありのままの気持ちを供述するよう注意してください。

供述調書が作られたら、おしまいです。「後で訂正すればいいや」と思っても、まず難しいと考えた方がよいでしょう。