飲酒運転の車に同乗した女子大生が詐欺被害に!? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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飲酒運転の車に同乗した女子大生が詐欺被害に!?

2016年01月06日

飲酒運転が犯罪であることは誰でも知っていると思います。
では、飲酒運転の車に乗せてもらった場合はどうでしょうか?

今回は飲酒運転を悪用した詐欺事件について解説します。

「元近大生ら、飲酒運転の車に同乗させ示談金詐取」(2016年1月5日 読売新聞)

奈良県警は、飲酒運転の車に女子大生を同乗させて事故を起こしたと装い、示談金名目で現金を騙し取ったとして元近畿大生の男(20)など4人を詐欺容疑で逮捕しました。

2015年9月、男とその共犯容疑者らは奈良市内の店で女子大生(21)と一緒に飲食。
男が飲酒運転をして女子大生(21)を車で送る際、通行人役の男と接触事故を起こしたように偽装。
「全員、飲酒運転の同罪だ。退学になるかもしれない」などと話し、女子大生から示談金として130万円を騙し取ったということです。

同様の示談金の支払いを装う手口では、2015年9月~10月にかけて計6人から約370万円を騙し取った疑いがあり、他にも近畿大生を中心に十数件の被害があることから被害総額は1000万円を超えるとみて県警は調べを進めるとしています。

別の報道では、4人の中には弁護士の息子役もいて、事故現場から父親に電話をして「同乗者も示談金を払わないといけない」と法律の確認をする芝居も打っていたようです。

今回、注目したいのは、飲酒運転に同乗したことで退学になるかもしれない、というところが弱みになったということです。

今回、容疑者らがお金をだまし取ることが成功したのは、犯罪に踏み込ませる⇒それを弱みとして騙す(脅す)⇒現金などの財産を出させる、という構図があるためです。

では、この女子大生はどんな罪を犯していたのでしょうか?

「道路交通法」
第65条(酒気帯び運転等の禁止)
1.何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。
2.何人も、酒気を帯びている者で、前項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがあるものに対し、車両等を提供してはならない。
3.何人も、第一項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがある者に対し、酒類を提供し、又は飲酒をすすめてはならない。
4.何人も、車両の運転者が酒気を帯びていることを知りながら、当該運転者に対し、当該車両を運転して自己を運送することを要求し、又は依頼して、当該運転者が第一項の規定に違反して運転する車両に同乗してはならない。
第4項に注目してください。
「運転者が飲酒運転であることを知りながら車に同乗してはいけない」、とあります。

報道内容からは女子大生が「飲酒運転同乗は罪」であることを知っていたのかどうかわかりませんが、今回の事件は罪を犯した弱みにつけ込んだ詐欺事件ということになります。

ちなみに、飲酒運転には「酒酔い運転」と「酒気帯び運転」があり、以下のような違いがあります。

「酒酔い運転」
・アルコールの影響により車両等の正常な運転ができない状態での運転
・行政処分では違反点数35点、免許取り消し(欠格期間3年)
・酒酔い運転をした者の罰則は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金
・運転者が酒酔い運転の場合の同乗者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処される

「酒気帯び運転」
・呼気中アルコール濃度0.15mg/l以上0.25mg/l 未満
・行政処分では違反点数13点、免許停止期間90日
・酒気帯び運転をした者の罰則は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
・運転者が酒気帯び転の場合の同乗者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処される

飲酒運転同乗は罪の意識が低く、これが罪になることすら知らない人もいるかもしれません。

しかし、酒酔い運転の同乗者は、「自分で酒気帯運転をした場合」と同じ重さの刑罰を受ける、ということです。

また、酒酔い運転の同乗者は、公務執行妨害罪や業務妨害罪と同じ重さの刑罰となっています。

飲酒運転の車に乗る、ということは、「飲酒運転を容認する」という態度ですから、厳しい処罰を受けることになるのです。

仮に「一緒に公務執行妨害しようぜ!」とか「会社で暴れて業務妨害しようぜ!」とそそのかされたなら、それらは犯罪という意識から、なかなか罪を犯すことはないでしょう。

しかし、飲酒運転の同乗者も同罪です。

このことをしっかり認識しておく必要があります。

飲んだら乗るな、助手席も! ということですね。