違法に残業させると刑罰を受けます。 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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違法に残業させると刑罰を受けます。

2015年12月25日

社員に違法な長時間労働をさせていた会社と総務部長が書類送検されました。

今回は「労働基準法」について解説します。

「JR京都伊勢丹で違法残業130時間 運営会社と総務部長を書類送検」(2015年12月18日 産経新聞)

京都下労働基準監督署は、正社員だった男性に違法な長時間労働をさせたとして、京都市下京区の百貨店「ジェイアール京都伊勢丹」を運営するジェイアール西日本伊勢丹の総務部長の男性(51)と、法人としての同社を労働基準法違反の疑いで京都地検に書類送検しました。

同労基署によると、2014(平成26)年7~12月、総務部の社員だった男性に労使協定で定めた時間外労働の限度時間(1ヵ月に60時間)を超えて、約84~130時間の時間外労働をさせたとしています。

JR西日本伊勢丹は長時間労働を認め、「事実を真摯に受け止め、社員の労働時間管理に万全を期し、再発防止策に取り組む」としているということです。
◆「労働基準法」は、日本国憲法27条「労働権」の規定に基づいて、1947(昭和22)年に制定された法律で、「労働組合法」、「労働関係調整法」と併せて労働三法と呼ばれます。

◆労働者の労働契約や労働時間、休日、賃金、安全などの労働条件の最低基準について規定しているもので、労働者と使用者の双方が守るべき重要な法律です。

◆労働基準法上、原則として、会社は社員に対し、1週間について40時間、1日について8時間を超えて労働させてはいけません。
これを、「法定労働時間」といいます。(第32条)

◆法定労働時間を超えて社員を労働させた場合、会社は社員に対して「時間外労働」として割増賃金を支払わなければいけません。(第37条)

◆原則として、会社は社員に対し毎週に少なくとも1日は休日を与えなければなりません。
これを、「法定休日」といいます。(第35条)

◆法定休日に社員を労働させた場合、会社は社員に対し「休日労働」として割増賃金を支払わなければいけません。

◆また、午後10時から午前5時までの間に社員を労働させた場合、会社は社員に対し「深夜労働」として割増賃金を支払わなければいけません。

◆残業代の割増率は以下のように規定されています。
①1ヵ月の合計が60時間までの時間外労働、及び、深夜労働については2割5分以上の率
②1ヵ月の合計が60時間を超えた時間外労働が行われた場合の時間外労働については5割以上の率(現状例外あり)
③休日労働については3割5分以上の率
とされています。
④深夜労働については2割5分以上の率
今回の報道では、「労使協定」で定めた時間外労働の限度時間を超えて、会社が社員に時間外労働をさせたとしています。
この労使協定は第36条に規定されているもので、「36協定(さぶろくきょうてい)」と呼ばれます。

◆労働基準法第36条では、会社は、過半数組合または過半数代表者との書面による労使協定を締結し、かつ行政官庁にこれを届けることにより、その協定の定めに従い労働者に時間外休日労働をさせることができると規定しています。

◆届け出をしないで時間外労働をさせると、労働基準法違反で6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処されます。

◆時間外労働をさせて割増賃金(残業代)を支払わなかった場合も、6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処されます。

労働基準法は、とても厳しい法律で、労働基準法違反がある場合、刑罰が科されてしまうわけですね。

経営者の方々は、今一度、就業規則や労使協定で定められた残業の限度時間と、実際の残業時間を確認した方がよいでしょう。

そうしないと、思わぬところで、お縄につかなければならなくなってしまいます。

「真に生産性を向上させる方法は、何を行うべきかを明らかにすることである。そして、行う必要のない仕事をやめることである」
(ピーター・ドラッカー/オーストリア出身の経営学者・社会学者)
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