特定空き家の基準が決定!空家対策特別措置法が施行 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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特定空き家の基準が決定!空家対策特別措置法が施行

2015年05月28日

近年、放置されたままの空き家が問題になっています。
そこで成立したのが「空家対策特別措置法」ですが、先日、完全施行されたので解説します。

「建物の傾斜、臭気で判断=“危険空き家”基準公表-国交省」(2015年5月26日 時事通信)

空き家対策を進める特別措置法が26日に完全施行されたのに合わせ、国土交通省は、周辺環境に悪影響を及ぼし撤去命令などの対象となる「特定空き家」の判断基準を示した市町村向けガイドラインを公表しました。

著しく傾いているなど建物自体の問題に加え、ごみの放置による臭気など衛生上有害なケースも対象になり得るとしたということです。

特措法は、危険な放置空き家について、市町村に立ち入り調査の権限を付与。
特定空き家に認定した場合は、所有者に修繕や撤去などの勧告、命令を行えるほか、最終的に行政代執行による撤去もできると定めています。
空家対策特別措置法は、「適切な管理がされていない空き家が防災、衛生、景観などで地域住民の生活環境に深刻な影響をおよぼしていることから、その生命、身体、財産を保護するとともに、空き家の活用を促進する」(第1条)ことを目的としています。

詳しい解説はこちら⇒「増え続ける空き家に空き家対策法が施行」

増え続ける空き家に空き家対策法が施行

空家対策特別措置法は、2015年2月26日に一部が施行されたのですが、「特定空き家」に関する部分は施行されていませんでした。

特定空き家とは、以下のものをいいます。(第2条2項)
・倒壊等、著しく保安上危険となるおそれのある状態
・著しく衛生上有害となるおそれのある状態
・適切な管理が行われないことにより、著しく景観を損なっている状態
・その他、周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

ボロボロに傷んだ廃墟のような空き家は、いつ倒壊するかわからず近隣住人に危険を及ぼしかねません。
また、不衛生で汚く、見た目も悪いため、市町村が持ち主に修繕や撤去を命令でき、これに従わない場合や持ち主不明の場合は、強制撤去できるわけです。

ただ、どこまでが普通の空き家で、どこからが特定空き家なのかの基準が必要になるわけですが、この基準が公表されたので以下にまとめます。
1.「そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態」
①建築物が著しく保安上危険となるおそれがあるもの
(a)建築物が倒壊等するおそれがあるもの
・建築物の著しい傾斜(柱の傾斜など)
・建築物の構造耐力上主要な部分の損傷等(基礎・土台や柱・はり等の破損、変形、腐朽など)

(b)屋根、外壁等が脱落、飛散等するおそれがあるもの
・屋根の変形等(ふき材の剥落、軒の腐朽など)
・外壁の剥離、破損、脱落等(貫通する穴が生じている、外壁の仕上材料の剥離、破損など)
・看板、給湯設備、屋上水槽等の剥離、破損、脱落等
・屋外階段、バルコニーの腐食、破損、脱落等
・門、塀のひび割れ、破損等

②擁壁(ようへき)が老朽化し危険となるおそれがあるもの
・擁壁表面の水のしみ出し、流出
・水抜き穴の詰まり
・ひび割れの発生
※擁壁=斜面の土砂がくずれるのを防ぐために設ける土留め構造物
2.「そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態」
①建築物又は設備等の破損等が原因で以下の状態にあるもの
・吹付け石綿等が飛散し暴露する可能性が高い状況
・浄化槽等の放置、破損等による汚物の流出、臭気の発生があり、地域住民の日常 生活に支障を及ぼしている状態
・排水等の流出による臭気の発生があり、地域住民の日常生活に支障を及ぼしている状態。

②ごみ等の放置、不法投棄が原因で以下の状態にあるもの
・ごみ等の放置、不法投棄による臭気の発生があり、地域住民の日常生活に支障を 及ぼしている状態。
・ごみ等の放置、不法投棄により多数のねずみ、はえ、蚊等が発生し、地域住民の 日常生活に支障を及ぼしている状態。
3.「適切な管理が行われていないことで著しく景観を損なっている状態」
①適切な管理が行われていない結果、既存の景観に関するルールに著しく適合しない状態にあるもの
・景観法に基づき景観計画を策定している場合において、当該景観計画に定める建築物又は工作物の形態意匠等の制限に著しく適合しない状態となっている。
・景観法に基づき都市計画に景観地区を定めている場合において、当該都市計画に定める建築物の形態意匠等の制限に著しく適合しない、又は条例で定める工作物の形態意匠等の制限等に著しく適合しない状態となっている。
・地域で定められた景観保全に係るルールに著しく適合しない状態となっている。

②周囲の景観と著しく不調和な状態であるもの
・屋根、外壁等が、汚物や落書き等で外見上大きく傷んだり汚れたまま放置されている状態。
・多数の窓ガラスが割れたまま放置されている状態。
・看板が原型を留めず本来の用をなさない程度まで、破損、汚損したまま放置されている状態。
・立木等が建築物の全面を覆う程度まで繁茂している状態。
・敷地内にごみ等が散乱、山積したまま放置されている状態。
4.「その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態」
①立木が原因で以下の状態にあるもの
・立木の腐朽、倒壊、枝折れ等が生じ、近隣の道路や家屋の敷地等に枝等が大量に散らばっている状態。
・立木の枝等が近隣の道路等にはみ出し、歩行者等の通行を妨げている状態。

②空家等に住みついた動物等が原因で以下の状態にあるもの
・動物の鳴き声その他の音が頻繁に発生し、地域住民の日常生活に支障を及ぼしている状態。
・動物のふん尿その他の汚物の放置により臭気が発生し、地域住民の日常生活に支障を及ぼしている状態。
・敷地外に動物の毛又は羽毛が大量に飛散し、地域住民の日常生活に支障を及ぼしている状態。
・多数のねずみ、はえ、蚊、のみ等が発生し、地域住民の日常生活に支障を及ぼしている状態。
・住みついた動物が周辺の土地・家屋に侵入し、地域住民の生活環境に悪影響を及ぼすおそれがある状態。
・シロアリが大量に発生し、近隣の家屋に飛来し、地域住民の生活環境に悪影響を及ぼすおそれがある状態。

③建築物等の不適切な管理等が原因で以下の状態にあるもの
・門扉が施錠されていない、窓ガラスが割れている等不特定の者が容易に侵入できる状態で放置されている。
・屋根の雪止めの破損など不適切な管理により、空き家からの落雪が発生し、歩行者等の通行を妨げている状態。
・周辺の道路、家屋の敷地等に土砂等が大量に流出している状態。

 

ポイントは、ただ建物が傾いている、屋根がはがれているなどで倒壊しそうな状態だけでなく、ゴミや汚物が放置されていて臭い、排水などがあふれて臭いといった臭気や、壁の落書きや割れた窓ガラス、建物を覆う樹木などの見た目、さらには住み着いた動物の鳴き声や糞尿、ネズミやハエ、蚊などの害獣・害虫なども規制の基準になっているところに注意が必要です。

なお、税制改正で、倒壊の恐れのある危険な空き家にも今までの6倍の固定資産税がかかるようになります。
つまり、今まで住宅用地に認めていた固定資産税の軽減措置が空き家は受けられなくなるということですから、気をつけてほしいと思います。

いずれにせよ、親から受け継いだ土地と建物などが空き家状態になっている人は、一度しっかりと確認、把握をすることをおすすめします。

空き家は、相続の際にも揉める原因となります。

不動産であるだけでモメますし、空き家は誰も欲しがりませんし、キャッシュを生み出さないので、相続税の支払いに困難を来す場合さえあります。

相続対策はお早めに。

ご相談は、こちらから。
http://www.bengoshi-sos.com/about/0903/