なんと、違法残業の会社が半数以上!? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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なんと、違法残業の会社が半数以上!?

2015年01月30日

およそ1年前の2013年12月に、厚生労働省が若者の使い捨てなどが疑われる、いわゆる「ブラック企業」についての実態調査を行ったことについて解説しました。

詳しい解説はこちら⇒
「8割以上の企業が労働基準法違反!あなたの会社は?」
https://taniharamakoto.com/archives/1239

5111の事業所に対して監督・調査を実施した結果、82%にあたる4189事業所で何らかの労働基準関係法令違反が見つかった、というものでした。

さて、1年経って状況はどう変わったでしょうか?

「2304事業所で違法残業 厚労省が是正指導」(2015年1月27日 共同通信)

厚生労働省は、2014年11月に実施した「過重労働解消キャンペーン」における重点監督の実施結果について取りまとめ公表しました。

これは、長時間の過重労働による過労死等に関する労災請求のあった事業所や、若者の「使い捨て」が疑われる事業所など、労働基準関係法令の違反が疑われる事業所に対して集中的に実施したもので、対象は全国の4561の事業所。

その結果、約半数の2304事業所で、時間外労働に必要な労使協定を結ばないなどの違法な残業をさせており、是正を指導したということです。

違法な残業をさせていた事業所で、最も長く働いていた従業員の時間外労働が、過労死ラインとなる月100時間超だったのは715事業所におよび、中には月200時間を超えたケースもあったということです。

厚生労働省は、今後も長時間労働が疑われる事業所への監督を徹底する方針だとしています。
ちなみに、「過労死ライン」とは、健康障害リスクが高まるとする時間外労働時間を指すもので、厚生労働省によると月80時間。
1ヵ月の労働日数を20日とした場合、1日に4時間の時間外労働が続く状態をいいます。

過労死の労災認定基準として、脳血管疾患及び虚血性心疾患等について、「発症前1ヵ月間におおむね100時間又は発症前2ヵ月間ないし6ヵ月間にわたって、1ヵ月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できる」とされています。

さて、1年前に公表された資料では、以下のような結果でした。

〇違法な時間外労働があったもの:2241事業場(43.8%)
〇賃金不払残業があったもの:1221事業場(23.9%)
〇過重労働による健康障害防止措置が実施されていなかったもの:71事業場(1.4%)

また、「健康障害防止措置」と「1か月の時間外・休日労働時間が最長の者の実績」についての結果は以下のとおりです。

〇過重労働による健康障害防止措置が不十分なもの:1120事業場(21.9%)
〇労働時間の把握方法が不適正なもの:1208事業場(23.6%)
〇1か月の時間外・休日労働時間が80時間超:1230事業場(24.1%)
〇うち100時間超:730事業場(14.3%)
次に、今回の調査を具体的に見ていきましょう。

「主な違反内容」
①違法な時間外労働があったもの:2304事業所(50.5%)

そのうち、時間外労働の実績がもっとも長い労働者の時間数が、
月100時間を超えるもの/715事業場(31.0%)
そのうち、月150時間を超えるもの:153事業所(6.6%)
そのうち、月200時間を超えるもの:35事業所(1.5%)

②賃金不払残業があったもの:955事業所(20.9%)

③過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの:72事業所(1.6%)
「主な健康障害防止に係る指導の状況」
何らかの労働基準関係法令違反があった3811事業所のうち、健康障害防止のため指導票を交付した事業所数

①過重労働による健康障害防止措置が 不十分なため改善を指導したもの:2535事業所(55.6%)

そのうち、時間外労働を月80時間以内に削減するよう指導したもの:
1362事業所(53.7%)

②労働時間の把握方法が不適正なため指導したもの:1035事業所(22.7%)

※業種別では、製造業がもっとも多く1032人、次いで商業802人、以下、その他の事業、接客娯楽業、保健衛生業の順となっています。
報道にはありませんでしたが、今回公表された資料によると、何らかの労働基準関係法令違反があったのは、3811事業所で、全体の83.6%にも及ぶということですから、1年前の82%と比較して改善されたどころか、増加していることがわかります。

ちなみに、厚生労働省によれば、重点監督は、数多く寄せられた情報の中から過重労働の問題があることについて、より深刻で詳細な情報のあった事業所を優先して対象としている、ということです。

そのため、相対的に違反のあった事業所の割合が高くなっているということだと思いますが、それにしても相変わらず労働問題の「種」を社内に抱えている会社や経営者の方が多いのが実情のようです。

最近では、未払い残業代請求、長時間労働、不当解雇、パワハラ、セクハラなどの労働トラブル関連の報道がない日はない、というほどマスメディアでも取り上げられています。

会社としては、未払残業代やそれに付随する付加金などの支払いのために予期せぬ出費を強いられ、最悪の場合は倒産の可能性もあります。
また、会社名が世間に公表されたり、取引先との信用を失うなど労働問題は、会社にとって大きな損失になりかねないという事実を経営者の方には今一度知っていただきたいと思います。

あなたの会社が抱える労働問題の「種」は、もしかして、時限爆弾かもしれませんよ……。

労働問題に関する相談は、こちらから⇒ http://roudou-sos.jp/

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