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会社で降格人事が認められる場合とは?

 >会社で降格人事が認められる場合とは?

2014年10月4日

最近では、「出世したくない」と考える若いビジネスパーソンが増えているという話を聞きます。

ライフスタイルや価値観の変化にともなって、会社での出世への考え方も多様化しているのでしょう。

一方、大手企業の中には、管理職の年功序列の賃金制度を廃止する動きも出始めています。
時代の大きな転換期である今、企業側も変化の真っ只中です。

さて今回は、従業員の降格に関する相談にお答えします。

Q)私は現在、中小企業の製造業の会社で取締役をしています。営業部門の部長職で、ことあるごとに私にかみついてくる従業員がいます。次の人事異動で職能資格・等級を引き下げ、降格させようと考えているのですが可能でしょうか?

A)降格するについて、就業規則等労働契約上の明確な根拠を必要とします。また、著しく不合理な評価によってする場合には、人事権の濫用になる場合があります。

「降格」には、3種類があります。

「懲戒処分としての降格」「職位や役職を引き下げる降格(昇進の反対)」「職能資格制度上の資格・等級等を引き下げる降格(昇格の反対)」です。

懲戒処分としての降格の場合は、就業規則に規定された降格の理由に該当する相当な理由が必要です。
しかし、「労働契約法」第15条により、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は無効とされます。

今回のケースでは、懲罰的な懲戒処分ではないので、次に人事異動としての降格の場合を考えてみます。

終身雇用を前提に雇用した場合、原則として、会社は従業員に対して「人事権」を持っているため雇用後は、さまざまな経験させた上で、それぞれの能力に応じた職務に就かせることが予定されています。
つまり、雇用した従業員をどのような職務につけるかについては会社が権限を持ち、会社は自由に降格をすることができるのです。

ただし、その場合でも降格させることが社会通念上著しく妥当性を欠く場合には、会社が降格する権限を濫用して行使したとして、降格は違法となってしまいます。
【降格の適法性の判断基準とは】
従業員の役職を降格させる場合の適法性の判断基準を、次の3つのケースで考えてみます。

① 懲戒処分としての降格
前述したように、降格をするには就業規則に規定された降格の理由に該当する場合であって、降格することが相当であることが必要です。

労働契約法では、以下のように定義されています。

「労働契約法」
第15条(懲戒)
使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。
なお、懲戒処分での降格と判断されると、人事異動としての降格よりも適法性の判断が厳しくなるので、裁判になった場合、当該降格が懲戒処分としてなされたものであるか否かが争われることが多くあります。
② 人事異動としての降格
終身雇用を前提とし、能力に応じた職務に就かせることが予定されている従業員の場合、会社は従業員をどのような職務につけるかの権限を持つため、原則として、会社は自由に降格をすることができます。

しかし、降格とすることが社会通念上著しく妥当性を欠く場合には、会社が降格する権限を濫用して行使したとし、降格が違法となってしまいます。

社会通念上著しく妥当性を欠くか否かについては、使用者側の業務上・組織上の必要性の有無、およびその程度、能力・適性の欠如等の労働者側における帰責性の性質その程度、当該企業における降格の運用状況等の事情を総合考慮して判断されます。
③ 職能資格を下げる降格
職能資格制度とは、従業員の技能・経験の積み重ねによって得た職務遂行能力を資格化して給与を決める制度です。

職能資格制度では、従業員が会社の中で得た技能・経験の積み重ねによって上昇していくことが予定されているため、職務が変わっても資格は変わらず、給与が減ることは原則ありません。

したがって、従業員の合意を得ずに職能資格を下げるには、就業規則で職能資格を下げることがあると定められているなど、労働契約上の明確な根拠が必要となります。

しかし、労働契約上の明確な根拠がある場合であっても、降格が著しく不合理な評価によるものであり、社員に著しく大きな不利益となる場合には、権限の濫用として降格が無効となります。
さて、最後に判例を見てみましょう。

【判例】
「医療法人財団東京厚生会事件」(東京地判 平9.11.18 労判728-36)
勤務表の紛失等を理由として病院で行われた看護師長から平看護師への2段階の降格について、記録の紛失は一過性のものであり、管理職としての適性能力を否定するものとはいえないこと、近年この病院では降格がされたことが全くなかったこと、勤務表を紛失したことによって病院に損害が生じていないこと、などから降格を無効とした。
「近鉄百貨店事件」(大阪地判 平11.9.20 労判778-73)
勤務態度が悪いことなどを理由とした百貨店の部長待遇職から課長待遇職への降格について、裁判所は、降格によって給与が月に4万8000円も減ってしまったこと、降格が部長待遇職についてから2年という短い期間のうちになされたこと、勤務態度が悪くなってしまったのは、当該社員のこれまでの業績への配慮が足りなかった会社にも責任があること、勤務態度が改善されつつあること、などを理由として降格を無効とした。

労働問題で困った場合、

詳しくはこちら→「顧問弁護士相談SOS」
http://www.bengoshi-sos.com/

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