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会社の領収書の改ざん、どんな罪?

 >会社の領収書の改ざん、どんな罪?

2014年8月28日

気づいてしまったら、もう後戻りできないことが人生にはあります。

たとえば、会社内での不正に気づいたとき、あなたならどうしますか?
告発しますか? 見て見ぬふりをしますか?
それとも良心の呵責に苛まれ、あなた自身が葛藤し苦しみますか?

今回は、ある会社の経理担当者からの疑問にお答えします。

Q)会社で経理担当をしているものです。領収書の改ざんについてご相談があります。仮にF部長としておきます。この人、豪快な性格で昔ながらの営業マンという感じ。仕事はできるのですが、経費の使い方も激しいのです。じつは以前から怪しいと思っていたのですが、飲み屋などの領収書を自分で金額を多めに書き変えて会社に申請しているようなのです。私は許せない。告発したいのですが、法的にはどのような段取りを取ればいいのでしょう? また、どんな罪になるのでしょうか?
A)領収書の改ざんは、厳密にいえば「刑法」では「詐欺罪」にあたります。
また、会社はF部長に対して民事訴訟を起こし、損害賠償や返還請求をすることができます。
さらに、会社はF部長を懲戒処分することができます。場合によっては、懲戒解雇もありえます。
【刑法上の罪】
刑法上は詐欺罪が適用される可能性があります。

本当に使ったお金より多く会社からお金をもらうことになるので、会社からその差額分のお金をだまし取ったことになるわけですね。
「刑法」
第246条(詐欺)
1.人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2.前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
また、会社が領収書の改ざんに気づき経費としてお金が支払われなかった場合は「詐欺未遂罪」(刑法第250条)が、あるいは、架空の領収書を自分で作った場合は「私文書偽造罪」(刑法第159条)が適用される可能性があります。
【民事上の措置】
民法上、会社は領収書を改ざんした従業員に対して損害賠償や返還請求の訴訟を起こすことができます。

「民法」
第709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
第703条(不当利得の返還義務)
法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
【懲戒権の行使】
会社は、領収書の改ざんなどの不法行為を行った従業員を懲戒処分することができます。
ただし、そのためには過去の判例からも一定のルールやポイントがあるので注意が必要です。

〇就業規則で懲戒の規定をしている
〇就業規則を従業員にきちんと周知している
〇従業員の勤務態度や会社に対する貢献度合い
〇過去の処分歴
〇改ざんの動機や計画性、常習性(出来心なのか、計画的だったのか)
〇社内体制(周囲でも不正を行っている従業員がいるのか)
〇金額の大小

これらを検討しながら懲戒処分を下すことになります。

ちなみに、懲戒処分には軽いものから「戒告(譴責:けんせき)」、「減給」、「出勤停止」、「降格」「諭旨退職」「懲戒解雇」などがあります。

過去の判例では、慰労会での飲食代を仮払いし、領収書を改ざんして差額の10万円を着服した事案である「ダイエー(朝日セキュリティーシステムズ)事件」(大阪地裁判決 平成10年1月28日 労判733号72頁)というものがあります。

判決では、労働契約の基礎である信頼関係を破壊させるに十分なほど背信性が高いこと、原告は次長という要職に就いていたこと、被告(会社)はこれまでも現金の抜き取り・着服に関与した従業員やアルバイトに対しては、たとえ少額でも懲戒解雇などの処分をしてきたことなどから、懲戒解雇を有効としました。

会社員として働いていると、ふと魔が差したりすることがあるかもしれません。

「他の人もやっているからいいか」などと安易に行動すると、他の人もろとも罰を受けることもあります。

その時、同じように「他の人も罰を受けたのだからいいや」などと思えるでしょうか?

決して思えないでしょう。「なぜ、あの時、あんなことをしてしまったのだろう!」と後悔するはずです。

善悪の判断は、自分の良心に従って、自分で決めなければなりません。

そして、自分の行動の結果は、必ず自分で責任を取らなければならないことも心に留めておかなければなりません。

「種を蒔けば刈り取らねばならない。人を殴れば苦しまねばならない。人に善をなせば君も善をなされるであろう」(エマーソン)

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