自動車運転死傷行為処罰法:「逃げ得」を許さない「発覚免脱罪」が初適用! | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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自動車運転死傷行為処罰法:「逃げ得」を許さない「発覚免脱罪」が初適用!

2014年05月28日

5月20日に施行された新法、「自動車運転死傷行為処罰法」。
(正式名称:自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)

悪質運転による死傷事故の罰則を強化した、全6条から成る新しい法律です。
詳しい解説はこちら→ https://taniharamakoto.com/archives/1236

先日のブログでは、この新法が初適用された事故について紹介しました。
解説記事はこちら→ https://taniharamakoto.com/archives/1489

この事故では、自動車運転死傷行為処罰法の中の「危険運転致傷」容疑での逮捕でしたが、その後、全国で新法が適用される事故が相次いで起きています。

「無免許で飲酒運転事故=“発覚免脱”初適用、男を逮捕-福岡県警」(2014年5月27日 時事ドットコム)

福岡県警飯塚署は27日、無免許で飲酒運転をして事故を起こした後、飲酒運転を隠すために逃走したとして、土木作業員の男(40)を自動車運転死傷行為処罰法違反(発覚免脱など)と道交法違反の疑いで逮捕した。「発覚免脱」を適用し逮捕したのは全国初。

「飲酒運転隠す“発覚免脱”容疑を北海道内で初適用 事故で逃走の男送検 釧路署」(2014年5月27日北海道新聞)
釧路署は26日、軽乗用車にワゴン車を追突して逃走していた会社員の男(42)を自動車運転死傷行為処罰法違反(過失致傷)などの疑いで逮捕された事件で、容疑を同法違反(発覚免脱)と、道交法違反(ひき逃げ)に切り替えて送検した。道内での適用は初めて。

2件の事故に共通する罰則は、「発覚免脱」(正式名称:過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪)です。
アルコール又は薬物の影響下で、自動車を運転し事故を起こした場合に、事故後、アルコールまたは薬物の影響や程度が発覚するのを免れるために、さらに飲酒したり薬物を摂取したりするか、あるいは、逃げてアルコールや薬物の濃度を減少させたりして、それらの影響の有無や程度の発覚を免れるような行為をした場合に適用されます。

これは、いわゆる「逃げ得」を許さないために規定された新しい犯罪類型です。

逃げ得とは、たとえば、酒に酔って人身事故を起こした場合には「危険運転致死傷罪」が適用される可能性がありますが、現場から逃げて翌日逮捕されたとしても、その時には体内のアルコール濃度が減少しているため、危険運転致死傷罪が適用できず、「過失運転致死傷罪」と「道路交通法違反(ひき逃げ)」しか適用されないため刑が軽くなってしまう、という問題です。

しかし、今回の新法適用により、その場から逃げた場合にはこの罪による最高刑12年に、ひき逃げの最高刑10年が併合され、最高18年の懲役刑を科すことが可能になったわけです。

交通事故は、被害者とその家族、そして加害者とその家族をも不幸にしてしまいます。

今回の「自動車運転死傷行為処罰法」の新設は、悪質な危険運転の抑止効果も期待したものですが、現実には施行後も事故が起きています。

どのような効果が現れるかを検証するには、時間を要するものでもあります。

今後の経過を注意深く見守っていきたいと思っています。