アダムとイブと不正アクセス禁止法 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
弁護士20人以上が所属するみらい総合法律事務所の代表パートナーです。
テレビ出演などもしており、著書は50冊以上あります。
メニュー
みらい総合法律事務所
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階
弁護士20人以上が所属するみらい総合法律事務所の代表パートナーです。
テレビ出演などもしており、著書は50冊以上あります。

アダムとイブと不正アクセス禁止法

2014年02月19日


ダメ!といわれるとやりたくなる、見るな!といわれると見たくなる…

これは人間という種の悲しい性(さが)かもしれません。

古今東西、人間は同じ過ちを繰り返してきました。

2000年以上前の古代に書かれたといわれる「旧約聖書」の『創世記』に登場する、アダムとイブ。

最初の人間とされる、アダムとイブは禁じられた「善悪の知識の実」を食べてしまったばかりに、楽園から追放されてしまいました。

一方、現代の2014年2月、サイバー世界のシステムに不正にアクセスして見てはいけないデータを見てしまった男が書類送検されました。

「東京外大の成績盗み見、男子学生を書類送検 “正当に評価されているか見たかった」(2014年2月10日 産経新聞)

昨年10月、東京外国語大学の学内システムが不正にアクセスされ、学生の成績が盗み見られた事件で警視庁サイバー犯罪対策課は、同大国際社会学部2年の男子学生(20)を不正アクセス禁止法違反容疑で2月10日、書類送検しました。

サイバー犯罪対策課によると、男子学生は成績や講義の時間割などを閲覧できる学内の「学務情報システム」を偽装したフィッシングサイトを作成。

学生222人に「不具合が生じた」とメールを送信しサイトに誘導。入力されたIDとパスワードを自分のメールに転送させていたようです。

男子学生は、こうして不正に入手した学生55人分のIDとパスワードで同大のシステムに不正にアクセス。

「自分の成績に不満があった。正当に評価されているか確かめたかった」と容疑を認めているということです。

サイバー犯罪は近年、大きな問題となっています。

そこで2000年に施行されたのが「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」(通称、「不正アクセス禁止法」)です。

許可なく他人のIDとパスワードを使ってインターネットを通じてFacebookやメールシステムなどにアクセスすると犯罪なのです。

また、そのような不正アクセスをすることを目的として、他人のIDやパスワードを取得することも犯罪です。

ただ、携帯電話にダウンロードされたメールを見る行為ではありません。「不正アクセス」というくらいですから、インターネットなど通信回線を通じて他人のコンピュータに接続して利用する行為が罰せられます。

離婚事件などの相談で、配偶者が浮気の証拠をつかもうと、勝手にパスワードを使ってメールを盗み見ている、という相談を受けることがあります。

なんと、それらのメールが堂々と証拠として提出される場合もあります。

2013年には、離婚調停中の妻のID、パスワードを使ってメールを盗み見ていた、として、夫が逮捕された事例もあります。

恋人同士でも、夫婦でも、他人のパスワードを使ってアクセスすると犯罪です。

禁止されると見たくなる、というのは人間の性かもしれません。

しかし、鶴の恩返しで、「見ないで欲しい」と言われたのに見てしまった時、鶴はどうなったでしょうか?

開けてはいけない玉手箱を開けた浦島太郎はどうなったでしょうか?

いいことありませんね。

他人のIDとパスワードを使ってアクセスすることは、法律で禁止されているのです。

決して、見てはいけませんよ。