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時速40キロで危険運転致死傷罪!?

 >時速40キロで危険運転致死傷罪!?

2013年12月31日




今年9月、京都府八幡市で自動車が集団登校中の児童の列に突っ込み、5人が重軽傷を負った事件で、京都地検が「自動車運転過失傷害罪」で起訴した派遣社員の少年(19)について、「危険運転致傷罪」に訴因を変更するよう京都地裁に請求しました。

なぜ危険運転致死傷罪の適用が可能となったのか? まずは、事件の経緯を見ていきましょう。

報道によると、9月24日午前7時55分頃、当時18歳だった少年が自動車を運転中、T字路を左折して府道に入ろうとした際、急加速してスリップ。

歩道の柵をなぎ倒し、集団登校中だった小学生13人の列に突っ込み、スポーツカーはそのまま民家に激突。

少年は昨年、2012年10月に自動車免許を取得したばかりで、すぐに親から車を買い与えられていたようです。

父親は、「身の丈にあったものにしろといったが、本人は車関係の仕事に就きたいという思いもあり、小さい頃からの夢だった車を購入した。あこがれがあったと思う」と話しているといいます。

自宅近所や事故現場付近では、少年がスピードを出したり、後輪をすべらせるドリフト走行など危険な運転を繰り返しているのがたびたび目撃され、その無謀運転は近所の人の間では有名だったようです。

現場は以前にも事故が起こっていて、市に対してガードレールの設置要望をしていた市民もいたようで、事故直後は小学生たちが泣き叫ぶ声が響き、騒然とした空気に包まれていたといいます。

少年は当初、自動車運転過失傷害容疑で現行犯逮捕されましたが、京都地検が危険運転致傷の非行事実で京都家裁に送致。しかし、家裁は自動車運転過失傷害の非行事実に切り替えて逆送し、地検も同罪で起訴していました。

ところが、起訴後の調査で交差点への進入速度が時速40キロ以上だったことが判明。

危険運転致傷罪の規定のひとつである、「進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為」にあたると判断したとみられます。
昨年から、京都では暴走車が通行人に死傷を負わせる交通事故が頻発しています。

「京都祇園軽ワゴン車暴走事故」
2012(平成24)年4月12日、京都市祇園で起きた暴走車による8名が死亡し、11人が重軽傷を負った事故。事故原因は、運転者男性の持病のてんかん発作によるものであるとされた。

「亀岡市登校中児童ら交通事故死事件」
2012(平成24)年4月23日、京都府亀岡市で当時18歳だった少年が運転する軽自動車が、小学校へ登校中の児童と引率の保護者の列に突っ込み、計10人がはねられて3人が死亡、7人が重軽傷を負った事故。事故原因は、少年の遊び疲れと睡眠不足による居眠り運転とされ、2013年9月30日、大阪高等裁判所は一審判決を破棄し、懲役5年以上9年以下の不定期刑を言い渡し、検察・弁護側双方が上告しなかったため、この判決が確定した。

今回の事故の訴因変更請求は、悪質運転による死傷事故の罰則を強化する新法「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」が参院本会議で全会一致により可決・成立した矢先のことでした。

さて、この事故について、「自動車運転過失傷害罪」から罰則の重い「危険運転致傷罪」へ変更される可能性はあるでしょうか?

先にも書いたように、交差点への進入速度が時速40キロ以上だったことが判明したことが大きなポイントです。

しかし、時速40キロでの事故は、日常的に起こる事故であって、珍しいことではありません。

では、どうして時速40キロが重要なポイントとなるのでしょうか?

危険運転致傷罪の「進行を制御することが困難な高速度」とは、速度が速すぎるため、道路の状況に応じて進行することが困難な状態で自動車を走行させることを言います。

条文では、具体的に「速度●●キロ以上」と決まっているわけではありません。

具体的な道路の道幅や、カーブ、曲がり角などの状況によって変わってくるし、車の性能や貨物の積載状況によっても変わってきます。

ということは、高速道路であれば、時速100キロであっても進行を制御することが困難とは言えませんが、曲がりくねった細い道路では、時速40キロであっても「進行を制御することが困難」となりうる、ということです。

今回の事故では、T字路を左折して府道に入ろうとした際、急加速して40キロに至った、ということですので、道路状況を合わせて考えると、40キロであったとしても、「進行を制御することが困難」であると判断したということでしょう。

さて、検察は勝てるでしょうか。

弁護側は、

「40キロも出ていない。当時の速度を測定することは不可能である」

「T字路を左折する際にアクセルを踏んだのはブレーキと踏み間違えたからである」

「40キロでも進行制御は十分可能であるが、運転操作を誤っただけである」

など、いろいろな反論をしてくるはずです。

裁判の動向を見守りたいと思います

 

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