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誰がリスクを負うべきか?

 >誰がリスクを負うべきか?

2010年7月7日

現代自動車は、広告で、次のようなキャッチコピーを出した。

「現代自動車を購入してから1年以内に仕事を失った場合には、車を返納しても代金はすべてお返しします」

史上最悪の経済危機の影響で、米国の自動車市場は昨年、厳しい販売不振に陥ったが、現代自動車は、米国で前年比8.3%増の43万台以上を販売し、今年も過去最大の業績達成が有力視されているという。

現代自動車米国法人が2010年8月6日に発表したところによると、ここ1年半の間に実際に払い戻しが行われた件数は、100件にも満たないという。つまり、大成功をおさめたわけだ。

http://news.livedoor.com/article/detail/4932567/

通常、このような企画が持ち上がると、「失業率は10%に達している。払い戻しが殺到したら、どうするんだ」という反対意見が出る。もっともだ。誰もリスクを背負い込みたくない。

反対に消費者の方はどうだろう。

「車は欲しい。でも、ローンで買って大丈夫だろうか。失業率は10%に達している。もし、来年、いや来月でも失業してしまったら、ローンを払えないぞ。やはり買うのは控えておこう」やはり、消費者もリスクを背負い込みたくないのだ。

これを解消するのがリスクリバーサルという考え方だ。

販売者の方が、消費者が感じているリスクを負担することにより、購入障壁をなくして購入意欲を高めようという仕組みである。

たとえば、「商品購入後、ご使用いただき、気に入らなければ商品購入後30日以内にご返品ください。理由の如何をとわず、代金を全額返金致します」というものだ。

これは、消費者の「損をしたくない」というリスクを販売者側が引き受けることにより、購入障壁をなくして購入意欲を高めているものである。

商品やサービスを購入するのは、自分のお金よりも、購入する商品やサービスの方が価値があると思うからだ。

人は、自分が与えるよりも、より大きな見返りを求めるものである。

先日、漫画喫茶に通っている知人は、「漫画喫茶では、飲み放題なので、できるだけ単価が高そうなものを飲む。もとは取らなきゃ」と言っていた。

だから「損をするかもしれない」という感情は、購入を思いとどまらせるブレーキとなる。

このリスクを除去してあげれば、購入する確率は格段に上がるだろう。

私の法律事務所でも、このリスクリバーサルを取り入れた。

交通事故の被害者向けサービスで、

「すでに保険会社から提示されている示談金額から増額できなかった時は、いただいた着手金は、全額返還致します。」

というものだ。これで、クライアントが弁護士に依頼するリスクは除去される。

今では、それを更に一歩進めて「フリー」の考え方を取り入れ、着手金を無料にして完全成功報酬制にしている。

現代自動車も、このリスクリバーサルの考え方を取り入れた。

経済不況により自動車の販売が低迷するのは、将来に対する不安からだ。

「ここでお金を使って、職を失ったらどうなる?」
「ローンを組んで職を失ったらどうなる?」

消費者は、そのリスクを自分で背負い込むことはしないのだ。

そこで、現代自動車は、「仮に今後職を失っても大丈夫ですよ。車を返してくれさえすれば、代金を全額返しますから、あなたが損をすることはありません。」というリスクリバーサルを使って、購入意欲を高めたのだ。

人は、誰も損をしたくない。人に与えるよりも多くのモノを得ようとするのだ。

消費者は、現代自動車のリスクリバーサルにより、損を回避することができた。車を買うことにより、自分が与えたお金より多くの利便性を手に入れた。

では、現代自動車は損をしたのか?

いや、現代自動車は、消費者に対して安心を与えることにより、多くの利益を手に入れたのだ。

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