弁護士 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜 - Part 4
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
弁護士20人以上が所属するみらい総合法律事務所の代表パートナーです。
テレビ出演などもしており、著書は50冊以上あります。
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  • TBSテレビ「ビビット」2015.11.25出演

    2015年11月30日

    TBSテレビ「ビビット」の2015年11月25日放送分に出演しました。

    取材を受けて法律専門家としてコメントしました。

  • 生卵を投げて書類送検…軽犯罪と暴行罪の違いとは

    2015年11月20日

    スーパーマーケットの入り口にいた女性の頭上から生卵が落ちてきて、肩に当たったそうです。

    ニワトリが産み落とした…わけではありません。
    人が投げ落としたなら犯罪になる可能性があります。

    一体、犯人は誰だったのでしょうか?

    「高層マンションから生卵30個投げつける 慶大生を書類送検“就活うまくいかず”」(2015年11月19日 産経新聞)

    川崎市中原区の高層マンションから東急東横線の線路内など地上に向けて生卵を投げつけたとして、神奈川県警中原署はマンションの住人である慶応大4年の男子学生(22)を軽犯罪法違反(危険物投注)の疑いで書類送検しました。

    大学生の男は、今年の10月26日~11月11日の間に、計7回30個の生卵を自宅マンションのベランダから東急東横線の線路内や商業施設の敷地内に向けて投げつけたと供述。
    「就職活動がうまくいかず、むしゃくしゃしてやってしまった」と容疑を認めているようです。

    現場は、東急東横線の武蔵小杉駅に近い高層マンションが立ち並ぶ人気のエリア。

    卵が肩に当たった女性にケガはなかったということです。
    では早速、「軽犯罪法」の条文を見てみましょう。

    「軽犯罪法」
    第1条
    左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

    11.相当の注意をしないで、他人の身体又は物件に害を及ぼす虞のある場所に物を投げ、注ぎ、又は発射した者
    拘留とは、受刑者を1日以上30日未満で刑事施設に収容する刑罰で、科料とは、1000円以上、1万円未満の金銭を強制的に徴収する刑罰です。

    1948(昭和23)年に施行された軽犯罪法は、軽微な秩序違反行為に対する法律で、騒音や迷惑行為、のぞき、露出、虚偽申告など33の行為を罪として規定しています。

    軽犯罪法については以前にも解説しました。
    詳しい解説はこちら⇒「犯罪になるストレス発散法とは!?」
    https://taniharamakoto.com/archives/1309

    これは、女性の顔につばを吐きかけた男が暴行容疑で逮捕された事件を取り上げたものでした。

    ところで、この記事でも解説したのですが、じつは軽犯罪法でも26号で、つばを吐く行為を禁止しています。
    しかし、逮捕容疑は暴行罪でした。

    今回の事件でも、投げた生卵が女性に当たっているわけですから、暴行罪が適用されてもいいのではないか、という疑問が湧いてきます。
    さて、この違いは何なのでしょうか? 条文から考えてみましょう。

    「刑法」
    第208条(暴行)
    暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
    法律上の「暴行」とは、人の身体に向けた「不法な有形力の行使」と定義され、相手が傷害を負わなければ暴行罪、傷害を負えば「傷害罪」となります。

    第204条(傷害)
    人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
    次にポイントとなるのは、「故意」であったかどうかです。
    暴行罪の場合、条文に「人の身体に向けた」とあるように、今回の事件で容疑者は「人を狙って」生卵を投げたのかどうかが焦点となってきます。

    容疑者は、線路内や敷地内に向かって投げていた、ということで、「人にぶつけようとして投げた」とは言っていません。

    また、状況から考えても人にぶつけようとして投げているようには見えなかったのでしょう。

    今のところ、人にぶつける意思があったことが認定できないので、暴行の故意が欠け、他人の身体又は物件に害を及ぼすおそれのある場所に生卵を投げた、ということで軽犯罪法となったものと思われます。

    今後、人を狙った旨の供述が出てくれば、幸い女性にケガがなかったことから傷害罪ではなく暴行罪になる可能性もあるということですね。

    ちなみに、今年6月には東京都中央区の自宅マンションから2リットルの水が入ったペットボトルを投げ、通行人にケガをさせた高校生(16)が逮捕されるという事件が起きています。

    こちらは、人がケガをしていることと、高校生が「投げればケガをさせることは想像した」と容疑を認めたことから傷害容疑での逮捕となったのでしょう。

    就職活動がうまくいかなかったとしても、生卵を投げるなどして他人に迷惑をかけてはいけませんね。

    投げるなら、せいぜい就職を諦めてさじを投げるくらいにして欲しいものです。

    お後がよろしいようで。M(_ _)m

  • 「週刊朝日」から取材

    2015年11月19日

    雑誌「週刊朝日」2015年11月27日号から取材を受け、私のコメントが掲載されました。

    内容としては、増加する自転車事故について、その損害賠償がどうなるのか、という件です。

  • 全国で初めて“ごみ屋敷”を強制撤去の行政代執行!

    2015年11月17日

    問題になっていた「ごみ屋敷」が、ついに強制撤去になったというニュースがありました。

    今後、全国で「ごみ屋敷」への対応が進んでいくかもしれません。

    「“ごみ屋敷”に行政代執行 京都市、条例に基づき初の強制撤去」(2015年11月13日 京都新聞)
    京都市右京区の民家で50代の男性が物を溜め込んでいる「ごみ屋敷」問題に対し、京都市は11月13日午前、私道など屋外に置かれた物を行政代執行で強制撤去しました。

    近隣住民の通行に支障が出ており、災害時の住民避難に影響が出るとして強制撤去に踏み切ったもので、京都市の「ごみ屋敷対策条例」に基づき執行。
    私有地の強制撤去は全国初ということです。

    問題の経緯は以下の通りです。
    ・2009年12月に近隣住民からの相談で市が問題を把握。
    ・男性は、6年以上前から自宅前に古新聞・雑誌を積み上げ、もともと狭い私道がさらに狭くなり、車いすの使用者が通れなくなる事態に。
    ・男性には再三にわたり撤去を要請し、2014年11月の対策条例施行後は文書指導や命令も行ってきたが、男性は「これは財産だ」、「資料だ」と主張。
    ・市は約1年間に男性宅を124回訪問し、59回面会を実施。健康相談も行ってきた。
    ・この男性宅以外に、市は121世帯の「ごみ屋敷」を確認。うち52世帯では住居人から同意を得て、市職員とともに清掃を行い、「ごみ屋敷」状態を解消した。
    ・しかし、この男性宅では自主的な撤去が進まず、また今年8月に愛知県豊田市の「ごみ屋敷」が火元となって隣家に延焼する火災が起きたことからも、今回の強制撤去となった。

    当日は午前10時頃、市保健福祉局の幹部が行政代執行の開始を宣言。男性が立ち会う中、市職員5人が私道に積まれた古新聞や雑誌、衣類などを持ち出し、崩落の恐れがあった2階のベランダにあった物も撤去。
    約2時間で作業は終了したようです。

    強制撤去した「ごみ」は、7.5立方メートルで45リットルごみ袋に換算して167袋、軽トラック5、6台分にもおよんだということです。
    ごみ屋敷問題については、以前解説しました。
    詳しい解説はこちら⇒
    「困った隣人トラブル─ごみ屋敷問題はどう解決する?」
    https://taniharamakoto.com/archives/2016

    この時点(2015年7月)では、文書による指導と勧告がなされていたのですが、今回、行政代執行が行われたわけです。
    簡単に復習しましょう。
    【ごみ屋敷を取り締まる法律はない!?】
    じつは、ごみ屋敷を直接的に取り締まる法律はありません。
    そのため、これまでは「廃棄物処理法」や「道路交通法」で対応してきました。

    しかし、廃棄物処理法は個人宅のごみは対象外であること、道路交通法の第76条では個人の敷地内から周囲の公道にごみがあふれ出ている場合に適用されることから、行政の対応は後手に回ってきました。

    そして、さらに「財産権」の問題があります。

    「日本国憲法」
    第29条
    1.財産権は、これを侵してはならない。
    個人の財産権は憲法に規定され、保障されています。
    そのため、第三者が見て明らかに「ごみ」であっても、本人が「財産」と主張すれば私有地である個人宅や敷地から第三者が持ち出すことは「私有財産権の侵害」につながるおそれがあるわけです。
    【各自治体が”ごみ屋敷“対策に乗り出した】
    しかし近年、急増する「ごみ屋敷」に対応するために各自治体が独自に条例を制定して対策に乗り出すケースが増えてきました。

    2013年、東京都足立区は「足立区生活環境の保全に関する条例」(通称・ごみ屋敷条例)を全国に先駆けて施行。
    その後、大阪市や京都市、新宿区などでも条例が制定され、現在では全国の8市区で制定されています。

    例えば、京都市の条例では次のようなことが定められています。
    ・ゴミを放置した人の氏名を書いた標識を現地に設置することができる
    ・私有地のごみは行政代執行で強制撤去することができる
    ・命令に従わなかった場合、5万円以下の過料

    ちなみに、「行政代執行」とは、行政上の強制執行の一種で、義務者が行政上の義務を履行しない場合に、行政庁が自ら義務者のなすべき行為をすることです。(「行政代執行法」第1条・2条)
    【ごみ屋敷条例の今後の課題とは?】
    今回の強制撤去で、全国的に「ごみ屋敷」への対策が進んでいくことが考えられます。

    たとえば、2015年5月に完全施行された「空家対策特別措置法」では、増え続ける「空き家」の中でも特に倒壊の危険のあるものや衛生上有害なもの、周囲の景観を損なうものなどを「特定空き家」として、最終的には各自治体が行政代執行による撤去もできると定めています。

    詳しい解説はこちら⇒
    「特定空き家の基準が決定!空家対策特別措置法が施行」
    https://taniharamakoto.com/archives/1952

    こうした流れからも、周囲の環境悪化や地域住民の安全対策に問題がある「ごみ屋敷」について、今回の強制撤去がきっかけとなり全国的に対策が進んでいくと思われます。

    ただし、住人への心身のケアは今後の課題となりそうです。
    たとえば、精神疾患の人や、ごみの分別をする能力のない高齢者など、ごみを溜めてしまう人への生活支援や周辺の住人との関係改善などです。

    実際、京都市では、ごみ屋敷の対策条例に基づき有識者会議を設置し、条例の適用には福祉の観点からも議論を重ねたうえで執行を決定しているとしています。

    とはいっても、「ごみ屋敷」の周辺住人の方にとっては日常生活に支障をきたすケースがあるわけで、これは切実な問題です。
    また近年、さまざまな隣人トラブルも増え、殺人事件にまで発展するケースもあります。

    隣人トラブルにおいて、個人間での話し合いなどで解決できないようであれば、法的な対応を考える必要もありますので、一度、弁護士などの専門家に相談してみるのもいいでしょう。

  • 他人のフェイスブックに不正アクセスすると逮捕!?

    2015年11月13日

    他人のプライベートを盗み見したくなるのは、人間の性(さが)かもしれません。

    しかし、注意してください!
    見てはいけないものを見てしまうと…犯罪になる可能性があります。

    「不正アクセス:容疑者“写真を見て性的欲求を満たした”」(2015年11月10日 毎日新聞)

    警視庁サイバー犯罪対策課は、不正に入手したIDとパスワードを使って他人のフェイスブック(FB)に侵入したとして、東京都板橋区に住む携帯電話販売会社「光通信」社員の男(25)を不正アクセス禁止法違反容疑で逮捕しました。

    逮捕容疑は今年1~3月、不正に入手した都内の20代の女性のIDとパスワードを使ったFBへのログインです。
    FBへの不正アクセスを立件するのは、今回が全国初だということです。

    事件の発端は、2014年7月。
    捜査員がサイバーパトロール中、ネットの掲示板にわいせつ画像が公開されているのを発見。
    捜査線上に容疑者の男が浮上したことで、わいせつ図画公然陳列容疑で自宅を家宅捜索。
    すると、パソコンのファイルから大量のIDとパスワードが見つかったため、さらに捜査を進めていたようです。

    今回、男のパソコンからはFBのほか、アップル社のデータ保存サービス「アイクラウド(iCloud)」利用者も合わせて770人以上のIDやパスワード、電話番号などが見つかり、さらには女性の私的な画像が複数保存されていたことから、FBなどに不正にアクセスしてプライベートを「のぞき見」し、入手していたとみているとのことです。

    容疑者の男は、「被害者のプライベートな写真を見て性的欲求を満たしていた」と供述し、容疑を認めているということです。
    夫婦や恋人、親族の間でも、メールやフェイスブックなどに不正にアクセスすれば犯罪になる可能性があります。

    不正にアクセスする、というのは、許可なく他人のIDとパスワードを使ってインターネットを通じてFacebookやメールシステムなどにアクセスすることです。

    これは、犯罪です。

    また、そのような不正アクセスをすることを目的として、他人のIDやパスワードを取得することも犯罪です。

    携帯電話やスマホにダウンロードされたメールを見ても、「不正アクセス」にはなりません。

    「不正アクセス」というくらいですから、インターネットなど通信回線を通じて他人のコンピュータに接続して利用する行為が罰せられます。

    詳しい解説はこちら⇒「アダムとイブと不正アクセス禁止法」
    https://taniharamakoto.com/archives/1326
    「不正アクセス禁止法」
    第3条(不正アクセス行為の禁止)
    何人も、不正アクセス行為をしてはならない。

    第4条(他人の識別符号を不正に取得する行為の禁止)
    何人も、不正アクセス行為の用に供する目的で、アクセス制御機能に係る他人の識別符号を取得してはならない。
    ネットで不正にアクセスすれば3年以下の懲役又は100万円以下の罰金、IDやパスワードを不正に入手すれば1年以下の懲役又は50万円以下の罰金となります。

    近年、不正アクセスは大きな問題になっています。
    個人や、さまざまな業種の企業のサイトに不正にアクセスし、個人情報や企業秘密を奪ったり流出させる事件が相次いでいます。

    2014年には、無料通信アプリのLINE(ライン)のアカウント(IDとパスワード)が不正に乗っ取られる事件が多発したのを記憶している人も多いでしょう。

    詳しい解説はこちら⇒「LINEのアカウントの乗っ取りに要注意」
    https://taniharamakoto.com/archives/1552

    では、これらの被害に遭わないようにするには、どうしたらいいのでしょうか?
    不正アクセスでは本人が知らない間に被害に遭うケースが多いことを考えれば、まずは自衛対策が大切になります。

    やはり、以前からよく言われているように、
    ・すべてのWebサービスでIDやパスワードを異なるものにして管理する。
    ・生年月日や電話番号など、わかりやすく、個人が特定されやすいものは使わない。
    ・なるべく長いものを使う
    ・パスワード管理ツールを使う
    ・2段階認証やアプリなども併用する。
    などの対策をしておく必要があるでしょう。

    なお、不正アクセス禁止法では以下の項目についても禁止されていますので、合わせて覚えておいてください。

    ・他人のIDやパスワードをアクセス管理者や利用権者以外の者に提供してはいけない。(第5条)
    ・不正に取得した他人のIDやパスワードを保管してはいけない。(第6条)
    ・フィッシング行為などで他人のIDやパスワードを不正に要求してはいけない。(第7条)

    上記すべて、違反した場合は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金となります。

    他人のプライベートの「のぞき見」、相手への復讐、いたずら等、動機はさまざまでも、不正をすれば高い代償を払うことになるということは肝に銘じておいてほしいと思います。

  • 帰れと言われて帰らないと不退去罪で逮捕される!?

    2015年11月11日

    今回は、少し珍しい? 罪について解説します。
    「不退去罪」といいます。
    一体、どんな罪なのでしょうか?

    「ラーメン店対応に立腹、3時間居座る 容疑で男逮捕 明石署」(2015年11月8日 神戸新聞NEXT)

    兵庫県警明石署は、ラーメン店の対応に腹を立て、約3時間も店に居座り続けた会社員の男(32)を不退去の疑いで現行犯逮捕しました。

    事件が起きたのは、11月8日。
    男は、明石市内のラーメン店に午前4時ころに来店。
    餃子の次にラーメンを出してくれるように注文したところ、ラーメンを先に出されたため男性店長(33)と口論。

    午前7時ころ、110番通報で駆けつけた同署員が説得したが応じなかったため逮捕されたということです。
    食べる順番に相当なこだわりがあったのでしょうか、それとも虫の居所が悪かったのでしょうか…いずれにせよ、罪は罪です。
    では、条文を見てみましょう。

    「刑法」
    第130条(住居侵入等)
    正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
    ・住居侵入罪は、正当な理由がなく住居などに不法に侵入した場合に成立します。
    ・一方、不退去罪の場合は、適法に又は過失により立ち入った場合に限られ、不法に侵入した場合は成立しないことに注意が必要です。この場合には、住居侵入罪が成立するためですね。

    ・不退去罪は、退去の要求を受けたら直ちに成立するものではなく、要求を受けた者が退去するのに必要な合理的時間、たとえば荷物を整理して持つ、服を着る、靴を履くなどの時間が経過して初めて成立するとされます。

    ・住居だけでなく、たとえば門柱や塀の内側、庭などの塀で囲まれた敷地内も不退去罪の対象になります。

    ところで、この罪が成立するにはどんな状況が考えられるでしょうか?

    たとえば、労働者と使用者間での労働争議において、使用者側の業務遂行を妨害するような不退去行為。

    しつこい訪問販売業者や新聞などの勧誘、布教活動のため居座り続ける行為。

    会社や店舗などにやってきて、いつまでも帰らないクレーマー。

    これらの行為は、不退去罪になる可能性があります。

    ただし、不退去罪を前提として退去を要求することができるのは、当該建物の管理権を有する者であるため、会社や店舗などの場合は、管理権者からの指示に基づいて退去を要求しないと不退去罪に該当しない可能性もあるので注意が必要です。

    仮に相手に非があったとしても、住居や会社、店舗などに居座り続けると犯罪になる可能性があることは覚えておいてください。

  • テレビ朝日「ワイドスクランブル」生出演2015.11.10

    2015年11月10日

    2015年11月10日放送のテレビ朝日「ワイドスクランブル」に生出演しました。

    高齢者の近隣トラブルについて、弁護士の立場からコメントを求められたものです。

  • いじめ問題が急増!?法的な対応策はあるのか?

    2015年10月29日

    いじめの実態について、小中高校での調査結果が文部科学省から発表されました。

    今回は、いじめと法律の関係について解説します。

    「小学校のいじめ、過去最多12万件 再調査で大幅増」(2015年10月27日 朝日新聞デジタル)

    文部科学省の発表によると、2014年度のいじめについて小中高校全体で把握されたのは、前年度より2254件増えて18万8057件。
    そのうち、小学校では過去最多の12万2721件だったということです。

    これは、6月までにいったん取りまとめられていたものを、7月に岩手県矢巾町で起きた中学2年生の男子生徒のいじめを苦にした自殺を受けて、やり直し再調査をしたもの。
    最初の提出時より全体で約3万件増えたということです。

    おもな概要をまとめます。

    ・2010年度と比べると、小5で2・7倍、小6で2・4倍に増加したのに対し、小1が5・8倍、小2は4・3倍となり、小学校低学年の増加が目立った。

    ・再調査前に比べ、認知件数が大きく増えたのは、福島県(4・3倍)、福岡県(2・7倍)、岩手県(2・1倍)。

    ・中学校では5万2969件で、前年度より2279件減少。

    ・心身に重大な被害が生じる「重大事態」は、小中高校全体で前年度の179件から156件に減少。

    ・スマホやインターネットによるいじめの件数は7898件で前年度に比べ890件減少。
    しかし、LINE(ライン)など特定のメンバー以外はやりとりが公開されないアプリもあり、実態が把握しにくい。

    ・全学校の42・4%が、いじめは0件としているが、調査が不十分な可能性がある。
    【過去に起きた“いじめ”問題の裁判例を解説】
    いじめに関連した事件が後を絶ちません。

    2011年に滋賀県大津市で起きた事件を憶えている人も多いでしょう。
    当時、中学2年生だった男子生徒が、いじめを苦にして自宅で自殺。
    事件後の学校と教育委員会の隠蔽体質が発覚し、大きく報道されたものでした。

    直後の2012年度調査では、いじめの認知件数は前年度比で3倍近くに増え、約19万8000件と過去最多だったようです。

    2014年度の調査結果と比較すると、認知件数は約1万件減少してはいます。
    しかし、ここ数年、いじめの件数は大きくは減少していないというのが実情です。

    件数は増減しても、けっしてなくならない、いじめ問題。

    いじめは、親や教師が見ていない水面下で行われることが多いことを考えれば、公表された件数は、まだまだ氷山の一角と言わざるを得ないでしょう。

    では、こうしたいじめ問題に対して被害者側は、どのように対応したらいいのでしょうか?

    過去にあった、いじめ事件の判例を見てみます。

    「三室小学校放課後いじめ事件」
    (浦和地判昭和60年4月22日 判例時報1159号68頁 判例タイムズ552号126頁)

    「概要」
    昭和54年1月に転校してきた女子児童A(当時3年生)が、直後から同じ組の男子児童から殴る、蹴る、つねるなどの暴行を受け始めた。
    4年生に進級すると、いじめの頻度が増したため、Aの母は、担任の女性教諭に相談し、連絡帳にいじめの事実を記載し提出。いじめの事実を認識した担当教諭は、ときに暴力を振るった男子児童らを教壇の前に呼び出し注意をしたり、反省会を開いて軽く戒めたり、児童らに話し合いをさせるなどしたが、暴力はおさまらなかった。
    事件が起きたのは同年11月。廊下で立ち話をしていた女子児童が、教室から出てきた男子児童Bから足元に滑り込みをかけられ転倒。その後、男子児童Cからも足元に滑り込みをかけられ転倒。その際、廊下面で顔面を強打して前歯2本を折る傷害を負った。
    そこで、被害者側は浦和市に対して、担任教諭が事態を放置し、何らの教育的措置もとらなかったとして、国家賠償法第1条に基づき提訴。
    男子児童BとCの両親に対しては、子供の監督義務を怠ったとして、責任無能力者の監督義務者の責任を民法第714条1項に基づき提訴。
    治療費、慰謝料等約644万円の損害賠償を請求した。

    「判決」
    ・浦和市の責任については、「小学校の校長ないし教諭が、学校教育の場において児童の生命、身体等の安全について万全を期す義務を負うのは、学校教育法等に照らして明らか」、「児童間の事故により、その生命、身体等が害されるという事態の発生を未然に防止するために、万全の措置を講ずべき義務を負うべき」として、小学校の校長と担任教諭の義務について判示。

    ・本件事案については、「担任教諭は事故が発生するかなり以前から、いじめの実態を認識し、被害者の母から善処を求められていたにもかかわらず、抜本的、かつ徹底した対策を講じなかった」として、担任教諭の過失と学校側が監督義務を怠ったことを認め、国家賠償法第1条に基づく賠償責任として、約273万円の支払いを命じた。

    ・加害者Cの両親については、「他人の生命、身体に対し不法な侵害を加えることのないよう教育を行い、人格の成熟を図る義務を負う」、「事故により生じた損害を賠償すべき責任を負担するべきで、保護監督義務を尽くしたとは到底いえない」として、民法第714条1項に基づく責任を認めた。

    ・一方、加害者Bの両親については、BがCに先行して滑り込みをかけたことを認めたものの、Bの行為と被害者が負った傷害との間に因果関係を認めることはできないとして、共同不法行為責任を否定した。
    【いじめに対する法的な対処法とは?】
    前述のように、いじめの被害にあい、子供が傷害を負った場合は、民事において損害賠償請求することができます。

    法的には、学校は親に代わって子供を監督する立場であるため、「代理監督者責任の義務」があります。
    教職員の故意または過失によって生じた事故では、その使用者として学校が損害賠償義務を負うことになります。

    その場合、公立校であれば「国家賠償法」、私立校ならば「民法715条」が適用されます。
    また、損害賠償請求に関しては第709条が適用されます。

    詳しい解説はこちら⇒「学校での柔道事故で8150万賠償命令」
    https://taniharamakoto.com/archives/2031

    次に、加害者が未成年者の場合、物事の是非善悪を理解する能力がある場合には、その未成年者本人が賠償義務を負い、その能力がない場合には親などが責任を負う、とされています。

    第714条(責任無能力者の監督義務者等の責任)
    1.前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

    詳しい解説はこちら⇒「子供が起こした事故は誰の責任? 最高裁判決」
    https://taniharamakoto.com/archives/1929
    保護者としては、すべての学校で、いじめがあると考えたほうがいいかもしれません。

    いじめ問題は初期段階で組織的に対応することが重要です。
    子供をいじめから救うために、学校と教師、親などがどう対処するかが問われています。

    なお、学校へ相談したり、訴えても、なかなか解決に至らないような場合は、弁護士などの専門家に相談し、法的な対応を検討することも大切になってきます。

    ご相談はこちらから⇒http://www.bengoshi-sos.com/about/0903/

  • 日本刀の模造刀でも銃刀法違反!?

    2015年10月24日

    今回は、彼女が最近ハマっている、ある趣味が法律違反なのではないか? と心配する男性からの相談です。

    一体、どんなことにハマッているのでしょうか?

    Q)最近、「日本刀ブーム」だそうで、特に女性に人気があるらしく、私の彼女もハマっています。先日、誕生日のプレゼントは何が欲しいか訊いたところ、「日本刀の模造刀!」ということで、その後は延々とその魅力について聞かされました…。ところで、法律的には模造刀の所持については犯罪にならないのでしょうか? 職務質問ではナイフを持っているだけで逮捕される、という話も聞きますが、実際どうなのでしょうか?

    A)刃物を所持していると「軽犯罪法」、もしくは「銃刀法」違反として逮捕される可能性があるので注意してください。
    また、日本刀の模造刀であっても携帯して持ち歩くと犯罪になる可能性があります。
    以下に解説していきます。
    軽犯罪法は、1948(昭和23)年に施行されたもので、のぞきや露出、騒音、迷惑行為など、軽微な秩序違反行為に対する法律です。
    さまざまな行為が規定されており、全部で33の行為が罪として定められています。

    条文を見てみましょう。

    「軽犯罪法」
    第1条
    左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

    2.正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者
    「拘留」とは、受刑者を刑事施設に1日以上、30日未満(最長29日間)の範囲で拘置する刑罰です。
    同じような刑罰に「禁固」がありますが、拘留は禁固とは違い執行猶予が付されないため、必ず実刑になります。
    また、懲役刑のように、刑務所などの刑事施設での所定の作業を行う必要はありませんが、禁固と同様に受刑者が望めば作業を行うこともできます。

    「科料」とは、1000円以上、1万円未満(9999円以下)の金銭を強制的に徴収するという刑罰です。
    1万円以上の金額の刑罰の場合は「罰金」になります。
    なお、科料の場合も検察庁が保管する「前科調書」に記載されるため、「前科」がついてしまいます。

    ちなみに、警視庁のサイトでは条文にある「正当な理由」としては、店で刃物を購入して自宅に持ち帰ることなどを挙げていて、繁華街等でからまれたときに身を守るための護身用に持ち歩く、というのは正当な理由にはあたらないとしています。

    また、ハサミやカッターナイフなどの文房具でも、自宅や居室以外の場所で、正当な理由なしに、すぐに使える状態で持ち歩くと取り締まりの対象になるとしていることにも注意が必要です。
    では次に、「銃刀法」について見ていきましょう。

    「銃刀法」は、正式名称を「銃砲刀剣類所持等取締法」といい、1958(昭和33)年に銃や刀剣などの取り締まりを目的として施行された法律です。

    「銃刀法」
    第2条(定義)
    2.この法律において「刀剣類」とは、刃渡り15センチメートル以上の刀、やり及びなぎなた、刃渡り5.5センチメートル以上の剣、あいくち並びに45度以上に自動的に開刃する装置を有する飛出しナイフをいう。
    第3条(所持の禁止)
    何人も、次の各号のいずれかに該当する場合を除いては、銃砲又は刀剣類を所持してはならない。

    1.法令に基づき職務のため所持する場合
    第4条(許可)
    次の各号のいずれかに該当する者は、所持しようとする銃砲又は刀剣類ごとに、その所持について、住所地を管轄する都道府県公安委員会の許可を受けなければならない。
    わかりやすくまとめると、次のようになります。
    ・刃渡り15cm以上のものは「刀」、5.5cm以上のものは「剣」。
    ・法令に基づき職務のために所持する場合以外は、原則として所持は禁止。これに違反した場合、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金。(第31条の16の1号)
    ・所持するには、都道府県公安委員会の許可を受けなければいけない。
    ・18歳未満の者、精神障害等の政令で定めた病気がある者、アルコールや麻薬中毒者、住居が定まらない者などは所持を許可されない。

    また、刀剣については所持だけでなく携帯の禁止についても規定されています。

    第22条(刃体の長さが6センチメートルをこえる刃物の携帯の禁止)
    何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが六センチメートルをこえる刃物を携帯してはならない。ただし、内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが八センチメートル以下のはさみ若しくは折りたたみ式のナイフ又はこれらの刃物以外の刃物で、政令で定める種類又は形状のものについては、この限りでない。
    これに違反をした場合、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処されます。(第31条の18の3号)

    さらには、模造刀に関する規定もあります。

    第22条の4(模造刀剣類の携帯の禁止)
    何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、模造刀剣類(金属で作られ、かつ、刀剣類に著しく類似する形態を有する物で内閣府令で定めるものをいう。)を携帯してはならない。
    つまり、質問者の彼女の場合、趣味として日本刀の模造刀を手に入れて、家で触ったり、眺めたりするのは問題ありませんが、外に持ち出してしまうと銃刀法違反で逮捕、20万円以下の罰金(第35条の2号)に処される可能性があるということです。

    「刀剣女子」と呼ばれるマニアの人たちには、いくら模造刀とはいっても、その扱いには十分注意して法律を遵守して、趣味の世界を楽しんでほしいと思います。

  • 過労運転をさせた社長が逮捕!?

    2015年10月17日

    ある運送会社の社長が、自らは運転していないのに道路交通法違反で逮捕されたようです。

    一体、どんな罪を犯したというのでしょうか?

    「過労運転黙認容疑で運送会社社長を逮捕 月400時間拘束続く」(2015年10月15日 産経新聞)

    兵庫県警交通捜査課などは、トラック運転手に長時間にわたる運転をさせたとして、同県加古川市の運送会社社長(67)を、道路交通法違反(過労運転の下命)容疑で逮捕しました。

    2014年11月、過労運転の恐れがあることを知りながら、トラック運転手の男性社員(60)に大阪市から広島県福山市までの運送を命じた容疑としています。

    事の発端は、県警が高速道路の路側帯に停車していた同社の運転手に事情を聞いたところ、「仮眠中だった」と話したことから、同社の運行業務の実態を捜査。
    そこで、過労運転が常態化していた疑いが強まったため、会社側の管理責任を問えると判断したようです。

    社長の男は、「過労とわかっていたが、会社の利益のために運転させた」と容疑を認めているということです。

    過去には、事故発生後に同容疑で立件したケースはありますが、事故が発生する前に適用する例は全国的にも珍しいとしています。
    【道路交通法違反“過労運転の下命”とは?】
    「道路交通法」は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的としています。(第1条)

    では、「過労運転の下命」とはどういうものでしょうか?
    関連する条文を見てみましょう。

    第66条(過労運転等の禁止)
    何人も、前条第1項に規定する場合のほか、過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない。
    ※これに違反した場合は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます。(第117条の2の2第7号)
    ※前条(第65条)第1項とは、酒気帯び運転の禁止です。
    ※薬物等の影響により正常な運転ができない状態で運転した場合は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます。(第117条の2第3号)
    第75条(自動車の使用者の義務等)
    1.自動車の使用者(安全運転管理者等その他自動車の運行を直接管理する地位にある者を含む。)は、その者の業務に関し、自動車の運転者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることを命じ、又は自動車の運転者がこれらの行為をすることを容認してはならない。

    四 第66条の規定に違反して自動車を運転すること。
    運転者に十分な休養を与えずに、正常な運転ができない状態にも関わらず運転をさせたり、運転することを容認した場合、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます。(第117条の2の2第10号)
    つまり、第66条は運転者、第75条は使用者(事業者)に対する規定ということになります。

    ちなみに、使用者(事業者)は運転者に対して、制限速度を超えるスピードで運転させたり、飲酒運転を容認してもこの罪に問われることになるので注意が必要です。
    【過労運転の定義とは?】
    では、過労運転には一定の基準や定義があるのでしょうか?

    トラック運転者の労働条件の改善を図るために策定された、労働大臣告示「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)では、次のように規定しています。

    ・1ヵ月の拘束時間は、原則として293時間が限度
    ・ただし、労使協定を締結した場合は、320時間まで延長できる
    ・1日の拘束時間は13時間以内を基本とし、延長する場合は16時間が限度
    ・1日の休息時間は、継続8時間以上を与えなければならない
    ・1日の拘束時間が15時間を超える回数は、1週間に2回まで。
    ・1日の運転時間は、2日平均で1日あたり9時間が限度
    ・1週間の運転時間は、2週間ごとの平均で44時間が限度
    ・連続運転時間は、4時間が限度

    これらの「限度」を超えると過労運転になる可能性があります。

    過去の判例では、上記の基準も参考に過労運転にあたるかどうかが争われているので、ドライバーを管理する立場の人や会社の社長などは注意が必要です。
    ところで、警視庁が公表している「平成26年中の交通事故の発生状況」によると、交通事故の総件数から見れば少ないものの、過労運転が原因の交通事故は378件起きています。

    過労状態で自動車を運転して、集中力の低下や居眠り運転などによる交通事故を起こしてしまえば、大惨事になりかねません。

    使用者や管理者は法律を守って、ドライバーに十分な休息を与えなければいけません。
    また、ドライバー自身も無理をせず安全運転に努めて、事故や交通違反がないようにしてほしいと思います。

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