労働法 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜 - Part 2
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
弁護士20人以上が所属するみらい総合法律事務所の代表パートナーです。
テレビ出演などもしており、著書は50冊以上あります。
メニュー
みらい総合法律事務所
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階
弁護士20人以上が所属するみらい総合法律事務所の代表パートナーです。
テレビ出演などもしており、著書は50冊以上あります。
  • 社員の給料を下げられない?

    2014年12月15日

    ★社員の給料を下げられない場合とは?

    社員の給料最初、会社と社員の合意で定められます。

    その後は、会社の給与規定などに基づき変動してゆくのが通常です。

    社員の給料が上がる時にはトラブルは発生しませんが、社員の給料を下げようとした時は、労使トラブルが勃発します。

    会社が、社員の給料を下げたいと考える理由としては、会社の経営状況による場合や、社員自身が原因である場合など様々です。

    今回は、社員の給料を下げる場面として、

    ①経営難を理由として給料を下げる場合
    ②人事考課・人事異動の結果として給料が下がる場合
    ③懲戒処分として減給をする場合

    に分けて説明したいと思います。

    ①経営難を理由として給料を下げる場合

    経営難を理由として社員全体の給料を下げる場合には、社員の同意なしには行えないのが原則です。

    労働条件を社員に不利益に変更するには、原則として社員の同意が必要となるためです。

    もっとも、会社が就業規則の変更によって労働条件を変更する場合には、変更後の就業規則を社員に周知させ、かつ、その内容が下記要素から考えて合理的である場合には許されます。

    (1)社員の受ける不利益の程度
    (2)労働条件の変更の必要性
    (3)変更後の就業規則の内容の相当性
    (4)労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情

    会社の存続自体が危ぶまれたり、経営危機による雇用調整が予想されるなどといった状況にあるときは、労働条件の変更による人件費抑制の必要性が極度に高い上、労働者の被る不利益という観点からみても、失職したときのことを思えばなお受忍すべきものと判断されます。

    そのような場合には、多数の労働者が反対している場合であっても、就業規則の変更により給料を下げることが許されるといえます。

    ②人事考課・人事異動の結果として給料が下がる場合

    まず、年度ごとの人事考課等の結果として給料の額が減額することについては、あくまで賃金の計算方法に過ぎず、人事考課制度の枠内で行うのであれば、裁量権の濫用に当たらない限りは問題なく行うことができます。

    次に、人事権の行使として、成績不振を理由として、部長が社員に降格する場合や、部長が係長に下がる場合など、人事権に基づく役職や職位の降格の場合には、雇用契約の上で使用者の当然の権限として認められるものであり、人事権の濫用にあたらない限り問題なく行うことができるといえます。
    ③懲戒処分として給料を下げる場合

    まず、懲戒処分として減給をする場合には、懲戒処分の前提として、次の要件が必要です。

    (1)就業規則に懲戒処分の規定があること
    (2)就業規則が社員に周知されていること
    (3)就業規則で定められる懲戒事由に該当する行為があったこと
    (4)当該処分が労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を有し、社会通念上相当であること

    特に、減給は、労働者の生活への影響が大きいことから、十分な理由が必要となると考えるべきでしょう。

    さらに、減給処分が有効であったとしても、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えて減給をすることは法律上禁止されています。

    会社の側としては、もっと下げられるのではないかと考えられている方も多いと思いますので注意をしなければなりません。

    以上、社員の給料を下げる場面として3つに分けて説明をしてきました。

    どちらにしても、給料を下げることは、社員の生活に与える影響が大きく、後に紛争となるケースも少なくありませんので、専門家と相談をしながら慎重にすすめるとよいでしょう。

    労働相談は、こちら
    http://roudou-sos.jp/

  • これは、酷い!パワハラ自殺で5790万円

    2014年12月03日

    パワー・ハラスメント(パワハラ)による損害賠償訴訟の判決のニュースが頻発していているので、解説しておきたいと思います。

    労働者にとっては精神的損害が、使用者側の企業にとっては経済的損失が大きい事例が増えています。

    「“バカ”“使えねえな”店長は自殺…ブラック企業、驚愕パワハラ実態」(2014年11月28日 産経新聞)

    東京都渋谷区のステーキチェーン「ステーキのくいしんぼ」の店長だった男性(当時24歳)が自殺した原因は、過酷な長時間労働とパワー・ハラスメントにあるとして、ステーキ店を経営する(株)サン・チャレンジに対して両親が損害賠償を求めた裁判で、東京地裁は11月、同社側に約5790万円の賠償を命じました。

    判決などによると、男性は同社に勤務していた父親に誘われ平成19年5月にアルバイトとして採用され、間もなく正社員に。
    その後、父親は同社の方針に疑問を感じ退社。
    ところが男性は、「もう少し頑張ってみる」と会社に残ったといいます。

    しかし、平成22年11月に遺書を残し、店舗の入るビルの非常階段で首をつって自殺。
    渋谷労働基準監督署は、平成24年に自殺を労災認定していたということです。

    判決では、驚愕のパワハラの実態が明らかにされました。

    〇パワハラをしていたのは複数の店舗指導するエリアマネージャーの男性で自殺した男性の上司だった。
    〇ミスをするたびに「バカ」「使えねえな」と叱責し、尻や頬、頭などを殴る。
    〇社長や幹部が出席する「朝礼」でさらし者にする。
    〇シャツにライターで火をつける
    〇自殺直前の7ヵ月の残業時間は、1日あたり12時間を超え、月平均190時間超、最大で230時間、月の総労働時間は平均560時間。
    〇7ヵ月間に与えられた休日は2日間のみで、残業代もボーナスも支払われなかった。
    〇たまの休日にも電話で使い走りを命じたり、仕事後に無理やりカラオケや釣りにつきあわせた。
    〇職場恋愛の交際相手が発覚すると、「別れたほうがいい」と干渉。上司に隠れて交際を続けると「嘘をついた」と叱責。

    裁判で上司は、「日頃から親しくしており、指導やじゃれ合いを超えた行為はなかった」と主張。
    しかし、東京地裁の判決では、「暴行や暴言、プライベートに対する干渉、業務とは関係ない命令など、社会通念上相当と認められる限度を超えるパワハラを恒常的に行っていた」、「自殺の理由はパワハラや長時間労働以外にはない」と一蹴。

    また、「自殺した本人に過失はなかった」として過失相殺による賠償額の減額を認めなかったことで、原告側代理人は「自殺をめぐる訴訟で過失相殺を認めないのは異例」としています。
    以前、パワハラについて解説しました。

    詳しい解説はこちら⇒「職場のいじめは、法律問題です。」

    職場のいじめは、法律問題です。

    厚生労働省の公表では、パワハラの定義とは以下のようになります。

    「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう」
    また、パワハラの分類として以下のものが挙げられています。

    ①身体的な攻撃(暴行・傷害)
    ②精神的な攻撃(脅迫・暴言等)
    ③人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
    ④過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
    ⑤過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
    ⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

    ①~③は、業務の適正な範囲内であることは考えにくいので、原則としてパワハラに該当すると考えられますが、④~⑥については業種や企業文化などによっても差異があるため、業務上の適正な指導との線引きが難しく具体的な判断については、行為が行われた状況や行為が継続的であるかどうかによっても左右される部分があると考えられます。

    今回は、民事裁判でしたが、さらに、パワハラは刑事事件として罪に問われる可能性もあります。

    肉体的暴力によってケガをさせれば「傷害罪」(刑法第204条)、仮に言葉の暴力で「電車に飛び込んで死ね!」などと言って相手を自殺させた場合には「自殺教唆罪」(刑法第202条)に問われるかもしれません。

    いずれにせよ経営者側には、職場でのパワハラに対する認識をそろえ、その範囲を明確にする取り組みを行うことが望まれます。

    そのうえで、以下のようなパワハラ防止策を講じる必要があります。
    ・「トップによる、パワハラを職場からなくすべきである旨のメッセージ」
    ・「就業規則・労使協定・ガイドライン等によるルールの作成」
    ・「従業員アンケート等による実態の把握」
    ・「研修などの教育」
    ・「組織の方針や取組についての周知・啓発」
    ・「相談窓口等の設置」
    ・「再発防止措置等」
    パワハラは「職場のいじめ」では済まされない問題です。
    社内でパワハラ行為があれば、社員側も経営者側も不幸な結果が待っています。

    双方が互いに認め合い仕事をすることができれば、幸福な結果が待っているでしょう。
    会社は業績が上がり、社員は誇りとやる気を持って仕事に打ち込めるはずです。

    「人が本当に下劣になると、他人の悪口を言うことしか喜びをみいだせなくなる」(ゲーテ)

    もし、社内でパワハラの事実があるようであれば、不都合な事実から目をそらさず、隠ぺいなどせず、問題が大きくなる前に弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

    ご相談はこちらまで⇒「弁護士による労働相談SOS」
    http://roudou-sos.jp/

  • 【人事労務書式が無料ダウンロード】弁護士監修

    2014年11月09日

    会社経営には「人」「モノ」「カネ」が必要だと言われます。

    事業を効率よく運営し、事業を拡大していくためには労働者が必要となります。

    その労働者との関係は、「雇用契約」という契約関係です。

    いくら信頼関係で成り立っていると信じていても、労働者は生活のために仕事をしており、ボランティアをしているわけではありません。

    そこには、労働基準法をはじめとする多数の法律が適用されています。

    労使関係をあいまいにしていると、会社経営にとって大打撃となる事態に遭遇することになります。

    たとえば、解雇で和解金を2,000万円支払った事例。

    セクハラで会社が損害賠償金を3,000万円支払った事例。

    労働基準法違反で社長が逮捕された事例。

    そんな事態を防ぐためには、労使関係を法律に従った書面で明確にしておくことが必要です。

    そこで、人事労務に関する標準書式を用意しました。

    会社の状況にあわせて自由に編集できますので、ぜひご利用ください。

    【無料ダウンロード】弁護士監修の労務書式60種

     http://roudou-sos.jp/syoshiki/?blog

     

  • 人事労務法律セミナー(業種別)

    2014年10月28日

    珍しくセミナーをします。

    先日、労働法の本を出版しましたが、

    「90分でわかる 社長が知らないとヤバい労働法」(あさ出版)
    http://roudou-sos.jp/shachou90/

    出版を記念しての業種別セミナーです。
    近年、社員が起こした労働トラブルによって、
    会社(経営者)が大きな損害をこうむるケースが増えています。

    残業代の請求、解雇トラブル、機密情報の流出、
    セクハラ、パワハラなどなど。

    このような問題が起きた場合、
    適切に対処しなければ、経済的な損失だけではなく、
    他の優秀な社員や今まで築き上げた社会的な信用まで
    失ってしまうかもしれません。

    そこで、きちんと知っておきたいのが、
    「労働法」の知識です。

    法律の内容を知らなかったせいで何千万もの
    出費を余儀なくされるケースもあります。

    問題社員の不当な請求により多大なダメージ
    を受けないためにも、経営者の方々は
    労働法の知識をしっかりを身につけましょう。

    業種別です。

    会社役員・人事総務部長・社会保険労務士限定
    となります。

    IT企業の労働セミナーは、こちら
    http://myhoumu.jp/seminar/roudou01.html

    アニメ・ゲーム会社の労働セミナーは、こちら
    http://myhoumu.jp/seminar/roudou02.html

    介護施設の労働セミナーは、こちら
    http://myhoumu.jp/seminar/roudou03.html

    運送会社の労働セミナーは、こちら
    http://myhoumu.jp/seminar/roudou04.html

    飲食業の労働セミナーは、こちら
    http://myhoumu.jp/seminar/roudou05.html

    建築業の労働セミナーは、こちら
    http://myhoumu.jp/seminar/roudou06.html
    お待ちしております。

  • 労働法の本出版!

    2014年10月20日

    新しい本を書きました。

    経営者側に立った労働法の本です。

    かなりわかりやすく書けたと思います。

    「90分でわかる 社長が知らないとヤバい労働法」(あさ出版)
    http://roudou-sos.jp/shachou90/

    目玉は、ご購入者特典として、この本を弁護士が解説
    した解説動画(50分)が無料で視聴できることです。

    理解が進むと思います。

    気になる本の内容は、こんな感じです。

    序章・・・社長!労働法を知らないとこうなりますよ!
    こんなにある! 労働法関係のトラブル
    ケース1  労働時間の管理を怠ったために残業代支払い命令が……
    ケース2  パワハラを放置して慰謝料・損害賠償金を負担する事態に
    ケース3  セクハラ発言で訴えられて、約170万円の支払い命令
    ケース4  問題社員を解雇したら、損害賠償の支払い命令?

    第1章・・・なぜ労働法を知らないとヤバいのか?
    ◎まず「労働法」の基本を押さえましょう
    「労働法」とは複数の法律の総称/雇用契約のルールを決める労働契約法/男女雇用機会均等法と最低賃金法

    ◎労働トラブルってどんなもの?
    こんなにある! 労働法関係のトラブル/会社が受ける大きなダメージとは?

    ◎「労働法」に違反するとどうなってしまうのか
    労働基準監督官の仕事/意外と大きい!?/労働基準監督官の権限/送検された場合のデメリットとは?/「就業規則」は会社を守る盾

    第2章・・・社員による残業代請求から会社をどう守るか?
    ◎経営者なら知っておきたい残業代の基礎知識……
    社員に要求されるままに残業代を払いますか?/時間外労働・休日労働・深夜労働の違い/残業代はどうやって計算する?/基礎賃金に含まれる手当・含まれない手当/「残業代請求で会社がつぶれる」は大げさか?

    ◎残業代を請求されないための事前対策
    残業代請求を未然に防ぐ7つの方法/労働時間の調整が可能な「変形労働時間制」「フレックスタイム制」/外回りの営業マンには「事業場外みなし労働時間制」/特殊な業務は「裁量労働制」を検討/休日が不定期になりそうなら「休日振替制」「変形休日制」/残業代を一括で支払う固定残業代制/ダラダラ残業を防ぐ「残業許可制」/判断が難しい社員の「管理監督者」化

    ◎残業代請求を受けたときの防御マニュアル
    残業代請求トラブル解決までのプロセス/会社が反論するための5つのモデル/内容証明郵便を受け取ったときの対応/交渉時にやってはいけないこと/早期の和解でメリットを得られることも

    第3章・・・問題社員にはどう対処するか?
    ◎問題社員は会社にどんな影響を与えるのか?
    そもそも「問題社員」とは?/問題社員は会社にどんな影響を及ぼすか?/問題社員にはどのように対処すべきか/普通解雇と懲戒解雇/損害賠償請求を行うことの意味/なぜ「証拠づくり」が大なのか

    ◎問題社員のトラブル例……経歴詐称

    ◎問題社員のトラブル例……遅刻・早退・無断欠勤

    ◎問題社員のトラブル例……電子メールの私的利用・備品持ち帰り

    ◎問題社員のトラブル例……能力不足・協調性不足・繁忙期の有休取得

    ◎問題社員のトラブル例……情報漏洩

    ◎問題社員のトラブル例……借金の取り立て

    第4章・・・パワハラ・セクハラにどう対処するか?
    ◎パワハラとセクハラの基礎知識
    「業務の適正な範囲」を超えればパワハラ/パワハラにあたる6つの行為/セクハラを判定する3つの条件/どこからどこまでがセクハラなのか

    ◎パワハラとセクハラはなぜ有害なのか
    会社は社員を守る義務がある/パワハラ・セクハラで会社はどんな損害を受けるか/幹部が問われる罪と罰

    ◎社内のパワハラ・セクハラを撲滅するには
    パワハラを防ぐための5つの措置/パワハラ防止の社内体制のつくり方/セクハラを防ぐための4つの措置/実際にパワハラ、セクハラが発生したら/パワハラ・セクハラを防ぐ11のチェック

    第5章・・・就業規則を会社の守護神にするために
    ◎なぜ就業規則を準備すべきなのか
    就業規則と契約・法令・労働協約との関係/就業規則はなぜ必要か?/就業規則に記載すべきこととは?/就業規則は常に社員が見られる場所に/就業規則の変更で社員が不利益になるときは

    ◎採用や異動のトラブルを避けるためには?
    雇用形態に応じて採用基準を明確に/必要書類は具体的に規定しておく/採用内定の取り消しは簡単ではない/配転・出向によるトラブルを回避するには

    ◎労働時間や休日はどのように規定するか
    始業・終業時刻を明確に/時間外労働や休日出勤を可能にするには?/事前許可制でムダな残業代をカット!/法定休日は明らかにしない

    ◎お金に関することはどのように規定するか
    欠勤社員の賃金は控除できる?/手当についてはどう規定するか

    ◎休職はどのように定めればいいのか
    うつの社員には休職制度で対処する/治る見込みのない社員は休職の対象外/どの状態を「治癒」と考えるか/治癒したら診断書を提出させる/休職を繰り返されないために/休職期間中の取り扱いはどうなる?

    ◎最大の武器 ―― 懲戒・解雇の定め方
    6種類の懲戒処分/懲戒事由は処分ごとに区別しない/どんな行為が懲戒処分にあたるのか/自宅待機という措置もある/無条件に行使できない普通解雇

    第6章・・・社員との間でトラブルが起きたら
    ◎労使トラブルを解決する制度?個別労働紛争解決制度
    「個別労働紛争解決制度」とは/紛争当事者による自主的解決/都道府県労働局長による情報の提供・相談/都道府県労働局長による助言・指導/紛争調整委員会によるあっせん

    ◎労使トラブルを解決する制度?労働審判
    労働審判とはどんな制度か/労働審判の対象となるのは?/労働審判のプロセス?第1回期日までの準備/労働審判のプロセス?第1回期日/労働審判のプロセス?第2回期日?第3回期日/労働審判はどのように決着するか?

    ◎裁判になったときの対処法
    社員が民事訴訟を起こしたら?/財産の流出を防ぐ民事保全

    ◎労働組合への実務対応のポイント 団体交渉になったら
    会社には団体交渉に応じる義務がある/代表者とは誠実に交渉しなければならない/団体交渉の申し入れがあったら……/団体交渉に応じなければならないケースとは/団体交渉の開始にあたっての予備折衝

    ◎労働組合への実務対応のポイント 「組合に便宜を供与せよ」との要求には

    ぜひ、一度読んでみてください。

    「90分でわかる 社長が知らないとヤバい労働法」(あさ出版)
    http://roudou-sos.jp/shachou90/

  • 会社の飲み会への強制参加はセクハラになる!?

    2014年08月01日

    職場でのコミュニケーションの手段のひとつにも「食」と「酒」がありますね。
    定期的に飲み会が開かれる職場もあるでしょう。

    ところが、職場の飲み会が苦手だという人もいます。

    今年、ある情報会社が実施した調査結果によると、「職場で苦痛と感じること」のアンケートで、20代の第3位が「職場の飲み会への参加」(14%)、30代では同率1位(15%)、40代では第2位(14%)だったということです。

    そこで今回は、ある会社で働く女性社員の飲み会についてのお悩みについて解説します。

    Q)会社で何が苦痛かといえば、飲み会への強制参加です。私の職場では定期的に「飲み会」があります。これがつらいのです。私は、あまりお酒は飲めないし、ひとりでいるのも好きなんです。でも飲み会では、おじさん社員たちに「まだ結婚しないのか?」「彼氏とは仲よくやってる?」などと言われます。酔いも回ってくると、さらにエスカレート。太ももを触られたり、肩を抱かれたりして正直気持ち悪いし、頭にきます。上司だったりすると批判もしにくいし……。それが嫌で最近仕事に身が入りません。問題解決にいい方法はないでしょうか? そもそも、会社の飲み会への強制参加はセクハラじゃないんですか?

    A)1986(昭和61)年に施行された、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」、いわゆる「男女雇用機会均等法」にはセクシャルハラスメント(以下、セクハラ)に対する事業主の講ずるべき措置等が定められています。

    「男女雇用機会均等法」
    第11条(職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置)
    1.事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
    ここでいう「性的な言動」とは、性的な内容の発言や行動のことで、以下のようなことが含まれるとされています。

    〇性的な事実関係を尋ねること
    〇性的な内容の情報を意図的に流布すること
    〇性的な冗談やからかい
    〇食事・デートなどへの執拗な誘い
    〇個人的な性的体験談を話すこと
    〇性的な関係を強要すること
    〇必要なく身体に触ること
    〇わいせつな図画(ヌードポスターなど)を配布、掲示すること
    〇強制わいせつ行為、強姦等
    ところで、「セクハラ」の定義とはどのようなものなのでしょうか。

    厚生労働省の「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」によると、セクハラには「対価型」と「環境型」があるとされています。

    【対価型セクシャルハラスメント】
    職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否したことで解雇、降格、減給などの不利益を受けること。

    典型的な例として、以下のようなものが挙げられます。

    ①事務所内において事業主が労働者に対して性的な関係を要求した
    が、拒否されたため、当該労働者を解雇すること。

    ②出張中の車中において上司が労働者の腰、胸等に触ったが、抵抗さ
    れたため、当該労働者について不利益な配置転換をすること。

    ③営業所内において事業主が日頃から労働者に係る性的な事柄につい
    て公然と発言していたが、抗議されたため、当該労働者を降格するこ
    と。

    【環境型セクシャルハラスメント】
    性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に大きな悪影響が生じること。

    典型的な例として、以下のようなものが挙げられます。

    ①事務所内において上司が労働者の腰、胸等に度々触ったため、当該
    労働者が苦痛に感じてその就業意欲が低下していること。

    ②同僚が取引先において労働者に係る性的な内容の情報を意図的かつ
    継続的に流布したため、当該労働者が苦痛に感じて仕事が手につかな
    いこと。

    ③労働者が抗議をしているにもかかわらず、事務所内にヌードポスタ
    ーを掲示しているため、当該労働者が苦痛に感じて業務に専念できな
    いこと。
    どこまでをセクハラというのか?
    男女間、世代間、または個人的価値観の相違などで一概に言えない部分もあり、具体的な線引きが難しいことが多いのですが、以上のことから、質問者の女性の場合、上司などからの結婚や彼氏についての質問や太ももを触られる、肩を抱かれるという事実があり、それによって業務に支障が生じているわけですから、セクハラということになります。

    次に、会社の飲み会を「職場」といえるかという問題に関してはどうでしょうか。

    職場についての定義としては、「事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所を指し、当該労働者が通常就業している場所以外の場所であっても、当該労働者が業務を遂行する場所については、職場に含まれる」としています。

    たとえば、取引先の会社、取引先との打ち合わせのための飲食店、顧客の自宅なども「職場」に該当するとしています。

    また、「勤務時間外の宴会等であっても、実質上職務の延長と考えられるものは職場に該当するが、その判断にあたっては、職務との関連性、参加者、参加が強制的か任意か等を考慮して個別に行う」としています。

    これらから考えると、上記のような強制参加が行われている場合には実質的に職場の延長と判断されると思います。

    セクハラをされた場合に泣き寝入りすると、さらにエスカレートします。そして、精神的な苦痛も増大するのが通常です。

    早いうちに上司や社長、弁護士などに相談することをおすすめします。

    会社側の場合、セクハラがあったことを知った時はただちに対処し、再発防止措置を講じなければ、使用者責任で会社も損害賠償責任を負担します。

    会社と従業員を守るため、日頃からセクハラに関するトップのメッセージや注意喚起、アンケートの実施、セクハラ防止に関する社内教育などを通じてセクハラが起こらないように努力することが大切です。

  • 8割以上の企業が労働基準法違反!あなたの会社は?

    2013年12月24日


    厚生労働省が、若者の使い捨てなどが疑われる、いわゆる「ブラック企業」についての実態調査の報告を公表しました。

    驚くべきことに、企業全体の8割以上から労働基準関係法令の違反が見つかったということです。

    「若者の使い捨てが疑われる企業等への重点監督の実施状況─重点監督を実施した約8割の事業場に法令違反を指摘─」(厚生労働省 2013年12月17日)

    この監督・調査は今年9月に行われたもので、厚生労働省がブラック企業の監督・調査を実施したのは初めてのことです。

    公表された資料によると、離職率の高さや過去の違反歴、電話相談での苦情の情報などをもとに、若者の「使い捨て」が疑われる企業等5,111事業表に対して監督・調査を集中的に実施した結果、82%にあたる4,189事業場で何らかの労働基準関係法令違反が見つかり、是正勧告書を交付したようです。

    具体的には、以下のようになっています。

    〇違法な時間外労働があったもの:2,241事業場(43.8%)
    〇賃金不払残業があったもの:1,221事業場(23.9%)
    〇過重労働による健康障害防止措置が実施されていなかったもの:71事業場(1.4%)

    また、「健康障害防止措置」と「1か月の時間外・休日労働時間が最長の者の実績」についての結果は以下のとおりです。

    〇過重労働による健康障害防止措置が不十分なもの:1,120事業場(21.9%)
    〇労働時間の把握方法が不適正なもの:1,208事業場(23.6%)
    〇1か月の時間外・休日労働時間が80時間超:1,230事業場(24.1%)
    〇うち100時間超:730事業場(14.3%)

    業種別で見ると「製造業」が最も多く、続いて小売・卸売業などの「商業」、「運輸・交通業」の順となっています。

    具体例としては、
    パート社員が月170時間もの残業をしていた事例、
    約1年間、賃金が支払われていなかった事例、
    正社員のおよそ7割を係長職以上の「管理監督者」扱いにして時間外労働の割増賃金を支払わない、いわゆる「名ばかり管理職」にしていた事例などが報告されています。

    残業代の未払いに関する紛争が増加している

    近年、労働者から残業をしたのに残業代が支払われていないと主張され紛争になるケースが増えてきています。

    使用者は、労働者の労働時間をきちんと把握、管理し、支払わなければいけません。そして、賃金をしっかり支払い、あとで紛争が発生することを防止しなければいけません。

    無用な紛争をなくすためにも、残業代に関する法規制をまとめておきましょう。

    法定労働時間とは

    労働基準法では、使用者が労働者を働かせることができる労働時間は、原則として一週間で40時間、かつ一日8時間(法定労働時間)までと定められています。

    ただし、36協定を締結し、労働基準監督署長に届け出れば、労働者が法定労働時間を超えて働いても労働基準法には違反しません。

    36協定とは、労働者の過半数が加入する労働組合があればその労働組合と、そのような労働組合がない場合には、労働者の過半数を代表するものと書面で締結した協定のことをいいます。労働基準法36条に基づくためこう呼ばれています。

    なお、労動者が法定労働時間を超えて働かせた場合には、適用除外を除き労働者に割増賃金を支払わなくてはなりません。適用除外となるのは、管理監督者や、農業・畜産・水産業に従事する者、監視継続労働従事者です。

    割増賃金とは

    法定労働時間外の勤務をさせたときに必要となるのが割増賃金です。

    労働基準法における労働時間とは、使用者が労働者を指揮命令下においている時間です。しかし、就業規則や労働協約に定められている、合意で決めているといった理由だけで、労働者が労働したと主張する時間が、労働時間ではないとはいえません。

    たとえば、労働者が作業するに場合、会社から作業服や保護具等の装着を義務づけられているときは、就業規則等で仕事が始まる前にそれらの準備を済ませておくようにとの定めがあっても、特別な事情がない限りこの着替えの時間も社会通念上相当な長さの時間であれば、労働時間となるのです。

    つまり、始業時間が10時の場合でも、作業に必要な服を着るまでに15分かかるとしたら、労働時間の始期は9時45分となり、この着替えの15分間も労働時間になります。

    また、警備などの仕事で、仮眠時間中に警報・呼出しがあって現場に駆けつけたような場合、仮眠時間中に労働からの解放があったとはいえないので仮眠時間も労働時間となります。

    割増賃金の算定方法

    割増賃金は、法定労働時間を超えた時間に1時間あたりの賃金の1.25をかけます。法定労働時間を超えた時間が深夜労働(午後22時から午前5時)に当たる場合には1.5をかけた金額になります。

    基本給と残業代の区分け

    残業代部分が基本給から明確に区別できるのであれば、残業代を支払っていると認められますが、そのような区別ができない場合には、別途残業代を支払わなければなりません。

    たとえば、残業代を残業した時間ごとに支給せずに手当などで一括して支給する場合には、残業代に当たる部分を他の賃金から明確に区別できるようにして、労働者の合意をとっておく必要があります。

    労働者が勝手に残業していた場合

    残業して仕事を終わらせることがどうしても必要であり、そのことを管理者が当然に認めていた場合には、黙示に残業を命じたとして、使用者は残業代を支払わなくてはなりません。

    無用な紛争を避けるためにも、効率よく働ける労働環境を整え、長時間におよぶ余分な労働が発生しないように、使用者が労働時間をきちんと管理することが、労働者と使用者双方のためにも大切になります。

    その他

    割増賃金の支払いを怠った場合には、未払賃金に加え、同額の付加金が義務づけられることがあるので注意が必要です。付加金は裁判所の命令によって生じるので、裁判所が命じる前に未払賃金に相当する金額を労働者に支給し、使用者の義務違反の状況が消滅した後は、付加金を支払う必要はありません。

    なお、賃金請求権の消滅時効は2年なので、2年以上前の賃金を請求されても支払う必要はありません。
    厚生労働省は今後、是正勧告、指導に応じない企業は労働基準法違反の疑いなどで送検し、企業名を公表するとしています。

    あなたの会社は大丈夫ですか?

    労働者と使用者が、ともに豊かに発展していける人間関係や職場環境を作っていきたいものです。

    突然労働者から残業代請求が来たら、会社はこちらにご相談ください。
    「残業代請求から会社を守る弁護士SOS」
    http://www.bengoshi-sos.com/zangyolp/