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いじめ問題が急増!?法的な対応策はあるのか?


2015年10月29日

いじめの実態について、小中高校での調査結果が文部科学省から発表されました。

今回は、いじめと法律の関係について解説します。

「小学校のいじめ、過去最多12万件 再調査で大幅増」(2015年10月27日 朝日新聞デジタル)

文部科学省の発表によると、2014年度のいじめについて小中高校全体で把握されたのは、前年度より2254件増えて18万8057件。
そのうち、小学校では過去最多の12万2721件だったということです。

これは、6月までにいったん取りまとめられていたものを、7月に岩手県矢巾町で起きた中学2年生の男子生徒のいじめを苦にした自殺を受けて、やり直し再調査をしたもの。
最初の提出時より全体で約3万件増えたということです。

おもな概要をまとめます。

・2010年度と比べると、小5で2・7倍、小6で2・4倍に増加したのに対し、小1が5・8倍、小2は4・3倍となり、小学校低学年の増加が目立った。

・再調査前に比べ、認知件数が大きく増えたのは、福島県(4・3倍)、福岡県(2・7倍)、岩手県(2・1倍)。

・中学校では5万2969件で、前年度より2279件減少。

・心身に重大な被害が生じる「重大事態」は、小中高校全体で前年度の179件から156件に減少。

・スマホやインターネットによるいじめの件数は7898件で前年度に比べ890件減少。
しかし、LINE(ライン)など特定のメンバー以外はやりとりが公開されないアプリもあり、実態が把握しにくい。

・全学校の42・4%が、いじめは0件としているが、調査が不十分な可能性がある。
【過去に起きた“いじめ”問題の裁判例を解説】
いじめに関連した事件が後を絶ちません。

2011年に滋賀県大津市で起きた事件を憶えている人も多いでしょう。
当時、中学2年生だった男子生徒が、いじめを苦にして自宅で自殺。
事件後の学校と教育委員会の隠蔽体質が発覚し、大きく報道されたものでした。

直後の2012年度調査では、いじめの認知件数は前年度比で3倍近くに増え、約19万8000件と過去最多だったようです。

2014年度の調査結果と比較すると、認知件数は約1万件減少してはいます。
しかし、ここ数年、いじめの件数は大きくは減少していないというのが実情です。

件数は増減しても、けっしてなくならない、いじめ問題。

いじめは、親や教師が見ていない水面下で行われることが多いことを考えれば、公表された件数は、まだまだ氷山の一角と言わざるを得ないでしょう。

では、こうしたいじめ問題に対して被害者側は、どのように対応したらいいのでしょうか?

過去にあった、いじめ事件の判例を見てみます。

「三室小学校放課後いじめ事件」
(浦和地判昭和60年4月22日 判例時報1159号68頁 判例タイムズ552号126頁)

「概要」
昭和54年1月に転校してきた女子児童A(当時3年生)が、直後から同じ組の男子児童から殴る、蹴る、つねるなどの暴行を受け始めた。
4年生に進級すると、いじめの頻度が増したため、Aの母は、担任の女性教諭に相談し、連絡帳にいじめの事実を記載し提出。いじめの事実を認識した担当教諭は、ときに暴力を振るった男子児童らを教壇の前に呼び出し注意をしたり、反省会を開いて軽く戒めたり、児童らに話し合いをさせるなどしたが、暴力はおさまらなかった。
事件が起きたのは同年11月。廊下で立ち話をしていた女子児童が、教室から出てきた男子児童Bから足元に滑り込みをかけられ転倒。その後、男子児童Cからも足元に滑り込みをかけられ転倒。その際、廊下面で顔面を強打して前歯2本を折る傷害を負った。
そこで、被害者側は浦和市に対して、担任教諭が事態を放置し、何らの教育的措置もとらなかったとして、国家賠償法第1条に基づき提訴。
男子児童BとCの両親に対しては、子供の監督義務を怠ったとして、責任無能力者の監督義務者の責任を民法第714条1項に基づき提訴。
治療費、慰謝料等約644万円の損害賠償を請求した。

「判決」
・浦和市の責任については、「小学校の校長ないし教諭が、学校教育の場において児童の生命、身体等の安全について万全を期す義務を負うのは、学校教育法等に照らして明らか」、「児童間の事故により、その生命、身体等が害されるという事態の発生を未然に防止するために、万全の措置を講ずべき義務を負うべき」として、小学校の校長と担任教諭の義務について判示。

・本件事案については、「担任教諭は事故が発生するかなり以前から、いじめの実態を認識し、被害者の母から善処を求められていたにもかかわらず、抜本的、かつ徹底した対策を講じなかった」として、担任教諭の過失と学校側が監督義務を怠ったことを認め、国家賠償法第1条に基づく賠償責任として、約273万円の支払いを命じた。

・加害者Cの両親については、「他人の生命、身体に対し不法な侵害を加えることのないよう教育を行い、人格の成熟を図る義務を負う」、「事故により生じた損害を賠償すべき責任を負担するべきで、保護監督義務を尽くしたとは到底いえない」として、民法第714条1項に基づく責任を認めた。

・一方、加害者Bの両親については、BがCに先行して滑り込みをかけたことを認めたものの、Bの行為と被害者が負った傷害との間に因果関係を認めることはできないとして、共同不法行為責任を否定した。
【いじめに対する法的な対処法とは?】
前述のように、いじめの被害にあい、子供が傷害を負った場合は、民事において損害賠償請求することができます。

法的には、学校は親に代わって子供を監督する立場であるため、「代理監督者責任の義務」があります。
教職員の故意または過失によって生じた事故では、その使用者として学校が損害賠償義務を負うことになります。

その場合、公立校であれば「国家賠償法」、私立校ならば「民法715条」が適用されます。
また、損害賠償請求に関しては第709条が適用されます。

詳しい解説はこちら⇒「学校での柔道事故で8150万賠償命令」
https://taniharamakoto.com/archives/2031

次に、加害者が未成年者の場合、物事の是非善悪を理解する能力がある場合には、その未成年者本人が賠償義務を負い、その能力がない場合には親などが責任を負う、とされています。

第714条(責任無能力者の監督義務者等の責任)
1.前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

詳しい解説はこちら⇒「子供が起こした事故は誰の責任? 最高裁判決」
https://taniharamakoto.com/archives/1929
保護者としては、すべての学校で、いじめがあると考えたほうがいいかもしれません。

いじめ問題は初期段階で組織的に対応することが重要です。
子供をいじめから救うために、学校と教師、親などがどう対処するかが問われています。

なお、学校へ相談したり、訴えても、なかなか解決に至らないような場合は、弁護士などの専門家に相談し、法的な対応を検討することも大切になってきます。

ご相談はこちらから⇒http://www.bengoshi-sos.com/about/0903/

いじめアンケート問題の判決で学校や行政の隠蔽体質に痛烈な一撃


2014年1月25日

2011年10月、滋賀県大津市でいじめを受けた男子生徒(当時13歳)が自殺をした問題はマスメディアで大きく取り上げられ、社会に大きな波紋を投げかけました。

事件後、学校は自殺の原因究明のために全校生徒を対象にした「いじめアンケート」を行ったようです。

その際、中学校側からアンケートの内容を口外しないとの確約書を取られ精神的苦痛を受けたとして、男子生徒の父親(48)が市に対して100万円の損害賠償を求めていた訴訟の判決が先日、大津地裁でありました。

報道によると、判決が出たのは1月14日。

裁判長は、「原因調査のためアンケートを利用しようとした親の心情は理解できる。一切の利用を禁止した確約書は違法で、また、個人名以外まで不開示とした処置も不適切」として、父親の訴えを認め、市に対して30万円の支払いを命じました。

父親は、生徒が自殺した約2週間後、学校から全校アンケート結果を受け取る際、「個人情報が含まれ、部外秘にする」との確約書の提出を求められ、さらには、情報公開請求をして開示された資料も大半が黒塗りされ、活用できなかったとしています。

市は「適切な情報開示ができなかった結果、遺族の心情を損なった」として遺族に謝罪しているということで、市長は「遺族にあらためておわびしたい」と述べ、控訴しないことを表明したようです。

生徒の父親は、「いじめに関するアンケートの開示を後押しする画期的な判決」、「自殺原因の調査を阻む確約書は違法だという司法判断は、(遺族の)『知る権利』確立にとって大きな第一歩」と述べ、判決の意義を強調。

また、「全国の自治体や教育委員会はプライバシーを理由に非公開の範囲を拡大し、いじめの調査を阻んできた」、「司法判断を重く受け止め、今後はいじめアンケートの積極的な開示を進めてもらいたい」とも語ったようです。

真偽は確認できておりませんが、この大津市の事件後、複数の同級生が行った、さまざまな事実が報道されました。

〇体育館で男子生徒の手足を縛り、口を粘着テープで塞いで虐待を行った。
〇男子生徒の自宅から貴金属や財布を盗んだ。
〇自殺後も男子生徒の顔写真に穴を開けたり、落書きをしていた、など。

また、学校と教育委員会の隠蔽体質が問題視されました。

〇クラスの担任は、自殺した生徒から相談を受けたり、暴力によるいじめの報告を受けていたにも関わらず、適切な対応を取らなかった。
〇担任は、自殺後の保護者説明会に出席せず、遺族への謝罪もないまま直後に休職してしまった。
〇学校と教育委員会は、いじめには気づかなかった、知らなかったと主張し続け、ケンカだと認識していたと説明。当初、自殺の原因はいじめではなく家庭環境が問題と説明していた、など。

これまでも、子供が子供に対して行った暴力行為は、大人たちが「いじめ」や「ケンカ」で済まそうとしてきました。

しかし、これが大人の場合であればどうでしょうか?

いじめられた子が怪我をした場合、被害者が訴え出れば「傷害罪」になります。

逮捕され前科がつくかもしれないし、民事で争われれば損害賠償請求の対象になります。これは当然、犯罪です。

それを、「いじめ」の一言で済ましてしまった瞬間、犯罪ではないかのような気がしてきます。

教育の問題であり、学校内で解決すべき問題のように思えてきます。

隠蔽し、見て見ぬふりをして済ましてしまおうとしてきたのです。

確かに、あまりに直接的な言葉や表現を控えることは、被害者の精神的苦痛に配慮するという面もあるでしょう。

しかし、罪状をぼやかし、婉曲表現することで加害者や親に犯罪という自覚がなくなってしまう恐れがあるのも事実でしょう。

また、マスメディアのこうした報道を読む者、聴く者も、犯罪という印象がなくなってしまう恐れがあります。

司法、教育、報道など立場は違っても、それぞれの分野で今後検討していくべき大きな問題を、この事件は突きつけているのではないでしょうか。

報道によると、判決の1週間後の1月22日、大津市は「いじめ防止対策推進法」(2013年9月施行)に基づく、いじめ防止基本方針の素案をまとめたようです。

市関係者によると、素案には、男子生徒が自殺した際、遺族への学校や市教委の説明が不十分だった反省から、「学校からの情報提供」を義務付けたということです。

素案には、
1.児童や生徒の課題を記し、進級時に教諭が引き継ぐ「子どもカルテ」を導入する、
2.インターネット上のいじめに対応するため、市に有識者会議を設けて対策を検討する、
3.各学校がネットの専門家を招き、スマートフォンの無料通話アプリの危険性を子どもに指導する、
などが盛り込まれたといいます。

今回の判決を機に、学校や自治体による「いじめ」問題に対する取り組み、そして、教育現場の情報開示がどのように進んでいくのか。

また、被害者や加害者や関係者、さらには多くの一般市民の犯罪への自覚がどう変わっていくのか、今後の動きを注意深く見守っていきたいと思います。

「いじめ」の「罪と罰」


2013年12月29日

タレントのビートたけしさんの新刊『ヒンシュクの達人』(小学館新書)の中に「犯罪」や「表現」についての持論が書かれている箇所があります。一部引用してみます。

<運動部のシゴキに限らず、「いじめ」って言葉を聞かない日はないけど、この言葉の響きが本質を見誤らせてるんだよな。弱い同級生を殴ったとか、恐喝してカネを奪って、ついには自殺に追い込んじまったなんて、これはもう「いじめ」じゃなくて「犯罪」だろうよ。「暴行罪」「脅迫罪」「恐喝罪」と、ホントの罪状で呼んでやらないと>

<これは「犯罪だ」ってことをガキの足りない頭でもわかるようにしてやんないと、また同じことが起こっちまうぜ>

たけしさんらしい過激な表現もありますが、私も法律家、表現者としてこれは一理あると感じる部分もあります。

小学生が同級生を殴って怪我をさせた場合を考えてみましょう。

「子供の喧嘩」「いじめ」で済まされる場合も多いでしょう。

しかし、大人だったら、どうでしょうか?

被害者が警察に駆け込めば「傷害罪」です。逮捕され、前科がつくかもしれません。

それを「いじめ」とひとくくりにしてしまった瞬間、犯罪臭が消え去り、学校内で解決すべき問題となってしまいます。

会社の飲み会で、上司が部下の女性に抱きついたり、キスしたりしたら、「セクハラ」と言われます。

しかし、道端でこれをやったら、「強制わいせつ罪」になりかねません。

いずれも女性の意思を無視して無理矢理していることに変わりありません。

「セクハラ」と言った途端、やはり犯罪臭がなくなってしまい、社内の問題となってしまいます。

「パワハラ」で、殴るなどは「暴行罪」や「傷害罪」。精神的に追い詰めて精神障害を起こさせることは、場合によっては「傷害罪」になります。

DV(ドメスティックバイオレンス)もそう。

家庭内の問題ではなく、「暴行罪」「傷害罪」です。実際、逮捕事例もニュースになっています。

報道や表現する側としては、あるネーミングを使うことで、刺激的な表現を回避して、包括して意味を伝えることができるメリットがあります。

その方が読者や視聴者の興味をひきやすい、というメリットもあるでしょう。

もちろん、被行為者の精神的苦痛への配慮という面もありますが、罪状をぼやかし、場合によっては婉曲表現することで行為者に犯罪という自覚がなくなってしまう恐れもあります。

また、読む者、聴く者も、犯罪という印象がなくなってしまう恐れがあります。

ネーミングを使うことは便利ですが、法律の一線の超えた場合には、正式な犯罪名で呼び、行為者、被害者、周りの人の自覚を促すことも大切ではないか、と思います。

そのような小さなことも法を日本の社会の隅々の浸透させる一助となるのではないか、と思います。

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