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税理士の妻の青色事業専従者としての給与が否認された裁判例
2019年02月04日
今回は、税理士が、妻を青色事業専従者として、給与を事業所得の金額の計算上必要経費に算入して確定申告としたところ、「労務の対価として相当であると認められる金額を超える」として、更正処分がされた事例をご紹介します。
鳥取地裁平成24年6月22日判決です。
(事案)
税理士は、次のとおり給与を支払いました。
【妻に支払われた給与】
平成16年 1240万円
平成17年 1280万円
平成18年 1280万円【他の使用人の平均給与額】
平成16年 357万9167円
平成17年 384万2250円
平成18年 360万8375円【処分行政庁が抽出した類似業種青色事業者
専従者給与】平成16年 285万4490円~663万円
平成17年 296万4160円~663万円
平成18年 301万7320円~663万円(裁判所の判断)
裁判所は、労務の対価として相当かどうかは、次の基準で判断する、としました。
●その給与の金額でその労務に従事した期間
●労務の性質
●その提供の程度
●その事業に従事する他の使用人が支払を受ける給与の状況
●その事業と同種の事業でその規模が類似するものに従事する者が支払いを受ける給与の状況
●その事業の種類及び規模並びにその収益の状況
(あてはめ)
本件では・・・
妻は、長年の経験から専門性を発揮し、他の使用人の指導的立場にあり、長時間労働をするなど、他の使用人の給与とは異なってしかるべきとされました。
しかし、税理士事務所の所得金額とほぼ同額が妻に給与として支払われていた、という特殊事情がありました。
そこで、裁判所は、
「税理士事務所は、税理士法に基づき、税理士の名称および資格において経営するものであり、使用人は、最終的には税理士の監督に服することを前提にしている。」
→専従者給与の金額と税理士の事業所得の金額がほぼ等しいのは不相当
として、必要経費として認めませんでした。
これで終わりではありません。
その後、裁判所は、いくらが適正額か、まで判断します。
●関与先の会計業務の担当件数は、税理士5分の3、妻5分の2
●妻が特に業務が困難な医療法人等の会計業務を一人で行ってきた
以上の理由から、
【税理士の事業所得金額と専従者給与額の割
合は、3対2が合理性を有する。】個人で税理士事務所を開業されている税理士で、配偶者を青色事業専従者として、その給与を必要経費に算入している方がいると思います。
その場合、給与の金額が労務の対価として相当かどうか、検討した上で支払をしないと、税務調査により否認される可能性がありますので、ご注意いただければと思います。
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https://myhoumu.jp/zeiprotect/税理士損害賠償防御は、こちらから。
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重加算税の説明義務違反で税理士損害賠償
2019年02月03日
今回は、所得税確定申告において、税理士が説明助言義務違反を理由に損害賠償請求された事例をご紹介します。
前橋地裁平成14年12月6日判決(TAINS Z999-0062)です。
請求額は、合計2381万3700円。
●事案の概要
・依頼者らは、自分で所得税の確定申告をしてきたが、所得が増加してきたため、平成6年度分から税理士に依頼することとした。
・税理士(職員)は、依頼者らに対し、確定申告書を作成するために必要な書類として、現金出納帳、預金通帳、請求書、領収書などの原始記録を提示するよう求めたが、依頼者らは、これを拒んだ。
・依頼者らは、税理士に対し、依頼者らが作成した平成5年度の申告書の控え、生命保険料や損害保険料の控除証明書のみを提示して、同6年度についても同5年度と同様に申告するよう要請した。
・税理士は、提示された上記書類のみでは事業の経費が不明なため確定申告書の経費欄を記載することができないことから、経費を推計で算出して経費の合計額のみを記載し経費欄の具体的項目の金額を記載しない方法による申告をするよう提案したが、依頼者らはこれも拒んだ。
・そこで、税理士は、それ以上原始資料の提示を求めることなどを断念して、依頼者らの指示通り申告した。
・後日、国税庁は、上記申告には脱税があるとして強制調査し、重加算税その他追加納税が発生した。
・そこで、依頼者らは、税理士から重加算税等の説明を受けていなかったとして、説明助言違反を理由と損害賠償を請求した。
●判決
・税理士は、依頼者の希望や要請が適正でないときには、依頼者の希望にそのまま従うのではなく、税務に関する専門家としての立場から、依頼者に対し不適正の理由を説明し、法令に適合した申告となるよう適切な助言や指導をするとともに、重加算税などの賦課決定を招く危険性があることを十分に理解させ、依頼者が法令の不知などによって損害を被ることのないように配慮する義務があるというべきである。
・本件では、税理士において、依頼者らが売上げや経費を実際の金額と大幅に異なる金額として申告し不正に課税を免れようとしている可能性があることを容易に認識することができた。
・依頼者の指示どおりの申告をした場合に、依頼者らが将来脱税を指摘されて重加算税や延滞税などを課せられる危険があることを何ら説明しないまま、依頼者の指示どおりに所得税等確定申告手続を行ったことは、税務に関する専門家である税理士としての立場から、依頼者に対し不適正の理由を説明し、法令に適合した申告となるよう適切な助言や指導をするとともに、重加算税などの賦課決定を招く危険性があることを十分に理解させ、依頼者が法令の不知などによって損害を被ることのないように配慮する義務に違反しており、税理士の債務不履行になる。
・但し、依頼者らの責任は重く、過失相殺として9割を減ずる。
賠償額は、238万1370円。
以上です。
このように、税理士が何度も依頼者に原始資料を提示するよう求め、依頼者がこれを拒んだ場合(つまり、責任が依頼者にある場合)であっても、将来依頼者に生ずる不利益を説明しておかなければ、税理士に説明助言義務違反が発生します。
しかし、このような場合、往々にして「言った、言わない」の議論になりますので、説明した旨を書面、メール等の証拠に残しておくようにしましょう
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