税法 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜 - Part 4
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
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  • 税務調査での和解は許されない

    2021年08月19日

    今回は、税務調査での妥協についてです。

    税務調査で、見解の対立が生じ、租税職員との間で、交渉が行われます。

    その結果、「ここを認めて修正申告してくれれば、そっちは見逃そう」というように、双方が妥協する場面があります。

    これは、一見、双方の譲歩による和解が成立しているようにも見えます。

    しかし、課税の場面では和解は許されません。

    民事訴訟では和解が多いですが、税務訴訟では和解は許されず、判決になります。

    それは、課税の場面では、「合法性の原則」があるためです。

    合法性の原則は、租税法は強行法規であるから、課税要件が充足されている限り、租税行政庁には租税の減免の自由はなく、また租税を徴収しない自由もなく、法律で定められたとおりの税額を徴収しなければならない、という原則です。

    したがって、税務調査の場面でも、課税要件が充足されている限り、「ここは見逃そう」ということは許されないわけです。

    では、なぜ、税務調査の場面で、和解のようなことが行われているのか、というと、理論的には、「課税要件を充足していないと認定した」ということになります。

    合法性の原則により、課税要件が充足している限り、課税を行わなければならないので、課税要件が充足していないと判断する必要がある、ということになります。

    税務調査の立ち会いを行っていると、課税庁と和解をしているように感じることもあると思いますが、理屈ではどうなるのか、について考えてみました。

    「税理士を守る会」は、こちら
    https://myhoumu.jp/zeiprotect/new/

  • 審査請求を活用しよう

    2021年08月10日

    今回は、もっと国税不服審判所に対する審査請求を利用した方がいいのではないか、ということです。

    税務調査の結果、修正申告の勧奨に応じない場合には、更正がされる場合があります。

    この場合、再調査の請求あるいは国税不服審判所に対する審査請求ができます。

    どうせダメだろう、と思うかもしれませんので、今回は統計をお知らせします。

    まずは令和元年度。

    審査請求の処理件数は、2,846件です。

    そのうち、全部又は一部が認容(納税者が主張が認められた)件数は、375件。

    つまり、13.2%です。

    そして、令和2年度。

    審査請求の処理件数は、2.328件です。

    そのうち、全部又は一部が認容(納税者が主張が認められた)件数は、233件。

    つまり、10%です。

    これが高いと感じるか、低いと感じるかは、人それぞれです。

    しかし、すでに更正がされており、納税を済ませているはずですので、審査請求をすることに、課税上の不利益はありません(税理士又は弁護士報酬の出費はありますが)。

    それで、10分の1の確率で請求が認められる、というのであれば、もっと審査請求を活用してもよいのではないか、と思います。

    特に、私の感覚では、重加算税について、「隠ぺい又は仮装」の要件を満たしていない賦課決定がされていることが多いです。

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  • 法人が不法行為を受けた時の収益計上時期

    2021年07月30日

    今回は、法人が詐欺など不法行為によって損失を受けた場合の課税関係について解説します。

    法人が、詐欺など不法行為によって損失を受けた時は、「当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの(法人税法22条3項3号)に該当し、損失が発生した年度の損金に計上すべき]
    ものとされています(最高裁昭和43年10月17日判決)。

    そして、不法行為ということになると、損失と同時に、民法により、詐欺をした者に対する損害賠償請求権が発生しています。

    これは、債権を取得した、ということになりますので、益金に計上することになります。

    では、いつ計上すべきなのか、についてですが、法人税基本通達2-1-43があります。

    ===================

    他の者から支払を受ける損害賠償金(債務の履行遅滞による損害金を含む。以下2-1-43において同じ。)の額は、その支払を受けるべきことが確定した日の属する事業年度の益金の額に算入するのであるが、法人がその損害賠償金の額について実際に支払を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入している場合には、これを認める。

    ===================

    この通達により

    ・原則として損金算入と同時に益金算入

    ・実際に支払を受けた事業年度に益金算入も認める

    となります。

    あとは、貸倒損失の要件該当性を検討することになります。

    「回収可能性」の論点です。

    そして、注意を要するのは、本通達の適用範囲は、「他の者」です。

    「他の者」には、法人の役員または従業員は含まれない、と解されています(法人税基本通達逐条解説257頁)。

    では、法人の役員または従業員の不法行為により損害を受けた場合には、どの事業年度に益金算入するのか。

    これについては、裁判例もあり、長くなるので、後日、動画で解説したいとおもいます。

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  • 最終報酬月額0円の場合、役員退職金をいくらにするか?

    2021年06月18日

    今回は、「税理士を守る会」の会員の先生から寄せられた質問をご紹介します。

    質疑内容は、一般化できるよう改変しています。

    【質問】

    これまで役員報酬がないまま事業を続けてきた法人の社長が退職するにあたり役員退職金を出そうとしています。

    社長は他の他の収入を得ているので、特に役員報酬が必要なかったためです。

    最終報酬月額が0円の場合は、どのように考えればよいでしょうか。

    また、後日否認された場合の税賠も心配です。

    【回答】

    役員退職金については、裁判所は、原則として「功績倍率法」によっていることはご承知のことと思います。

    功績倍率法が、最終報酬月額を基準にしているのは、

    ・役員の最終報酬月額は、特別な場合を除いて役員の在職期間中における最高水準を示す

    ・役員の在職期間中における会社に対する功績を最もよく反映している

    ことを理由にしています(東京高裁平成元年1月23日判決他)。

    しかし、会社によっては、上記が当てはまらない場合があり、その場合には、功績倍率法を採用することが適当でない、という場合もあります。

    そのような場合には、「1年当たり平均額法」を採用する裁判例もあります(札幌地判昭和58年5月27日など)。

    裁決例でも、「最終報酬月額が役員の在職期間を通じての会社に対する貢献を適正に反映したものでないなどの特段の事情があり低額であるときは、最終報酬月額を基礎とする功績倍率法により適正退職給与の額を算定する方法は妥当でなく、最終報酬月額を基礎としない1年当たり平均額法により算定する方法がより合理的である。」(昭和61年9月1日裁決抜粋)とされています。

    ところが、この「1年当たり平均額法」も、同業類似法人の退職金を元に算出するので、納税者側では、正確に計算することができません。

    そこで、裁判例の中には、・・・・

    【税理士を守る会】の会員の先生は、全文を読んで解決することができます。

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  • 虚偽表示を理由に更正の請求を認めなかった事例

    2021年06月03日

    今回は、更正の請求についてです。

    それほど頻繁に活用するものではないと思いますので、23条1項と2項の関係などを研究する機会も少ないと思います。

    今回は、最高裁平成15年4月25日判決(TAINS Z253-9333)を取り上げて、この点について考えてみたいと思います。

    (事案)

    亡父の相続に関して遺産分割協議に基づき相続税の申告をした後、他の相続人から遺産分割協議無効確認の訴えを提起され、同訴訟において、上記遺産分割協議が通謀虚偽表示により無効である旨の判決が確定したのを受けて、国税通則法23条2項1号に基づき更正の請求をしたところ、更正をすべき理由がない旨の処分を受けた事案です。

    ====================
    国税通則法23条2項1号

    納税申告書を提出した者又は第二十五条(決定)の規定による決定・・・を受けた者は、次の各号のいずれかに該当する場合・・・には、同項の規定にかかわらず、当該各号に定める期間において、その該当することを理由として同項の規定による更正の請求・・・をすることができる。

    一 その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となつた事実に関する訴えについての判決(判決と同一の効力を有する和解その他の行為を含む。)により、その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したとき その確定した日の翌日から起算して二月以内

    ====================

    ということで、条文の文言上は、要件に当てはまる事案です。

    (裁判所の判断)

    納税者敗訴です。

    「上告人は、自らの主導の下に、通謀虚偽表示により本件遺産分割協議が成立した外形を作出し、これに基づいて本件申告を行った後、本件遺産分割協議の無効を確認する判決が確定したとして更正の請求をしたというのである。そうすると、上告人が、法23条1項所定の期間内に更正の請求をしなかったことにつきやむを得ない理由があるとはいえないから、同条2項1号により更正の請求をすることは許されないと解するのが相当である。したがって、本件処分は適法」

    ====================

    文言上要件に当てはまるにもかかわらず、認めなかった理由が詳しく書いてありませんので、以下、解説します。

    国税通則法23条1項は、納税義務者が課税標準等又は税額等の計算が法律の規定に従っていなかったこと又は計算に誤りがあったことにより、税額を過大に申告した場合等に法定申告期限から5年以内に限り更正をすることができるようにした規定です。

    これに対し、2項は、後発的に課税要件事実に変動が生じた場合に、確定した租税法律関係を変動した状況に適合させるのが趣旨です。

    国税通則法施行令を見ていただくと、全て申告時には予知しえなかった事態又はやむを得ない事由がその後において生じた場合の救済規定です。

    ということは、本件のように、自ら通謀虚偽表示をしていたような場合には、本来であれば、1項により更正の請求をすべき場合であり、更正の請求期間内に更正がやむを得なかった納税者を救済する趣旨の規定である2項の適用を予定していない、ということになります。

    そのようなことから、本件判例では、2項の適用が認められなかったと考えられます。

    このように租税法では、文理解釈が原則とされるものと、法律の趣旨に反する適用は排除される傾向にありますので、ご注意いただきたいと思います。

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  • 名義借りを戻して贈与税課税

    2021年05月21日

    名義借りの土地を真実の所有者名義に戻した時に贈与税を課税された事案です。

    東京地裁昭和43年10月5日判決(TAINS Z053-2256)です。

    (事案)

    原告Xと妻Aは夫婦であったところ、昭和23年9月13日、Xが土地の譲渡を受けるに際し、当時原告が電気工事請負業の債務が多額であったことから、差し押さえを免れる目的で、妻A名義で所有権移転登記をした。

    その後、昭和36年5月4日、妻A名義の土地を原告を買主とし、売買を原因とする所有権移転登記がされた。

    課税庁は、昭和38年11月30日、妻Aから原告に対し、土地を贈与したとして、贈与税及び加算税を賦課した。

    原告は、課税処分の無効確認訴訟を提起した。

    (裁判所の判断)

    本件土地は昭和23年9月13日以降今日に至るまで原告の所有であり、ただ登記簿上でAの名義を使用していたにすぎないこと、従つて昭和36年5月4日の登記による本件所有権の移転は、実質的な所有者への名義の回復をしたものに他ならず、なんら実体上の権利の変動を伴つてはいないものであるということができる。してみれば、本件課税処分は、権利の変動がないのに拘らず、これありと誤認してなされたものであり、右誤認がないとすれば、本件処分はなされなかつた関係に立つものであるから、右の誤認は重大なかしに該当するといわなければならない。

    行政処分の要件の存在を肯定する処分庁の認定にかしがある場合、その処分が無効であるとするためには、そのかしが重大、かつ客観的に明白でなければならず、行政処分のかしが、客観的に明白であるということは、処分関係人の知、不知とは無関係に、かつ、権限ある国家機関の判定をまつまでもなく、何人の判断によつても、ほぼ同一の結論に到達しうる程度に明らかであることを指すものと解するのが相当である。そして、この見解によると、本件誤認のかしが明白であるか否かは、被告側において、より詳細な調査を行なつたとしたならば、判明したであろうような事情(それが被告側の怠慢によつて明らかとされなかつた場合であると否とを問わず)をも基礎として判断すべきではなく、権限ある国家機関の判断をまつまでもなく、何人が認定してもほぼ同一の結論に到達しうる程度に明らかな処分当時の事情にもとづき判断すべきこととなるものと解すべきである。

    その上で、本件かしは、「明白ではない」として、納税者敗訴判決をしました。

    控訴棄却、上告棄却です。

    ===================

    まず、税務判例を読み慣れた先生には、違和感があると思いますが、それは、おそらく、本件が処分取消訴訟ではなく、課税処分の無効確認訴訟であるからだと推測します。

    処分取消訴訟であれば、処分に重大なかしがあれば、取消の結論になると考えられるためです。

    出訴期間を経過していたのか、何らかの事情があったと推測します。

    本件では、土地の所有名義を真実の所有者に回復した事案ですが、このような行為をする際には、課税関係について、とても悩みます。

    諸事情の総合考慮による事実認定なので、裁判所がどう事実認定をするか正解に判断できず、正解をを導き出すのが困難であるためです。

    そこで、個別通達に該当するかどうか、慎重に検討することになります。

    また、その上で、将来の税務調査による否認の可能性があること、その場合、課税処分の不利益があること、その場合でも税理士に対して損害賠償をしないこと(債務免除)の一筆をもらっておくことが大切です。

    個別通達のURLを記載しておきます。

    名義変更等が行われた後にその取消し等があった場合の贈与税の取扱いについて(直審(資)22 直資 68 昭和39年5月23日)

    https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sozoku/640523/01.htm

    「名義変更等が行われた後にその取消し等があった場合の贈与税の取扱いについて」通達の運用について(直審(資)34 直資 103 昭和39年7月4日)

    https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sozoku/640704/01.htm

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  • 決算承認を経ない法人税申告は無効?

    2021年02月19日

    今回は、「税理士を守る会」での質疑応答のご紹介です。

    (内容を少し変えています)

    (質問)

    法人税法74条1項は、「内国法人は、各事業年度終了の日の翌日から二月以内に、税務署長に対し、確定した決算に基づき次に掲げる事項を記載した申告書を提出しなければならない。」とされており、「確定した決算」が必要とされています。

    しかし、法人顧客からの税務申告依頼の際、株主総会議事録がないケースや、株主総会招集通知を発していないケースも多々あると思われます。

    このような場合に、法人税の申告が無効となることはありますか?

    何か念書のようなものをもらうには、どうしたらよいですか?

    (回答)

    定時株主総会による決算承認を受けた事実があるかどうかは、株主総会に出席しなければ確認ができません。

    また株主総会議事録を作成していない中小企業も多いと推測されます。

    それでも法人税の確定申告をしなければならないので、論点としては、

    ・定時株主総会による決算承認を得ない法人税確定申告の有効性

    ということになります。

    これが無効ということになると、日本中に無効な法人税申告が溢れかえることになるので、裁判所としても、有効にするロジックを構築してます。

    過去の裁判例は、・・・

    【税理士を守る会】の会員の先生は、全文を読むことができます。

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  • 遺留分侵害額請求権と小規模宅地の特例

    2020年12月04日

    税理士向け記事です。

    国税庁より、遺留分侵害額請求にかかる質疑応答事例が公開されましたので、ご紹介します。

    すでに知っている先生は、読み飛ばしていただければと思います。

    【タイトル】遺留分侵害額の請求に伴い取得した宅地に係る小規模宅地等の特例の適用の可否(令和元年7月1日以後に開始した相続)

    【照会要旨】
    被相続人甲(令和元年8月1日相続開始)の相続人は、長男乙と長女丙の2名です。乙は甲の遺産のうちA宅地(特定居住用宅地等)及びB宅地(特定事業用宅地等)を遺贈により取得し、相続税の申告に当たってこれらの宅地について小規模宅地等の特例を適用して期限内に申告しました(小規模宅地等の特例の適用要件はすべて満たしています。)。

    その後、丙から遺留分侵害額の請求がなされ、家庭裁判所の調停の結果、乙は丙に対し遺留分侵害額に相当する金銭を支払うこととなりましたが、乙はこれに代えてB宅地の所有権を丙に移転させました(移転は相続税の申告期限後に行われました。)。
    丙は修正申告の際にB宅地について小規模宅地等の特例の適用を受けることができますか。

    【国税庁による回答は、ウェブサイトで】

    https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/joto/01/05.htm

    ====================

    上記について、法的な解説をします。

    答えとしては、

    ・乙には譲渡所得税

    ・丙は小規模宅地の特例は不適用

    となります。

    原理は、同じです。

    2020年7月1日より前に開始された相続では、不動産について、遺留分減殺請求権が行使された時、不動産は物権共有となっていました。

    しかし、相続法改正により、遺留分侵害額請求は、【金銭請求】となりました。

    したがって、たとえば、不動産について、遺留分侵害額請求権を行使した場合には、物権共有ではなく、「金●●円の請求権」となります。

    そうすると、乙から見ると、「金●●円の債務」となるわけで、この債務を不動産の所有権を丙に移転することにより、債務を消滅させる、ということになるので、法律上、「代物弁済」となります。

    ということは、乙は、その所有する不動産を丙に譲渡して債務を消滅させた、ということになるので、通常の不動産譲渡と同様に、譲渡所得税の課税問題となります。

    そして、丙は、金銭請求権の弁済に代えて不動産の所有権に移転を受けた、ということになるため、「相続又は遺贈により取得した」ことにはなりません。

    したがって、小規模宅地の特例の要件を満たさない、という結論になります。

    法律上の性質を知っていれば類似事例も全て解決できると思いますが、結論だけ憶えていると、基本的なことでも「あれ?」となることもあるかと思いますので、念のための解説でした。

  • 質問応答記録書に署名押印しないと?

    2020年11月18日

    さて、今回は、「質問応答記録書」についてです。

    税務調査の過程で、質問応答記録書が作成さ

    れることがあります。

    質問応答記録書は、租税職員が質問し、納税

    義務者等が回答した際に、その内容を記録し、

    記録後に回答者に対して署名押印を求めるものです。

    従前は、租税職員が質問し、納税義務者等が

    回答した内容を証拠に残す際には、納税義務

    者等の回答内容を書面に記載して、申述書、

    確認書、供述書、嘆願書などの表題の書面を

    作成して、納税義務者等の署名押印を得るこ

    とが多かったと思います。

    この扱いが、平成25年6月から、質問応答

    録取書の作成に改められたものです。

    関連文書としては、

    ●平成25年6月の国税庁課税総括課作成の

    「質問応答記録書作成の手引」

    ●平成29年6月30日課税総括課情報 

    「質問応答記録書作成の手引について(情報)」

    があります。 

    質問応答記録書は、

    「事案によっては、この質問応答記録書は、

    課税処分のみならず、これに関わる不服申立

    て等においても証拠資料として用いられる場

    合があることも踏まえ、第三者(審判官や裁

    判官)が読んでも分かるように、必要・十分

    な事項を完結明瞭に記載する必要がある」

    (手引)とされており、更正するかどうかを

    判断する上での証拠資料となるのはもとより、

    処分取消訴訟等において証拠として提出され

    ることが前提とされています。

    そして、質問応答記録書は、回答者には交付

    されません。

    また、「証拠書類等の客観的な証拠により課税要件

    の充足性を確認できる事案については、原則

    として、質問応答記録書等の作成は要しない

    ことに留意する」(手引)

    とされていることから、質問応答記録書が作

    成が開始される事案は、原則として、それま

    での調査により収集された客観的な証拠では

    、課税要件の充足性を確認することができな

    いと判断されていることがわかります。

    質問応答記録書は、納税者が署名押印を拒否しても、

    調査担当者が回答者が署名・押印を拒否したことや

    その理由などを奥書し、署名押印することで書類としては完成します。

    そして、一度完成すると、その後、訂正・追加・

    削除等を申し立てても、訂正等を行ってはならないと

    されていますので、誤りがある場合には、その場で申立て、

    記載してもらう必要があります。

  • 税理士法人では会計業務に注意

    2020年10月30日

    今回は、税理士法人向けに、ちょっと注意しておかなければならない点について、解説をします。

    税理士法人の社員税理士には、競業禁止規定があります。

    ====================
    税理士法48条の14 1項

    税理士法人の社員は、自己若しくは第三者のためにその税理士法人の業務の範囲に属する業務を行い、又は他の税理士法人の社員となつてはならない。

    ====================

    この理由については、

    (1)法人の事業上の秘密を保ち、利益衝突を避ける必要があること

    (2)税理士法人の業務と税理士個人の業務とが混在すると、顧客である納税者等にとって、委嘱の相手方である税理士の立場が法人の社員としての立場なのか、個人の税理士としての立場なのかが暖昧で法律関係が不明確となり、顧客(納税者等)の保護に欠ける面があること

    とされています。

    そして、税理士法人とは別に記帳代行業務を行う法人を別に設立することもあると思います。

    この場合には、社員税理士が、記帳代行会社の役員に就任し、会計業務を行うことが多いでしょう。

    さて、この場合に、税理士法人の定款の目的に、「会計業務」が記載されていると、問題が生じます。

    税理士法基本通達

    ====================

    48の14-1 法第48条の14の規定により、会計業務を行う税理士法人の社員税理士は、自己又は第三者のために会計業務を行うことは禁止されるので、例えば、当該社員税理士が、会計業務を行う他の法人の無限責任社員又は取締役に就任して当該他の法人のために会計業務を行うことはできないことに留意する。

    ====================
    このように競業禁止規定に違反してしまうことになります。

    税理士法人の場合には、会計業務は切り分けなければならない、ということです。

    税理士法人の場合には、ご注意いただきたいと思います。

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