東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
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    礼金漏らして税理士損害賠償

    2024年03月07日

    今回は、税理士損害賠償の裁判例をご紹介します。

    惰性で業務を行わず、注意深く行わなければならないことを教えてくれる東京地裁平成21年10月26日判決です。

    (事案)

    ・X(納税者)は、合計7棟の賃貸用建物及び2つの駐車場を所有して、これらの賃貸業を営んでいる者である。

    ・Y(税理士)は、平成12年から平成17年度まで、毎年度、Xの所得税の確定申告書等の作成を受任した。

    ・Xは、Yに対し、不動産収入の内訳明細書や仲介業者が作成した賃料集金明細書を提出した。

    ・Xは、本件不動産賃貸業において、礼金及び更新料等を受領していたが、不動産収入の各内訳明細書の、礼金・敷金・更新料欄には、これを一切記載せず、また、仲介業者が作成した賃料集金明細書にも、礼金等の額は正確に記載されていなかった。

    ・Yは、Yの従業員が作成した本件各確定申告書等の各税理士欄に記名又は記名・押印した。Yは、その際、本件各確定申告書等の記載内容を、本件各資料の内容と照合して、その記載内容の正確性を検討したり、自ら又は従業員を通じて、Xらに対し、本件不動産賃貸業に関する礼金等の有無や本件借入利息の内容等についての確認や事情説明、資料の追加提出等を求めることなどはしなかった。

    ・Xは、平成18年秋以降、税務調査を受け、過少申告加算税、重加算税及び延滞税の支払を余儀なくされたことから、Yに対し、損害賠償を請求した。

    (判決)

    ・本件不動産のうち建物については、月額賃料が5万円から10万円までの賃貸物件で、貸主において、契約締結時又は更新時に礼金又は更新料を受領したり、退去日等との関係から日割賃料が発生するケースも少なくないこと、などから、本件各確定申告書等には、礼金等の収入が計上されず、また、本件借入利息等を含む本件不動産賃貸業に関係しない支出が必要経費として計上されたことが認められる。

    ・税務に関する専門知識を有するYにおいて、本件各確定申告書等の記載と本件各資料の記載を照合して、本件各確定申告書等の根拠となっている本件各資料の内容を精査すれば、礼金等の収入の有無や必要経費の内容や金額などについて、疑問をもち、Xに対し、これらについて説明を求め、追加資料の提出を促すことは容易であったというべきである。
    ・本件委任契約を受任した税務の専門家として、Xからの委任の趣旨に沿うよう、Xに対し、適切な助言や指導を行って確定申告書等を作成すべき義務を怠ったと認められる。

    →税理士敗訴

    ====================

    以上です。

    税理士は、依頼者が事実の全部若しくは一部を隠ぺいし、若しくは仮装している事実があることを知つたときは、直ちに、その是正をするよう助言する義務があります。(税理士法41条の3)

    従業員に任せきりにして見落としても、税理士の責任(履行補助者の故意・過失)になります。

    チェック体制を整えておく必要があります。

    また、資料を見た時に、「通常あるはずのものがない」ものを見つけて質問・資料提出を求めたり、「通常ないはずのものがある」ものを見つけて質問・資料提出を求めることが必要となります。

    「税理士を守る会」は、こちら
    https://myhoumu.jp/zeiprotect/new/