総則6項最高裁R4.4.19 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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総則6項最高裁R4.4.19

2022年05月05日

今回は、相続税に関して総則6項が適用された事案において、納税者が敗訴した最高裁令和4年4月19日判決をご紹介します。

すでにお読みになったもしれませんが、私の視点で解説します。

(事案)

被相続人は、平成21年1月30日、信託銀行から6億3000万円を借入、甲不動産を8億3700万円で購入した。

被相続人は、平成21年12月21日付けで共同相続人らのうちの1名から4700万円を借り入れ、同月25日付けで信託銀行から3億7800万円を借り入れた上、同日付けで本件乙不動産を代金5億5000万円で購入した。

平成24年6月17日(購入から約3年後)、94歳の被相続人の相続が開始した。

本件購入と借入がなければ、課税価格は6億円以上であった。

相続人らは、評価通達の定める方法により、本件甲不動産の価額を合計2億0004万1474円、本件乙不動産の価額を合計1億3366万4767円と評価し、課税価格の合計額は2826万1000円とされ、基礎控除の結果、相続税の総額は0円とされた。

税務署長は、総則6項を適用し、鑑定評価額に基づき、本件甲不動産の価額が合計7億5400万円、本件乙不動産の価額が合計5億1900万円として、課税価格を8億8874万9000円、相続税の総額を2億4049万8600円とする更正処分等を行った。

(判決)

(原則)
租税法における【平等原則】により、課税庁が、特定の者の相続財産の価額についてのみ評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることは、合理的な理由がない限り、平等原則に違反するものとして違法。

(例外)
評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことが【実質的な租税負担の公平に反する】というべき事情がある場合には、評価通達によらない合理的な理由がある

(本件では)

本件各通達評価額と本件各鑑定評価額との間には大きなかい離があるということができるものの、このことをもって上記事情があるということはできない。

本件購入・借入れが行われなければ本件相続に係る課税価格の合計額は6億円を超えるものであったにもかかわらず、これが行われたことにより、本件各不動産の価額を評価通達の定める方法により評価すると、課税価格の合計額は2826万1000円にとどまり、基礎控除の結果、相続税の総額が0円になるというのであるから、上告人らの相続税の負担は著しく軽減されることになるというべきである。

そして、被相続人及び上告人らは、本件購入・借入れが近い将来発生することが予想される被相続人からの相続において上告人らの相続税の負担を減じ又は免れさせるものであることを知り、かつ、これを期待して、あえて本件購入・借入れを企画して実行したというのであるから、租税負担の軽減をも意図してこれを行ったものといえる。

そうすると、本件各不動産の価額について評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことは、本件購入・借入れのような行為をせず、又はすることのできない他の納税者と上告人らとの間に看過し難い不均衡を生じさせ、実質的な租税負担の公平に反するというべきであるから、上記事情があるものということができる。

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以上です。

ポイントは、

・実質的な租税負担の公平に反する場合は、評価通達によらない合理的理由がある。

・通達評価額と鑑定評価額の差が大きいだけでは理由にならない。

・相続税額の差が大きく、かつ、関係者が相続税の軽減を知り、期待して行った場合には、実質的な租税負担の公平に反する。

ということになります。

税負担の軽減という「客観的要素」だけではなく、税負担の軽減目的と認識という「主観的要素」を判断要素に取り入れた、ということになります。

したがって、行為計算否認規定の場合と同様、税負担の軽減以外の合理的目的を有し、かつ、その証拠を残しておくことが大切となってきます。

銀行融資を受ける際に、購入目的を「相続税の軽減」と説明すると、それが稟議書に記載され、反面調査で明らかになりますので、税負担の軽減以外の目的の場合には、きちんとその目的を正しく説明しておくことが大切です。

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