従業員による架空請求書で重加算税 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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従業員による架空請求書で重加算税

2022年03月11日

今回は、関連会社から派遣されていた経理担当従業員が行った架空仕入れ計上などで重加算税賦課決定がされた裁判例について、ご紹介します。

大阪地裁令和元年8月9日判決(TAINS Z269-13303)です。

請求棄却(重加算税適法)され、控訴しています。

(事案)

原告は、関連会社B社及びC社が医療機関に納入した医療機器等の保守・修理等を業とする株式会社であるが、従業員はおらず、B社の従業員が原告に派遣されて事務を行っていた。

従業員乙は、B社の従業員であり、原告に派遣され、同じくB社から派遣されていた経理部門の責任者であるCの下で、経理業務を担当していた。

乙は、また、関連会社C社の給与振込業務なども兼務していた。

従業員乙は、複数回、C社から原告宛の架空請求書等を作成し、上司丙を経由して原告代表者宛に提出して決裁させ、C社の口座宛振り込ませた。

従業員乙は、その一部を仕入高に計上し、その一部を売上から除外した。

従業員乙は、原告から振り込まれた金員をC社の口座から、自分の口座に移動させて、着服した。

課税庁は、原告に隠蔽又は仮装があるとして、重加算税賦課決定をした。

(争点)

従業員乙の行為が、原告の行為と同視できるか?

(判決)

(規範)

法人において、その従業員が隠蔽仮装行為をし、その隠蔽仮装行為をしたところに基づき過少申告がされた場合であっても、

当該法人は、雇用契約等に基づき、当該従業員に対して業務全般について広く指揮監督を行う権限を有することに鑑みれば、

当該法人において、当該従業員に対する指揮監督を通じ、当該従業員の隠蔽仮装行為を認識し、又は認識することができ、

法定申告期限までにその是正や過少申告防止の措置を講ずることができたにもかかわらず、

当該法人において、これを防止せずに隠蔽仮装行為が行われ、

それに基づいて過少申告がされたときには、当該隠蔽仮装行為を納税者本人たる当該法人の行為と同視することができ、当該法人に対して重加算税を課することができると解するのが相当である。

※ この規範は、最高裁平成18年4月20日判決で示された規範です。

(事実認定)

原告としては、従業員乙は、C社の振込業務、原告の経理会計業務を行っていたのであるから、その地位を利用して、本件領得をする一連の行為を実行しうることについて、容易に予見することが可能だった。

それにもかかわらず、原告代表者は、決裁の歳、請求書や支払内容を注意深く見ることすらしなかったのであり、隠蔽仮装・領得行為が行われないように指揮監督の権限を行使すべきであるところ、これを行使することなく、乙により隠蔽仮装・領得行為が行われ得る状況を放置した

架空仕入高の原告の月次仕入高に占める割合は、

平成24年12月 3503万5050円に対し、3500万円 約99.8%

平成25年10月 4645万6135円に対し、3633万3825円 78%

平成25年11月 8805万9593円に対し、7133万3825円 約81%

と、相当高い割合である

各期を比較しても、原告の仕入高は、

平成23年11月期 1370万1147円
平成24年11月期 3800万1192円
平成25年11月期 8805万9563円

と急増している

また、請求書の書式も一見して異なる

(当てはめ)

振込依頼書の決裁等の際に、決裁のために添付された架空請求書の確認を自ら行い、又は他の従業員にさせていれば、その書式はC社が一般的に原告に対する機械代の請求に用いていた請求書の書式とは異なるものであることを容易に認識することができた

乙から月次試算表の提出を受けた時点、平成25年11月期に係る確定申告をする時点等において、「仕入高」勘定の金額が記帳された元帳及び損益計算書や「買掛金」勘定の金額が記載された貸借対照表等の確認を自ら行い、又は他の従業員にさせていれば、平成25年11月期末の、平成25年11月期末における元帳の「仕入高」勘定の金額、貸借対照表の「買掛金」勘定の金額及び損益計算書の「仕入高」勘定の金額が相当高額であって、不自然なものになっていることを容易に認識することもできた

これらの認識を踏まえて、隠蔽仮装・領得行為の一環として行われた隠蔽仮装行為たる本件各架空仕入計上を容易に認識することができ、法定申告期限までにその是正や過少申告防止の措置を講ずることができたというべきである。そうであるにもかかわらず、原告において、これを防止せずに隠蔽仮装行為が行われ、それに基づいて過少申告がされたのであるから、本件各架空仕入計上は、納税者本人たる原告の行為と同視することができるものと解される。

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以上です。

納税者の代表者が従業員による領得行為について知らない場合でも、当該従業員の行為が納税者の行為と同視できる場合は、納税者が隠蔽仮装行為を行ったものとして、重加算税賦課要件を満たします。

本件のポイントは、

・従業員は不正行為を行うことができる地位と権限があったので、不正行為を行うことが容易に予見できる

・決裁をきちんとしていれば、請求書の書式が違うことが認識できたはず

・試算表や確定申告の際に、元帳やPL、BSをチェックする体制を作っていれば、不自然さが容易に認識できたはず

という事情をもって、従業員による隠蔽又は仮装行為について容易に認識できたものと認定しています。

反対に、

・決裁で書類を確認しても、見抜くことは困難

・試算表や決算書の数字に特に不自然さはない

などの事情があれば、争う余地がある、ということになります。

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