同一人に給与と外注費 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
弁護士20人以上が所属するみらい総合法律事務所の代表パートナーです。
テレビ出演などもしており、著書は50冊以上あります。
TV出演、取材、出版、研修、セミナー講師を受け付けています。
メニュー
みらい総合法律事務所
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階
弁護士20人以上が所属するみらい総合法律事務所の代表パートナーです。
テレビ出演などもしており、著書は50冊以上あります。
TV出演、取材、出版、研修、セミナー講師を受け付けています。

同一人に給与と外注費

2021年12月24日

今回は、給与か外注費か、という論点に関し、同一人に対する支払について、給与の他に支払っていた金員が外注費と認定された裁決例をご紹介します。

なお、この裁決例を参考にするのは注意が必要です。

国税不服審判所平成29年2月9日裁決です。

(事案)

請求人は、ホテルから料理長として雇傭され、給与の支給を受けていた。

ホテルは、料理長に対し、給与の他に、「調理場委託料」の名目で金員を支払っていた。

請求人は、料理長として、メニューの考案、価格の決定、材料の選定・発注・在庫管理及び調理などをしていたほか、調理場において勤務する請求人以外の料理人を確保し、給与の支給や出勤状況の管理等を行っていた。

各料理人の給料は、前記「調理場委託料」から支払い、余った金員はホテルに返還しなかった。

調理場委託料は毎月定額であり、料理人の人数や勤務状況によって変動しなかった。

請求人は消費税の申告をしていなかった。

税務署長は、請求人は消費税法上の事業を行っていたものであるとして、消費税及び地方消費税の決定処分、無申告加算税の賦課決定をした。

争点は、給与を除いた「調理場委託料」についてである。

(裁決)

消費税法上の事業とは、対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供を独立の立場で、反復、継続して行うことをいうものと解される。

請求人の判断で本件各料理人を採用して、本件各料理人を指揮監督しながら、本件調理場における業務を行っていたものということができ、の請求人のメニューの考案、価格の決定、材料の選定・発注・在庫管理及び調理などをしていたほか、調理場において勤務する請求人以外の料理人を確保し、給与の支給や出勤状況の管理等の業務の全てが、本件法人との間の雇用契約に基づく料理長としての業務に包含されるものとは評価できないというべきである。

そして、現に請求人は、本件法人から給与とは別に毎月「調理場委託料」名下の本件金員を受領して、この中から請求人が定めた給与を本件各料理人に支払っていたというのであるから、請求人は、独立の立場で、反復、継続して本件各料理人を雇って本件調理場を運営していたものと認められる。

したがって、請求人は、消費税法上の「事業」を行っていたと認られる。

===================

以上です。

同一人に対する支払について、給与の他に支払っていた金員が外注費と認定された、珍しい裁決例ですが、個人的には本裁決例を参考にして実務を行うのは避けた方がよいと考えています。

本件で、料理長が行っていた業務は、メニューの考案、価格の決定、材料の選定・発注・在庫管理及び調理などをしていたほか、調理場において勤務する請求人以外の料理人を確保し、給与の支給や出勤状況の管理等です。

これは、まさに一般的な「料理長」が行う業務です。

これらの業務を総合的に判断し、消費税法上の「業務」と認定されているわけです。

では、その他に料理長は、給与の支給を受けて、ホテルの指揮命令下において、どのような労務に従事していたのか、ということです。

給与に見合う労務があるというためには、上記料理長としての「業務」の他に、純粋な労務提供がなければなりません。

しかし、本裁決例では、料理長が行っていた業務は、上記が全てであり、それ以外の労務提供は見えてきません。

そうなると、本件で支払を受けていた「給与」も外注費と判断されるべきものではないか、との疑問が出てきます。

なぜ、このようになってしまったのかというと、課税庁が、給与については問題とせず、「調理場委託料」のみを問題にしたためです。

したがって、不服申立の対象は、「調理場委託料」のみとなり、国税不服審判所は、給与部分については判断しないこととなります。

そのため、本件で支払われた「給与」が本来は外注費であったとしても、審判の対象にならない、ということです。

原則として、同一人が行う業務について、指揮命令を受けているか、独立しているかは、二者択一ですので、実務においては、本件のような取り扱いは避けることをおすすめしたいと思います。

但し、保険外交員等については、所得税通達で、以下のような定めがあるので、ご注意ください。

これは、外交員等については、給与所得か事業所得か判断するのが難しいケースが多いために租税職員が現場で判断できるよう判断基準を決めておく、という趣旨から定められたものと解されます。

===================

外交員又は集金人がその地位に基づいて保険会社等から支払を受ける報酬又は料金については、次に掲げる場合に応じ、それぞれ次による。

(1) その報酬又は料金がその職務を遂行するために必要な旅費とそれ以外の部分とに明らかに区分されている場合  法第9条第1項第4号《非課税所得》に掲げる金品に該当する部分は非課税とし、それ以外の部分は給与等とする。

(2) (1)以外の場合で、その報酬又は料金が、固定給(一定期間の募集成績等によって自動的にその額が定まるもの及び一定期間の募集成績等によって自動的に格付される資格に応じてその額が定めるものを除く。以下この項において同じ。)とそれ以外の部分とに明らかに区分されているとき。  固定給(固定給を基準として支給される臨時の給与を含む。)は給与等とし、それ以外の部分は法第204条第1項第4号に掲げる報酬又は料金とする。

(3) (1)及び(2)以外の場合  その報酬又は料金の支払の基因となる役務を提供するために要する旅費等の費用の額の多寡その他の事情を総合勘案し、給与等と認められるものについてはその総額を給与等とし、その他のものについてはその総額を法第204条第1項第4号に掲げる報酬又は料金とする。

===================

「税理士を守る会」は、こちら
https://myhoumu.jp/zeiprotect/new/