消費税説明義務で税理士勝訴。東京地裁平成20年11月17日判決 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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消費税説明義務で税理士勝訴。東京地裁平成20年11月17日判決

2021年07月22日

今回は、税理士損害賠償の裁判例のご紹介です。

東京地裁平成20年11月17判決(TAINS Z999-0135)です。

(事案)

原告は、平成16年12月1日に設立された、米の販売・加工等を目的とする株式会社です。

原告と被告税理士は、は、平成18年1月13日、以下の内容の税務顧問契約を締結しました。

【業務内容】
(ア) 税理士法に定める業務及び会計業務
(イ) 前項の業務遂行のため必要とする関連業務

【報酬】
(ア)顧問料月額2万円
(イ)決算報酬年額合計30万円

【特約】
「定期訪問なし。税務上の問題につきましてはお電話にてお問い合わせ下さい。」「問題解決のため、資料作成、調査等が必要となる場合には、別途料金が発生いたします。」

原告の消費税の課税売上高は、第1期、第2期とも1000万円未満であったため、第1期間を基準期間とする第3期は、自動的に消費税免税事業者となるものでありました。

原告は、平成17年6月に、資本金を3000万円から24億円に増やし、その後、多額の広告宣伝費を支出しましたが、消費税課税事業者選択届出書は提出していませんでした。

そこで、原告は、被告には、消費税課税事業者選択届出制度について、原告に助言する義務があるのにこれを怠ったため、原告は消費税課税事業者選択届出書を提出して消費税課税事業者となることができず、消費税の還付を受けることができなかったと主張して、債務不履行に基づく損害賠償請求権に基づき、還付金及び弁護士費用相当額の合計3687万0960円等の支払を求めました。

(判決)

本件契約書の「顧問料」「概要・根拠」の欄には、「定期訪問なし。税務上の問題につきましては、お電話にてお問い合わせ下さい。」と記載されているところ、この文言は、本件契約は、被告が原告を定期訪問せず、原告から税務相談があった場合には電話で対応するという内容のものであるから、被告としては、原告から相談がない限り、助言ないしそのための情報収集をすることはないことが定められているものと解する

被告は、本件において、原告の第1期の決算業務を行っており、原告が課税事業者選択届出書を提出して課税事業者とならない限り、第3期には、自動的に免税事業者となることを知っていたと認められるから、被告としては、原告が本件制度の存在を知らないこと又は失念していることを認識した場合はもちろん、被告がそのことを容易に認識し得るような場合には、被告は原告に対し、本件制度の存在を説明する義務を負うと解するのが相当であり、また、原告が本件制度を実際に知っていたか否かにかかわらず、原告が本件届出書を提出して課税事業者となった方が課税上有利になる可能性があることを本件届出書提出期限までに認識し、又はそのことを容易に認識し得た場合も、被告は原告に対し、本件制度について注意を喚起する義務を負う

原告には、相当程度の税務知識があったと考えることが自然であることに加え、本件制度は事業者であれば知っておくべき基本的知識といえるものであることも考え合わせると、原告が本件制度を知らないこと又は失念していることを被告が認識していたと認めることはできず、また、被告がそのことを容易に認識し得たということもできない。そうすると、被告は原告に対し、本件制度の存在を説明する義務を負っていたと認めることはできない。

被告は、本件届出書提出期限までに、原告が第3期以降に多額の広告宣伝費を支出する可能性があることを認識し得たということができるが、原告の広告宣伝費は、平成18年2月までは毎月2000万円程度ずつ発生していたところ、同年3月に急激に増加して4億8808万3541円となったものであり、被告がその明細を受け取ったのは本件届出書提出期限後であったことからすると、被告は、本件届出書提出期限までに、原告が第3期において具体的にどの程度の広告宣伝費を支出することになるかについてまで認識していたと認めることはできない。

したがって、被告は、本件において、本件届出書を提出して課税事業者となった方が課税上原告に有利になる可能性があることを本件届出書提出期限までに認識し、又はそのことを容易に認識し得たとまでは認められないから、原告に対し、本件制度について注意を喚起すべき義務を負うと解することはできない。

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以上です。

本件では、契約書の記載が取り上げられています。

消費税の助言義務は、税理士は、積極的に調査や情報収集して依頼者のために助言をする義務があるかどうかが争われることが多いです。

この場合、契約書があれば、その記載が重視されます。

今回も、契約書に「定期訪問なし。税務上の問題につきましては、お電話にてお問い合わせ下さい。」と記載されてあったことから、税理士の義務が受動的な義務にとどまるものと認定されています。

したがって、税理士が契約をする時は、必ず契約書を締結することとし、契約書には、法的な義務として負担するもののみを限定的に記載することをおすすめします。

「税理士を守る会」では、そのような観点から作成した契約書式集を提供しています。

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