礼金を漏らして税理士損害賠償になった裁判例 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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礼金を漏らして税理士損害賠償になった裁判例

2021年04月23日

今回は、税理士損害賠償の裁判例の紹介です。

東京地裁平成21年10月26日判決(判例タイムズ1340号199頁)です。

(事案)

●不動産賃貸業をしている原告が,税理士である被告に対して,平成11年度から平成17年度までの所得税の確定申告にかかる青色申告決算書及び確定申告書の作成を委任した。

●原告は、被告税理士に対し、収入については、内訳明細書を、支出については領収書等を交付したが、実際には礼金や更新料等を受領していたにもかかわらず、内訳明細書には、多くの礼金や更新料等の記載がなかった。

●領収証の中にも私的な犬小屋の建設費用に関する領収書などがあったが、税理士は、提出された内訳明細書をそのまま転記し、犬小屋の建設費用なども経費計上した。

●後日税務調査があり、不動産収入の申告漏れ及び必要経費の計上の誤り等を指摘された。

●原告は修正申告をし、過少申告加算税、延滞税、重加算税等を課された。

●原告は、被告が税理士としての職務上の注意義務を怠り,原告から提出された資料の内容を精査,確認しないまま漫然と確定申告書等を作成し,原告にこれらを提出させて確定申告させた402万3300円の損害賠償を求めた。

(裁判所の判断)

●被告は,税理士として,独立した公正な立場において,申告納税制度の理念に沿って,納税義務者の信頼に応え,納税義務の適正な実現を図ることを使命とする専門職であり(税理士法1条参照),税理士業務を行うに当たっては,依頼者が,課税標準等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし,若しくは仮装している事実等があることを知ったときには,直ちにその是正をするよう助言する(法41条の3)などの義務を負う。したがって,被告は,上記法の趣旨に照らして,本件委任契約に基づき,原告に対し,税務の専門家として,税務に関する法令,実務に関する専門知識に基づいて,原告からの委任の趣旨に沿うよう,適切な助言や指導を行って,確定申告書等の作成事務を行うべき義務を負う。

●税務に関する専門知識を有する被告において,本件各確定申告書等の記載と本件各資料の記載を照合して,本件各確定申告書等の根拠となっている本件各資料の内容を精査すれば,礼金等の収入の有無や必要経費の内容や金額などについて,疑問をもち,原告に対し,これらについて説明を求め,追加資料の提出を促すことは容易であったというべきである。

●被告の対応は,従業員であるBをして,原告から提出された本件各資料を精査,確認することなく,そのまま転記して不正確な内容の本件各確定申告書等を作成させ,自らも,その内容の正確性を精査,確認せず,漫然と記名又は記名・押印したという他はなく,前記(1)認定の本件委任契約を受任した税務の専門家として,原告からの委任の趣旨に沿うよう,原告に対し,適切な助言や指導を行って確定申告書等を作成すべき義務を怠ったと認められる。

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不動賃貸業では、礼金や更新料を受領することが多いにもかかわらず、それらの記載がない時は、その点について確認する必要があります。

これは、「本来、あるべき収入がない」という不自然な状況に気づく必要がある、ということです。

また、依頼者が作成した収入の内訳書があったとしても、同時に根拠資料が提出されていたときは、その照合を行わないと、注意義務違反を問われる可能性があることにも注意が必要です。

なお、税理士は、礼金等の有無を確認し、根拠資料を提出するよう求めた、と主張しましたが、その証拠は提出されませんでした。

この点について、裁判所は、次のように判断しています。

「7年間に亘って,一度も上記要請に応じなかったのであれば,税理士としての職責を担う被告としては,もはや,適切な業務が遂行できないとして,本件委任契約を解除するなどの手段を講じるのが自然である」

つまり、適切な税理士業務ができない状況になった時は、「辞任する」選択肢も検討すべきだ、ということです。

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長くなりましたが、もう一点指摘しておきたいと思います。

今回、税務調査では、被告とは別の税理士が対応しました。

結果的に、重加算税が課されていますが、この点について争われていません。

しかし、本件で問題となった内訳書は、原告本人ではなく、不動産仲介業者が作成したものを、そのまま提出したものです。

また、犬小屋の建設費用はありましたが、特に原告が嘘をついて税理士に提出したわけではなく、他の領収書と一緒に提出しています。

つまり、外形上、隠蔽又は仮装と解釈できる行為がありません。

このような場合には、税務調査に対応した税理士としては、重加算税の賦課要件である隠蔽又は仮装がないので、重加算税賦課決定が違法である旨の指摘をし、納税者に適切な助言をする注意義務があると考えられます。

この点についてもご注意いただきたいと思います。

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