消費税助言義務が争われた裁判例 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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消費税助言義務が争われた裁判例

2021年03月26日

今回は、税理士損害賠償の裁判例のご紹介です。

平成26年3月26日判決(TAINS Z999-0156)です。

ホテル業を営むグループ会社数社の決算補助業務並びに法人税及び消費税の申告業務を受任していた税理士及び会計法人が、消費税に関し、適切な課税選択の届出書を提出すべき助言を怠った、として、損害賠償請求をされた事案です。

結論としては、税理士の注意義務違反は否定され、税理士勝訴となっています。

争点は、税理士に助言義務はあるか、という点であり、契約の解釈です。

裁判所は、以下のように判断しました。

●消費税の課税形態に関する判断は、翌期・翌々期の事業の見込みに従って行われるべきものであり、決算補助業務や法人税・消費税の申告業務を行うことから直ちに導き出されるものではない

●いったん課税事業者ないし簡易事業者の選択をすると2年間はそれをやめることができないのであるから、その判断は当該事業者に委ねられている

●依頼者である事業者から個別の相談又は問い合わせがない限り、その事業者について、事業の見通しを積極的に調査し、又は予見した上で、当該事業者の消費税の課税形態の選択について助言又は指導を行うべき義務は原則としてない

●依頼者から消費税の課税形態に関する個別の相談若しくは問い合わせがある場合又は個別の相談若しくは問い合わせがなくとも依頼者から適切な情報提供がされるなどして、税務に関する行為によって課税上重大な利害得失があり得ることを具体的に認識し、若しくは容易に認識し得るような事情がある場合には、依頼者に対し、当該行為の助言、指導等をするべき付随的な義務が生じる場合もあり得る

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結論として税理士勝訴ですが、事例判断であり、全ての場合に税理士に助言義務がない、とされるわけではありませんので、ご注意ください。

最後の部分ですが、個別の相談がなくても、助言義務が生じる場合があることを示唆しておりますし、また、経営に関するコンサルティングなどが契約内容に入っていれば、助言義務が認められる可能性があります。

そのようなことにならないためには、契約書に消費税に関する注意事項を明記しておくことが大切になります。

仮に最終的に勝訴できたとしても、裁判を起こされること自体は精神的・経済的な損害となるためです。

「税理士を守る会」の先生方は、ダウンロード可能な契約書の消費税の項目を改めてご確認いただければと思います。

上記裁判例を踏まえ、対処してあります。

「税理士を守る会」は、こちら
https://myhoumu.jp/zeiprotect/new/