消費税の課税形態の選択で税理士損害賠償(税理士勝訴) | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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消費税の課税形態の選択で税理士損害賠償(税理士勝訴)

2019年10月02日

今回は、税理士に対する損害賠償が争われた東京地裁平成26年3月26日判決(TAINS Z999-0156)をご紹介します。

(事案の概要)

ホテル事業を行う納税者である会社X社並びにそのグループ会社らが、税理士及び会計法人に対し、グループ会社36社における消費税の課税形態の選択に関して、必要な事情聴取や調査を行い、適切な課税形態を判断すべき義務を怠ったことにより、不適切な課税形態が選択されて、消費税の還付を受けられず、不要な納税をしたことによる損害を被ったと主張して、損害賠償請求をしたものです。

(結論)

税理士及び会計法人が勝訴しました。

つまり、債務不履行はない、という判断です。

(裁判所の判断)

【業務範囲の認定】

●決算補助業務並びに法人税及び消費税の申告業務を受任していた

●包括的委任契約ないし税務顧問契約が締結されていた事実は認められない。

(消費税の課税形態に関しては判断する義務は原則として負わない)

●消費税の課税形態に関する判断は、翌期・翌々期の事業の見込みに従って行われるべきものであり、決算補助業務や法人税・消費税の申告業務を行うことから直ちに導き出されるものではない。

●消費税の課税形態に関する判断は、当該事業者の翌期・翌々期の売上げ及び仕入れという事業の見通しに従って行われるべきものであって、いったん課税事業者ないし簡易事業者の選択をすると2年間はそれをやめることができないのであるから、その判断は当該事業者に委ねられているところであり、税務申告等に関与する税理士ないし税理士法人が決定し得るところではないというべきである。

●したがって、税務申告等に関与する税理士ないし税理士法人については、依頼者である事業者から個別の相談又は問い合わせがない限り、その事業者について、事業の見通しを積極的に調査し、又は予見した上で、当該事業者の消費税の課税形態の選択について助言又は指導を行うべき義務は原則としてないものというべきである。

(消費税の課税形態に関する判断を負う場合)

●もっとも、法人税・消費税の申告業務等を受任している税理士法人としては、依頼者から消費税の課税形態に関する個別の相談若しくは問い合わせがある場合又は個別の相談若しくは問い合わせがなくとも依頼者から適切な情報提供がされるなどして、税務に関する行為によって課税上重大な利害得失があり得ることを具体的に認識し、若しくは容易に認識し得るような事情がある場合には、依頼者に対し、当該行為の助言、指導等をするべき付随的な義務が生じる場合もあり得るというべきである。

(あてはめ)

●自らの判断に基づいて届出書を提出しなかったものと推認されるのであるから、被告らが、原告X社に対し、課税形態の選択について何らかの助言、指導等をするべき事情があったとも認められない。

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以上です。

本件判決は、税理士及び会計法人の契約の「業務範囲」が問題となった事例です。

本件では、各会社と契約書が締結してある会社と契約が締結していない会社がありました。

業務範囲に「節税コンサルティング」などと記載してあったら、危なかったと思います。

やはり、税賠を防止するには、契約書は必ず締結し、業務範囲は、明確かつ限定的に記載すべきものと思います。

ご相談は、こちらから。
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