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重加算税と青色申告承認取消処分との関係

2019年08月12日

青色申告承認の取消は、法人税法127条、所得税法150条に規定しています。法人税法127条1項は、次のような規定です。

第百二十一条第一項(青色申告)の承認を受けた内国法人につき次の各号のいずれかに該当する事実がある場合には、納税地の所轄税務署長は、当該各号に定める事業年度まで遡って、その承認を取り消すことができる。

そして、同項3号は、

その事業年度に係る帳簿書類に取引の全部又は一部を隠蔽し又は仮装して記載し又は記録し、その他その記載又は記録をした事項の全体についてその真実性を疑うに足りる相当の理由があること

とされており、重加算税の要件である隠ぺい仮装が要件となっています。

所得税法も同旨の規定です。

重加算税の隠ぺい又は仮装と、青色申告承認取消の隠ぺい又は仮装は、一般的に同義と理解されています。

青色申告制度は、帳簿書類を備え付け、それに取引を記帳している納税者が少ない状況の中で、昭和24年のシャウプ勧告に基づいて、昭和25年に取り入れられたものです。

その趣旨は、

「青色申告承認の制度は、納税者が自ら所得金額及び税額を計算し自主的に申告して納税する申告納税制度のもとにおいて、適正課税を実現するために不可欠な帳簿の正確な記帳を推進する目的で設けられたものであって、適式に帳簿書類を備え付けてこれに取引を忠実に記載し、かつ、これを保存する納税者に対して特別の青色申告書による申告を承認し、青色申告書を提出した納税者に対しては、推計課税を認めないなどの納税手続上の特典及び各種準備金、繰越欠損金の損金算入などの所得計算上の特典を与えるものである。」(最高裁昭和49年9月20日判決、刑集28巻6号291頁、TAINS Z999-9019)

とされています。

重加算税は、国税通則法第68条1項で、「重加算税を課する。」と規定し、重加算税の賦課要件を備えた時には、合法性の原則により、税務署長には裁量の余地はなく、重加算税賦課決定をしなければならないのに対し、青色申告承認の取消処分は、「その承認を取り消すことができる。」として、税務署長に裁量の余地を認める規定の仕方をしています。

この点について、大阪高裁昭和38年12月26日判決(TAINS Z037-1259)は、「青色申告書提出承認を取消すべきか否かについて同法は税務署長に合理的な範囲内に於て裁量権を与えている」としています。

この裁量権に基づき、国税庁平成12年7月3日課法 2-10「法人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)」は、次のように定めています。

3 隠ぺい、仮装等の場合における青色申告の承認の取消し
(青色申告の承認を取り消す場合) 
(1) 青色申告の承認を受けている法人につき、次のいずれかに該当する場合には、(5)の場合を除き、法第127条第1項第3号の規定によりその該当することとなった事業年度以後の事業年度について、その承認を取り消す。

イ 無申告のために所得金額の決定をした場合又は所得金額の更正をした場合において、その事業年度の当該決定又は更正後の所得金額(以下「更正所得金額」という。)のうち隠ぺい又は仮装の事実に基づく所得金額(以下「不正所得金額」という。)が、当該更正所得金額の50%に相当する金額を超えるとき(当該不正所得金額が500万円に満たないときを除く。)。

ロ 欠損金額を減額する更正(所得金額があることとなる更正を含む。)をした場合において、その事業年度の当該更正により減少した部分の欠損金額(所得金額があることとなる更正の場合にあっては、当該所得金額を加算した金額)のうち隠ぺい又は仮装の事実に基づく金額(以下「不正欠損金額」という。)が、当初の申告に係る欠損金額(所得金額があることとなる更正の場合にあっては、当該所得金額を加算した金額。以下「申告欠損金額」という。)の50%に相当する金額を超えるとき(当該不正欠損金額が500万円に満たないときを除く。)。

この通達により、隠ぺい又は仮装があった場合でも、隠ぺい又は仮装の事実に基づく不正所得金額や不正欠損金額が、更正所得金額や申告欠損金額の

(1)50%以下の場合

(2)不正所得金額や不正欠損金額が500万円未満である場合

は、青色申告承認は取り消されない、ということになります。

(計算例)
当初申告所得金額 1000万円
更正後の所得金額 2500万円
隠ぺい又は仮装に基づく更正に基づく不正所得金額 500万円

隠ぺい又は仮装に基づく更正に基づく不正所得金額は500万円なので、(2)の要件は満たしませんが、

(1)により、青色申告承認取消にならない場合

=2500万円✕50%=1250万円以下の場合ということになり、本件では、隠ぺい又は仮装に基づく更正による増差所得金額は500万円なので、青色申告承認取消にならない、ということになります。

(1)(2)どちらかの要件を満たせば、課税実務上、青色申告承認の取消にはならない、ということになります。

個人についての通達は、国税庁平成12年7月3日課法 4-17「個人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)」です。

そして、税務署長の合理的な裁量は、無制限に認められるわけではありません。

横浜地裁平成17年6月22日判決(税資255号順号10060頁)は、「青色申告制度の趣旨及び青色申告承認の取消しの意義に適合しない目的や動機に基づいて青色申告承認取消処分がされたり、裁量権の行使が、考慮すべき事項を考慮せず、考慮すべきでない事項を考慮してされたために、その判断が上記の観点から合目的的かつ合理的なものとして許容される限度を超え、著しく不当である場合には、その青色申告取消処分は、税務署長に委ねられた裁量権の範囲を逸脱し、又はその濫用があったものとして、違法となるものと解すべきである」として、一定の場合には、信義則・裁量権の逸脱、濫用として、処分が違法となる場合があることを判示しました。

したがって、たとえ隠ぺい又は仮装があり、それを理由として青色申告取消処分がなされた場合であっても、その処分が信義則・裁量権の逸脱、濫用ではないか、が検討されることになります。

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