東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
弁護士24人が所属するみらい総合法律事務所の代表パートナーです。
テレビ出演などもしており、著書は約30冊あります。
TV出演、取材、執筆、研修、セミナー講師を受け付けていますので、ご連絡ください。
メニュー
みらい総合法律事務所
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階
弁護士24人が所属するみらい総合法律事務所の代表パートナーです。
テレビ出演などもしており、著書は約30冊あります。
TV出演、取材、執筆、研修、セミナー講師を受け付けていますので、ご連絡ください。

【昔話法律講座】「かちかち山 その1~隣人トラブルが殺人に発展!」

2018年02月17日

昔話の裏に隠された法律違反について考えるシリーズ「昔話法律講座」、第2弾は「かちかち山」です。

 

毎日、畑に来ては悪さをするタヌキ。

これに怒ったおじいさんがタヌキを捕まえて、タヌキ汁にして食べてしまおうとしますが、タヌキに騙されたおばあさんが大変なことに……。

 

果たして、「かちかち山」を法律の世界から見ると、どうなるのでしょうか?

 

 

「意地の悪いタヌキとの隣人トラブルが殺人事件に発展!の巻」

 

昔、あるところに、畑を耕して仲良く暮らす、おじいさんとおばあさんがいました。

 

しかし、2人は厄介な隣人トラブルを抱えていました。

それは、いたずらが過ぎるタヌキの存在です。

 

タヌキは、ことあるごとに畑に不法侵入しては、おじいさんをからかったり、農作物が実らないようにタヌキ囃子で騒ぎ立てたりしました。

さらには、夜になると畑のイモや種をほじくり返して食べてしまうのです。

 

「まったく、タヌキの奴め…困った厄介者だ。なんとかならんものか…」

 

おじいさんが言うと、おばあさんが答えました。

 

「騒音トラブルは、直接取り締まる法律がないんじゃよ。ただし過去の判例では、被害者がうつ症状の健康被害を訴えたことで、加害者に傷害罪(注1)が確定したものがあるのぉ」

 

「ばあさん? 何だって?」

 

「あと…可能性としては、軽犯罪法違反に問うことができるかもしれんの。14号の静穏妨害の罪(注2)じゃ。ただし、警察官などの公務員が注意、制止しても言うことを聞かなかった場合に限るがのぉ…」

軽犯罪法第1条14号 公務員の制止をきかずに、人声、楽器、ラジオなどの音を異常に大きく出して静穏を害し近隣に迷惑をかけた者
 

「おーい、ばあさんや…何を言っておるのじゃ?」

「法律の話じゃ。それから…住居侵入罪(注3)の可能性もあるが、田畑の場合は門や塀で囲われていることが条件という判例もあるからのぉ、うちの畑の場合は微妙じゃ。畑が踏み荒らされていれば器物損壊罪(注4)、畑仕事の邪魔をされているということでは威力業務妨害罪(注5)も考えられるがなぁ…」
刑法第130条(住居侵入罪)

正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
 
刑法第261条(器物損壊罪)

前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
 
刑法第234条(威力業務妨害罪)

威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。

 

刑法第233条(偽計業務妨害罪)

虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
 

あっけにとられているおじいさんを尻目に、おばあさんは続けました。

「であれば、軽犯罪法の32号の可能性もあるのぉ。これは、田畑等侵入の罪(注6)じゃ。ただし“立ち入り禁止”の看板を立てておかないといかん。おっと、忘れておったぞ、じいさんや、窃盗罪(注7)じゃ!」
軽犯罪法第1条32号 入ることを禁じた場所又は他人の田畑に正当な理由がなくて入つた者
 
刑法第235条(窃盗罪)

他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
 

「いや、ばあさんや…しかし、お前なんでそんなこと知っとるんじゃ?」

 

「若い頃ちょっと学んだっていうか、かじったっていうか」

 

そういうと、おばあさんは戸棚から古びた六法全書を持ち出してきました。

「ずいぶん勉強したさ…青春の1ページじゃ」

 

おじいさんは、驚いて言いました。

「お前は他の女とは違うと思うとったが…法律とは、こりゃたまげたわい」

 

すると、おばあさんは遠い目をして言いました。

「誰にでも秘密にしている過去があるものじゃよ」

 

「それよりも、タヌキのことじゃ。わしに法律よりもいい考えがある」

そう言うと、おじいさんは畑に罠を仕掛けてタヌキを捕まえることにしました。

 

 

翌朝、おじいさんが畑に行ってみると、まんまとタヌキが罠に引っかかっていました。

 

おじいさんは高々とガッツポーズを上げて言いました。

「クソタヌキめ、思い知ったか! 今夜はお前をタヌキ汁にして食べてやるぞ!!」

 

 

その日の午後、おばあさんが夕食の支度をしていると、柱に吊るされたタヌキが弱々しい声で言いました。

「おばあさん…腰は痛くないかい?」

 

「なんじゃ、タヌキ…わしは腰は痛くないわい」

 

「ねぇ、おばあさん、ちょっと体が痛いから縄をゆるめてくれないかい?」

 

「ダメじゃ、お前が逃げたら、じいさんに怒られる」

 

少し考えてから、タヌキが言いました。

「ねぇねぇ、おばあさん、もう悪さはしないから縄をほどいておくれよ。おわびに料理の支度を手伝うから。手伝いが終わったら、また縛ればいいだろ?」

 

少し疲れてきたおばあさんは腰をさすりながら言いました。

「それもそうじゃの…じゃあ、手伝ってもらうかの」

 

そうして、おばあさんはタヌキを縛っていた縄をほどいてやりました。

ところが、その瞬間、タヌキ豹変です。

 

「よくもやってくれたな」

そう言うと、いきなり杵を持っておばあさんに殴りかかり、撲殺。

皮をはいで、おばあさんの肉を鍋に入れて煮込み始めました。

 

 

夕方になり、おじいさんが帰ってくると、タヌキはおばあさんの皮をかぶって言いました。

「おじいさん、美味しいタヌキ汁ができてるよ」

 

何も知らないおじいさんは、その汁を食べてしまいました。

すると、タヌキは皮を脱いで言いました。

 

「やーい、食ったな! お前が食ったのは、ばあさんの肉で作った“婆汁”だ。ざまあみろ!でも、俺は殺してないぞ!」

 

そう言うと、一目散に山に逃げていきました。

 

1人残されたおじいさんは、涙を流して後悔しました。

そして、足元にあったおばあさんの形見の六法全書を開きました。

 
刑法第199条(殺人)

人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。
 

(しかし、タヌキは、「俺は殺してないぞ!」と言ってたな・・・。殺人罪は、殺人の故意(殺そうとする意思)がないと成立しないと聞いている。どうしたらいいのか・・・)

 

すると、次の条文が目に飛び込んできました。

 
刑法第190条(死体損壊罪)

死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する。
 

(そうだ!タヌキは、婆さんの死体を損壊して“婆汁”にしたじゃないか。よし。まずはこれで逮捕して自白させてやる!)

 

おじいさんは復讐を誓ったのでした。

 

つづく…

 

 

【法律メモ】

注1:傷害罪

刑法第204条(傷害)

人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

 

 

詳しい解説はこちら⇒

他人の毛を無断で抜くと傷害罪?切ると暴行罪?

https://taniharamakoto.com/archives/2329/

 

 

注2:静穏妨害の罪

軽犯罪法第1条

左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

14 公務員の制止をきかずに、人声、楽器、ラジオなどの音を異常に大きく出して静穏を害し近隣に迷惑をかけた者

 

 

詳しい解説はこちら⇒

大声を出すだけで犯罪が成立する場合とは?

https://taniharamakoto.com/archives/2461/

 

 

注3:住居侵入罪

刑法第130条(住居侵入等)

正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

 

 

詳しい解説はこちら⇒

肝試しもほどほどに。

https://taniharamakoto.com/archives/2632/

 

 

注4:器物損壊罪

刑法第261条(器物損壊等)

前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。

 

 

詳しい解説はこちら⇒

ジョージ・ワシントンは、器物損壊罪か!?

https://taniharamakoto.com/archives/1264/

 

 

注5:威力業務妨害罪

刑法第234条(威力業務妨害)

威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。

 

 

詳しい解説はこちら⇒

悪ふざけが犯罪に!?

https://taniharamakoto.com/archives/2563/

 

 

刑法第233条(信用棄損及び業務妨害)

虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

 

 

詳しい解説はこちら⇒

ウソの注文をすると犯罪になります。

https://taniharamakoto.com/archives/1957/

 

 

注6:田畑等侵入の罪

軽犯罪法第1条

左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

32 入ることを禁じた場所又は他人の田畑に正当な理由がなくて入つた者

 

 

注7:窃盗罪

刑法第235条(窃盗)

他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

 

 

詳しい解説はこちら⇒

お店での無断充電は犯罪です。

https://taniharamakoto.com/archives/1845/