弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜 - Part 5
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
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    顧問先の役員に対する助言で税理士損害賠償

    2024年04月04日

    今回は、顧問会社の役員個人からの税務相談に対して誤った回答をしたことにより税理士損害賠償となった東京地裁平成12年6月30日判決をご紹介します。

    (事案)

    原告は、A社の取締役である。

    A社と被告税理士は、税務顧問契約を締結している。

    被告は、A社との税務顧問契約に付随して、原告個人の確定申告業務及び個人の税務相談を行っていた。

    原告は、自己の居住用建物を売却することを考え、被告に対し、A社に売却した場合、3000万円の限度での譲渡所得の特別控除の適用を受けられるか相談したところ、被告からは、適用可能との回答を得た。

    そこで、原告は建物をA社に売却したが、同族会社への売却のため、特別控除を受けられなかった。

    (税理士の主張)

    原告個人と被告との間に税務顧問契約はない。顧問料も受領していない。

    原告から説明を受けたのは、売却利益が100万円~200万円というものであり、譲渡所得は発生しない前提であったから過失はなく、因果関係もない。

    (判決)

    顧問契約が存在しないならば、原告から相談を受けた際に、原告個人の相談は受けられない旨相談の受理を拒否すれば足りるのであって、右相談に応じたこと自体本件顧問契約の存在を裏づける事情。

    原告からの本件相談内容は、基本的事項に関するものであって、税理士としては初歩的知識というべく、その教示を誤ったという行為は、たとえ無償の顧問契約であったとしても、契約上の義務に反する重大な過失といわなければならない。

    ====================

    以上です。

    法人との顧問契約に付随して、役員等の個人確定申告業務や税務相談などを受けている場合、個人との間でも税務顧問契約が成立していると認定される可能性があるので注意が必要です。

    契約書がなく、かつ、顧問料を受領していない無償の場合でも、税務顧問契約は成立します。

    したがって、役員の税務相談に応ずる場合は、報酬を0円として契約書を締結することもご検討いただければと思います。

    報酬を0円にすれば契約は成立せず、税理士損害賠償にもならないと認識している方もいますが、民法648条1項は、「受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。」として、無償の委任契約を原則としており、報酬が0円だから契約ではない、という抗弁は成立しません。

    ご注意ください。

    「税理士を守る会」は、こちら
    https://myhoumu.jp/zeiprotect/new/