道路交通法 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
弁護士20人以上が所属するみらい総合法律事務所の代表パートナーです。
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  • 赤信号停止中の携帯電話やスマホの使用禁止について

    2016年04月06日

    今回は、運転中の携帯電話、スマホの使用について解説します。

    まずは、道路交通法を見てみましょう。

    「道路交通法」
    第71条5の5(運転者の遵守事項)
    自動車又は原動機付自転車(以下この号において「自動車等」という。)を運転する場合においては、当該自動車等が停止しているときを除き、携帯電話用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置(その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行うことができないものに限る。第百二十条第一項第十一号において「無線通話装置」という。)を通話(傷病者の救護又は公共の安全の維持のため当該自動車等の走行中に緊急やむを得ずに行うものを除く。第百二十条第一項第十一号において同じ。)のために使用し、又は当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置(道路運送車両法第四十一条第十六号 若しくは第十七号 又は第四十四条第十一号 に規定する装置であるものを除く。第百二十条第一項第十一号において同じ。)に表示された画像を注視しないこと。
    条文にあるように、運転中の携帯電話やスマホの使用では、「自動車が停止しているとき」を除き、手に持っての通話や画面注視をしてはいけないことになっています。

    しかし、法律には曖昧というと語弊がありますが、どちらにもとれるような判断が難しい「グレーゾーン」が存在します。

    では、実際の使用例に即して具体的に考えてみましょう。

    1.通話やスマホの画面を見ながら、ほんの少しでも自動車を動かしてはいけないのか?

    道交法では、「停止しているときを除き」となっています。「停止」というためには、車輪が完全に止まっていなければいけませんので、渋滞等で少しでも車輪が動いていれば、アウト、ということになります。

    ちなみに、画面を見ずにスマホの操作ができるのであれば、それは「通話」もしていないし、「注視」もしていないので走行中でもこの条文の違反ではない、ということになります。

    ただし、安全運転義務違反、という他の違反もありますので、注意しましょう。

    2.赤信号で停止しているときに、通話やスマホの画面を見るのは違反か?

    赤信号停止中は「停止」ではないとの前提で、切符を切られた、というような話を聞きます。

    しかし、私は、赤信号で完全に車輪が止まっているのであれば、「停止」として、道交法違反ではない、と考えています。

    道路交通法では、いくつかの条文で、「停止」という用語が使用されています。

    たとえば、道交法2条1項20号は、「徐行」の定義を「車両等が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう。」としています。

    とすれば、ここでいう「停止」とは、車輪が止まっている状態をいうと解釈するのが自然でしょう。

    また、道交法2条1項18号では、「駐車」の定義を「車両等が客待ち、荷待ち、貨物の積卸し、故障その他の理由により継続的に停止すること」としています。

    交差点の赤信号で停止中、故障をして継続的に停止した場合には、この条文により、駐車していることになります。

    そうであれば、赤信号で車輪を完全に停止している場合には、道路交通法上は、「停止」と解釈するべきでしょう。

    中には、「エンジンがかかっていれば『走行中』」と言えるのではないか」という意見があるかもしれません。

    しかし、そうすると、駐車場や駐停車OKの場所でエンジンをかけて駐車中の車なども「走行中」ということになり、不合理です。

    したがって、赤信号で停止中に携帯電話使用、スマホ注視をしている人に切符を切るのは間違いである、と考えています。

    ただし、現状、取締がされている、という話を聞きますので、余計なトラブルを避けるためには、赤信号停止中は使用しない方が無難です。

    警察庁は、「停止」の定義を明確にして、実務の運用の統一を図っていただければと思います。

    3.スマホ車載ホルダーに固定してナビ代わりにスマホを使用した場合でも違反になるのか?

    最近では、専用の車載ホルダーにスマホを固定して運転中にカーナビの代わりに使っているドライバーが増えているようですが、これも違反になるでしょうか。
    「画面注視」というのは、画面を見続けることをいいます。
    たとえば、カーナビは一瞥(いちべつ)を繰り返し、何度か見返せば位置が理解できるようになっているので、一瞥するだけでは注視にはなりません。

    しかし、走行中にカーナビをじっと凝視していれば当然「注視」となり、違反となります。

    したがって、スマホを、カーナビのように一瞥の繰り返しによって位置を理解し走行できれば違反にはなりません。
    しかし、専用ホルダーに固定したスマホを見続けていれば「注視」していたことになり、違反となります。

    スマホの画面は小さいので、カーナビよりも注視しやすい傾向があるため注意が必要です。

    なお、ドリンクホルダーにスマホを差して使っているドライバーもいますが、これも専用ホルダーと同様です。
    4.どのくらいの時間、画面を見続けると「注視」になるのか? 法律に規定はあるのか?

    「道路交通法」の条文に具体的な数字が書いているわけではないので、何秒以上は違反という決まりはありません。

    ちなみに、交通事故の防止を目的とした警察庁の通達の中の「運転者の遵守事項に関する規定の整備」の項目にも、「注視とは、見続けること」と記載されています。

    したがって、運転中にスマホ画面を見ることは、それ自体危険な行為であるため一瞥する以上に画面を見る行為はこの規定に違反する、と考えた方がよいでしょう。
    5.自転車運転の場合でも携帯電話での通話やスマホ画面を見ることは法律違反か?

    自転車に乗りながら携帯電話やスマホを使うくらい問題ないだろう、法律違反なんて大袈裟な、と思う人もいるかもしれません。

    実際、道路交通法の条文では、「自動車及び原動機付き自転車」に限定しています。

    しかし、道路交通法第71条6号に基づく、各都道府県の「道路交通規則」には自転車の運転中の通話や画面注視が禁止されていることがあります。

    東京都道路交通規則では、5万円以下の罰金です。

    さらに、2015年6月1日に施行された「改正道路交通法」では、自転車運転による違反の取り締まり強化と事故抑制を目的として、悪質な自転車運転者に対する安全講習の義務化を定めました。

    信号無視や酒酔い運転、一時不停止など全部で14の違反行為があり、その中の安全運転義務違反として携帯電話やスマホの使用禁止が規定されています。

    詳しい解説はこちら⇒「自転車の危険運転に安全講習義務づけに
    https://taniharamakoto.com/archives/1854
    携帯電話やスマホの“ながら運転”は死傷事故など重大な事態につながる危険性があります。

    交通ルールや法律を守り、安全運転を心がけることは自分のためだけでなく、相手のためでもあることをしっかり認識してほしいと思います。

  • 自転車の危険行為で6521人が摘発!

    2016年01月14日

    2015年の6月1日から11月末日までの、自転車運転での危険行為の摘発件数と、その内訳が公表されたので解説します。

    「自転車の危険行為、半年で6521件…4人講習」(2016年1月12日 読売新聞)

    警察庁は、2015年6月1日に施行された「改正道路交通法」で新設された、自転車運転の危険行為での摘発件数について、11月末までの数字を取りまとめ公表しました。

    全国の摘発件数は、計6521件。
    そのうち、項目別でもっとも多かったのは「信号無視」で2790件、次いで「遮断踏切への立ち入り」が1659件、「安全運転義務違反」(イヤホンを装着しながらの運転や傘差し運転など)が715件、「一時不停止」が536件、「ブレーキ不良」が312件の順。
    また、「酒酔い運転」は85件、歩道運転などの「通行区分違反」は111件となっています。

    年代別では、20歳代が最も多く1628件、次いで30歳代が1099件、10歳代が1012件、40歳代が918件と続いています。

    なお、2回摘発されて安全講習を受けたのは大阪府が3人、岡山県が1人だったということです。
    自転車での危険運転による重大事故が頻発していることから、2015年6月1日に「改正道路交通法」が施行されています。
    これは、自転車運転による違反の取り締まり強化と事故抑制を目指して、悪質な自転車運転者に対して安全講習の義務化を盛り込んだものです。

    詳しい解説はこちら⇒
    「自転車の危険運転に安全講習義務づけに」
    https://taniharamakoto.com/archives/1854

    自転車での危険行為に規定されているのは以下の14の行為です(道路交通法施行令41条の3)。

    ・信号無視(法7条)
    ・遮断機が下りた踏切への立ち入り(法33条2項)
    ・安全運転義務違反(携帯電話の使用やイヤホンを装着しながらの運転、傘差し運転など)(法70条)
    ・一時停止違反(法43条)
    ・ブレーキ不良自転車の運転(法63条の9第1項)
    ・酒酔い運転(法65条1項)
    ・歩道での歩行者妨害(法63条の4第2項)
    ・通行区分違反(法17条1項、4項または6項)
    ・通行禁止違反(法8条1項)
    ・歩行者専用道路での車両の徐行違反(法9条)
    ・路側帯の歩行者通行妨害(法17条の2第2項)
    ・交差点での安全進行義務違反(法36条)
    ・交差点での優先道路通行車の妨害(法37条)
    ・環状交差点での安全進行義務違反(法37条の2)

    これらの危険行為をした14歳以上の運転者は、まず警察官から指導・警告を受け、交通違反切符を交付されます。

    さらに、3年以内に交通違反切符を2回以上交付された場合、安全講習の対象となります。
    安全講習を受講しないと、5万円以下の罰金が科せられます。

    「前科」がついてしまう、ということですね。

    ところで、このような道路交通法の改正は違反者を罰するのは当然のことですが、自転車による交通事故の抑制・減少のためであることを忘れてはいけません。

    自転車は大変便利な乗り物です。

    これ以上、規制が増えないようにするためにも、きちんとルールを守って安全運転していただきたいと思います。

  • 飲酒運転の車に同乗した女子大生が詐欺被害に!?

    2016年01月06日

    飲酒運転が犯罪であることは誰でも知っていると思います。
    では、飲酒運転の車に乗せてもらった場合はどうでしょうか?

    今回は飲酒運転を悪用した詐欺事件について解説します。

    「元近大生ら、飲酒運転の車に同乗させ示談金詐取」(2016年1月5日 読売新聞)

    奈良県警は、飲酒運転の車に女子大生を同乗させて事故を起こしたと装い、示談金名目で現金を騙し取ったとして元近畿大生の男(20)など4人を詐欺容疑で逮捕しました。

    2015年9月、男とその共犯容疑者らは奈良市内の店で女子大生(21)と一緒に飲食。
    男が飲酒運転をして女子大生(21)を車で送る際、通行人役の男と接触事故を起こしたように偽装。
    「全員、飲酒運転の同罪だ。退学になるかもしれない」などと話し、女子大生から示談金として130万円を騙し取ったということです。

    同様の示談金の支払いを装う手口では、2015年9月~10月にかけて計6人から約370万円を騙し取った疑いがあり、他にも近畿大生を中心に十数件の被害があることから被害総額は1000万円を超えるとみて県警は調べを進めるとしています。

    別の報道では、4人の中には弁護士の息子役もいて、事故現場から父親に電話をして「同乗者も示談金を払わないといけない」と法律の確認をする芝居も打っていたようです。

    今回、注目したいのは、飲酒運転に同乗したことで退学になるかもしれない、というところが弱みになったということです。

    今回、容疑者らがお金をだまし取ることが成功したのは、犯罪に踏み込ませる⇒それを弱みとして騙す(脅す)⇒現金などの財産を出させる、という構図があるためです。

    では、この女子大生はどんな罪を犯していたのでしょうか?

    「道路交通法」
    第65条(酒気帯び運転等の禁止)
    1.何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。
    2.何人も、酒気を帯びている者で、前項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがあるものに対し、車両等を提供してはならない。
    3.何人も、第一項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがある者に対し、酒類を提供し、又は飲酒をすすめてはならない。
    4.何人も、車両の運転者が酒気を帯びていることを知りながら、当該運転者に対し、当該車両を運転して自己を運送することを要求し、又は依頼して、当該運転者が第一項の規定に違反して運転する車両に同乗してはならない。
    第4項に注目してください。
    「運転者が飲酒運転であることを知りながら車に同乗してはいけない」、とあります。

    報道内容からは女子大生が「飲酒運転同乗は罪」であることを知っていたのかどうかわかりませんが、今回の事件は罪を犯した弱みにつけ込んだ詐欺事件ということになります。

    ちなみに、飲酒運転には「酒酔い運転」と「酒気帯び運転」があり、以下のような違いがあります。

    「酒酔い運転」
    ・アルコールの影響により車両等の正常な運転ができない状態での運転
    ・行政処分では違反点数35点、免許取り消し(欠格期間3年)
    ・酒酔い運転をした者の罰則は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金
    ・運転者が酒酔い運転の場合の同乗者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処される

    「酒気帯び運転」
    ・呼気中アルコール濃度0.15mg/l以上0.25mg/l 未満
    ・行政処分では違反点数13点、免許停止期間90日
    ・酒気帯び運転をした者の罰則は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
    ・運転者が酒気帯び転の場合の同乗者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処される

    飲酒運転同乗は罪の意識が低く、これが罪になることすら知らない人もいるかもしれません。

    しかし、酒酔い運転の同乗者は、「自分で酒気帯運転をした場合」と同じ重さの刑罰を受ける、ということです。

    また、酒酔い運転の同乗者は、公務執行妨害罪や業務妨害罪と同じ重さの刑罰となっています。

    飲酒運転の車に乗る、ということは、「飲酒運転を容認する」という態度ですから、厳しい処罰を受けることになるのです。

    仮に「一緒に公務執行妨害しようぜ!」とか「会社で暴れて業務妨害しようぜ!」とそそのかされたなら、それらは犯罪という意識から、なかなか罪を犯すことはないでしょう。

    しかし、飲酒運転の同乗者も同罪です。

    このことをしっかり認識しておく必要があります。

    飲んだら乗るな、助手席も! ということですね。

     

  • 自動運転車と法律の関係とは?

    2015年12月21日

    1985年に公開された映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』。
    ロックとコーラが好きな高校生の主人公が、親友である科学者が開発した「デロリアン」という名の自動車型のタイムマシンで過去や未来にタイムトリップするが…というストーリーで大きな人気を博し、パート3まで製作・公開されました。

    パート2では、30年後の未来、つまり2015年の世界が描かれたことから、今年、ファンの間では現実の2015年との比較などでメディアを中心に盛り上がったようです。

    さて、現実に目を向けてみると、タイムトリップできる自動車はまだ開発されていませんが、自動運転で走行する自動車の開発は現実のところまできています。

    しかし、技術的な部分や事故時の損害賠償責任など、実用化にはまだ問題があるようです。

    そこで今回は、自動運転車と法律の関係について解説します。

    「自動運転実験車、公道で事故=民放リポーター乗車、けがなし―愛知」(2015年11月5日 時事ドットコム)

    名古屋大学が開発を進めている自動運転車が、公道実験中に自損事故を起こしていたことがわかりました。

    事故が起きたのは、10月22日。
    名古屋テレビの女性リポーターが運転し、助手席には実験責任者の准教授が同乗。
    名古屋市守山区の交差点を左折しようとした際、縁石に乗り上げて左前輪がパンク。
    乗っていた4人にケガはなかったようです。

    大学が事前に提出した計画書では研究者が乗ることになっていたようで、事故の報告を受けた愛知県産業振興課は、同大学に厳重注意をするとともに、再発防止のために実証実験に関するガイドラインの作成を求めたということです。

    実験車は市販のトヨタ・プリウスに自動運転機能を搭載したもので、運転席からハンドルやブレーキペダルなどは操作できるようになっていたようです。

    同課では、研究者以外の人間が運転席にいたため、ハンドルやブレーキの操作が遅れた可能性があるとみているということです。
    こうした自動走行する自動車は、現在、日本では「自動運転車」と一般的には呼ばれていますが、世界的にはドライバーレスカー、ロボットカーなどとも呼ばれるようです。

    じつは、自動運転車の歴史は長く、日本では1980年代に車線を自動認識して走行するシステムを試作していたようですが、実用化には否定的で消極的な風潮があったため、開発はあまり進展しなかったようです。

    ところが、2010年になるとアメリカやヨーロッパで公道実験が行われるようになり、アメリカでGoogle(グーグル)社やテスラー社などが積極的な開発に乗り出したことで、2013年、日本でも日産が公道実験を開始。
    トヨタやホンダ、スバルなども相次いで参入しています。

    2014年、グーグル社の自動運転車の総走行距離が100万キロメートルを突破。
    2015年には、テスラー社のシステムは日本以外では高速道路での走行が一部認可され、プログラムの配信を始めています。
    また、トヨタは今年、高速道路での報道陣向けの試乗会を開催し、日産は2020年の実用化に向けて早くも一般公道での報道陣向けの試乗会を開催しています。

    しかし、さまざまな問題も起きているようです。
    テスラー社は、「システムは未完であり、完全な自動運転ができるわけではない。自動運転中に起きた事故については一切責任を負わない」と警告しているにも関わらず、一部ユーザーが一般公道で、ハンドルから手を離して新聞や本を読む、運転席から離れて後部座席でふんぞり返るなどの運転をしている様子を動画に撮影し、投稿サイトに続々とアップ。
    中には、事故を起こしかけるなどの危険なシーンも投稿されているようです。

    今後、こうした事態が日本でも起きる可能性は十分あります。
    万が一事故が起きてしまえば、自分だけでなく他人を傷つけ、命を奪ってしまう危険もあります。

    では、法的に見ると、現状の日本において自動運転車には、どのような問題があるのでしょうか?

    公道における道路交通に関する法律としては、

    「道路交通法」
    「道路法」
    「道路運送車両法」

    があります。

    道路交通法第70条は、「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない」となっています。

    ということは、運転者がハンドルやブレーキなどを操作する義務があるので、自動運転車が走るためには、この部分を改正する必要がありそうです。

    また、道路運送車両法第41条は、操縦装置などについて、国土交通省令で定める基準に合致した自動車でなければならない、と定めており、この部分も見直す必要が出てきそうです。

    そして、自動運転車で事故があった時に、どうなるか、ということです。

    自動車損害賠償保障法では、自動車事故で他人に傷害を負わせた場合、自動車を運行の用に供している者(運行供用者)が賠償責任を負う、となっています。

    運行供用者が賠償責任を免れるためには、
    ①故意・過失がなかったこと
    ②被害者または運転者以外の第三者に故意・過失があったこと
    ③自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったこと
    を証明しなければなりません。

    実質的な無過失責任を認めたもの、と言われています。

    したがって、自動運転車が事故を起こした時も、車の所有者や運転者が訴えられることになります。

    訴える方としては、その方が立証をしやすいためです。

    自動運転車の構造や機能に欠陥があった場合には、当然メーカー責任、ということになると思いますが、訴訟実務では、車の所有者や運転者が訴えられる、ということが起きてくるでしょう。

    また、自動運転車とは言っても、危険時の急制動などは、運転者が制御できるようにするでしょうから、急制動などの措置をとらなかったことが運転者の過失となると思います。

    となると、自動運転に完全に任せきることはできず、運転しているときと同様に道路や周囲に注意しておく必要がある、ということになります。

    それを怠った時は、過失あり、としては、刑事事件でも民事事件でも責任を問われる、ということになります。

    ただし、運転席では、何もできない、という自動運転車になると、また違った話になってきます。しかし、そうなると、かなり法律を変えないと、道路走行は難しいかもしれません。

  • 過労運転をさせた社長が逮捕!?

    2015年10月17日

    ある運送会社の社長が、自らは運転していないのに道路交通法違反で逮捕されたようです。

    一体、どんな罪を犯したというのでしょうか?

    「過労運転黙認容疑で運送会社社長を逮捕 月400時間拘束続く」(2015年10月15日 産経新聞)

    兵庫県警交通捜査課などは、トラック運転手に長時間にわたる運転をさせたとして、同県加古川市の運送会社社長(67)を、道路交通法違反(過労運転の下命)容疑で逮捕しました。

    2014年11月、過労運転の恐れがあることを知りながら、トラック運転手の男性社員(60)に大阪市から広島県福山市までの運送を命じた容疑としています。

    事の発端は、県警が高速道路の路側帯に停車していた同社の運転手に事情を聞いたところ、「仮眠中だった」と話したことから、同社の運行業務の実態を捜査。
    そこで、過労運転が常態化していた疑いが強まったため、会社側の管理責任を問えると判断したようです。

    社長の男は、「過労とわかっていたが、会社の利益のために運転させた」と容疑を認めているということです。

    過去には、事故発生後に同容疑で立件したケースはありますが、事故が発生する前に適用する例は全国的にも珍しいとしています。
    【道路交通法違反“過労運転の下命”とは?】
    「道路交通法」は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的としています。(第1条)

    では、「過労運転の下命」とはどういうものでしょうか?
    関連する条文を見てみましょう。

    第66条(過労運転等の禁止)
    何人も、前条第1項に規定する場合のほか、過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない。
    ※これに違反した場合は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます。(第117条の2の2第7号)
    ※前条(第65条)第1項とは、酒気帯び運転の禁止です。
    ※薬物等の影響により正常な運転ができない状態で運転した場合は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます。(第117条の2第3号)
    第75条(自動車の使用者の義務等)
    1.自動車の使用者(安全運転管理者等その他自動車の運行を直接管理する地位にある者を含む。)は、その者の業務に関し、自動車の運転者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることを命じ、又は自動車の運転者がこれらの行為をすることを容認してはならない。

    四 第66条の規定に違反して自動車を運転すること。
    運転者に十分な休養を与えずに、正常な運転ができない状態にも関わらず運転をさせたり、運転することを容認した場合、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます。(第117条の2の2第10号)
    つまり、第66条は運転者、第75条は使用者(事業者)に対する規定ということになります。

    ちなみに、使用者(事業者)は運転者に対して、制限速度を超えるスピードで運転させたり、飲酒運転を容認してもこの罪に問われることになるので注意が必要です。
    【過労運転の定義とは?】
    では、過労運転には一定の基準や定義があるのでしょうか?

    トラック運転者の労働条件の改善を図るために策定された、労働大臣告示「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)では、次のように規定しています。

    ・1ヵ月の拘束時間は、原則として293時間が限度
    ・ただし、労使協定を締結した場合は、320時間まで延長できる
    ・1日の拘束時間は13時間以内を基本とし、延長する場合は16時間が限度
    ・1日の休息時間は、継続8時間以上を与えなければならない
    ・1日の拘束時間が15時間を超える回数は、1週間に2回まで。
    ・1日の運転時間は、2日平均で1日あたり9時間が限度
    ・1週間の運転時間は、2週間ごとの平均で44時間が限度
    ・連続運転時間は、4時間が限度

    これらの「限度」を超えると過労運転になる可能性があります。

    過去の判例では、上記の基準も参考に過労運転にあたるかどうかが争われているので、ドライバーを管理する立場の人や会社の社長などは注意が必要です。
    ところで、警視庁が公表している「平成26年中の交通事故の発生状況」によると、交通事故の総件数から見れば少ないものの、過労運転が原因の交通事故は378件起きています。

    過労状態で自動車を運転して、集中力の低下や居眠り運転などによる交通事故を起こしてしまえば、大惨事になりかねません。

    使用者や管理者は法律を守って、ドライバーに十分な休息を与えなければいけません。
    また、ドライバー自身も無理をせず安全運転に努めて、事故や交通違反がないようにしてほしいと思います。

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  • 持病で免取・免停された人が年間7711人!

    2015年07月21日

    病気のために自動車運転免許の取り消し、停止をされる人が年々増加しているようです。

    今回は、自動車運転と病気の関係について解説します。

    「持病で免停・取り消し7711件…法改正1年」(2015年7月16日 読売新聞)

    警察庁は、病気などを理由に運転免許の取り消し・停止などの行政処分を受けたケースが昨年6月からの1年間で7711件あり、前年同期の約2.5倍に上ったと発表しました。

    これは、てんかんなどの運転に支障を及ぼす可能性のある病状の申告を義務化した改正道交法が昨年6月に施行され、1年が経過した5月末時点での全国の状況を集計したもの。

    7711件の内訳は、最多が「てんかん」の2313件、次いで「認知症」の1165件、「統合失調症」は1006件、「再発性の失神」が926件など。

    処分内容は、免許の「取り消し」が4214件、「停止」が3461件で、免許取得時に保留されたケースなどが36件あったということです。
    2014年6月の改正道路交通法が成立したきっかけは、2011年4月に栃木県鹿沼市で起きた、てんかん発作で意識を失った運転者によるクレーン車暴走で小学生6人が死亡した交通事故でした。

    翌2012年4月、事故の遺族が運転免許制度の見直しなどを求める署名を警察庁に提出。
    また同月、京都市東山区の祇園で、てんかんの発作を起こした男の軽ワゴン車が暴走し、運転者を含む通行人ら8人が死亡、11人が重軽傷を負った事故が発生。

    5月、こうした事態を受けて、警察庁が運転免許を取得・更新する際の持病の申告を義務づけることなどを検討する有識者会議を設置して検討の上、道路交通法が改正され、2014年6月に施行されました。

    改正法で規定された「第90条」(免許の拒否等)に関する内容は以下の通りです。
    ・幻覚を伴う精神病や意識・運動障害をもたらす病気がある者には与えないか、6ヵ月を超えない範囲で免許を保留することができる。
    ・免許の取得・更新の際、「質問票」を各都道府県の公安委員会に提出し、病状を報告することを義務づける。
    ・質問内容は、運転に支障を及ぼしかねない病状などについて、「はい」か「いいえ」で答えるもの。
    過去5年以内に、「病気で意識を失ったことがあるか」、「体を思い通りに動かせなくなったか」、「十分な睡眠時間を取ったのに日中、眠り込んだ経験があるか」、「アルコールへの依存性」、「医師による運転中止の助言の有無」など5項目。
    ・具体的な病気は、一部のてんかん、統合失調症、睡眠障害、認知症、アルコール・薬物中毒など。
    ・医師の診断の必要ありと判断された場合、主治医または専門医の診断書を提出。運転に支障ありと判断されれば、免許の取り消しや停止の処分。
    ・虚偽申告した場合は、1年以下の懲役または30万円以下の罰金
    ところで、てんかんなどの政令で定める病気の人の運転は、道路交通法だけでなく「自動車運転死傷行為処罰法」にも関わってきます。

    「自動車運転死傷行為処罰法」
    第3条(危険運転致死傷)
    1.アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた者は12年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は15年以下の懲役に処する。
    2.自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた者も、前項と同様とする。
    政令で定める「特定の病気」には以下のものがあります。
    1.統合失調症
    2.てんかん
    3.再発性の失神
    4.低血糖症
    5.そう鬱病
    6.重度の睡眠障害
    詳しい解説はこちら⇒
    「自動車運転死傷行為処罰法:病気の影響による“危険運転致傷”が初適用!」
    https://taniharamakoto.com/archives/1520

    ただ、これらの病気の人が自動車事故を起こしたからといって、すべてで罪が成立するわけではなく、「過失」なのか「故意」なのかが問題になってくるので注意が必要です。

    「自動車運転死傷行為処罰法」の
    詳しい解説はこちら⇒ https://taniharamakoto.com/archives/1236
    生活の足として、もしくは仕事での使用など自動車は便利なものですが、
    いずれにせよ、上記の病気の人や自覚症状のある人は医師の診断を受けて自分が運転できる状態なのかどうか判断しなければいけません。

    今回、発表された統計では本人や家族から警察へ相談した件数は7万744件で前年同期の約1.3倍だったようです。
    家族など周囲の人が注意深く見守り、問題がありそうなら本人に忠告する、診察を勧めるなどのケアも必要でしょう。

    持病による事故は重大な結果を引き起こす可能性が高いものです。
    本人も周囲の人も十分注意してください。

  • 運転中の携帯電話で逮捕ですかっ!?

    2015年05月09日

    世の中、便利になるのはいいことですが、そのうち便利さゆえの問題が生じて、結局は法律で取り締まらなければならなくなる…そんな残念なことが社会のさまざまな場面で見受けられます。

    携帯電話やスマホもそうですね。
    広く普及している現在では、その使い方やシチュエーションで問題が起きることがあります。

    そこで今回は、携帯電話を使いながらやってしまったことで逮捕された、という事件を解説します。
    一体、何をしてしまったのでしょうか?

    「運転中に携帯電話容疑 反則金未納で女逮捕/浦和署」(2015年5月7日 埼玉新聞)

    埼玉県警運転管理課と浦和署は、道交法違反(携帯電話使用等)の疑いで、越谷市の女(40)を逮捕しました。

    そもそもは2012年9月、さいたま市の県道で携帯電話の画面を注視しながら自動車運転をしていたことによる違反なのですが、女は反則金を支払わず、同署が通知書を郵送するなど複数回出頭を要請していたにもかかわらず、応じなかったということで今回の逮捕となったようです。

    容疑者の女は、「収入がなくて納付できなかった」と供述しているということです。

    収入がなくても、3年近くも自動車には乗ることができたということでしょうか?
    ガソリン代は、どうしていたのでしょうか?

    それはさておき、早速、条文を見てみましょう。

    「道路交通法」
    第71条5の5(運転者の遵守事項)
    自動車又は原動機付自転車を運転する場合においては、当該自動車等が停止しているときを除き、携帯電話用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置を通話のために使用し、又は当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置に表示された画像を注視しないこと。
    これに違反し、道路における交通の危険を生じさせた者は、3月以下の懲役又は5万円以下の罰金に処されます。(第119条9の3)

    念のため、ここで禁止されているのは手を使って送受信する無線通話装置(携帯電話等)であり、傷病者の救護や公共の安全の維持のため走行中に緊急で、やむを得ずに使う場合は除外されていることは覚えておいてください。

    ところで、「携帯電話を使いながら自動車運転しただけで逮捕とはおおげさじゃないか?」

    と思った人もいるかもしれませんが、通常は、いきなり逮捕とはなりません。

    今回のように出頭要請を無視し続けていると逮捕ということになります。

    また、仮に罰金を支払えない場合は、金額分の労役を日数で科されますから注意が必要です。
    たとえば、5万円の罰金なら拘置所で10日間の労役というのが通常です。

    ともかく、警察から被疑者として出頭要請された場合は、素直に出頭しなければならないということです。

    ちなみに、これは自転車の場合でも同じです。

    道路交通法第71条6号に基づき、各自治体が「道路交通規則」を定めていますが、ちなみに、東京都道路交通規則では、携帯電話・メールをしながらの運転が禁止されています。

    違反した場合は5万円以下の罰金です。

    とにかく、便利だからといって携帯電話やスマホを使いながらの自動車運転は、たとえ交通違反の点数は2点だとしても大変危険ですし、法律で禁止されているわけですから、やってはいけません。

    「注意一秒、ケガ一生」の標語は自分のためだけではありません、周りの人のためでもあります。

    肝に銘じておきましょう。

  • 自転車ひき逃げで書類送検

    2015年04月21日

    自転車でぶつかっただけ、では、済まない時代になりました。

    「“自転車の事故はお互いさまでは…”自転車ひき逃げの19歳女子大生を書類送検」(2015年4月17日 産経新聞)

    大阪府警高石署は、自転車同士の衝突事故で相手にケガを負わせたにも関わらず、そのまま走り去ったとして、府内の女子大生(19)を重過失傷害と道路交通法違反(ひき逃げ)の容疑で書類送検しました。

    事故が起きたのは2015年1月26日午前10時すぎ。
    女子大生が市道交差点を自転車で走行中、パートの女性(57)の自転車と衝突。
    女性を転倒させ、右足首を骨折させたのに救護措置を取らずに逃走したようです。

    女子大生は、テレビで事故のニュースを見た家族に付き添われ、事故当夜に自首。

    「通学で急いでいた」、「自転車の事故なのでお互いさまと思って立ち去ってしまった」と話しているということです。

    怪我をさせれば、損害賠償義務を負います。

    ところで、今回の事故は、刑事事件での書類送検です。
    ポイントは、大きく4点あります。

    1.道路交通法の「救護義務違反」=ひき逃げとは?
    事故を起こした場合、以下の措置等を取らなければいけません。(第72条)
    ①車両の運転者と同乗者は、ただちに運転を停止する。
    ②負傷者を救護する。
    ③道路での危険を防止するなど必要な措置を取る。
    ④警察官に、事故発生の日時、場所、死傷者の数、負傷の程度等を報告する。
    ⑤警察官が現場に到着するまで現場に留まる。

    これらを怠ると、「ひき逃げ」という犯罪になりますので注意してください。

    詳しい解説はこちら⇒「軽傷のひき逃げで懲役15年!?」

    軽傷のひき逃げで懲役15年!?


    2.自転車も「車両」の一種
    道路交通法では、自転車は車両の一種である「軽車両」です。
    当然、自転車の事故も犯罪になるので注意してください。

    ただし、自動車と自転車では刑罰に違いがあります。
    自動車で、ひき逃げをして、被害者を死傷させた場合は、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます。(第117条2項)

    自転車の場合は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処されます。(第117条の5)
    3.重過失傷害罪とは?
    「重過失傷害罪」とは、過失致傷に重過失、つまり重大な過失により人にケガをさせた罪です。
    「注意義務違反」の程度が著しいことをいいます。

    自転車の運転で重過失があった場合には、この規定が適用されます。

    法定刑は、5年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金です。

    4.書類送検とは?
    テレビや新聞などのメディアで「書類送検」という言葉を見かけますが、逮捕と何が違うのでしょうか?

    書類送検とは、刑事事件の手続きにおいて被疑者を逮捕せずに、または逮捕後保釈してから身柄を拘束せずに事件を検察官送致することです。
    被疑者の逮捕や拘留の必要がない場合や、送致以前に被疑者が死亡した場合などで行われます。

    今回の事故の場合、被疑者である女子大生は家族に付き添われて自首したということで、逃亡する可能性も低いために書類送検になったのだと思います。

    近年、自転車による重大事故が増えています。

    警察庁が公表している統計資料「平成26年中の交通事故の発生状況」によると、自転車関連の事故は10万9,269件で、交通事故全体に占める割合は約2割です。
    また、自転車同士の事故は2,865件起きていて、そのうち2件が死亡事故となっています。

    こうした事態を受けて、自転車による交通事故も厳罰化の方向に向かっています。
    詳しい解説はこちら⇒「自転車の危険運転に安全講習義務づけに」
    https://taniharamakoto.com/archives/1854
    報道内容からだけでは詳しい状況がわかりませんが、事故を起こして相手がケガをしたにも関わらず、「お互いさまと思った」という女子大生の感覚は、交通事故の危険性、重大性を理解していない浅はかで軽率なものと言わざるを得ないでしょう。

    自転車は気軽で日常使いだからといって、けっして他人事と軽くとらえずに、細心の注意を払って運転してほしいと思います。

  • 大人も子供も知っておきたい!自転車法律ルール25

    2015年03月27日

    あとから振り返ってみると、どうやってできるようになったのか?
    思い出せないことがあります。

    自転車の乗り方も、そのひとつかもしれません。
    親や兄弟、友人から教えてもらった人もいるでしょうし、誰からも教えてもらうことなく、ある日突然乗れるようになったという人もいるでしょう。

    私も子供の頃のことなのでよく覚えていませんが、乗れるようになったときはうれしくて、夢中でペダルを漕いだことは今でも覚えています。

    ところで、自転車の乗り方を教えてもらったことのある人はいても、道路を走るときの自転車のルールについて教えてもらったことのある人は、あまりいないのではないでしょうか?

    自動車の免許を取得するために、教習所に行ったときに初めて道路交通法の規則を知ったという人も多いかもしれません。

    今回は、そんな状況にふと疑問を感じた、小学生のお子さんのいる読者の方からの質問にお答えします。

    Q:9歳の息子がいます。だんだん、やんちゃになって危ないことに面白味を感じることも多くなってきたようです。ところで今、親として心配なのは交通事故についてです。息子は自転車が好きで、よく外出するのですが、見ていると危なっかしいのです。事故が起きる前に交通ルールを教えることは大切だと思っています。でも、交通ルールを教える授業などありませんから親が教えるしかありません。子供に教えるべき自転車のルールを教えてください。

    A:まずは、「道路交通法」について学ぶ必要があります。しかし、1~132条まであるので、ここでは自転車に関する部分を中心に解説していきます。
    【道路交通法とは?】
    道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的としたものです。(第1条)

    1960(昭和35)年に、それまであった「道路交通取締法」が廃止されて道路交通法が施行されました。

    その後、1978年に自動二輪者のヘルメット着用義務化、1992年に運転席と助手席のシートベルト義務化(一般自動車道)、1999年に運転中の携帯電話の使用禁止、2000年に6歳未満の幼児に対するチャイルドシート義務化などが行われ、その他、飲酒運転やひき逃げなどの罰則強化等を経て、現在に至ります。
    【自転車とは】
    ・道路交通法上、自転車は車両の一種である「軽車両」です。
    ・ペダル又はハンド・クランクを用い、かつ、人の力により運転する二輪以上の車であって、身体障害者用の車いす、歩行補助車等及び小児用の車以外のものです。
    ・車体の長さは190センチ以内、幅は60センチ以内。(内閣府令)
    ・ブレーキが、走行中容易に操作できる位置にあること、など。
    ・一般の自転車の乗車人員は、16歳以上の運転者の場合、幼児用座席を設けた自転車に6歳未満の幼児を1人に限り乗車させることができます。
    【自転車で禁止されている行為とは】
    先月、2015年6月施行に向けた新たな「改正道路交通法」の施行令が閣議決定されました。

    詳しい解説はこちら⇒
    「自転車の危険運転に安全講習義務づけに」
    https://taniharamakoto.com/archives/1854

    この施行令は、自転車運転による違反の取り締まり強化と事故抑制を目指して、悪質な自転車運転者に対して安全講習の義務化を盛り込んだものですが、この中で自転車の悪質運転・危険行為について14項目を規定しています。

    では、この14項目を中心に、大人から子供まで自転車に関する「してはいけないこと」を罰則が重い順に解説していきます。
    <5年以下の懲役又は100万円以下の罰金>(第117条の2第1号)
    〇酒酔い運転(第65条)
    ※もちろん子供はお酒を飲んではいけませんが、大人も自動車と同様に飲酒運転は違反行為です。
    <1年以上の懲役又は30万円以下の罰金>
    〇徹夜や過労などで自転車に乗ってフラフラと走行する(第66条)
    <3ヵ月以下の懲役又は5万円以下の罰金>
    〇信号無視(第7条)

    〇通行禁止道路の走行(第8条)
    ※道路標識等によって禁止されている道路や場所は通行してはいけません。

    〇右側通行(第17条の2)
    ※自転車は、道路の左側に設けられた路側帯を通行しなければいけません。

    〇遮断機が下りた踏切への立ち入り(第33条2項)

    〇交差点での優先道路通行車の妨害(第38条2項)

    ※交差道路が優先道路の場合、通行する車の妨害をしてはいけません。

    〇横断歩道での歩行者優先(第38条1項)
    ※横断歩道で歩行者がいる時は、その直前で一時停止して、歩行を妨げてはいけません。

    〇歩道での歩行者妨害(第63条の4の2項)

    〇一時停止違反(第43条)
    ※道路標識のある場所では一時停止しなければいけません。

    〇整備不良車の運転(第62条)
    ※壊れているなどの整備不良自転車を運転してはいけません。

    〇環状交差点での安全進行義務違反(第37条の2)
    <5万円以下の罰金>
    〇無灯火運転(第52条)
    ※夜間(日没から日出まで)は灯火して運転しなければいけません。

    〇ブレーキなし、もしくは故障したままでの自転車運転(第63条の9)

    詳しい解説はこちら⇒
    「こんなことで逮捕とは…ブレーキなし自転車(ピスト)で全国初逮捕」
    https://taniharamakoto.com/archives/1208
    <2万円以下の罰金又は科料>
    〇路側帯の歩行者妨害(第17条2項)
    ※路側帯では歩行者の通行を妨げないような速度と方法で進行しなければいけません。

    〇並走の禁止(第19条)(第68条)

    〇歩道での徐行違反(第63条の4の2項)

    〇2人乗り運転(第55条)
    ※ただし、16歳以上の運転者が安全基準を満たした幼児2人同乗用自転車を運転する場合は、その幼児用座席に幼児2人を乗車させることができます。

    〇ベルを鳴らしながら走って歩行者を退かせようとする行為(第54条2項)
    ※むやみに警報器を鳴らしてはいけません。
    なお、道路交通法第71条6号に基づく各自治体の「道路交通規則」では、次の行為が禁止されています。(ここでは東京都道路交通規則から抜粋)
    違反した場合は5万円以下の罰金です。

    〇傘をさしての片手運転
    〇携帯電話・メールをしながらの運転
    〇ペットを連れての運転
    〇イヤホンをつけたままでの運転
    〇警音器の整備されていない自転車の運転
    いかがだったでしょうか?
    今回は、25個を紹介したので一度に覚えるのは大変かもしれませんね。

    しかし、自転車に関する交通規則や法律は、自分の身を守るためにも、人を傷つけないためにも大切です。

    この機会にぜひ、大人も子供もしっかり交通規則と法律を覚えて、自転車ライフを楽しんでほしいと思います。

  • アイドルたちが書類送検!路上ライブは犯罪!?

    2014年10月13日

    1957年に出版された、アメリカ人作家ジャック・ケルアックの小説『路上』(原題:On the Road)は、ヒッピーたちから熱狂的に支持され、音楽や文学など、いわゆるカウンターカルチャーに大きな影響を与えたといわれています。

    主人公たちがアメリカ大陸を自由に放浪する様子は、当時の若者たちのあこがれでもあったのでしょう。

    路上が若者文化の発信場所のひとつなのは古今東西変わらず、日本でも1980年代初頭、原宿の歩行者天国(ホコ天)で「竹の子族」と呼ばれる若者たちが派手な衣装に身を包みステップを踏んで踊ることが大きなブームになりました。

    現代の日本でも、駅前や公園などで路上パフォーマンスをする若者たちがいますね。
    売れないアーティストやアイドルたちの中には、お金をかけずに自分たちのパフォーマンスを見てもらう手段ということで、路上ライブを積極的に行う人たちもいます。

    ところで先日、そんな路上ライブで10人が書類送検されるという事件が起きました。

    一体、彼らはどんな犯罪行為をしてしまったのでしょうか?

    「新宿駅前で無許可ライブ容疑、アイドルら10人書類送検」(2014年10月8日 朝日新聞デジタル)

    警視庁新宿署は8日、新宿駅前の路上でライブを無許可で行ったとして、関西を拠点とする女性アイドルグループの18歳~26歳のメンバー7人と、ものまねタレントの男2人、グループの責任者の男(24)の計10人を道路交通法違反(道路の不正使用)の疑いで書類送検しました。

    報道によると、このアイドルグループはこれまでにも9回、無許可でライブを開いて客を集め、CDを販売するなどして道路を不正に使用した疑いがあり、新宿署はライブの度に注意し、グループは2度と行わないとする誓約書を毎回書いていたとしています。

    今年に入り、新宿駅周辺での路上ライブに関する苦情が545件寄せられていることから、同署は取り締まりを強化したようです。
    さて、道路と交通に関する法律に「道路交通法」があります。

    1960年に施行された同法は、第1条に次のように規定しています。

    「道路交通法」
    第1条(目的)
    この法律は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的とする。
    今回の違反容疑は、道路の不正使用です。条文を見てみましょう。

    第77条(道路の使用の許可)
    1.次の各号のいずれかに該当する者は、それぞれ当該各号に掲げる行為について当該行為に係る場所を管轄する警察署長の許可を受けなければならない。
    警察署長の許可が必要な行為には以下のようなものがあります。

    〇道路での工事や作業
    〇道路での石碑や銅像、広告などの設置
    〇道路での露店や屋台などの出店
    〇一般交通に著しい影響を及ぼすような使用行為(祭礼行事、ロケーシヨン等)
    〇道路に人が集まり一般交通に著しい影響を及ぼすような行為

    これらに違反した者は、3ヵ月以下の懲役又は5万円以下の罰金です。

    また、各都道府県には「道路交通規則」というものがあります。
    東京都の道路交通規則にも許可が必要な行為が細かく定められています。

    〇祭礼行事、記念行事、式典、競技会、仮装行列、パレード、街頭行進など
    〇旗、のぼり、看板、あんどんなどを持って楽器を鳴らし、又は特異な装いをして、広告又は宣伝をすること
    〇車両等に広告又は宣伝のため著しく人目をひくように、装飾その他の装いをして通行すること
    〇ロケーション、撮影会その他これらに類する行為
    〇拡声器、ラジオ、テレビ、映写機等を備え付けた車両等により、放送又は映写をすること
    〇演説、演芸、奏楽、放送、映写その他の方法により、道路に人寄せをすること
    〇消防、水防、避難、救護その他の訓練を行なうこと
    〇交通の頻繁な道路で寄附を募集し、若しくは署名を求め、又は物を販売若しくは交付すること
    〇ロボットの移動を伴う実証実験又は人の移動の用に供するロボットの実証実験をすること

    路上ライブやパフォーマンスは、許可を取っていなければ犯罪になる可能性があるということです。

    ちなみに以前、道路でやってはいけない行為について解説しました。

    詳しい解説はこちら⇒「走行中の車からポイ捨てすると犯罪!?」
    https://taniharamakoto.com/archives/1323

    若さと、その情熱から自己表現をしたい気持ちはよくわかります。

    警察も、そのためにいきなり逮捕するのではなく、9回も注意し、反省を促してきていました。

    日本は法治国家です。

    売れるようになりたい気持ちはわかりますが、あくまで法律の範囲内で工夫し、努力をしていかなければなりません。