無免許運転 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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  • 危険運転はなくならない!?-自動車運転死傷行為処罰法施行1ヶ月

    2014年06月29日

    危険・悪質な運転による死傷事故を厳罰化するために新設された「自動車運転死傷行為処罰法」が施行されて1ヵ月が経ちました。

    「自動車運転死傷行為処罰法」の詳しい解説はこちら
    ⇒ https://taniharamakoto.com/archives/1236

    この度、警視庁がまとめた1ヵ月の摘発状況が公表されたのですが、果たして、どのような結果だったのでしょうか?

    「新規定で18件摘発=悪質事故厳罰化1カ月―警察庁」(2014年6月26日 時事通信)

    警察庁の発表によると、自動車運転死傷行為処罰法の施行から1ヵ月間の摘発状況をまとめたところ、18件に適用されたということです。

    内訳は、「アルコール、薬物、病状の影響で運転に支障が生じる恐れを認識していた危険運転致死傷罪」が最多の8件、「通行禁止道路を進行した危険運転」が1件、「アルコールや薬物の影響の発覚を免れようとする免脱罪」は6件、さらに、これらの違反者が「無免許運転だった場合の罰則の加重」は3件あったとしています。

    そもそも、自動車運転死傷行為処罰法は、栃木県鹿沼市で起きた、てんかん患者の運転手の発作により小学生6人をはねて死亡させた「鹿沼市クレーン車暴走事件」(2011年4月)や「京都祇園軽ワゴン車暴走事故」(2012年4月)、無免許・居眠り運転が原因で起きた「亀岡市登校中児童ら交通事故死事件」などの重大事故の遺族の方などが危険運転の罰則の見直しを望んだことから世論の後押しもあって新設されたものです。

    しかし、単純計算すると、この1ヵ月では40時間に1件の割合で、危険・悪質事故が起きたことになります。

    先日、発生した脱法ハーブに絡んだ池袋の死傷事故など、依然として危険・悪質事故は絶えません。
    詳しい解説はこちら⇒「脱法ハーブで危険運転致死傷罪か!?」
    https://taniharamakoto.com/archives/1530

    新しい法律を作っても、それを国民に広く知らしめなければ、抑止効果は薄いと思います。

    今回の自動車運転死傷行為処罰法の施行については、国民に対する告知が足りないように感じています。

    危険な運転をすると、いかに重い処罰を受けることになるのか、広く国民に知ってもらい、少しでも悲惨な事故が減少するよう祈ります。

  • 自動車運転死傷行為処罰法:病気の影響による「危険運転致傷」が初適用!

    2014年06月15日

    2014年5月20日に施行された「自動車運転死傷行為処罰法」。
    詳しい解説はこちら⇒ https://taniharamakoto.com/archives/1236

    今回は、新たに規定された「病気の影響による危険運転致傷」が初適用された自動車事故について解説します。

    病気の影響とは、どういうことでしょうか?
    持病がある人は、自動車を運転すると罪になるということでしょうか?

    「てんかんで事故の男逮捕、札幌 処罰法初適用」(2014年6月10日 共同通信)

    無免許で自動車を運転し、持病のてんかんの発作を発症して軽傷事故を起こしたとして、札幌東署は10日、札幌市のアルバイトの男(26)を、自動車運転処罰法違反(危険運転致傷、無免許)の疑いで逮捕しました。

    男は札幌市内の道路で、無免許でワゴン車を運転中、てんかんの発作を起こした影響で対向車線にはみ出し、無職男性(79)の乗用車と衝突。男性に軽傷を負わせた疑いです。

    事故当時、男は意識がなく全身がけいれんしていたということで、
    調べに対し、「免許は取れないとあきらめていた」と語っているようです。

    じつは容疑者の男は、2009年8月にも無免許運転でひき逃げ事件を起こしていたということです。

    「自動車運転死傷行為処罰法」では、「危険運転致死傷」の適用範囲を広げています。

    適用する要件には、アルコールや薬物の他に、特定の病気による影響も含めて、正常な運転が困難な状態で走行することを対象としています。

    これには、2011年4月、栃木県鹿沼市で起きた、てんかん患者の運転手の発作により小学生6人をはねて死亡させた「鹿沼市クレーン車暴走事件」や、2012年4月に起きた「亀岡市登校中児童ら交通事故死事件」などを受けての新法成立という背景があります。

    今回の事件で容疑者の男は、てんかんの持病があるために運転に困難な状況が起こることを自覚していながら、免許を取得することをあきらめ、故意に無免許運転を繰り返していたことで、危険運転致傷に無免許運転が加重されたということです。

    刑罰は、最長で懲役20年になります。
    今回は不幸中の幸いで、相手の被害者のケガが軽傷でしたが、非常に重い罪です。

    ところで、政令で定める「特定の病気」には以下のものがあります。
    1.統合失調症
    2.てんかん
    3.再発性の失神
    4.低血糖症
    5.そう鬱病
    6.重度の睡眠障害

    ただ、これらの病気の人が自動車事故を起こしたからといって、すべてで罪が成立するわけではありません。

    自覚症状がなかったり、運転するのに支障が生じるおそれがないと思っているような場合で、たとえば今まで意識を喪失したことがない、医師から特に薬を処方されていなくて普通に自動車を運転できていたような場合は、罪の対象にはならないと考えられます。

    しかし、これら政令で定める病気の診断を受けていなかったとしても、自分が何らかの病気のためにたびたび意識を喪失することを自覚していて、正常な運転に支障が生じるおそれがあることを知っていれば、事故後に、事故時において政令で定める病気であったことがわかった場合、この罪が成立すると考えられます。

    つまり、「過失」なのか「故意」なのかが重要になってくるということです。

    ちなみに、自動車の運転に支障を及ぼす可能性のあるてんかんや統合失調症などの病気の患者が、運転免許の取得や更新時に病状を虚偽申告した場合、罰則を科すことを新設した「改正道路交通法」が6月1日に施行されました。
    罰則は「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」です。

    これらの病気の人、または自覚症状がある人は、まずは医師の診断をきちんと受けてから、自分が自動車運転できる状態なのか、そうでないのかの判断をしなければいけません。

    自覚があるにも関わらず、免許を取得もせずに自動車運転をするなどということは言語道断です。

    十分すぎるくらいに考慮して、強い自覚を持ってハンドルを握ってほしいと思います。

    これくらいなら大丈夫、などという自分勝手な判断は命取りになるかもしれません。

    「自動車運転死傷行為処罰法」の
    詳しい解説はこちら⇒ https://taniharamakoto.com/archives/1236

  • 自動車運転死傷行為処罰法:「無免許過失運転致傷」が初適用!

    2014年06月10日

    5月20日に施行された「自動車運転死傷行為処罰法」関連の事故で、今度は「無免許過失運転致傷罪」(無免許運転による加重)が適用された事故が起きてしまいました。

    早速、解説していきます。

    「自動車運転死傷行為処罰法」の詳しい解説はこちら
    ⇒ https://taniharamakoto.com/archives/1236

    「無免許で車運転の16歳少年、軽傷ひき逃げで逮捕」(2014年6月8日 産経新聞)

    滋賀県警守山署などは7日、無免許運転で相手車両の男性にケガを負わせたまま逃げたとして、建設作業員の少年(16)を自動車運転死傷処罰法違反(無免許過失運転致傷)の疑いなどで逮捕しました。

    報道によると、少年は滋賀県野洲市の県道で軽乗用車を運転中、信号が赤色点滅だった交差点に進入し、トラックと出合い頭に衝突。

    トラックを運転していた男性(46)の両足に軽傷を負わせながら、救護措置を取らず現場から車で逃げ去ったということです。

    「無免許運転による加重」は、今回新たに加えられた犯罪類型で、以下の罪を犯した者が、事故の時に無免許だった場合に成立するものです。

    〇危険運転致傷罪(死亡の場合や、「進行を制御する技能を有しない」犯罪類型を除く。死亡の場合を除くのは、すでに最高刑が規定されているため)

    〇準危険運転致死傷罪

    〇過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪

    〇過失運転致死傷罪

    過去、無免許のよる重大事故が発生したにもかかわらず、「自動車運転過失致死傷罪」と「道路交通法違反」という軽い罰則しか科せられず社会的批判が高まったことから、世論の後押しもあって今回新たに規定されたのが、この「無免許運転による加重」です。

    従前は、たとえ無免許でも運転する技術があれば危険運転致死傷罪が適用されず、刑罰は軽すぎる、と批判がありました。

    しかし、無免許運転は、基本的な交通ルールの無視という規範意識の低さとともに、それ自体が危険な行為であるため厳罰化となったわけです。

    無免許運転による罪が加重されると、最高刑は次のようになります。

    〇危険運転致傷罪(懲役15年)+無免許→懲役20年

    〇アルコール等で不覚にも運転困難に至って事故を起こした罪(懲役15年)+無免許→懲役20年

    〇アルコール等影響発覚免脱罪(懲役12年)+無免許→懲役15年

    〇過失運転致死傷罪(旧自動車運転過失致死傷罪)(懲役7年)+無免許→懲役10年

    今回の事故の場合、加害者は、
    過失運転致傷罪+無免許+道交法違反(救護義務違反)となり、最高で懲役15年の可能性があります。

    ただ、今回は、16歳の未成年者が加害者ですので、少年法が適用され、将来の更正を期待した処分になると思います。

    とにかく、成年でも未成年でも、当然のことながら無免許運転は以前よりも格段に重い罪が科せられるということです。

    ドライバーの人には、肝に銘じてほしいと思います。

    「自動車運転死傷行為処罰法」の詳しい解説はこちら
    ⇒ https://taniharamakoto.com/archives/1236

  • 飲んだら乗るな!助手席も!~無免許同乗、飲酒同乗~

    2014年01月16日


    年末年始、帰省などで自動車の運転をした人も多かったのではないでしょうか。

    自動車の運転は疲れるものです。特に、長距離移動では交代してくれる「相棒」がいると心強いものです。

    ところが、その相棒がじつは無免許だったら? もしくは、無免許と知りながらあなたが自動車の運転をさせたとしたら、どうなるでしょう? そんな事件が起きました。

    「無免許運転と知りつつ同乗─会社員の男を書類送検」(2014年1月7日 時事ドットコム)

    警視庁第9方面交通機動隊は1月7日、交通違反で免許が取り消されていた同僚にトラックの運転を任せ、同乗したなどとして、会社員の男(27)を書類送検しました。

    事件が起きたのは昨年の12月。

    東京都日野市の路上で会社員の男は、同僚の男(22)が無免許であることを知りながら2トントラックの運転をさせて、自分は助手席に同乗。
    2人は引っ越しなどの雑務を請け負う仕事をしており、次の現場に急いでいたといいます。

    トラックを走らせること15分後、同隊の白バイ隊員に停止を求められた際、2人は席を入れ替わってごまかそうとしたが無免許であることが発覚。

    会社員の男は、道路交通法違反(無免許運転同乗)および犯人隠避・同教唆の疑いで書類送検されたようです。

    調べによると、「自分よりも運転が上手いと思った」と話しているようで、
    同僚の男も道路交通法違反(無免許運転)容疑などで書類送検されました。

    無免許運転は、2013年12月1日施行の「改正道路交通法」により、3年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金に罰則が強化されています。

    また、無免許運転と知りながら助手席に座っただけで犯罪になることを知らない人もいるかもしれませんが、これも同様に改正道路交通法によって、2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金、という罰則が新設されています。

    さらには、無免許の運転者に車を提供しても、3年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金になります。

    この会社員の男は、同僚の無免許運転を隠してごまかそうとしたために、犯人隠避と同教唆の容疑まで雪だるま式に増えてしまいました。

    犯人であることを隠そうとするのも犯罪なのです。

    「刑法」第103条(犯人蔵匿等)
    罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、2年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。

    「蔵匿」とは、人に見つからないように隠しておくこと。「隠避」とは、隠れ場所を提供する以外の方法で、犯人・逃走者の発見または逮捕を妨げることです。

    「刑法」第61条(教唆)
    1.人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。
    2.教唆者を教唆した者についても、前項と同様とする。
    「教唆」とは、ある事を起こすよう教えそそのかすこと。他人をそそのかして犯罪実行の決意をさせることです。
    ちなみに、飲酒運転の車に同乗しても、車を提供しても犯罪になります。

    「道路交通法」65条(酒気帯び運転等の禁止)
    1.何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。
    2.何人も、酒気を帯びている者で、前項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがあるものに対し、車両等を提供してはならない。
    3.何人も、第1項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがある者に対し、酒類を提供し、又は飲酒をすすめてはならない。
    4.何人も、車両(中略)の運転者が酒気を帯びていることを知りながら、当該運転者に対し、当該車両を運転して自己を運送することを要求し、又は依頼して、当該運転者が第1項の規定に違反して運転する車両に同乗してはならない。

    色々あって憶えられないかもしれませんが、たとえ自分が直接の違法行為を犯していないとしても、他人の酒気帯び運転・無免許運転などに関与すると、自分も罰せられる、ということです。

    注意してください!

    一緒にお酒を飲んで、車を運転して帰ろうとしている知人から「送っていく」と言われ、「自分は運転するわけじゃないから大丈夫」などと思っていると、犯罪になる可能性があります。

    飲んだら乗るな、助手席も! ということですね。

  • 改正道路交通法可決 無免許運転の罰則は?

    2013年06月08日


    6月7日の衆議院本会議で、改正道路交通法が可決しました。

    内容としては、無免許運転の厳罰化や免許取得・更新時に、病気などを隠した場合の罰則の新設などです。

    2012年4月の京都亀岡で登校中の児童ら10人を死傷させた無免許事故や、2011年4月の栃木県鹿沼市の児童6人がはねられ死亡した、病気発作によるクレーン事故などを受けたものです。

    無免許運転の罰則は、現在、「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」です。

    これが、改正によって「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」になります。

    軽いと思われるかもしれませんが、無免許運手で人身事故を起こした場合には、これに、自動車運転過失致死傷罪も成立します。

    自動車運転過失致死傷罪の法定刑は、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金です。

    そうすると、無免許運転罪と自動車運転過失致死傷罪が「併合罪」となり、刑罰は、最長10年の懲役、ということになります。

    高度経済成長期のモータリゼーションを進める過程では、自動車事故の罰則は低く抑えられていましたが、成熟した現代社会では、モータリゼーションよりも、適正な刑罰が要請されます。

    近年、自動車事故の罰則が強化されてきていますが、それは、社会が自動車事故に対して厳しい目を向けるようになったことに起因しているのだと思います。

    このところ、交通事故の数は減少傾向にありますが、それでも2012年の交通事故発生件数は、66万5,138件で、交通事故による死者数は、4,411人です。

    1日に約12人が交通事故によって尊い命を落としています。

    自動車を運転する人は、くれぐれも細心の注意を払って車を運転していただきたいと思います。

    なお、この改正道路交通法は、政令などを整備し、半年から2年以内に順次、施行されることになります。

    交通事故被害者のための無料小冊子は、こちら
    http://www.jiko-sos.jp/report/