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TBSテレビ「ひるおび」生出演
2015年06月13日
2015年6月12日放送分のTBSテレビ「ひるおび」に生出演しました。
先日、北海道で、痛ましい事故が起きました。
4人が死亡し、一人は長い距離を引きずられて死亡した、ひき逃げ事故です。
この事故は、法律の適用が難しいので、交通事故に詳しい法律専門家として、コメンテーター出演したものです。
故人のご冥福をお祈りいたします。
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平成26年度統計から見える交通事故の現状と問題点とは?
2015年01月10日
昨年の交通事故についての統計「平成26年中の交通事故死者数について」が、警察庁から発表されました。
交通事故の件数、死傷者数ともに減少していますが、新たな問題が浮き彫りになってきたようです。「昨年の交通死4113人…高齢者の割合過去最高」(2015年1月5日 読売新聞)
平成26(2014)年の全国の交通事故の死者は4113人で、前年よりも260人(5・9%)少なかったことが警察庁のまとめで分かりました。
死者数は、平成13(2001)年から14年連続で前年より減少していますが、目立っているのは65歳以上の高齢者で、2193人が死亡。
死者の総数に占める割合は53・3%で、統計がある昭和42(1967)年以降で最も高かったようです。原因について警察庁は、高齢者の人口が増えていることや、体力が衰えた高齢者の場合、事故にあった後に死亡する確率が若い世代に比べて高いためと分析しているということです。
前者の理由はわかりますが、後者の理由は、死亡事故における高齢者の占める割合が増加した理由にはなりませんね。
高齢者の体力が衰えているのは、昔も今も変わらないわけですから。
さて、この統計からは交通事故に関するさまざまな事象が読み取れます。
順番に見ていきましょう。【事故件数】
まず事故件数ですが、前年より5万4783件少ない57万3465件で、昭和62(1987)年以来、27年ぶりに60万件を下回っています。ちなみに昭和23(1948)年以降のデータを見ると、ピークは平成16(2004)年の95万2709件で、比較すると約40%も減少しています。
【死者数】
死者数は4113人で、前年(平成25年)よりも260人(5・9%)減少しています。
死者数のピークは、昭和45(1970)年の1万6765人だったことから比較すると、75.5%減少しています。【負傷者数】
負傷者数は、70万9989人で前年よりも7万1505人の減少。
ピーク時は、平成16(2004)年の118万3616人ですから47万3627人減少しています。【月別交通事故死者数】
12月が440人で最多、ついで10月の400人、11月の377人と続きます。
最少は8月の301人となっています。過去15年分のデータを見ても、年末に死者数が増加する傾向は変わっていません。
【都道府県別交通事故死者数】
最も多かったのは愛知県で204人。
ついで、神奈川県の185人、千葉県・兵庫県の182人、埼玉県の173人の順となっています。ちなみに、最も少なかったのは島根県の26人、ついで徳島県の31人、鳥取県の34人。
都市部に多いことからも、人口と死者数は比例している傾向があります。【高齢者の死者数】
65歳以上の高齢者の死者数は2193人で、死者の総数に占める割合は53・3%になりました。
これは、統計がある昭和42年以降で最も高く、この10年間は毎年増加傾向にあります。【飲酒事故件数】
飲酒運転による事故件数は、この10年で見ると、平成16(2004)年が最多で1万5180件。
平成25(2013)年の飲酒事故件数は4335件ですから、この10年ほどで1万件以上減少しています。また、昨年の飲酒運転による死亡事故は227件で、統計がある平成2(1990)年以降で最少となっています。
これには、ドライバーの安全運転への意識が向上していることや、飲酒運転の厳罰化が影響していると考えられます。
以上、統計データから読み取れる現状の交通事故の問題点には以下のことが挙げられます。〇交通事故数、死者数ともに毎年減少しているが、交通事故死者数の減少幅は縮小している。
〇交通事故による死者における高齢者の割合は年々増加傾向にある。
〇「自動車運転死傷行為処罰法」(2014年5月施行)の悪質運転への抑制効果は確認できたが、依然として飲酒運転はなくならず、また危険ドラッグによる悲惨な死亡事故が増加している。「自動車運転死傷行為処罰法」の詳しい解説はこちら
⇒ https://taniharamakoto.com/archives/1236
こうした統計を踏まえ、ドライバーの人たちには、さらなる安全運転への意識向上を目指してほしいと思います。我々も新年を迎え、今一度気を引き締め、今年も交通事故被害者の救済に全力を尽くしていきたいと思っています。
交通事故の相談は、こちらから
http://samuraiz.net/
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亀岡市登校中児童ら交通事故死事件の刑が確定
ある日突然、愛する人が交通事故で亡くなったら、あなたはどうしますか?
もし、大切な人が交通事故で誰かを傷つけてしまったら?昨年4月、京都府亀岡市で集団登校中の小学生と引率の保護者ら10人が暴走車に次々とはねられ、3人が死亡、7人が重軽傷を負った事故を記憶している人も多いでしょう。
無免許運転で10人を死傷させた事故が、なぜ危険運転ではないのか? そもそも、危険運転とはどういうものなのか? 事故後、マスコミや世論で、かなり議論が高まりました。
ところで、無免許で車を運転して、自動車運転過失致死傷罪と道交法違反(無免許運転)の罪に問われていた無職少年(19)の刑が今月の16日、確定しました。
懲役5~9年の不定期刑、というものでした。この事故では、少年が「危険運転致死傷罪」にあたるかが争点になりました。
危険運転致死傷罪(『刑法』第208条2項)の中に、進行を制御する技能を有しないで自動車を運転して事故を起こし、他人に怪我をさせたり、死亡させたりした場合、最長懲役20年に処する、というものがあります。
車を発進させたものの、ハンドル操作ができずにまっすぐ走れない。あちこちぶつけたり、フラフラと蛇行運転する。ブレーキ操作がわからず、つねに急ブレーキになるなどの状態を危険運転としています。
事故の前夜から、入れ替わり友人らを乗せながら、少年は京都市内と亀岡市内で30時間以上ドライブを続け、翌朝、居眠り運転で児童たちの列に突っ込みました。
当初、京都地検や京都府警は「自動車運転過失致死傷罪」(『刑法』第211条2項)よりも罰則の重い、危険運転致死傷罪の適用を視野に入れていました。
被害者側も重い罰則を求めていました。しかし京都地検は、少年は以前から無免許運転を繰り返しており、事故の直前も無事故で長時間運転していたことから、運転技術はあると判断し、自動車運転過失致死傷罪で起訴。
一審判決では、懲役5年以上8年以下の不定期刑が言い渡されました。
そして今回、二審の判決の後、検察側と弁護側双方が上告しなかったため、刑の確定となったわけです。
ではなぜ、無免許運転にも関わらず、この事故は危険運転と認められなかったのでしょうか。
2001(平成13)年の刑法改正まで、自動車事故はすべて「業務上過失致死傷罪」(『刑法』第211条)で処罰されていました。最長5年の懲役です。
しかし当時、危険な運転による事故が多発していたことで、危険運転致死傷罪という重罰を作りましょうということになりました。
ここでは、特に危険な5つの運転行為を危険運転致死傷罪として定めたために、免許の有無ではなく、運転技術の有無が重視されることになったのです。
つまり運転技術があれば、たとえ無免許でも危険運転にはならないということです。ただ近年、無免許による重大事故が頻発しているように思います。
無免許を危険運転としなくてもいいのか、という議論もだんだんと盛りあがってきています。日本には運転免許制度があり、免許がなければ自動車の運転はできない国なのです。
そうであるにも関わらず、自分が無免許であることを知りながら運転して事故を起こす。これが危険運転ではなくていいのかという議論は、当然なされていい。危険運転致死傷罪や自動車運転過失致死傷罪をさらに重罰にするような改正論議がなされていいのではないかと私は考えます。
平成25年6月7日の衆議院本会議で、改正道路交通法が可決しました。
その内容の一つに無免許運転の罰則強化があります。
旧法では、無免許運転の法定刑は、「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」でしたが、改正道路交通法では、「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。
しかし、それでも無免許による重大事故を起こした者を罰するには刑が軽すぎるのではないか、という議論がなされていました。
そこで、第183回国会に、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律案」が提出されましたが、まだ成立していません。
この法律では、無免許運転で自動車事故を起こした場合の刑を重くする内容が含まれていますので、議論の動向を見守りたいと思います。
詳しくは、また機会があるときに解説したいと思います。
交通事故被害者が知って得する無料小冊子は、こちら。
http://www.jiko-sos.jp/report/?blog