未成年者 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
弁護士20人以上が所属するみらい総合法律事務所の代表パートナーです。
テレビ出演などもしており、著書は50冊以上あります。
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  • 未成年の子供が行った契約を解除することができる?

    2015年04月28日

    新年度が始まってから少し経ちました。

    希望に燃えて社会人生活をスタートした人もいるでしょう。
    残念ながら、すでに5月病? で会社に行きたくないという人もいるかもしれません。

    何事も、新しく始めるにはエネルギーが必要ですが、それが間違った方向に向かってしまうとトラブルの原因にもなってしまいます。

    今回は、勢い余って問題を起こしてしまった? 息子の親御さんからの相談です。
    一体、何をやらかしてしまったのでしょうか?
    Q)お恥ずかしい話なのですが…18歳の息子が私たち親に無断で、しかも年齢を誤魔化して自動車を買っていました。叱ったところ本人は反省していましたが、問題は自動車です。法的には、ディーラーに対して契約を取り消すことはできるのでしょうか?

    A)子供が親に無断で買った車の契約を解除したいということですが、基本的には取り消すことができます。
    しかし今回の場合、息子さんは年齢を誤魔化して相手方をだましています。
    このような場合、法的には「民法」第21条により、契約を取り消すことはできません。
    【未成年者と売買契約の関係とは?】
    近年、選挙権の18歳への引き下げ問題や民法改正などの報道がありますが、日本の法律上、18歳は未成年です。

    「民法」
    第4条(成年)
    年齢20歳をもって、成年とする。
    また、未成年者は原則として親の同意がなければ、物の売買や貸し借りなどはできません。

    第5条(未成年者の法律行為)
    1.未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
    法定代理人とは、法律により代理権を有することを定められた者のことですが、本人が未成年者の場合は親権者であり、原則は父母になります。(第818条)

    同意の内容は具体的なものでなくてもよく、今回のケースでは「車を買ってもいい」という親の同意で十分とされています。

    なお、旅費や学費などのように使い道が決められているものや、小遣いなどは親の同意はなくても使っていいということになっています。
    【未成年者の売買契約は取り消すことができる?】
    では、親の同意を得ないで行った子供の売買契約を取り消すことはできるでしょうか?

    民法の第5条の2項では次のように規定されています。

    2.前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。

     

    全国の親御さんは安心してください、子供が無断で買った物、契約は取り消すことができます。
    仮に代金を支払っているなら返金請求ができます。

    なお、契約の取り消しができるのは本人と親で、その時効は5年です。(第126条)
    5年間、「取消権」を使わないと取り消すことができなくなりますので注意してください。

    ところが…今回のケースでは、すんなりと事が運ばない可能性があります。
    条文を見てみましょう。

    第21条(制限能力者の詐術)
    制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。
    何やら1度読んだだけでは、よくわからないかもしれませんが、今回のケースに当てはめてみると以下のようになります。

    未成年の息子(制限行為能力者)が、自分は成年(行為能力者)であるとディーラーにうそをつき、だまして(詐術を用いて)契約したので、今回の自動車を購入した契約は、本人も親も取り消すことができない。

    実際、どのような状況だったのか相談内容からだけではわからないので詳しくは言えませんが、たとえば、偽造した免許証を提示するような行為は詐術になりますし、自分は20歳以上の成年だと言わなくても、言葉巧みに相手に誤信させて信じ込ませる言動をしていれば詐術とみなされる可能性があります。

    この法律には、人をだますような未成年者は法律で保護する必要はないとするのと同時に、相手方が契約を取り消されないための保護という観点もあります。

    人をだますことは、たとえ未成年者でも許されないということは親も子供も肝に銘じておきましょう。

    今回の件、最終的には先方と交渉してみないことにはどうなるかは何とも言えないところですが、法的な部分では弁護士などの専門家に相談することをお薦めします。

    ご相談はこちらから⇒ http://www.bengoshi-sos.com/about/0903/

  • 未成年者の飲酒・喫煙で罰せられるのは子供?親?

    2014年02月10日


    タバコがカッコイイ時代がありました。

    永遠の映画スター、ジェームズ・ディーンやローリングストーンズのギタリスト、キース・リチャーズがタバコをふかす姿にあこがれた人もいたでしょう。

    MarlboroのCMもよくできていましたね。

    若い人は信じられないかもしれませんが、昔はどの会社でも禁煙・分煙は行われておらず、みんな自分の机でタバコを吸っていたものです。

    タバコによる焦げ跡がついたビジネスの書類もしばしば目にしました。

    ただ、昔も今も変わらないのは、未成年がタバコを吸うことは法律で禁じられているということ。

    ところが、自分の未成年の息子の喫煙をやめさせないどころか、買い与えていた親が書類送検されるという事件が起きました。

    「未成年の息子の喫煙止めず、母親3人を書類送検」(2014年2月5日 YOMIURI ONLINE)

    2月5日、神奈川県警小田原署は、未成年の息子3人の喫煙を黙認したとして、小田原市内の3人の母親を未成年者喫煙禁止法違反の疑いで地検小田原支部へ書類送検しました。

    報道によると、アルバイト女性(44)は内装工の長男(16)に対して、飲食店従業員の女性は高校生の長男(16)に対して、それぞれ喫煙していることを知りながらやめさせなかった疑い。また、看護助手の女性(44)は中学生の三男(15)の喫煙をやめさせないどころか、タバコを買い与えていた疑いのようです。

    また昨年、このうちの2人少年は、ほかの少年3人とともに市内の中学校のガラス98枚を割ったとして同署に建造物侵入と器物損壊の疑いで逮捕されていたということです。

    お酒もタバコも20歳になってから!

    というのは誰もが知っていることだと思いますが、実際の法律ではどのように規定されているでしょうか。

    「未成年者喫煙禁止法」という法律があります。

    この法律によると、

    ①20歳未満はタバコを吸ってはいけません。
    ②親権を行う者、あるいは親権を行う者に代わって未成年者を監督する者が、未成年者がタバコを吸っていることを知って止めないときは、科料に処す。
    ③販売者はタバコを売る時に年齢を確認することとし、未成年者と知って売った時は、罰金50万円以下。

    となっています。

    当然ですが、お酒に関する法律ももちろんあります。

    「未成年者飲酒禁止法」

    ①20歳未満はお酒を飲んではいけません。
    ②親権を行う者、あるいは親権を行う者に代わって未成年者を監督する者が、未成年者が酒を飲んでいることを知って止めないときは、科料に処す。
    ③販売者はお酒を売る時に年齢を確認することとし、未成年者と知って売った時は、罰金50万円以下。

    ほとんどタバコの場合と同じですね。

    注意しなければいけないのは、タバコを吸ったり、お酒を飲んだりした未成年者本人は罰せられず、親や監督者が罰せられるということです。

    喫煙や飲酒を黙認したり、吸わせたり飲ませたりすることが犯罪だということを、どれだけの親が知っているでしょうか?

    20歳以上の成人のみなさんは、これを機会に、ぜひこの法律も覚えてください。

     

    今回も、最後に「なぞかけ」です。

    ギャンブルとかけまして、

    未成年者のタバコと解きます。

    その心は?

     

    「スッたら、だめ!」

    失礼しました。(*^▽^*)ゞイヤ~

  • ジョージ・ワシントンは、器物損壊罪か!?

    2014年01月15日


    2014年の年明け早々、全国的になにやら物騒な器物損壊事件が立て続けに起きているようです。

    「公用車のタイヤ29本がパンク 器物損壊事件として捜査 千葉」(2014年1月6日 産経新聞)

    6日午前8時20分ごろ、千葉県佐倉市の県印旛合同庁舎の駐車場に止まっていた15台の公用車のタイヤ計29本がパンクさせられているのを県の女性職員が見つけ、佐倉署に通報した。タイヤは千枚通しのような鋭利なもので刺されていた。

    「兵庫県警察の捜査車両10台がパンク 年末年始の休み中に被害か」(2014年1月6日 産経新聞)

    兵庫県警は6日、本部本館(神戸市中央区)の地下1~3階にある駐車場で、捜査車両10台のタイヤ計16本が何者かにパンクさせられたり、傷をつけられたりしたと発表した。

    「パンク、落書き…駐車場の車40台以上被害 茨城」(2014年1月4日 産経新聞)

    茨城県土浦市で3日午後から4日早朝にかけ、40台以上の乗用車がパンクさせられたりスプレーで落書きされたりする被害に遭った。土浦署によると、車は数百メートルの範囲のアパートや住宅敷地内の駐車場に止められており、窓ガラスを割られた車もあった。

    これら以外にも、福島県郡山市では昨年10月以降、数十件のタイヤパンク被害が相次いでおり、大阪市では市営地下鉄の車両側面へのスプレーでの落書きが昨年5月以降、6回確認されているようです。

    アメリカの初代大統領であるジョージ・ワシントン(1732‐1799)の有名な逸話がありますね。

    子供のころ、父が大切にしていた桜の枝を切ってしまったことを、「僕がやりました」と正直に告白。

    父は怒るどころか、「お前の正直さは、桜の木1,000本よりも価値がある」と逆にほめられた、という逸話です。

    何事も、正直に告白することは大切です。犯人は速やかに罪を申し出てほしいものです。

    しかし当然のことながら、他人の車のタイヤをパンクさせたり、電車に落書きをすることは、「器物損壊罪」という犯罪になります。

    「刑法」第261条(器物損壊等)
    前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。

    と、いうことは、ワシントンも日本で桜の枝を折れば、器物損壊罪の可能性がありました。でも、そうであったとしても、時効ですね。(^_^)

    また、器物損壊罪は、親告罪なので、お父さんが告訴しないと、刑罰を科すことができません。

    さて、それはそれとして、今回のパンクの件、いたずらであっても、腹いせであっても、アートであっても器物損壊に変わりありません。

    犯罪なので、犯人が逮捕されれば刑事罰を受けることになります。同時に、民事で損害賠償の問題も出てきます。

    また、仮に子供が、たとえいたずらだったとしても、同様のことをやってしまったら、損害賠償の話になります。

    未成年者の損害賠償責任について法的には、その未成年者に物事の是非善悪を理解する能力がある場合には、その未成年者本人が賠償義務を負い、その能力がない場合には親などが責任を負う、とされています。

    ちなみに、子供の責任能力については、11~12歳くらいが境界線とされています。

    「民法」第712条(責任能力)
    未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。

    「民法」第714条(責任無能力者の監督義務者等の責任)
    1.前2条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
    2.監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も、前項の責任を負う。

    繰り返される、いじめの問題。最近急増している子供による自転車事故など、あなたの子供もいつ「加害者」になってしまうかもわかりません。

    きっかけは、ほんの些細な出来心やいたずら、または怒りの衝動だったとしても、法律の一線を超えれば、犯罪は犯罪です。

    起こしてしまった罪は、もうしょうがありません。償っていくだけです。

    しかし、犯罪を未然に防ぐことはできます。

    子供たちが犯罪の加害者にも被害者にもならないよう、まずは親や大人が見守りながら、犯罪について是非善悪をしっかり教えていくことが大切です。

    新年を迎え、心も新たに、法を社会の隅々に伝えていくことが私の役割だと感じています。