労使トラブル | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
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  • 内定取消は、自由にできない!?

    2014年12月28日

    会社が新規学卒者の内定を取り消したというニュースが新聞を賑わすことも少なくありませんが、果たして内定を出した後に、業績悪化を理由としてその内定を取り消すことは可能なのでしょうか。

    そこで、今回は、業績悪化を理由とした内定の取消しが可能か、可能であるとするとどのような場合なのかを考えていきたいと思います。

    まず、会社が採用内定を出すとどのような効力を生じるかについては、一般的には、入社日を始期とし、さらに誓約書に基づいた解約権が留保された労働契約が成立すると考えられています。

    採用内定時に提出を求める誓約書には、学校を入社前に卒業できなかった場合や経歴に重大な誤りがある場合、病気等により就労することができない場合等の記載がされ、このような場合には内定取消しとなっても異議を述べないとされていることが一般的です。

    では、誓約書に「会社の業績が悪化した場合」と記載がされている場合に、誓約書に基づいて解約権を自由に行使することができるのでしょうか。

    この点については、判例(大日本印刷事件・最2小判昭和54年7月20日・労判323号19頁)は、「採用内定の取消事由は、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取り消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られる」と言っています。

    したがって、採用内定取消しが有効となるかについては、客観的に合理的で社会通念上相当として是認できる事由があるか否かがポイントとなり、業績悪化を理由として採用内定を取り消す場合の有効性の判断にあたっては、整理解雇に準じて、

    ①人員削減の必要性、
    ②解雇回避努力を尽くしたこと、
    ③人選に合理性があること、
    ④取消しに至る手続に妥当性があること

    が検討されることになります。

    つまり、採用内定の取消しにあたっては、そもそも採用内定時に業績の悪化についてどの程度予測ができたのかどうかや、社内のリストラ等の内定取消し回避のためにどのような努力が尽くされたのかなども専門的な判断が必要となります。

    また、採用内定の取消しは、内定者のその後の就職活動や生活に与える影響が大きいことから、後に紛争となるケースも少なくありませんので、弁護士と相談をしながら慎重にすすめるべきでしょう。

    みらい総合法律事務所へのご相談は、こちら。
    http://roudou-sos.jp/

  • 会社の1億円の損害より1,000円のネコババの方が重い?

    2014年12月28日

    社員のミスによって会社に損害が生じてしまうことはよくあることです。

    もっとも、その損害が多額である場合、例えば会社に1億円の損害がでてしまったとしましょう。会社は、ミスをした社員を即刻クビ、すなわち、懲戒解雇したいと考えるでしょう。

    しかし、会社に巨額の損失が生じてしまったというだけで直ちに懲戒解雇してしまうと、実は、解雇が無効(つまり、クビにできない)であるとされてしまう可能性が高いのです。

    そうであるにもかかわらず、不用意に懲戒解雇してしまうと、会社は、社員が変わらずに会社に在籍していたものとして解雇がなかったのと同様の給料を支払わなければならず、解雇したことによってかえって会社が損をしてしまうということになりかねないので、注意が必要です。

    有効に懲戒解雇するためには、解雇することが、社員の行為の性質・態様等に照らして社会通念上相当なものである必要があります。

    そして、社員のミスによって会社に損害が生じたことを理由に懲戒解雇することが社会通念上相当なものであるかは、会社の事業の性格、規模、社員の業務の内容、労働条件、勤務態度、ミスの態様、ミスの予防若しくは損害の分散についての会社の配慮の程度といった事情を考慮して総合的に判断されます。

    そもそも、社員のミスは、もともと企業経営の運営自体に付随、内在化するものであって、業務命令自体に内在するものとして会社がリスクを負うべきであると考えられています。

    「その仕事を、その社員ができるものと判断して任せた会社の判断ミスでしょう」

    と言われるのです。

    したがって、会社の損害が巨額であったというだけでは、懲戒解雇することが社会通念上相当であるとされる可能性は低いでしょう。

    懲戒解雇が有効となるには、社員が度重なる注意にもかかわらずミスを繰り返した結果損失が巨額となったなど、社員のミスが悪質な態様の場合に限定されるでしょう。

    これに対して、会社の損害は1,000円だけであるが、社員がスーパーのレジからお金をネコババしたような場合はどうでしょうか。

    横領は、企業秩序を乱すことはもとより、財務面で会社の存立を危うくさせるおそれをはらむものであり、重大な企業秩序違反です。

    会社の損害は1,000円だけですが、スーパーなどの小売業は日銭で回っていますから、たとえ1,000円であっても、会社は社員を懲戒解雇することができると考えられます。

    先ほどのミスが「過失」に基づくものであるのに対し、1,000円のネコババは、窃盗罪という立派な犯罪であることも違いますね。

    裁判例においても、例えば、タクシーのメーターの不倒行為やバス運転手の運賃手取り行為は、会社の収入源を奪う極めて重大な企業秩序違反行為として、解雇が有効と判断されています。

    このように懲戒解雇することができるかどうかは、会社の損害の金額だけでなく、さまざまな事情を考慮して判断しなくてはなりませんので、懲戒解雇するにあたっては慎重な検討が必要です。

    懲戒解雇をする前には、必ず顧問弁護士に相談することをおすすめします。

    みらい総合法律事務所へのご相談は、こちら。
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  • 業務委託なのに、残業代を支払う!?

    2014年12月28日

    正社員にすると、労働法の色々な規制がかかってきたり、残業代を支払う義務が発生したり大変なので、正社員ではなく、「業務委託」という形にして仕事を委託している会社が少なからずあるようです。

    会社は、社員が残業をした場合には、当然残業代を支払う必要がありますが、業務委託先に対しては、委託先が長時間働いたとしても残業代を支払う必要はありません。

    例えば、個人事業主として、自己所有のトラックを持ち込んで輸送業務に従事する運転手や、建設業における一人親方などに対しては、会社は残業代を支払う必要はありません。

    そのため、会社は、社員を雇用するのではなく、業務委託の形式で作業させることで、残業代の支払いを免れて人件費を削減することができます。

    しかし、当該社員(ないし業務委託先)が、会社が残業代の支払義務を負う「労働者」であることを否定するためには、単に当該社員(ないし業務委託先)と会社との契約の名称を「業務委託契約」や「請負契約」などとしておけば良いというわけではありません。

    この「労働者」性が否定されるためには、当該社員(ないし業務委託先)が、実態として、「事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」ではないことが必要であります。

    いくら「業務委託契約」を締結していても、実態が「労働者」とみなされると、残業代を支払う義務が発生する、ということです。

    そして、この労働者性の判断基準ですが、

    ・時間・場所の拘束の有無、程度(拘束の程度が強ければ労働者性を肯定する事情と評価されます

    ・契約に対する諾否の事由の有無(自由がなければ労働者性を肯定する事情と評価されます)

    ・契約内容の遂行に当たっての指揮命令の有無(指揮命令に従っている場合には労働者性を肯定する事情として評価されます)

    ・経費の負担の有無(受託者が経費を負担するような場合には労働者性を否定する事情として評価されます)

    等の種々の事情を考慮して判断されます。

    したがって、例えば、自己所有のトラックを持ち込んで業務に従事する運転手であっても、会社の仕事しかすることができず、始業・就業時間が決まっており、経費も会社持ちであるような場合には、会社は運転手からの残業代の請求を拒むことができません。

    また、例えば、独自に飲食業を営む者としての立場でクラブとの間で入店契約を締結したホステスについては、業界の慣習や所得税の申請において個人事業主として扱われているとしても、クラブへの出店が義務付けられていることや、クラブからの報酬が事業者性を認める程高額でないこと、衣装代はホステスの負担であるものの、その他の経費はクラブ側が負担していることなどを理由に、クラブはホステスからの残業代の請求を拒むことはできないとした裁判例もありますので、注意が必要です。

    会社が雇用契約ではなく、業務委託契約の形式をとっている場合、往々にして、当該社員(ないし業務委託先)の残業時間は長時間となってしまっているのが実情です。

    そのため、もし当該社員(ないし業務委託先)が会社が残業代を支払わなければならない「労働者」であるとされてしまうと、会社は、非常に多額の残業代の支払いを余儀なくされてしまう場合が多いです。

    このようにならないよう、会社は、「業務委託契約」を締結する場合には、上述のさまざまな事情を考慮して、就労のさせ方を慎重に検討する必要があるでしょう。

    このあたりは、法律の素人では判断が難しいので、弁護士に相談することをおすすめします。

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  • セクハラで3,000万円の賠償請求!?

    2014年12月28日

    最近、セクハラに対する社会的非難が高まっています。

    セクハラをした役員や社員を処分するのは当然ですが、会社がセクハラに対する対応を間違った場合、大変なことになってしまいます。

    今回ご紹介するのは、会社役員の女性支店長2名に対する「セクハラ」行為により、会社が3,000万円を超える賠償義務を負うことになった事例です。

    事実はこうです。Y会社の専務取締役Yが、女性支店長ミー(仮名)を上司の立場を利用して呼びだした上で異性と付き合っているのかを問いただし、それを否定すると「それならいいんだ。前にも言ったけど、商品みたいで言い方は悪いが、君は僕の芸術なんだよ。」といいま
    した。

    さらにYは、付き合っていることを疑っていた社員に直接電話をして「君とミーが付き合っていると聞いたが本当か。システム室から聞いているぞ。本当ならやめてくれ。」などの行動に出ました。

    また、Yは、別の日にミーを電話で呼びだし、他の社員がいないところで後継者の地位をちらつかせながら、「君は僕のことが好きだろう。後継者になるということイコール男女関係があるのは当たり前だ。」などといって肉体関係を持つように求めました。

    その後、ミーが別の日に専務Yに対して、先日肉体関係を迫ったことの理由を尋ねると、「君は独身だから性的欲求は解消されていないと思ったからだ。」「最後にお願いがあるんだ。もう気持ちを表に現さない。だから最後にキスさせてくれ。」などと言って、接吻を迫りました。

    そこで、ミーが会社に対してYのセクハラ行為を訴えたところ、Yは自己保身のために、セクハラ行為を否定するだけでなく、他の社員に対してミーが淫乱であるなどと繰り返し述べて、職場環境を悪化させ、ミーの職場復帰を不可能なものにしました。

    さらに同時期にYは、Yがミーと肉体関係を持つために、ミーと親しい女性支店長ケイ(仮名)に対しても上司の立場を利用して、車で迎えに来るように命じ、車の中でミーのことを監視することにした旨を述べるともに、ケイがミーに対し、「専務のことが好きなんでしょ。抱かれれば。」などとYがミー肉体関係を持てるように協力するよう要請しました。

    ケイがこれを拒絶し会社に対してセクハラ行為を訴えると、Yは、自己のセクハラを否定するだけでなく、他の社員に対して、ケイが「不倫をして仕事をとっている」「あいつは淫乱だ」などと言ったりして、職場環境を悪化させ、ケイの職場復帰も不可能なものにしました。

    裁判所は、このYのミー及びケイに対する行為を不法行為であると認定し、これらの行為が会社の内部で、会社の専務取締役という立場で行われていたことから、会社にも賠償義務(使用者責任)があると認定されました。

    会社は、ミーとケイがセクハラ行為による被害を訴えたことによって会社を混乱させたとして減給処分としていたことから、それまで支払われていた給与と減給後の給与の差額について支払いを命じられたほか、Yのセクハラ行為がなければあと1年間は働けたとして、1年分の給与についても支払いを命じられました。

    結局、会社は、2人に対し、3,000万円を超える支払いを命じられることになったのです。

    皆さん、いかがだったでしょうか。

    一人の専務取締役の軽率なセクハラ行為により、会社が3,000万円を超える賠償義務を負うこととなったのです。

    このようなセクハラ行為が社内で起こらないようにするには、専門家とともに、普段からの社員教育や相談窓口の設置、セクハラがあったときの懲戒制度(就業規則への明記)などのセクハラ防止の社内体制づくりを早急にしなければいけません。

    また、セクハラが発覚した後の事後対応も重要です。

    今回も対応を間違ってしまったところに、多額の賠償金が科せられた原因があります。

    そうしないと、知らないところで3,000万円を超える賠償義務を突然負って、倒産の危機に陥る可能性があることをご理解いただけたと思います。
    みらい総合法律事務所では、セクハラ防止のための研修・社内制度の確立・社員からの通報窓口などをお受けしております。

    また、労働トラブルでお悩みの経営者様の相談を承ります。

    相談は、こちらから。
    http://roudou-sos.jp/

  • 飲食業界向け労働法セミナー開催

    2014年12月03日

    飲食

    2014年12月1日に、飲食業界向けの労働法セミナーを開催しました。

    飲食業界では、長時間労働の問題、名ばかり管理職の問題等、さまざまな労使トラブルが発生しています。

    ・労働時間管理

    ・残業代問題

    ・安全管理義務

    ・就業規則

    ・退職時の問題

    ・問題社員対応

    などをお話しさせていただきました。

    労使トラブルを解決することにより、日本経済に貢献します!

    労働相談は、こちら。

    http://roudou-sos.jp/

  • IT企業向け、労働法セミナー開催

    2014年11月28日

    IT労働セミナー

     

    2014年11月18日に、IT企業向けの労働法セミナーを開催しました。

    多数のIT企業様に受講していただきました。

    内容は、以下のとおりです。

    ・IT企業で注意すべき労働者の時間管理

    ・IT企業における残業代請求対策

    ・就業規則で注意するポイント

    ・懲戒処分・退職で注意すべきポイント

    ・IT企業の問題社員にどう対処べきか?

    今後も、労働セミナーを実施することにより、労使トラブルを解決し、日本経済に貢献したいと思います!

    労働相談は、こちら
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  • 転勤命令は拒否できるか?

    2014年09月18日

    先月、作家の村上春樹さんがイギリスで開催されたイベントで対談をしたというニュースがありました。

    世界でも人気のある村上さんが、公の場で語るのは異例のことだというので、イギリスのファンの注目も集めたようです。

    その対談で、作家になった理由を尋ねられた村上さんは、こう答えて会場を沸かせたそうです。

    「団体に所属する必要もないし、会議に出る必要もなく、上司を持たなくてもいいからだ」

    実際、会社員は組織に属していることで受ける恩恵ももちろんありますが、会社員ならではの厳しい現実もあるようです。

    同時に、経営側には経営側の論理があります。

    今回は、ある会社の経営者からの「転勤命令」に関する質問にお答えします。
    Q)私は、食品メーカーを経営している者です。先日、ある従業員に転勤命令を出したところ、拒否されました。面談してみると、理由は何点かあるらしいのですが、大きいのは親の介護問題と子どもの病気だといいます。母親の在宅介護があり、おまけに子どもの身体が弱く、ぜんそくの発作を繰り返すようで、こんな状態で妻にすべてを押しつけたくないし、現実問題、転勤すれば生活が破綻してしまうといいます。従業員の事情は理解したのですが、今後、転勤命令を出すことはできないのでしょうか? また、懲戒処分を下すことはできるのでしょうか?

    A)従業員の同意を得ていなくても、「就業規則」や「労働協約」に「転勤を命じることができる」等の規定があれば、原則として、会社は転勤を命じることができます。

    ただし、従業員を採用する時点で就業場所を限定、固定する約束があれば、転勤させるには従業員の同意が必要になるでしょう。
    よって、会社が転勤を命じることができる場合には、会社は転勤を拒否した社員に対して懲戒処分を下すことができます。
    しかし、一定の場合には、転勤の命令が人事権の濫用と判断され、違法となることがあります。
    【社員が転勤を拒否できる場合とは】
    若手社員なら、身軽に全国どこへでも転勤しやすいという面もありますが、年齢を重ね家族やマイホームを持つと、やはり転勤は避けたいと考える人は多いでしょう。

    では、どのような場合に社員は転勤を拒否することができるのでしょうか?

    〇雇用契約時に、勤務地限定などの規定がある場合
    〇転勤命令が会社の人事権の濫用になる場合

    会社には人事権の裁量があり、また、労働基準法には転勤命令の有効・無効についての直接的な取り決めはないため、雇用契約時に勤務地限定社員として採用した場合を除いて、原則、会社は社員に対して転勤命令を出すことができます。

    しかし、問題は人事権の濫用となる場合です。
    具体的には以下のようなものがあげられます。

    ① 業務上の必要性が認められない場合
    ② 不当な目的で行われる場合
    ③ 労働者に著しい不利益を負わせる場合

    ②の場合には、労働組合の活動をした、上司の不正を指摘した、成績不良、社内のいじめ、などで嫌がらせのために行うものがあげられます。

    さて、質問者の場合、③のケースが考えられます。
    実際、老親の介護や子供の育児などに支障をきたすという理由で、社員が転勤拒否することで労働紛争に発展する例が近年、増加しています。
    【判例】
    社員が転勤命令を拒否できるかどうかについて、過去の判例には以下のようなものがあります。

    「東亜ペイント事件」(最二小判 昭61.7.14 労判477-6)
    転勤命令を拒否した従業員を懲戒解雇した件で、第一審・第二審とも転勤命令は権利の濫用として、転勤命令と懲戒解雇を無効としたが、最高裁では一転、転勤命令には業務上の必要性があり、従業員が受ける不利益は通常甘受すべき程度のものであるとして、会社の権利濫用には当たらないとした。

    「ケンウッド事件」(最三小判 平12.1.28 労判774-7)
    社員が配転により通勤時間が1時間長くなり、保育園児の子供の送迎等に支障が生じるとしても、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益とまではいえないとした。

    「北海道コカ・コーラボトリング事件」(札幌地決 平9.7.23 労判723-62)
    近くに住む両親と、病気の子供2人の面倒を妻と2人でみていた従業員に対する転勤命令について、会社側の業務上の必然性は認めたものの、従業員は一家で転居することは困難であり、単身赴任すると妻が一人で子供と両親の面倒をみることになり、転勤は従業員に対して著しい不利益を負わせるものと認めた。
    【会社が取るべき対応とは】
    「育児介護休業法」が2001年に改正され、労働者の配置の配慮に関する項目が追加されています。

    「育児介護休業法」
    第26条(労働者の配置に関する配慮)
    事業主は、その雇用する労働者の配置の変更で就業の場所の変更を伴うものをしようとする場合において、その就業の場所の変更により就業しつつその子の養育又は家族の介護を行うことが困難となることとなる労働者がいるときは、当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況に配慮しなければならない。
    また、懲戒等による従業員の解雇に関しては、会社の業務上必要なもので、かつ妥当な処分かどうか慎重な対応が必要です。

    「労働契約法」
    第16条(解雇)
    解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
    会社としては、認められる要望かどうかはともかく、まずは本人の言い分をよく聞く必要があります。
    そのうえで、転勤することで従業員の私生活上に著しい不利益が発生するようであれば、代わりの人員の有無など再検討するべきでしょう。

    また、拒否の理由が認められないようなものであれば、再度、従業員との話し合いなどの場を設けて、人事異動命令に応じるよう説得することになります。

    なお、労働紛争に発展しないよう、事前に専門家に相談することも「転ばぬ先の杖」として検討してみることをお勧めします。

    ご相談はこちら→「顧問弁護士相談SOS」
    http://www.bengoshi-sos.com/about/0903/