リベンジポルノ | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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  • リベンジポルノ防止に動きあり

    2015年06月23日

    はたして、被害拡大に歯止めをかけられるでしょうか。
    リベンジポルノに関して、各方面で動きが出てきました。

    「リベンジポルノをLINEで拡散…全国初の摘発」(2015年6月22日 読売新聞)

    警視庁は、リベンジポルノ画像を無料通話アプリ「LINE(ライン)」で拡散させたとして、26歳と27歳の無職の男2人をリベンジポルノ被害防止法違反と名誉毀損容疑で逮捕しました。
    被害を受けた女性が警視庁に相談して発覚したようです。

    報道によると、今年4月下旬、ゲーム仲間の男女でつくるLINEの3つのグループに、26歳の男が撮影したメンバーである20歳代女性の上半身裸の画像を投稿。
    27歳の男が画像を保存したうえで、別のグループのLINEに投稿して拡散するなどして、不特定多数が閲覧可能な状態にしたとしています。

    容疑者の男は、「自分が買ってきたおみやげを女性が捨てたと聞き、仕返しをしようと思った」と供述。

    LINEを使ったリベンジポルノの摘発は全国初ということです。
    リベンジポルノは卑劣な犯罪であること、そして被害の発生を防止するために「リベンジポルノ被害防止法」が成立したことは以前、解説しました。
    詳しい解説はこちら⇒
    「リベンジポルノには新たな法律が適用されます!」

    リベンジポルノには新たな法律が適用されます!

    リベンジポルノ被害防止法の目的は次の通りです。

    私事性的画像記録の提供等により、私生活の平穏を侵害する行為を処罰するとともに、私事性的画像記録に係る情報の流通によって、個人の名誉及び私生活の平穏が侵害される被害の発生、又はその拡大を防止することを目的とする。(第1条)

    私事性的画像記録とは、以下のものをいいます。

    1.性交又は性交類似行為に係る人の姿態。
    2.他人が人の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。)を触る行為又は人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの。
    3.衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの。
    (第2条)

    第三者が撮影対象者を特定することができる方法で、プライベートで撮影した画像を不特定、または多数の者に提供した場合、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます。(第3条)

    ちなみに、今回の逮捕容疑には名誉毀損もありますが、こちらの刑罰も3年以下の懲役又は50万円以下の罰金です(刑法第230条)
    さて、今回の事件はLINEを使ったリベンジポルノの初摘発でしたが、時を同じくしてGoogle(グーグル)では動きがあったようです。

    「グーグル、リベンジポルノ画像を削除へ 米」(2015年6月20日 CNN.co.jp)

    米検索大手のグーグルは、「リベンジポルノ」を同社の検索結果から削除するための新施策を講じると発表しました。

    短文投稿サイト「ツイッター」や交流サイト大手「フェイスブック」は3月にリベンジポルノ禁止をサイト上に明示。
    IT企業が相次いで対策に乗り出していることから、グーグルもこの流れに沿ったようで、誰でも削除要請フォームに入力し、本人の同意なしに投稿されたヌード写真や性的な画像の削除を求めることができるようにするということです。

    これまでは、「不適切な画像」として法的要請なしにグーグルが削除してきたのは、社会保障番号などの個人情報か児童ポルノに限られていました。
    しかし、同社の上級副社長(検索担当)は、「リベンジポルノは被害者、特に女性をおとしめる目的でしかない」と指摘したうえで、「本人の同意なしに共有されたヌード写真や性的に露骨な画像について、検索結果から削除してほしいとする人々の要求を尊重したい」と述べたということです。

    今回の対応は、日本を含む各国で適用されるとしています。
    これは非常によい決定だと思います。

    ネット上の中傷投稿やリベンジポルノなどへの法的手段としては、投稿者に対する不法行為(名誉棄損)に基づく「発信者情報開示請求」をしていくことが必要ですが、この手続きは難しく労力がかかるものです。

    詳しい解説はこちら⇒「中傷投稿やツイートに対抗する法的手段とは?」
    https://taniharamakoto.com/archives/1299

    しかし、被害者にとって今後は手続きが非常にスムーズになり、対応しやすくなるのなら大歓迎でしょう。
    一度ネット上に広まった画像などを完全に消去するのは不可能ですし、グーグルの対応がリベンジポルノを根絶するわけではないとしても、一定の抑制効果は期待できるのではないでしょうか。

    リベンジポルノへの対策と厳罰化の動きは、日本だけでなく世界的にも広がっています。

    別れた後に問題となる可能性のある画像や動画の扱いについては、男性も女性も十分注意してほしいと思います。

  • リベンジポルノには新たな法律が適用されます!

    2015年03月19日

    今年の2月、福島県で元交際相手の女性の裸の写真をショッピングセンターの駐車場でばらまいたとして、会社員の男(33)がリベンジポルノ被害防止法で初逮捕という事件がありました。

    この数年で問題化してきたリベンジポルノは、元配偶者や元恋人への復讐目的で裸の画像や動画を投稿などする嫌がらせ行為のことですが、収まる気配はなく、また新たな逮捕者が出たようです。

    「ツイッターに裸写真…リベンジポルノ法違反容疑で男を再逮捕 ネットでの適用は全国初」(2015年3月11日 産経新聞)

    神奈川県警は、元交際相手の女性の裸の写真をインターネット上で公開したとして、鳥取県境港市の無職の男(39)をリベンジポルノ被害防止法で再逮捕しました。

    ネット上に画像をアップロードする行為としては、同法では全国初の検挙ということです。

    報道によると、今年1月、男は自らの簡易投稿サイト「ツイッター」に、元交際相手で専門学校生の女性(20)の裸の写真10枚を掲載。
    写真は平成24年7月から25年1月までの交際中などに撮影されたようです。

    2014年12月にも、男は写真1枚を掲載しており、友人に知らされた女性が今年1月に県警に相談したことで発覚。

    男は、「(別れた後に)彼女が返事しなくなり、恨みが募った」などと供述し、容疑を認めているようです。

    なお男は、すでに脅迫などの容疑で逮捕後に処分保留となっており、今回、神奈川県警が再逮捕したということです。
    【リベンジポルノ被害防止法とは?】

    リベンジポルノ被害防止法は、正式名称を「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」といいます。
    (なんと長い、26文字もあります!)

    この法律は2013年10月に発生した、三鷹ストーカー殺人事件をきっかけにリベンジポルノに対処するために、2014年11月、国会で成立しています。

    全部で6条からなるリベンジポルノ被害防止法の目的は、以下の通りです。

    私事性的画像記録の提供等により、私生活の平穏を侵害する行為を処罰するとともに、私事性的画像記録に係る情報の流通によって、個人の名誉及び私生活の平穏が侵害される被害の発生、又はその拡大を防止することを目的とする。(第1条)

    次に、「私事性的画像記録」とは、以下のような人の姿態が撮影されたものをいいます。
    1.性交又は性交類似行為に係る人の姿態
    2.他人が人の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。)を触る行為又は人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
    3.衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの
    (第2条)
    【どのような刑罰が科せられるのか?】
    今回の事件では、ツイッターに女性の裸の写真を投稿したということですから、「私事性的画像記録提供等」の罪に問われたということになります。

    第三者が撮影対象者を特定することができる方法で、プライベートで撮影した画像を不特定、または多数の者に提供した場合、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます。(第3条)

    以前の事件のときにはリベンジポルノ被害防止法が成立していなかったので罪に問うことができず、今回の事件では、発生が同法の施行直後だったため、脅迫など別の容疑を適用し、今回、時期を待って再逮捕ということになったのでしょう。

    ちなみに、脅迫罪は2年以下の懲役又は30万円以下の罰金ですから、リベンジポルノ被害防止法の方が重い罪になるということです。

    新たな法律ができ、初の逮捕者が出たことによって、今後は取り締まりが厳しくなされていくでしょう。

    また、米Twitterは現地時間の3月11日、ユーザーポリシーの「Twitterルール」と「嫌がらせ行為に関するポリシー」を改定したということです。

    「撮影されている人物の同意なく撮影または配布された、私的な画像や動画を投稿することを禁じます。」という一文を追加し、リベンジポルノの禁止を明文化したようです。

    リベンジポルノに関しては、日本だけでなく世界的にも厳罰化に向かっています。

    スポーツや資格試験には、おおいにリベンジしても結構ですが、元交際相手にリベンジはいけません。

    世の男性諸氏は十分気をつけましょう。

    「善とは何か。後味の良いことだ。
    悪とは何か。後味の悪いことだ。」
    (アーネスト・ヘミングウェイ/アメリカのノーベル賞作家)

  • 「リベンジポルノ」は罪になります。

    2013年12月11日


    別れた元恋人のプライベート写真や動画をネットに公開する「リベンジポルノ」が問題化しているようです。

    「元交際女性にリベンジポルノ容疑の男を逮捕“裸の写真ばらまく”」

    元交際相手の女性に「交際を続けなければ裸の写真をばらまく」などと脅した容疑で、警視庁青梅署は強要未遂の疑いで無職の男(30)を逮捕しました。男は容疑を認めているということです。

    女性が別れ話を切り出した直後から、男は6日間に4回に渡って携帯電話から写真や動画を添付したメールを送信し、脅していたようです。

    ネットに流出した写真や動画などの情報は完全に回収するのが難しく、いったん流出すると半永久的に世界中でさらされ続けることになります。

    恋人にふられたからといって、その恨みからプライベートな情報をネット上にばらまくことは、卑劣な行為と言わざるを得ません。

    ネット社会の現代、リベンジ(復讐)ポルノの問題は世界各国で起きています。

    アメリカでは、2013年10月1日に施行された「リベンジポルノ非合法化法」によって、嫌がらせ目的で個人的な写真・映像を流出させたとして有罪になると、最高で禁錮6ヵ月もしくは最高1000ドルの罰金刑の対象となりました。

    この法律では、合意の上で撮影された写真であっても写った人の同意なく投稿されれば違法とみなされるそうです。一緒に撮影した写真を、相手の同意を得ず、別れた後にネットに投稿すると違法になるということです。

    ちなみに、同法では流出者と撮影者が同一人物でない限りこの法律は適用されないという制限があるようです。

    日本でも、このリベンジポルノの問題は国会でも取り上げられ、法規制の議論も起きています。

    今年10月、東京都三鷹市で起きた女子高生ストーカー殺人事件で加害者が被害者のプライベート写真と動画をウェブサイトで拡散させたことで一気に問題化しました。

    谷垣禎一法相は、「名誉棄損罪が適用できる。被害者が18歳未満なら、児童売春・児童ポルノ禁止法の可能性がある。現行法で対処できる」と国会で答弁しました。

    では、仮に今回の事件を現行法で見ていくと、どのような罪に問われるでしょうか。

    まず、交際を続けるように強要したので、強要罪が適用されます。

    刑法第223条(強要)
    1.生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。

    強要は、しなくても、「裸の写真をばらまくぞ!」などと脅すと、脅迫罪になります。

    刑法第222条(強迫)
    1.生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。

    また、写真の内容によっては、社会的評価を低下させるので、名誉毀損罪にもなりえます。

    刑法第230条(名誉棄損)
    1.公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。

    さらに、「裸の写真をばらまかれたくなければ、金を払え!」などと、お金を要求すると恐喝罪になってしまいます。

    刑法第249条(恐喝)
    1.人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
    卑劣な行為をした報いは、やはり、罪に問われることになるのです。

    「そんな写真撮らせなければいいのだ」という声もありますが、2人の関係性から断れない場合もあるでしょうし、知らないうちに撮られている場合もあるでしょう。

    やはり、そのような行動自体を罰する方が合理的だと思います。

    少し前に、店の冷蔵庫などに入って写真を撮り、Twitterなどにアップロードする行為が話題になりました。

    インターネットとソーシャルメディアが発達して個人が容易に全世界に意見などを発表することが容易になりました。

    それは良いことですが、その反面として、情報拡散が容易であるがゆえの危険性も高まっています。

    情報が容易かつ無限に拡散するインターネットの危険性を、1人1人が十分認識することが必要です。

    社員教育や学校教育にも取り入れてゆくことも必要ではないでしょうか。