パワハラ | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
弁護士20人以上が所属するみらい総合法律事務所の代表パートナーです。
テレビ出演などもしており、著書は50冊以上あります。
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  • パワハラで和解金6,000万円!?

    2015年04月05日

    パワハラ自殺による損害賠償訴訟が後を絶ちません。
    今回は、大阪での事例です。

    「積水ハウス、パワハラ自殺和解金6千万円支払い」(2015年4月2日 読売新聞)

    「積水ハウス」の社員だった男性(当時35歳)が自殺したのは、上司のパワハラが原因だったとして、両親が慰謝料など約9280万円の損害賠償を求めた訴訟が大阪地裁でありました。

    男性は2010年8月以降、兵庫県西宮市内の事務所で客からの苦情対応などを担当。
    上司から、部下の指導が不十分との理由で「死んでしまえ」、「クビにするぞ」などと日常的に罵倒されるようになり、2011年9月1日に行方不明に。
    6日後、大阪市内の淀川で溺死しているのが見つかったということです。

    神戸西労働基準監督署は、心理的負荷で適応障害を発症したことが自殺につながったと認定。
    そこで、両親は2013年2月に提訴。

    同社側は「指導のための叱責はあったが、罵倒はしていなかった」などとして請求棄却を求めていたようですが、和解金6000万円を支払う条件で和解しました。

    同社は、「円満に解決するために和解したが、コメントは控えたい」としているということです。
    パワハラについては以前にも解説しています。
    詳しい解説はこちら⇒「これは、酷い!パワハラ自殺で5790万円」
     https://taniharamakoto.com/archives/1743

    パワハラが起きると、会社は多額の損害賠償金を支払わなければいけなくなる可能性があります。

    なぜなら、会社には「職場環境配慮義務」や「使用者責任」があるからです。

    職場環境配慮義務とは、会社には従業員との間で交わした雇用契約に付随して、職場環境を整える義務があるということです。
    社員等にパワハラやセクハラなどの被害が発生した場合、職場環境配慮義務違反(債務不履行責任)として、会社はその損害を賠償しなければいけません。(民法第415条)

    使用者責任とは、会社には社員が第三者に対して加えた損害を賠償する責任があるということです。(民法第715条)
    また、パワハラは、損害賠償金支払いだけでなく、対外的な信用棄損や社員の士気低下など、さまざまなダメージを会社に与えます。
    【パワハラ防止のための事前対策】
    では、会社がパワハラを防ぐにはどうしたらいいのでしょうか?
    まずは、事前対策が重要です。

    「パワハラを防ぐための5つの措置」
    ①会社のトップが、職場からパワハラをなくすべきという明確な姿勢を示す。
    ②就業規則をはじめとした職場の服務規律において、パワハラやセクハラを行った者に対して厳格に対処するという方針や、具体的な懲戒処分を定めたガイドラインなどを作成する。
    ③社内アンケートなどを行うことで、職場におけるパワハラの実態・現状を把握する。
    ④社員を対象とした研修などを行うことで、パワハラ防止の知識や意識を浸透させる。
    ⑤これらのことや、その他のパワハラ対策への取り組みを社内報やHPなどに掲載して社員に周知・啓発していく。

    また、被害者などからの相談窓口や関係部署の設置、問題解決の体制の整備、社員への研修や講習なども事前に行っておくべきです。
    【パワハラ発生後の事後対応】
    しかし、事前対策をしていたにも関わらずパワハラが起きてしまったら、どう対応したらいいでしょうか?

    会社が取るべき事後対応の流れをまとめておきます。
    問題の発生から解決までには、次の6つのプロセスがあります。

    ①事実の発覚
    相談窓口などに本人や同僚などの第三者から相談が持ち込まれます。

    ②関係者からのヒアリング
    担当者が事実関係の把握のためにヒアリングをします。
    これは相談者と、パワハラ行為をしたとされる者の双方に対して行い、場合によっては周囲の第三者にも行います。
    行為が行われた状況や、行為が継続的だったかなどについても聴き取りを行います。
    このとき、プライバシーの保護、および協力者への不利益がないようにしなければいけません。

    ③事実確認の有無に関する判断
    ヒアリング後、パワハラ行為があったかどうかについて判断します。

    ④担当機関などによる協議
    パワハラの事実があったと判断された場合、人事部などの担当部署等で加害者に何らかの処分を下すかどうかの協議をします。

    ⑤処分の決定とその後の措置
    担当部署での協議の結果、懲戒処分なしとなった場合は、その旨を被害者に説明したうえで関係改善に向けた援助、配置転換、被害者が被った不利益の回復などの措置をとります。
    同時に、パワハラ行為を行った者への研修・教育を行います。

    加害者に懲戒処分を下すことが決まった場合は、就業規則の規定に従い、けん責、出勤停止、論旨解雇、懲戒解雇などの懲戒処分を下します。
    この場合も、被害者に対して上記のように必要な措置をとるのは言うまでもありません。

    ⑥再発防止措置
    今後の再発防止に向けた措置をとらなければいけません。
    社内報やウェブサイトなどに、パワハラやセクハラ行為があってはならないこと、万が一発生した場合は厳正な処分を下すことなどを記載して全社員に周知します。
    また、研修や講習を実施して社員への啓発にも努めます。
    ところで、今回の事例では、会社側は「上司からの教育や指導による叱責だ」、「罵倒はしていない」と主張しているようです。

    実際、社員の能力不足や職務怠慢の場合、会社は社員を教育指導して、注意などは段階を踏んで対応してからでないと解雇などはできないことになっています。
    また、通常の仕事上の叱責はパワハラにはなりません。

    それが度を超え、人格に対する攻撃などになるとパワハラと認定されます。
    しかし、その判断はなかなか難しいため、訴訟に発展するケースが増えています。

    万が一、パワハラによるトラブルが起きた場合は、被害者側も会社側も専門家などに相談することをお薦めします。
    労働トラブルのご相談はこちらまで⇒「弁護士による労働相談SOS」
    http://roudou-sos.jp/

  • パワハラと教育的指導の境界線とは?

    2015年02月28日

    仕事への意欲が湧かないとき。
    何かのトラブルを抱えて落ち込んでいるとき。

    そんなときは、「言葉の魔法」にかかりたいと思うことがあります。
    身近な人からのアドバイスや、先人や偉人の名言に救われたり、元気が出てくることがありますね。

    しかし逆に、会社や職場で「言葉の暴力」を浴びせられたら、どうでしょうか?

    最悪の場合には、心と体に変調をきたして仕事を続けられなくなってしまう人もいます。

    先日、言葉の暴力がパワハラと認定された裁判がありましたので、解説します。

    「“威圧され適応障害”…看護師長のパワハラ認定」(2015年2月26日 読売新聞)

    北九州市の病院に看護師として勤めていた女性(30歳代)が、元上司によるパワーハラスメントで適応障害になったとして、病院の運営元や元上司を相手取り、約315万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が福岡地裁小倉支部でありました。

    判決によると、女性は病院に勤務していた2013年4~5月頃、子供がインフルエンザにかかったり、高熱を出したりしたため、上司だった看護師長に早退を申し出たところ、有給休暇が残っていたにも関わらず、元上司は「もう休めないでしょ」、「子供のことで職場に迷惑をかけないと話したんじゃないの」などと発言。

    女性は、ミスを叱責されたこともあり、食欲不振や不眠から、同年11月に適応障害と診断されて休職。
    その後、2014年3月に退職したようです。

    裁判官は、看護師長の言動について、「部下という弱い立場にある原告を過度に威圧し、違法」と認定。
    被告に約120万円を支払うよう命じたということです。

     

    近年、パワハラに関する報道が増えていますが、そもそも何をするとパワハラになるのか? すべてのビジネスパーソンは正確に認識しておく必要があるでしょう。

    そこで、今回もう一度、パワハラについて復習しておきたいと思います。

    【パワハラとは?】
    厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」では、以下のように定義されています。

    「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう。」

    「上司から部下に行われるものだけでなく、先輩・後輩間や同僚間、さらには部下から上司に対して様々な優位性を背景に行われるものも含まれる。」

    つまり、パワハラが成立するには次の3つの要件が認められるか検討していくことになります。

    ・それが同じ職場で働く者に対して行われたか
    ・職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に行われたものであるか
    ・業務の適正な範囲を超えて、精神的・肉体的苦痛を与え、また職場環境を悪化させるものであるか
    【パワハラにあたる6つの行為】
    具体的には、以下の6つがパワハラとなる行為とされています。

    ①身体的な攻撃(暴行・傷害)
    ②精神的な攻撃(脅迫・暴言等)
    ③人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
    ④過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
    ⑤過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
    ⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

    今回の事案は、②の言葉の暴力による「精神的な攻撃」ということになります。
    【パワハラによって発生する会社の損害とは?】
    パワハラが行われた場合、今回の事案のように民事裁判では、被害者は損害賠償を求めて訴訟を起こすことができます。
    それは、会社には社員に対して以下のような義務や責任があるからです。

    「職場環境配慮義務」
    会社は、従業員との間で交わした雇用契約に付随して、職場環境を整える義務=職場環境配慮義務を負います。
    社員等にパワハラやセクハラなどの被害が発生した場合、職場環境配慮をきちんとしていていないと、義務違反(債務不履行責任<民法第415条>)として、会社はその損害を賠償しなければいけません。

    「使用者責任」
    ある事業のために他人を使用する者は、被用者(社員)が第三者に対して加えた不法行為による損害を賠償する責任があります(民法第715条)。

    今回の事案のように、社員(看護師長)が別の社員(看護師)に対して損害を与えたと認められれば、その責任を会社が負い、損害を賠償しなければならなくなる場合があります。
    【パワハラを防ぐための5つの措置】
    パワハラを防ぐための措置として、次の5つが挙げられます。

    ①会社のトップが、職場からパワハラをなくすべきという明確な姿勢を示す。
    ②就業規則をはじめとした職場の服務規律において、パワハラやセクハラを行った者に対して厳格に対処するという方針や、具体的な懲戒処分を定めたガイドラインなどを作成する。
    ③社内アンケートなどを行うことで、職場におけるパワハラの実態・現状を把握する。
    ④社員を対象とした研修などを行うことで、パワハラ防止の知識や意識を浸透させる。
    ⑤これらのことや、その他のパワハラ対策への取り組みを社内報やHPなどに掲載して社員に周知・啓発していく。
    さて、ここまでパワハラについて解説してきましたが、それでも会社の社長や部下を持つ管理職の人たちからは、こんな声が聞こえてきそうです。

    「パワハラについては理解できたけれど、なんでもかんでもパワハラに
    されて訴えられたら、たまらない」

    「ミスをした社員をしかるのは当然でしょう。仕事上の叱責までパワハ
    ラにされたら、どうしていいのか…」
    実際、厚生労働省が公表した、「平成25年度個別労働紛争解決制度施行状況」によると、総合労働相談のうち、民事上の個別労働紛争の相談内容では「いじめ・嫌がらせ」が59,197件と、「解雇」や「退職」をおさえ、2年連続で最多となりました。
    いかにパワハラやセクハラの相談が増えているかがわかります。

    しかし、たとえばパワハラとなる行為の中でも、業務への過大な要求や過少な要求などは、業種や企業文化などによっても差異があるため、業務上の適正な指導との線引きや判断が難しいものです。

    法的な基準としては、「平均的な心理的耐性を持った人」が肉体的・精神的に苦痛を感じるかどうかが判断基準とされていますが、以下のポイントにも注意をして対策をとっていただきたいと思います。

    ・行為が行われた状況
    ・行為が継続的であるかどうか
    ・会社が相談や解決の場(相談窓口など)を設置したかどうか
    ・パワハラ行為を行った者への研修・教育を行ったか
    ・懲戒処分の決定とその後の措置は適切だったか

    なお、社員の能力不足や職務怠慢の場合、会社は社員を教育指導してからでないと解雇などはできないことになっているので、通常の仕事上の叱責はパワハラにはならないことは覚えておいてください。

    最近は、仕事上で叱責すると、すぐに「パワハラだ!」と言われることがありますが、仕事上の叱責はパワハラにはなりません。

    それが度を超え、人格に対する攻撃などになると、はじめてパワハラになるのです。

    パワハラ問題が起きてしまうと、被害者の肉体的・精神的苦痛はもちろん、会社にとっても大きな損害となってしまいます。

    判断・対応が難しい場合には、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
    労働トラブルのご相談はこちらまで⇒「弁護士による労働相談SOS」
    http://roudou-sos.jp/

     

  • これは、酷い!パワハラ自殺で5790万円

    2014年12月03日

    パワー・ハラスメント(パワハラ)による損害賠償訴訟の判決のニュースが頻発していているので、解説しておきたいと思います。

    労働者にとっては精神的損害が、使用者側の企業にとっては経済的損失が大きい事例が増えています。

    「“バカ”“使えねえな”店長は自殺…ブラック企業、驚愕パワハラ実態」(2014年11月28日 産経新聞)

    東京都渋谷区のステーキチェーン「ステーキのくいしんぼ」の店長だった男性(当時24歳)が自殺した原因は、過酷な長時間労働とパワー・ハラスメントにあるとして、ステーキ店を経営する(株)サン・チャレンジに対して両親が損害賠償を求めた裁判で、東京地裁は11月、同社側に約5790万円の賠償を命じました。

    判決などによると、男性は同社に勤務していた父親に誘われ平成19年5月にアルバイトとして採用され、間もなく正社員に。
    その後、父親は同社の方針に疑問を感じ退社。
    ところが男性は、「もう少し頑張ってみる」と会社に残ったといいます。

    しかし、平成22年11月に遺書を残し、店舗の入るビルの非常階段で首をつって自殺。
    渋谷労働基準監督署は、平成24年に自殺を労災認定していたということです。

    判決では、驚愕のパワハラの実態が明らかにされました。

    〇パワハラをしていたのは複数の店舗指導するエリアマネージャーの男性で自殺した男性の上司だった。
    〇ミスをするたびに「バカ」「使えねえな」と叱責し、尻や頬、頭などを殴る。
    〇社長や幹部が出席する「朝礼」でさらし者にする。
    〇シャツにライターで火をつける
    〇自殺直前の7ヵ月の残業時間は、1日あたり12時間を超え、月平均190時間超、最大で230時間、月の総労働時間は平均560時間。
    〇7ヵ月間に与えられた休日は2日間のみで、残業代もボーナスも支払われなかった。
    〇たまの休日にも電話で使い走りを命じたり、仕事後に無理やりカラオケや釣りにつきあわせた。
    〇職場恋愛の交際相手が発覚すると、「別れたほうがいい」と干渉。上司に隠れて交際を続けると「嘘をついた」と叱責。

    裁判で上司は、「日頃から親しくしており、指導やじゃれ合いを超えた行為はなかった」と主張。
    しかし、東京地裁の判決では、「暴行や暴言、プライベートに対する干渉、業務とは関係ない命令など、社会通念上相当と認められる限度を超えるパワハラを恒常的に行っていた」、「自殺の理由はパワハラや長時間労働以外にはない」と一蹴。

    また、「自殺した本人に過失はなかった」として過失相殺による賠償額の減額を認めなかったことで、原告側代理人は「自殺をめぐる訴訟で過失相殺を認めないのは異例」としています。
    以前、パワハラについて解説しました。

    詳しい解説はこちら⇒「職場のいじめは、法律問題です。」

    職場のいじめは、法律問題です。

    厚生労働省の公表では、パワハラの定義とは以下のようになります。

    「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう」
    また、パワハラの分類として以下のものが挙げられています。

    ①身体的な攻撃(暴行・傷害)
    ②精神的な攻撃(脅迫・暴言等)
    ③人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
    ④過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
    ⑤過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
    ⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

    ①~③は、業務の適正な範囲内であることは考えにくいので、原則としてパワハラに該当すると考えられますが、④~⑥については業種や企業文化などによっても差異があるため、業務上の適正な指導との線引きが難しく具体的な判断については、行為が行われた状況や行為が継続的であるかどうかによっても左右される部分があると考えられます。

    今回は、民事裁判でしたが、さらに、パワハラは刑事事件として罪に問われる可能性もあります。

    肉体的暴力によってケガをさせれば「傷害罪」(刑法第204条)、仮に言葉の暴力で「電車に飛び込んで死ね!」などと言って相手を自殺させた場合には「自殺教唆罪」(刑法第202条)に問われるかもしれません。

    いずれにせよ経営者側には、職場でのパワハラに対する認識をそろえ、その範囲を明確にする取り組みを行うことが望まれます。

    そのうえで、以下のようなパワハラ防止策を講じる必要があります。
    ・「トップによる、パワハラを職場からなくすべきである旨のメッセージ」
    ・「就業規則・労使協定・ガイドライン等によるルールの作成」
    ・「従業員アンケート等による実態の把握」
    ・「研修などの教育」
    ・「組織の方針や取組についての周知・啓発」
    ・「相談窓口等の設置」
    ・「再発防止措置等」
    パワハラは「職場のいじめ」では済まされない問題です。
    社内でパワハラ行為があれば、社員側も経営者側も不幸な結果が待っています。

    双方が互いに認め合い仕事をすることができれば、幸福な結果が待っているでしょう。
    会社は業績が上がり、社員は誇りとやる気を持って仕事に打ち込めるはずです。

    「人が本当に下劣になると、他人の悪口を言うことしか喜びをみいだせなくなる」(ゲーテ)

    もし、社内でパワハラの事実があるようであれば、不都合な事実から目をそらさず、隠ぺいなどせず、問題が大きくなる前に弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

    ご相談はこちらまで⇒「弁護士による労働相談SOS」
    http://roudou-sos.jp/

  • 職場のいじめは、法律問題です。

    2014年02月02日


    組織のトップ自らが率先してパワーハラスメント(以下、パワハラ)を行っていたという事件が起きました。

    「高校校長、教頭に“バカ”“しゃべるな”暴言で処分」(2014年1月30 朝日新聞デジタル)

    北海道教育委員会は、むかわ町にある高校の男性校長(60)をパワハラで減給(10分の1)1カ月とする懲戒処分を発表しました。

    報道によると、校長は2012年12月ごろから3カ月にわたって、校長室での管理職打ち合わせの際に、「バカ」「しゃべるな」「あんたの給料ください」「おまえをいじめることしか考えていない」などの暴言を繰り返し男性教頭に浴びせかけ、精神的苦痛を与えたということです。

    教頭が道教委に文章で訴えたことで発覚したようで、北海道内では校長がパワハラで処分されるのは初めてのケースとなったということです。

    職場で起こる問題の中でも、近年、問題になっていることのひとつが「パワハラ」です。

    厚生労働省が公表している定義によると、パワハラとは以下のようになります。

    「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう」

    パワハラには、上司から部下に行われるものだけでなく、先輩・後輩間や同僚間などの様々な優位性を背景に行われるものも含まれる、としています。

    具体的には次のような分類を挙げています。

    ①身体的な攻撃(暴行・傷害)
    ②精神的な攻撃(脅迫・暴言等)
    ③人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
    ④過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
    ⑤過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
    ⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

    今回は、②の精神的な攻撃と言えるでしょう。職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えた発言をしていますね。

    職場のパワハラを予防するために必要なこととしては、以下の5点が挙げられます。

    〇トップのメッセージ
    〇ルールを決める
    〇実態を把握する
    〇教育する
    〇周知する

    今回の件では、学校のトップである校長自らがメッセージを発信するどころか、直接パワハラを実行していたという笑えない事態が発生していたということです。

    ちなみに、今回のようなケースで民事で損害賠償を提起した場合には、慰謝料が認められる場合があります。

    仮に殴るなどしたなら、もはやパワハラにとどまりません。

    「暴行罪「傷害罪」という刑法犯罪になる可能性があります。

    「刑法」第204条(傷害)
    人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

    第208条(暴行)
    暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

    以前は、「部下に対する上司の指導」という暗黙の了解で表面化してくることが少なかったパワハラですが、ここ数年で社会問題化してきています。

    お互いにリスペクトしあっていれば、このような事態にはならないはずですし、お互いに職務に真剣に取り組んでいれば、このような事態にならないはずです。

    上司も部下も人間力の向上が肝要。相手を思いやる気持ちが大切ですね。

  • 「いじめ」の「罪と罰」

    2013年12月29日

    タレントのビートたけしさんの新刊『ヒンシュクの達人』(小学館新書)の中に「犯罪」や「表現」についての持論が書かれている箇所があります。一部引用してみます。

    <運動部のシゴキに限らず、「いじめ」って言葉を聞かない日はないけど、この言葉の響きが本質を見誤らせてるんだよな。弱い同級生を殴ったとか、恐喝してカネを奪って、ついには自殺に追い込んじまったなんて、これはもう「いじめ」じゃなくて「犯罪」だろうよ。「暴行罪」「脅迫罪」「恐喝罪」と、ホントの罪状で呼んでやらないと>

    <これは「犯罪だ」ってことをガキの足りない頭でもわかるようにしてやんないと、また同じことが起こっちまうぜ>

    たけしさんらしい過激な表現もありますが、私も法律家、表現者としてこれは一理あると感じる部分もあります。

    小学生が同級生を殴って怪我をさせた場合を考えてみましょう。

    「子供の喧嘩」「いじめ」で済まされる場合も多いでしょう。

    しかし、大人だったら、どうでしょうか?

    被害者が警察に駆け込めば「傷害罪」です。逮捕され、前科がつくかもしれません。

    それを「いじめ」とひとくくりにしてしまった瞬間、犯罪臭が消え去り、学校内で解決すべき問題となってしまいます。

    会社の飲み会で、上司が部下の女性に抱きついたり、キスしたりしたら、「セクハラ」と言われます。

    しかし、道端でこれをやったら、「強制わいせつ罪」になりかねません。

    いずれも女性の意思を無視して無理矢理していることに変わりありません。

    「セクハラ」と言った途端、やはり犯罪臭がなくなってしまい、社内の問題となってしまいます。

    「パワハラ」で、殴るなどは「暴行罪」や「傷害罪」。精神的に追い詰めて精神障害を起こさせることは、場合によっては「傷害罪」になります。

    DV(ドメスティックバイオレンス)もそう。

    家庭内の問題ではなく、「暴行罪」「傷害罪」です。実際、逮捕事例もニュースになっています。

    報道や表現する側としては、あるネーミングを使うことで、刺激的な表現を回避して、包括して意味を伝えることができるメリットがあります。

    その方が読者や視聴者の興味をひきやすい、というメリットもあるでしょう。

    もちろん、被行為者の精神的苦痛への配慮という面もありますが、罪状をぼやかし、場合によっては婉曲表現することで行為者に犯罪という自覚がなくなってしまう恐れもあります。

    また、読む者、聴く者も、犯罪という印象がなくなってしまう恐れがあります。

    ネーミングを使うことは便利ですが、法律の一線の超えた場合には、正式な犯罪名で呼び、行為者、被害者、周りの人の自覚を促すことも大切ではないか、と思います。

    そのような小さなことも法を日本の社会の隅々の浸透させる一助となるのではないか、と思います。

    弁護士監修の契約書書式集
    マイ法務~法を社会の隅々に~
    http://myhoumu.jp/