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弁護士法律解説 リーガルアイ

 

失火責任の場合の損害賠償責任は!?(隣人トラブル)


2016年2月10日

冬になると火災が増えるというイメージを持っている人もいるでしょう。

東京などでは冬は乾燥するため燃えやすいとか、夏場に比べて冬は夜に屋外にいる人が少ないために放火しやすい環境であるため、など諸説ありますね。

さて今回は、これも隣人トラブルといってもいいかもしれません。
隣家からの失火で自宅が全焼した場合、法的にはどのように対応すればいいのか、という相談です。

Q)親戚の家が全焼しました。原因は隣家からの失火だったそうです。叔父や叔母は生活必需品や財産、思い出の品まで全部が燃えてしまったと嘆いていました。私も、とてもショックを受けているのですが、こうした場合には火元の隣家の住人に対して損害賠償できるのでしょうか?

A)隣家の失火、いわゆる「もらい火」による火災に関しては、相手側に損害賠償請求をすることは原則としてできません。それは、「失火責任法」に定められているからです。
【失火責任法とは?】
故意、または過失によって他人に損害を与えた場合、民法が規定する「不法行為」に基づく損害賠償責任を負うことになります。

「民法」
第709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
つまり、相手の不法行為によって損害を被った場合、被害者側は加害者側に対して損害賠償請求をできるわけです。

しかし、もらい火による火災の場合は、失火責任法が定められているため、原則として損害賠償できないのです。

「失火責任法」
民法第七百九条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス
この法律は、1899(明治32)年3月に施行されたもので、正式名称を「失火ノ責任ニ関スル法律」といいます。
この1項のみの、とても短いものなのですが、今から117年も前に規定さているため、現代語になっていません。

現代語に訳すなら、以下のようになります。

民法第709条の規定は、失火の場合には適用しない。ただし、失火をした者に重大な過失があったときは、この限りでない。

これは、日本には木造家屋が多く、しかも密集した住宅街などでは延焼しやすいために、民法第709条をそのまま適用してしまうと、失火をした人に大きすぎる責任を科すことになることから、失火という軽過失の場合は損害賠償責任を負わないとしたものです。

ただし、条文にもあるように重過失の場合はその限りではないことに注意が必要です。
【失火の重過失が認められる場合とは?】
では、どのような失火の場合に重過失となるのでしょうか。
判例には次のような事例があります。

・寝タバコをした(東京地裁 平成2年10月29日判決)
・強風・乾燥注意報が出ているのに建築中の木造家屋の屋根にタバコを捨てた(名古屋地裁 昭和42年8月9日判決)
・石油ストーブの火を消さずに給油した(東京高裁 平成15年8月27日判決)
・つけっぱなしの電気コンロに毛布がかかった(札幌地裁 昭和53年8月22日判決)
・てんぷら油が入った鍋をコンロにかけたまま長時間その場を離れた(東京地裁 昭和57年3月29日判決)
・火災注意報が出ているのに庭でたき火をした(京都地裁 昭和58年1月28日判決)

また、昭和32年7月9日の最高裁の判例では、重過失による失火について以下のような判決があります。

「失火ノ責任ニ関スル法律」但書の規定する「重大ナル過失」とは、通常人に要求される程度の相当な注意をしないでも、わずかの注意さえすれば、たやすく違法有害な結果を予見することができた場合であるのに、漫然これを見すごしたような、ほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態を指すものと解すべきである。

これらのようなケースの場合、重過失が認められて損害賠償請求が認められる可能性があるということです。

その他、失火と損害賠償責任の関係について以下にまとめます。
・借りているマンションやアパートで失火した場合
失火責任法は、民法第709条の不法行為に基づく損害賠償責任が対象であるため、債務不履行に基づく損害賠償責任については適用されません。

そのため、マンションやアパートなどの賃貸借契約に基づいて借りた部屋で失火をしてしまった場合は、借主は貸主に対して原状回復をして返さなければいけないため、たとえ軽過失であっても損害賠償責任を免れることはできません。
ところで、消防庁がまとめた統計データ「平成26年(1月~12月)における火災の状況」によると、総出火件数は43,741件で、前年より4,354件減少していますが、総死者数は1,678人で、前年より53人増加したようです。

また、出火原因の1位は放火、2位はタバコ、3位はコンロとなっています。

放火に関する詳しい解説はこちら⇒
「放火は殺人より罪が重い!という都市伝説の真相は!?」
http://taniharamakoto.com/archives/1624

放火罪の最高刑は死刑ですから、極めて重大な犯罪です。

放火は論外ですが、「失火」を生じさせるようでは、火の扱いは「シッカ」ク(失格)です。

ご近所トラブルで往来妨害罪適用!?


2015年11月25日

大きなお金をかけて購入したマイホーム。
ところが、迷惑な隣人がいてトラブルに巻き込まれでもしたら…安心して暮らせませんね。

しかし、どこに、どんな問題隣人が住んでいるかわかりません。

近年、急増する隣人トラブルについて、今回は家の前の道路を塞いだ大迷惑な隣人の罪について解説します。

「自宅前に大量“植木鉢バリケード”私道を封鎖 77歳夫婦、通行妨害容疑で逮捕」(2015年11月24日 産経新聞)

大阪府警西堺署は、近隣住民ら9人と共同所有する自宅前の私道に大量の植木鉢などを置いて近隣住民の通行を妨害したとして、堺市西区の夫婦(ともに77歳)を逮捕しました。
容疑は、往来妨害罪です。

2人は、2014年9月~11月、自宅前の幅2.4メートルの路地に多数の植木鉢やコンクリートブロックなどを並べて置き、20センチほどしか空スペースを作らず通行を妨害。

現在も近隣住民が通行するのも困難な状況でありながら、私道であるために市などの行政が介入できないことから住民が同署に相談、嘆願書の提出をしていたようです。

じつは、容疑者夫婦は自宅前に犬の糞が放置されていたことに激怒し、2005年にも同じ場所を金網フェンスで囲ったとして近隣住民とトラブルになっており、その際も往来妨害容疑で逮捕され有罪が確定したという過去があるとのこと。

容疑者夫婦は、「自分の土地だ」、「所有権は自分たちにあり、封鎖は何の問題もない」などと主張しているということです。
では早速、道路に関する法律を見ていきましょう。

まず、公道についてですが、今回の事件では「道路法」と「道路交通法」が関係します。

道路法は、道路の定義や整備手続き、管理、保全、費用、罰則など道路に関する事項について定めた法律です。

「道路法」
第43条(道路に関する禁止行為)
何人も道路に関し、左に掲げる行為をしてはならない。
1.みだりに道路を損傷し、又は汚損すること。
2.みだりに道路に土石、竹木等の物件をたい積し、その他道路の構造又は交通に支障を及ぼす虞のある行為をすること。
これに違反した場合、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます。(第102条)

道路交通法とは、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的としています。(第1条)

「道路交通法」
第76条(禁止行為)
3.何人も、交通の妨害となるような方法で物件をみだりに道路に置いてはならない。
これに違反した場合、3月以下の懲役又は5万円以下の罰金に処されます。(第119条の12の4)

しかし、今回は「私道」です。

私道の場合を見てみましょう。

以前、ごみ屋敷の撤去に関する記事でも解説しましたが、個人の財産権は憲法に規定され、保障されています。

「日本国憲法」
第29条
1.財産権は、これを侵してはならない。
詳しい解説はこちら⇒
「全国で初めて“ごみ屋敷”を強制撤去の行政代執行!」
http://taniharamakoto.com/archives/2120

つまり、第三者にとっては明らかにゴミで迷惑なものでも、本人が「財産」と主張すれば、私有地である個人宅や敷地、私道から第三者が持ち出すと、「私有財産権の侵害」につながるおそれがあるわけです。

今回の私道に置かれた植木鉢も同じですね。

ただし、公衆の通行の用に供されている私道の場合、障害物を置いて道路を遮断したりすれば「刑法」の「往来を妨害する罪」が成立します。

「刑法」
第124条(往来妨害及び同致死傷)
1.陸路、水路又は橋を損壊し、又は閉塞して往来の妨害を生じさせた者は、2年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。
2.前項の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
つまり、他の人が通行のために利用する道路の場合は、公道であっても私道であっても、その通行を妨害するような、公衆の交通の安全を侵害する行為は犯罪になる可能性があるということです。

さらに、今回の私道は、9人の共有だと言います。

共有物の管理は、共有持分の過半数を持って決定しますので、いずれにしても1共有者が勝手に植木鉢を置いたりして使っていいわけではありません。

さて今回の事件、別の報道によると、容疑者は包丁を持って通行人を追いかけたり、石を投げる、汚い罵声を浴びせるなどもしていたようです。

まさに、「開いた口がふさがらない」ような非常識な行為のオンパレードですが、近隣住人にとっては口を開けさせずに、道を開けてほしいところでしょう。

行政も、「私道」だからといって放置せずに、きちんと「指導」して欲しいものです。

おあとがよろしいようで。

困った隣人トラブル─ごみ屋敷問題はどう解決する?


2015年8月2日

近年、問題になっている隣人トラブルに、「ごみ屋敷」があります。

今回は、夏の暑さがタダでも鬱陶しいこの季節に、隣人のごみで困っている方からのご相談です。

Q)隣の住人の異常行動に困っています。いわゆる「ごみ屋敷」です。2年ほど前から始まり、年々ひどくなっています。初めは私が直接苦情を言ったのですが、逆ギレされて対話にもなりませんでした。その後は、敷地からゴミがはみ出し始めたので近所の人たちと相談して片付けたところ、「勝手に触るな!」とクレームをつけられました。市に苦情を申し立てても対応が鈍く、何度かしてようやく市の職員が訪問して注意をしてくれたりします。しかし、直後は少しよくなるのですが、すぐにごみが増えていきます。どうすればいいのでしょうか? 訴えることはできますか?

A)ごみ屋敷を取り締まる法律は、残念ながら今のところないのが現状です。また財産権の関係から、勝手に撤去はできないなどの問題もあります。しかし近年では、各自治体が独自の条例を作り、対策に動き出している例も見られるようになってきました。
家にごみをため込み、さらには家からあふれ出したごみが道路にまで広がっている…そんな報道を目にした人もいるでしょう。

しかし、住人本人は「これは資源だ」と主張したり、「片付ける」とは言うものの、結局はそのままで隣人や地域の住民が困惑している、ということが全国各地であるようです。

ごみ屋敷問題の難しさはさまざまありますが、まず法的に見ると直接的に適用できる法律がないという問題があります。

現在は、「廃棄物処理法」などで対応しているようですが、個人宅のごみは対象外のため、行政の対応は後手に回っています。

また、敷地内から周囲の公道にごみがあふれ出ている場合などは、「道路交通法」第76条の禁止行為のうち、3項「何人も、交通の妨害となるような方法で物件をみだりに道路に置いてはならない。」の適用も考えられますが、いずれにしても限定的です。

さらに、「財産権」との関係が問題を難しくしています。

「日本国憲法」第29条1項では、「財産権は、これを侵してはならない。」とあるように、個人の財産権が保障されています。
そのため、明らかに“ごみ”と思えるものでも私有地である個人宅や敷地から第三者が持ち出せば、「私有財産権の侵害」につながるおそれがあるため、解決が困難な問題になっているのです。

しかし、各自治体が独自に条例を制定して対策に乗り出している例が増えてきました。

たとえば、東京都足立区では、2013年に「足立区生活環境の保全に関する条例」(通称・ごみ屋敷条例)を全国初で施行しています。

条例では、1.調査・指導・勧告の実施、2.命令・公表・代執行の実施、などを定めており、「指導・勧告を行ったにもかかわらず、改善されない悪質なケースの場合、命令・公表をする」ことができ、「正当な理由なく命令に従わなかった場合には、代執行を行なうことができる」としています。

足立区の特徴は、最大100万円まで撤去費用を区が負担するというものですが、これには税金が使われることから議論も出ているようです。

このような条例は大阪市や京都市でも制定されています。
先日も、次のような報道がありました。

「自宅前の道まであふれるごみ…京都市が“ごみ屋敷”の50代男性に勧告」(2015年7月22日 産経新聞)

京都市は、ごみのため込みなどで、近隣住民の日常的な通行の妨げになっていることから、条例に基づいて文書指導していた市内の50代の男性について、ごみが解消されなかったとして勧告を行ったようです。

市は引き続き、男性に支援を行っていくが、今後、ごみが撤去されない場合、有識者からの意見を聴きながら命令、さらには行政代執行も検討していくとしています。

「行政代執行」とは、行政上の強制執行の一種で、義務者が行政上の義務を履行しない場合に、行政庁が自ら義務者のなすべき行為をすることです。(「行政代執行法」第1条・2条)

つまり、危険で不衛生なごみを持ち主が処分しない場合は、都道府県や市が代わりに撤去などができる、ということです。

詳しい解説はこちら⇒
「あなたの家が勝手に壊される?空き家の法律」
http://taniharamakoto.com/archives/1940

ところで、2015年5月には「空家対策特別措置法」が完全施行されています。
これは、増え続ける「空き家」の中でも特に倒壊の危険のあるものや衛生上有害なもの、周囲の景観を損なうものなどを「特定空き家」として、最終的には各自治体が行政代執行による撤去もできると定めたものです。

詳しい解説はこちら⇒
「特定空き家の基準が決定!空家対策特別措置法が施行」
http://taniharamakoto.com/archives/1952

放置された空き家は、将来的に“ごみ空き家”になる可能性もあり、こうした法整備が進むことで、各自治体のごみ屋敷の対策にも変化が起きてくることが期待されます。

現状、ごみ屋敷問題に関しては、地域住民の方が行政も交えて粘り強く話し合っていきながら解決策を探っていくしかありませんが、民事上では「不法行為」に対する損害賠償を求める訴訟も検討できますので、一度、弁護士などの専門家に相談してみるのもいいでしょう。

ご相談はこちらから⇒ http://www.bengoshi-sos.com/about/0903/

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