道路交通法 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜 - Part 2
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  • 危険ドラッグで自動車運転しただけで現行犯逮捕です

    2014年08月09日

    危険ドラッグに絡む交通事故の急増で、警視庁に動きがあったので解説します。

    「危険ドラッグ、事故なくても逮捕へ 警視庁、道交法積極適用を通知」(2014年8月5日 産経新聞)

    警視庁は5日、危険ドラッグ(脱法ドラッグ)の吸引者による交通事故が相次いでいることを受け、使用が疑われる運転が発覚した場合、道交法違反(過労運転等の禁止)容疑で現行犯逮捕する運用を始め、各警察署などに通知しました。

    以下に挙げるような条件を満たせば、同法が禁じる「薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態での運転」の疑いがあるとみなすということです。

    〇運転手の意識が混濁するなど異常な状態
    〇正常でない運転をしたことが明白
    〇車内に危険ドラッグや吸引具がある

    人身・物損事故を起こした場合、これまでは薬物と事故との因果関係を立証するために数ヵ月も鑑定結果を待たなければいけなかったのですが、今後は事故だけでなく、検問などで事前に危険ドラッグの使用が疑われれば、同法違反容疑を適用し、現行犯で逮捕するとしています。

    愛知県警では7月下旬から、物損事故を起こした運転者に危険ドラッグの使用が疑われる場合、同法違反容疑で現行犯逮捕する運用を始めているようですが、今回さらに一歩踏み込んだ方針といえるでしょう。

    薬物の影響で正常な運転ができない状態で事故を起こした場合は、「危険運転致死傷罪」の適用が問題となりますが、この罪は構成要件が厳格なため、それほど多く適用されるわけではありません。

    また、事故を起こして始めて適用されるため、薬物使用での運転の抑制という観点で言えば、まだ十分に機能しているとは言えません。

    そこで、薬物使用での運転には、事故を起こす前でも摘発してしまおう、というのが今回の運用です。

    薬物使用での運転の抑制の観点からは、評価できる運用だと思います。
    では早速、「道路交通法」を見てみましょう。

    「道路交通法」
    第66条(過労運転等の禁止)
    何人も、前条第1項に規定する場合のほか、過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない。
    これに違反すると、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金です。
    ちなみに、前条第1項とは、酒気を帯びての運転です。
    別の報道によると、2013年上半期に危険ドラッグに絡んで摘発された人数66人に対して、2014年上半期では、すでに145人が摘発。

    また、2014年上半期に摘発した危険ドラッグ使用者による交通事故33件のうち、26件で検出された薬物は、薬事法の指定薬物ではなかったことが判明。

    2013年でも、1年間で摘発した38件のうち28件は未指定で、7割以上で規制対象外の薬物が使われていたようです。

    覚醒剤や大麻は、試薬を使えば短時間で鑑定できるのですが、危険ドラッグは、違法かどうかの鑑定に数ヵ月もかかっていたわけですから、こうした迅速な判断は、危険運転による死傷事故の抑止には一定の効果があると思われます。

    どのような成分が入っていて、人体にどう作用するかわからない危険ドラッグを吸うことも、それで自動車を運転することも、ご法度だということを肝に銘じてほしいと思います。

  • TBSテレビ「ひるおび」生出演

    2014年07月17日

    2014年7月15日のTBSテレビ「ひるおび」に生出演しましした。

    最近、頻発する脱法ハーブによる事故やひき逃げ事故について、これまでの事故に関する法律改正状況(道路交通法、刑法、自動車運転死傷行為処罰法)を解説するとともに、どうすれば同様の事故が防げるか、などについて解説をしました。

  • 自転車の検査を拒否すると犯罪になる!?

    2014年06月23日

    平成25年12月1日に、「改正道路交通法」が施行されたのを、みなさんご存じだったでしょうか?

    今回の改正で、新たに規定されたものに「自転車の検査拒否」があります。

    一見、地味な印象もありますが、一体、どんな法律なのでしょうか?

    先日、全国で初摘発された事件が起きたので、これを例にして解説したいと思います。

    「自転車検査拒否疑い初摘発 23歳男を書類送検」(2014年6月19日 産経新聞)

    埼玉県警蕨署は19日、ブレーキのない自転車を運転し、警察官が検査のため停止を命じたのに従わなかったとして、道交法違反(検査拒否と制動装置不良)の疑いで、同県川口市のアルバイトの男(23)を書類送検しました。

    事件が起きたのは、3月17日午後4時半ごろ。
    男は同県戸田市の公道をブレーキのない自転車で走行していたところ、検査のため警察官がパトカーのマイクで停止を命じたにも関わらず、これに従わずに逃走。

    近くのマンションの駐車場に入り込んだところを、追跡したパトカーの署員に取り押さえられたということです。

    同署によると、自転車は男が組み立てた曲芸などでも使われる小型の競技用のもので、ブレーキは前輪、後輪ともになかったようです。

    男は、「捕まるのが嫌で逃げました」と容疑を認めているということです。

    以前、ブレーキのついていない自転車を運転して逮捕された事件を解説しました。

    詳しい解説はこちら⇒
    「こんなことで逮捕とは…ブレーキなし自転車(ピスト)で全国初逮捕」
    https://taniharamakoto.com/archives/1208

    この事件では、道路交通法違反(制御装置不良自転車運転)容疑でした。

    今回はさらに、「自転車の検査拒否」の容疑です。

    「道路交通法」第63条の10(自転車の検査等)
    1.警察官は、前条第一項の内閣府令で定める基準に適合する制動装置を備えていないため交通の危険を生じさせるおそれがある自転車と認められる自転車が運転されているときは、当該自転車を停止させ、及び当該自転車の制動装置について検査をすることができる。

    2.前項の場合において、警察官は、当該自転車の運転者に対し、道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要な応急の措置をとることを命じ、また、応急の措置によつては必要な整備をすることができないと認められる自転車については、当該自転車の運転を継続してはならない旨を命ずることができる。

    ブレーキのない自転車で通行しているときは、警察官がこれを停止させて検査し、応急措置では必要な整備ができない場合は、その自転車を運転しないよう命ずることができるようになったわけです。

    罰則は、5万円以下の罰金です。

    もちろん、「ブレーキがついていないから止まれなかった」という言い訳は通用しませんよ。

    ちなみに、昨年12月の施行では、以下についても刑罰が追加されています。

    「悪質・危険運転への対策」
    無免許運転や、無免許運転の幇助行為、免許証の不正取得について、これまでの罰則は、1年以下の懲役又は30万円以下の罰金だったものが、改正後は3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に引上げられています。

    「自転車の路側帯通行を左側に限定」
    自転車等の軽車両が通行できる路側帯は、道路の左側部分に設けられた路側帯に限ることとされました。
    路側帯の右側通行をした場合は、通行区分違反として、3ヵ月以下の懲役又は5万円以下の罰金です。

    ブレーキなしの競技用の自転車はかっこいい、乗り心地がいいという理由で公道を走ってはいけません。

    自転車愛好者は、法律に違反した自転車に乗りたいという気持ちにもブレーキをかけなければいけませんね。

  • 軽傷のひき逃げで懲役15年!?

    2014年04月16日

    「後悔先に立たず」、「後の祭り」、「死んだ子の年を数える」「臍(ほぞ)を噛む」……同じような意味で使われることわざですが、なんだか文字を見ているだけで、つらい気分になってきます。

    人間、誰しも失敗や過ちを犯すことがあります。

    しかし、失敗や過ちをそのままにしておく、または隠蔽したり、そこから逃げてしまっては、傷口がさらに広がってしまったり、最終的には取り返しのつかないことになりかねません。

    まさに、ことわざ通り「後の祭り」にならないためには、冷静な判断と対応が大切です。

    ところが、気が動転していたのでしょうか? それとも単に怖くなって逃げたのでしょうか? その場しのぎでやった行為が、後で大きな代償を払うことになってしまった事件が起きてしまいました。

    <「保険に入ってなかった…」女児ひき逃げで男を逮捕>(2014年4月1日 テレビ朝日ニュース)

    千葉県我孫子市の交差点で、近くに住む小学生の女の子(10)が横断歩道を渡っていたところ、軽自動車にひき逃げされました。

    警察は、現場に残された車の破片などを分析。犯人の行方を追っていたところ、車を運転していた自称・会社員の男(32)が警察署に出頭し、逮捕されたということです。

    男は、「任意保険に入ってなかったので逃げた」「女の子が動いていたので、大したことはないと思った」と話しているようです。なお、女の子は救急搬送されましたが、あごを打つなどで軽傷とのことです。

    報道からは、逮捕容疑が何なのか分かりませんが、おそらくこの男は、「自動車運転過失致死傷罪」と、「ひき逃げ」による道路交通法違反(救護義務違反)の併合罪となるでしょう。

    自動車運転過失致死傷罪は、以下の条文に規定されます。

    「刑法」第211条(業務上過失致死傷等)
    2.自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。(以下省略)

    「ひき逃げ」とは、車両を運転中に人身事故を起こした際、必要な措置を講じずに事故現場から逃走する犯罪行為をいいます。

    ちなみに、人の死傷をともなわない事故の場合は「当て逃げ」となります。これには、物損事故、建造物損壊、他人のペットなども含みます。

    「道路交通法」第72条
    1.交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。(以下省略)

    人身事故を起こしてしまったら、運転者や同乗者は次のことを「義務」として行わなければ、罰せられます。

    ①直ちに運転を停止する義務
    ②負傷者の救護義務(安全な場所への移動、迅速な治療など)
    ③道路上の危険防止の措置義務(二次事故発生の予防)
    ④警察官への報告義務(事故の発生日時、死傷者、物損状況など)
    ⑤警察官が現場に到着するまで現場に留まる義務

    これらの義務違反をした場合、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます。(第117条1項)

    さらに、人身事故での被害者の死傷が運転者の運転に原因がある場合に義務違反をしたときは、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます。(第117条2項)

    実際、今回の事故の場合、被害者の女の子は軽傷なので、民事での賠償金は、おそらく最高でも数十万円というところでしょう。また、事故後に、しっかり対応していれば自動車運転過失致死傷罪で立件されない可能性が高いと思います。

    しかし、現場から逃げてしまったばかりに、自動車運転過失致死傷罪と、ひき逃げによる救護義務違反の併合罪となり、場合によっては最高刑で懲役15年にもなってしまう可能性があるということです。

    おまけに、テレビや新聞、ネットで全国ニュースにもなってしまうのですから、人生において大きなダメージを受けることにもなりかねません。

    やってしまったこと、起こってしまったことは消すことができません。しかし、その後の判断と対応で人生が大きく変わってしまう可能性があります。

    まずは、車を運転する際は細心の注意を払いましょう。
    仮に被害者が軽傷で、略式起訴の罰金刑になったとしても、前科一犯に変わりはありません。

    万が一、事故を起こしてしまった場合には、逃げない、うそをつかない。けが人がいれば、救護や連絡などの義務を果たす。

    そうでないと、罪の上にさらに罪を重ねてしまうことになります。

    ハンドルを握るときは、つねにこれらのことを肝に銘じておいてほしいと思います。

    後悔は、先には立ちません。

    先立つものは、カネ・・・、間違えました!

    先に立てるのは、「己を律する心」ということですね。

  • 走行中の車からポイ捨てすると犯罪!?

    2014年02月16日


    中華圏で、重要な祝祭日とされるものに「春節」があります。

    いわゆる旧正月(旧暦の正月)のことで、この日は中国、台湾、ベトナムや世界各地の中華街では爆竹を鳴らしたりして、お祝いが盛大に行われます。(ちなみに今年の春節は1月31日でした)

    ハレの日を爆竹で祝うのはいいのですが、日本の公道で、しかもよりによって消防団員がパトロール中に爆竹を道路に投げ込んだとして書類送検される事件が起きました。

    「パトロールの消防車から爆竹投げた団員書類送検」(2014年2月8日 読売新聞)

    パトロール中の消防車から火をつけた爆竹を道路に投げたとして、愛知県豊田署は7日、同県みよし市の消防団分団長で会社員の男(31)を道路交通法違反(道路での禁止行為)の疑いで豊田区検に書類送検しました。

    調べによると、事件が起きたのは昨年12月26日の夜。

    男は県道で消防車に乗って火災予防のパトロール中、爆竹1個に点火。それを道路に投げ込み、爆発させた疑いとのことです。

    ちょうど前を走っていた車の女性から、「消防車のスピーカーから話し声が聞こえ、爆竹も鳴らしている。車を降りて注意をしたが、走り去った」と110番通報があったことで発覚。

    男は消防団の詰め所で団員仲間と酒を飲んで酔ったままパトロールし、「後ろを走っていたもう1台の消防車の仲間を驚かそうと爆竹を使った」と話しているということです。

    もちろん、消防団員がパトロール中の消防車から、しかも酒に酔って火気である爆竹を鳴らすとは言語道断ですが、それでも、道路で爆竹を鳴らしたくらいで犯罪になるの? と思う人もいるでしょう。

    じつはこの男の行為、言い訳のできない犯罪なのです。条文から抜粋してみましょう。

    「道路交通法」第76条で、次のような行為を禁止しています。

    〇道路において、酒に酔って交通の妨害となるような程度にふらつくこと。

    〇道路において、交通の妨害となるような方法で寝そべり、すわり、しゃがみ、又は立ちどまっていること。
    ※わざとやっているとしたら、命知らずですね。

    〇交通のひんぱんな道路において、球戯をし、ローラー・スケートをし、又はこれらに類する行為をすること。

    〇道路において進行中の車両等から物件を投げること。

    違反した場合は、5万円以下の罰金です。

    今回は、進行中の車両から爆竹を投げた、ということで犯罪成立ということです。この犯罪、過去の判例で見ると、こんな大迷惑なものもあります。

    東京都千代田区の祝田橋から竹橋方面に向かう北行四車線中、中央分離帯に最も近い車線に散水車を止め、タンクの排水口から糞尿を勢いよく車道上に流出。被告はさらにポリバケツに糞尿を汲んで、付近にまき散らした。(東京高等裁判所判決時報刑事44巻1~12号19頁)

    糞尿が車道上を帯状になって流れ、幅10メートルにわたり四車線のほぼ全面を覆う状態になった、とあります。

    車から垂れ流すだけでなく、車を降りて、ポリバケツに糞尿を汲んで、さらにまき散らしたのです。

    何が彼をここまで糞尿に駆り立てたのでしょうか?

    ゴリラは敵を威嚇するために糞を拾って投げると言います。

    今回の犯人が糞尿をまき散らしたのも、威嚇行動なのでしょうか。

    いずれにしても、周辺の人はたまったものではありません(糞尿は溜まっているようですが・・・)

    これは特異な例だとしても、走っている車からものを捨てると犯罪になるということです。

    運転中に捨てていいのは邪念と心得ましょう。

    注意してください!

    走っている車からのタバコやゴミのポイ捨て、あなたもしていませんか?

    今、ドキッとした方。

    あなたのその行為、犯罪になるかもしれません。

  • テレビ朝日「モーニングバード」出演

    2014年02月02日

    2014年1月31日のテレビ朝日「モーニングバード」で取材を受け、放映されました。

    内容としては、先日兵庫県で起こったひき逃げ交通事故で、事故現場が普通の道路ではなかったことから、どのような犯罪が成立するのか、という点について、交通事故の専門家としてコメントを求められたものです。

    具体的には、普通の道路ではない場所での事故に「道路交通法」の適用があるか、という点ですね。

    道路交通法の道路には、道路法の道路だけでなく、「一般交通の用に供するその他の場所」が含まれますので、この要件に該当するかどうか、ということです。

    それにしても、事故を起こした時、ひき逃げをすると、一気に刑罰が重くなりますので、必ず警察や救急車を呼ぶようにしてください。

  • 飲んだら乗るな!助手席も!~無免許同乗、飲酒同乗~

    2014年01月16日


    年末年始、帰省などで自動車の運転をした人も多かったのではないでしょうか。

    自動車の運転は疲れるものです。特に、長距離移動では交代してくれる「相棒」がいると心強いものです。

    ところが、その相棒がじつは無免許だったら? もしくは、無免許と知りながらあなたが自動車の運転をさせたとしたら、どうなるでしょう? そんな事件が起きました。

    「無免許運転と知りつつ同乗─会社員の男を書類送検」(2014年1月7日 時事ドットコム)

    警視庁第9方面交通機動隊は1月7日、交通違反で免許が取り消されていた同僚にトラックの運転を任せ、同乗したなどとして、会社員の男(27)を書類送検しました。

    事件が起きたのは昨年の12月。

    東京都日野市の路上で会社員の男は、同僚の男(22)が無免許であることを知りながら2トントラックの運転をさせて、自分は助手席に同乗。
    2人は引っ越しなどの雑務を請け負う仕事をしており、次の現場に急いでいたといいます。

    トラックを走らせること15分後、同隊の白バイ隊員に停止を求められた際、2人は席を入れ替わってごまかそうとしたが無免許であることが発覚。

    会社員の男は、道路交通法違反(無免許運転同乗)および犯人隠避・同教唆の疑いで書類送検されたようです。

    調べによると、「自分よりも運転が上手いと思った」と話しているようで、
    同僚の男も道路交通法違反(無免許運転)容疑などで書類送検されました。

    無免許運転は、2013年12月1日施行の「改正道路交通法」により、3年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金に罰則が強化されています。

    また、無免許運転と知りながら助手席に座っただけで犯罪になることを知らない人もいるかもしれませんが、これも同様に改正道路交通法によって、2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金、という罰則が新設されています。

    さらには、無免許の運転者に車を提供しても、3年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金になります。

    この会社員の男は、同僚の無免許運転を隠してごまかそうとしたために、犯人隠避と同教唆の容疑まで雪だるま式に増えてしまいました。

    犯人であることを隠そうとするのも犯罪なのです。

    「刑法」第103条(犯人蔵匿等)
    罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、2年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。

    「蔵匿」とは、人に見つからないように隠しておくこと。「隠避」とは、隠れ場所を提供する以外の方法で、犯人・逃走者の発見または逮捕を妨げることです。

    「刑法」第61条(教唆)
    1.人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。
    2.教唆者を教唆した者についても、前項と同様とする。
    「教唆」とは、ある事を起こすよう教えそそのかすこと。他人をそそのかして犯罪実行の決意をさせることです。
    ちなみに、飲酒運転の車に同乗しても、車を提供しても犯罪になります。

    「道路交通法」65条(酒気帯び運転等の禁止)
    1.何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。
    2.何人も、酒気を帯びている者で、前項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがあるものに対し、車両等を提供してはならない。
    3.何人も、第1項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがある者に対し、酒類を提供し、又は飲酒をすすめてはならない。
    4.何人も、車両(中略)の運転者が酒気を帯びていることを知りながら、当該運転者に対し、当該車両を運転して自己を運送することを要求し、又は依頼して、当該運転者が第1項の規定に違反して運転する車両に同乗してはならない。

    色々あって憶えられないかもしれませんが、たとえ自分が直接の違法行為を犯していないとしても、他人の酒気帯び運転・無免許運転などに関与すると、自分も罰せられる、ということです。

    注意してください!

    一緒にお酒を飲んで、車を運転して帰ろうとしている知人から「送っていく」と言われ、「自分は運転するわけじゃないから大丈夫」などと思っていると、犯罪になる可能性があります。

    飲んだら乗るな、助手席も! ということですね。

  • こんなことで逮捕とは…ブレーキなし自転車(ピスト)で全国初逮捕


    ブレーキなしの自転車運転で全国初の逮捕者が出てしまいました。

    警視庁交通執行課は11日、後輪にブレーキがついていない自転車を運転したとして、東京都の男性を道路交通法違反(制御装置不良自転車運転)容疑で逮捕しました。

    男性は、昨年3月に同じ自転車を運転しているところを同容疑で摘発されたにもかかわらず、出頭要請を7回も無視し続けたことで同課は逮捕する必要があると判断したようです。

    男性は、「こんなもので逮捕されるとは思わなかった」と供述しているとのことです。

    参考人ならまだしも、被疑者としての出頭要請ですから、出頭すべきですね。

    ところで、ブレーキのない自転車=ピストバイクとはどういうものなのか簡単に説明しておきましょう。

    ピストバイクは競技用の自転車(トラックレーサー)で、もともとは公道を走るためのものではありません。

    そのためブレーキがついておらず、しかも固定ギアのためペダルを逆回転に回して自転車を止めるのですが、制動力は脚力に依存するため、相当の脚力がないと、急に止まることができないでしょう。

    2000年代半ばに日本にも輸入されるようになり、そのシンプルなスタイリングが美しいということで、ストリートカルチャーやファッションの面で人気になりました。
    壊れにくく、乗り心地が独特ということで愛好家もいます。

    しかし、2年前にはお笑い芸人がブレーキなしのピストバイクを運転していて道路交通法違反(制動装置不良)で交通違反切符を切られたように、このところ摘発者が増えているようです。

    みなさん、ここでもう一度、確認してください!
    ブレーキなしの自転車を運転することは法律で禁じられています。
    もちろん、前輪後輪両方ついていなければいけません。

    道路交通法 第63条の9第1項(自転車の制動装置等)

    自転車の運転者は、内閣府令で定める基準に適合する制動装置を備えていないため交通の危険を生じさせるおそれがある自転車を運転してはならない。

    道路交通法施行規則 第9条の3

    1.前輪及び後輪を制動すること。
    2.乾燥した平たんな舗装道路において、制動初速度が10キロメートル毎時のとき、制動装置の操作を開始した場所から3メートル以内の距離で円滑に自転車を停止させる性能を有すること。

    これに違反すると、道路交通法の第120条により5万円以下の罰金となります。

    今年7月に施行された東京都の「自転車安全利用条例」によって、道路交通法に違反する自転車の販売が禁止されたので、ブレーキのない自転車の一般販売も禁止される、ということになります。この動きは全国に広がっています。

    また近年、交通事故は減少しているにもかかわらず、自転車による事故は全体の約2割にも達し増加の一途をたどっています。

    自転車は道路交通法上、「軽車両」です。

    格好いいからという理由だけでブレーキなしの自転車には乗らないこと。
    自分も人も傷つけないよう、安全に十分配慮して自転車を楽しんでほしいと思います。

  • 改正道路交通法可決 無免許運転の罰則は?

    2013年06月08日


    6月7日の衆議院本会議で、改正道路交通法が可決しました。

    内容としては、無免許運転の厳罰化や免許取得・更新時に、病気などを隠した場合の罰則の新設などです。

    2012年4月の京都亀岡で登校中の児童ら10人を死傷させた無免許事故や、2011年4月の栃木県鹿沼市の児童6人がはねられ死亡した、病気発作によるクレーン事故などを受けたものです。

    無免許運転の罰則は、現在、「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」です。

    これが、改正によって「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」になります。

    軽いと思われるかもしれませんが、無免許運手で人身事故を起こした場合には、これに、自動車運転過失致死傷罪も成立します。

    自動車運転過失致死傷罪の法定刑は、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金です。

    そうすると、無免許運転罪と自動車運転過失致死傷罪が「併合罪」となり、刑罰は、最長10年の懲役、ということになります。

    高度経済成長期のモータリゼーションを進める過程では、自動車事故の罰則は低く抑えられていましたが、成熟した現代社会では、モータリゼーションよりも、適正な刑罰が要請されます。

    近年、自動車事故の罰則が強化されてきていますが、それは、社会が自動車事故に対して厳しい目を向けるようになったことに起因しているのだと思います。

    このところ、交通事故の数は減少傾向にありますが、それでも2012年の交通事故発生件数は、66万5,138件で、交通事故による死者数は、4,411人です。

    1日に約12人が交通事故によって尊い命を落としています。

    自動車を運転する人は、くれぐれも細心の注意を払って車を運転していただきたいと思います。

    なお、この改正道路交通法は、政令などを整備し、半年から2年以内に順次、施行されることになります。

    交通事故被害者のための無料小冊子は、こちら
    http://www.jiko-sos.jp/report/