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弁護士法律解説 リーガルアイ

 

関越道スキーツアーバス事故の補償・賠償・罰則は?


2016年1月16日

ツアーバス(スキーバス)事故がありました。

死者14名、負傷者27名という大惨事です。

事件は、2016年1月15日午前2時ごろ、長野県軽井沢町の国道18号の碓氷バイパス入山峠付近で起こりました。

スキー客を乗せたツアーバスが、対向車線にはみ出して反対車線側にあるガードレールを突き破り、約3メートル下の斜面に転落しました。

警察は、自動車運転死傷行為処罰法違反(過失運転致死傷罪)の疑いで捜査しているということです。

つまり、自動車を運転する際に、過失によって人の死傷という結果を起こしたということです。

この過失運転致死傷罪が適用された場合の刑罰は、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金です。

何人死亡しようとも、これが上限となります。

ここには批判もあるところです。

ただ、今回は運転手が死亡しているところから、バス運行会社の責任はないのか、という議論が出てくると思います。

まだ原因は究明されていませんが、仮に、運転手が過労状態であったのに、運転させていた、というような場合には、バスの運行会社にも刑事責任が発生する場合があります。

道路交通法117条の2第5号は、過労運転で正常な運転ができない状態で運転を命じた場合(過労運転下命)には、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金を科す、としています。

過去の事例では、高速道路で仮眠状態のトラックが渋滞で停車中の自動車に追突し、6名の死傷者が出た事件で、この罪の問われ、営業所長に懲役2年執行猶予4年、運行管理者に懲役1年執行猶予3年の刑罰が科せられた事件がありました(大阪地裁平成26年3月19日判決)。

そして、このとき、運送会社も労働基準法違反(36協定以上の長時間労働)に問われ、罰金50万円が科せられています。

今回は、まだ捜査中ですが、このような可能性もある、ということです。

また、国交省も調査をしていると思いますので、バス運行会社には、しかるべき行政処分が発せられる可能性もあります。

さらに、今回の事故の被害にあった被害者およびご遺族は、今回の事故に責任がある者に対し、民事の損害賠償請求をしてゆく権利があります。

損害賠償の対象となる可能性があるのは、運転手の遺族、バス運行会社、バス運行会社の役員、ツアー会社等です。

たとえば20歳の男子大学生の場合には、賠償金は概算8000万円くらいにはなるので、今回の全ての賠償金総額は、相当の金額になるでしょう。

バス運行会社が無制限の任意保険に入っていればよいのですが、入っていない場合には大変なことになってしまいます。

徹底した原因究明を望むとともに、バス運行会社の業界全体も、運行管理について改めて見直す契機になって欲しいと思います。

交通事故の相談は、こちらから。
http://www.jiko-sos.jp/

学校での柔道事故で8150万賠償命令【国家賠償法】


2015年10月1日

オリンピックの競技にもなっている柔道は日本で生まれた武道であることは、みなさんもご存知でしょう。

歴史を紐解けば、そもそもは12世紀以降に武士たちの合戦で用いられた武芸の中から江戸時代に「柔術」として発展。
時は下り、明治期に学習院の講師だった嘉納治五郎が各技を整理、体系化して「柔道」と名付け、1882(明治15)年に講道館を創設。
その後、競技としての柔道が普及していったようです。

学校教育に導入されたのは、1950(昭和25)年からで、現在では全国の中学校で必修、高校の多くでも必修科目となっており、部活動も盛んに行われています。
しかし、柔道による生徒の事故が後を絶たないという問題も指摘されています。

今回は、子供を持つ親が心配な学校での事故に関する損害賠償問題について解説します。

「柔道練習で後遺症、学校側に8150万賠償命令」(2015年8月20日 読売新聞)

2009年、広島県尾道市の私立尾道高校で、柔道部の練習中に頭を打ち、高次脳機能障害などの重い後遺症が残ったとして当時1年の男性(21)と両親が同校を運営する尾道学園に計約1億4400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決がありました。

裁判官は、「事故を防ぐための適切な措置を講じる義務に違反した」として、同学園に計約8150万円の支払いを命じたようです。

判決によると、男性は2009年4月に入部。
翌年5月の練習中に乱取りをしていて、頭を畳に強打。
急性硬膜下血腫などで、記憶障害や言語障害などの高次脳機能障害や視野狭窄が残ったということです。
【学校での子供の死傷事故では給付金が支払われる】
学校(保育所)の管理下における子供の事故、災害では、通常の場合、学校が加入している日本スポーツ振興センターから災害共済給付金(医療費、障害・死亡見舞金)が支払われます。

ここで重要なのは、「学校(保育所)の管理下」ということです。
授業中(保育所における保育中を含む)、部活動や課外授業中、休憩時間(始業前、放課後を含む)、通学(通園)中は、学校の管理下になります。

しかし、この災害共済給付金だけでは損害賠償金額をすべて賄えないことが多いものです。
その場合、被害者や親は誰に請求すればいいのでしょうか?
【学校には代理監督者責任と使用者責任がある】
被害者や親は、学校に損害賠償請求することができます。

なぜなら、法律的には、学校は親に代わって子供を監督する立場であるため、「代理監督者責任の義務」があるからです。

また、教職員の故意または過失によって生じた事故では、その使用者として学校が損害賠償義務を負うことになります。

その場合、公立校であれば国家賠償法、私立校ならば民法715条が適用されます。

「国家賠償法」
第1条
1.国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
「民法」
第715条(使用者等の責任)
1.ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
なお、損害賠償請求に関しては第709条が適用されます。

第709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
【柔道では脳への重度の障害が残る事故が多いという事実】
日本スポーツ振興センターにおける災害共済給付のデータによると、平成10~21年度の集計では、中学・高校での体育の授業、および運動部活動における死亡・重度の障害事故の発生件数は以下のようになっています。

「中学・高校での体育の授業における死亡・重度の障害事故の発生件数」
・陸上競技/87人
・水泳/24人
・バスケットボール/17人
・サッカー/16人
・器械体操等/10人
・柔道/9人
・バレーボール/8人
「中学・高校での運動部活動における死亡・重度の障害事故の発生件数」
・柔道/50人
・野球/35人
・バスケットボール/33人
・ラグビー/31人
・サッカー/26人
・陸上競技/19人
・バレーボール/14人
・テニス/14人
柔道の体育の授業での安全管理については一定の成果が出ているようですが、部活動での死傷事故の件数はもっとも多くなっています。

特に柔道の場合、受け身が上手くできなかったことによる頭部や頸部へのケガが多く、一生涯介護を要するような重度の後遺症を負うこともあります。

交通事故の被害者の場合でもそうですが、頭部の場合、外傷はなくても激しく揺さぶられることで内部の脳自体への損傷や出血が起きることがあります。
そうした場合、重篤な障害が残るというケースが多いのです。

もちろん、柔道を悪者にするわけではありませんが、やはり武術ですから相応の危険性があるのは当然でしょう。
今後、国には、学校でのスポーツによる子供の事故例の分析、原因の究明、予防対策等をしっかりお願いしたいと思います。

また、運動会や体育祭の組み体操でピラミッドが崩れ、生徒が重軽傷を負う事故も起こっています。
学校側は十分な注意が必要です。

関連記事 http://news.yahoo.co.jp/pickup/6176079

なお、あってはならないことですが、万が一の事故の場合の損害賠償請求では専門的な知識が必要となりますので、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

ご相談はこちらから⇒http://www.bengoshi-sos.com/school/

セクハラの賠償金が1300万円!?


2015年1月22日

昨年11月、あるセクハラ裁判で異例の高額賠償金による和解が成立していたことがわかりました。

「“数字未達なら彼女になれ” アデランス、社内セクハラ1300万円で和解」(2015年1月20日 産経新聞)

かつら製造・販売の最大手「アデランス」の兵庫県内の店舗に勤務していた元従業員の女性が、大阪市内の店舗の店長だった男性従業員から繰り返しセクハラを受けて心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症し、退職を余儀なくされたとして同社に計約2700万円の損害賠償を求めた訴訟で、同社が女性に解決金1300万円を支払うなどの内容で2014年11月28日、和解していたことがわかりました。

報道によると、女性が兵庫県内で勤務していた2008年3月、大阪市内の店舗の店長だった男性従業員が指導目的で来店。
「数字を達成できなかったら彼女になるか、研修もしくは転勤だ」と脅すなどし、無理やりキスをしようとしたり、体を触ったりするセクハラを繰り返したようです。

女性が被害届を出そうとしたところ、同社の幹部から止められ精神的に不安定になり休職し、2010年1月にはPTSDと診断。
同社は、いったん女性を特別休暇扱いとし、その後に給与の支払いを停止。女性は2011年9月に退職したということです。

和解の内容は、会社が女性に和解金1300万円を支払う他、①同社は解決金の半額650万円について男性従業員に負担を求める、②男性従業員の在職期間中、原告が居住する京阪神地域を勤務地や出張先にしないよう努める、などとなっているようです。

なお、このセクハラについては地元の労働基準監督署が労災認定し、休業補償給付などの支給を決定しているとのことです。
会社がセクハラをした役員や社員を処分するのは当然ですが、セクハラに対する対応を間違ってしまうと、大変なことになってしまいます。
では、どのような対応をとればいいのでしょうか?

「男女雇用機会均等法」には、事業主がセクハラ対策として講ずるべき措置等が定められています。
主なものは以下の通りです。

〇事業主の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に対してその方針を周知・啓発すること。
〇相談、苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備すること。
〇相談があった場合、事実関係を迅速かつ正確に確認し、適正に対処すること。
〇相談者や行為者等のプライバシーを保護し、相談したことや事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。

また、セクハラとなる言動には以下のようなものがあげられます。

〇性的な事実関係を尋ねること
〇性的な内容の情報を意図的に流布すること
〇性的な冗談やからかい
〇食事・デートなどへの執拗な誘い
〇個人的な性的体験談を話すこと
〇性的な関係を強要すること
〇必要なく身体に触ること
〇わいせつな図画(ヌードポスターなど)を配布、掲示すること
〇強制わいせつ行為、強姦等

事業者が上記のような講ずべき措置を怠った場合は、厚生労働大臣の行政指導(男女雇用機会均等法29条)の対象となるほか、勧告に従わなかった場合の企業名の公表(男女雇用機会均等法30条)、都道府県労働局長による紛争解決の援助の対象となる(男女雇用機会均等法16条)とされています。

また、民事訴訟になってしまうと、被害者である社員は今回のように会社に対して責任の追及と賠償請求をすることができます。

ちなみに、被害者の訴えによりセクハラが刑事事件になれば、行為者(加害者)は、傷害罪(刑法第204条)、強要罪(刑法第223条)、名誉棄損罪(刑法第230条)、侮辱罪(刑法第231条)、場合によっては、暴行罪や強制わいせつ罪、強姦罪などに問われる可能性があります。

さて、これらを踏まえ、社内でセクハラ問題があったときは、まず事業主の方は以下の3点について検討することが重要です
①職場において行われたものか
②労働者(被害者)の意に反するものか
③行われた言動が性的なものかどうか

ただし、内容が内容だけに、慎重に事実確認を行う必要があります。

まずは、被害者から事情聴取をすることになりますが、女性が被害者の場合には、女性上司が事情聴取するなど、精神的な配慮が必要となります。

その後、加害者とされる社員から事情聴取をします。

ここで事実関係が十分に認定できない場合には、他の社員などへの事情聴取となりますが、この事情聴取が原因で社内で情報が拡散し、被害者の精神的被害が拡大してしまうおそれがありますので、第三者への事情聴取については慎重な判断が必要です。

そして、セクハラがあったことが確認できた時は、被害者の気持ちに配慮した人事的な措置を行うとともに、加害者に対する懲戒処分を検討することになります。

あわせて、社内での再発防止措置を講ずる必要もあるでしょう。

対応を間違うと、使用者責任で損害賠償金を負担しなければいけなくなります。

従業員がやった行為なのに、会社が責任を問われるわけですね。
「現場で起こったことだから」、「現場に任せていた」、は通用しないのです。

日本はアメリカのような訴訟社会ではないですが、今後は労働問題に関する紛争が増え、より多様化・複雑化していく可能性があります。
また、損害賠償金も高額化していく可能性もあります。

今まで築いてきた会社の信頼や信用、また高額賠償金を失うことのないように、経営者の方は社内体制を整え、備えておく必要があるでしょう。

労働問題に関する相談は、こちらから⇒ http://roudou-sos.jp/

 

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