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自動運転車が事故を起こしたら?


2016年3月3日

21世紀の技術革新の象徴、「夢の技術」のひとつとして近年、自動運転車が世界的に話題になっています。

実用化に向けて、各社が急ピッチで開発を進めていますが、まだ技術的にクリアすべき問題もあるようです。

同時に、自動運転車が事故を起こした場合、法律をどのように適用するのか、現行の法律ですべて対応できるのか、という問題もあります。

そもそも、現在の日本の法律上、自動運転車を公道で走らせることはできるのでしょうか?

今回は、自動運転車と法律について解説します。

「米グーグルの自動運転車が事故 過失でバスと接触」(2016年3月1日 日本経済新聞)

今年2月中旬、アメリカのグーグル社が開発中の自動運転車がカリフォルニア州の公道での走行実験中にバスと軽い接触事故を起こしていたことがわかりました。
ケガ人はいなかったようです。

グーグル社は2009年に自動運転車の開発をスタート。
現在までに累計140万マイル(約225万キロ)以上を自動運転モードで走行し、20件近い軽度の事故を報告していますが、いずれも相手側の過失による「もらい事故」か、人間のテストドライバーが運転中のものでした。
しかし、今回の自動運転中の事故はグーグル側に過失がある初めてのケースとなったということです。

グーグル社は、事故の責任の一部を認めるコメントを発表し、再発防止に向けてソフトウエアを改良したとしています。
では最初に、今回の自動運転車の事故をケーススタディとして、現状の日本の交通に関する法律の中から「道路交通法」と「道路運送車両法」に照らし合わせて考えてみたいと思います。

「道路交通法」
道路交通法は、道路における危険を防止し、交通の安全と円滑を図ることを目的としていますが、第70条では「安全運転の義務」として次のように規定しています。

「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。」

運転者にはハンドルやブレーキなどの装置を確実に操作する義務があり、人に危害を与えるような運転をしてはいけない、とありますね。

ということは、運転者がハンドルやブレーキを操作できる状況にないといけないということであり、完全な自動運転車は、今の法律では許されない、ということになります。

つまり、自動で運転できるけれども、運転者も常に前後左右に注意して、ハンドルやブレーキを確実に操作しなければならないということであり、あまり、自動運転の意味がないかもしれません。

したがって、完全な自動運転車を実現するには、道路交通法を改正する必要があるでしょう。
「道路運送車両法」
この法律には次のような目的があります。
・道路運送車両について所有権の公証等を行う
・安全性の確保、公害の防止、その他の環境の保全
・自動車整備についての技術の向上を図る
・自動車の整備事業の健全な発達に資することで公共の福祉を増進する

そこで、第41条「自動車の装置」を見てみましょう。

「自動車は、次に掲げる装置について、国土交通省令で定める保安上又は公害防止その他の環境保全上の技術基準に適合するものでなければ、運行の用に供してはならない。」として、20項目が規定されています。

その中に、3.操縦装置と4.制動装置がありますが、これらが国土交通省令で定める基準に合致していなければ運行してはいけない、とあります。

ということは、道路運送車両法も改正しなければ自動運転車を走らせることはできないということになります。

次に、「自動車損害賠償保障法」で、自動運転車の事故で人に傷害を負わせた場合の責任について見てみます。

この法律は文字通り、自動車の運行によって人の生命や身体が害された場合の損害賠償を保障する制度を確立することで、被害者を保護し、自動車運送の健全な発達に資する目的で施行されたものです。

「自動車損害賠償保障法」
第3条(自動車損害賠償責任)
自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。
運行供用者とは、「自動車を運転していた人」、「自動車の運転・走行をコントロールできる立場にある人(自動車の管理と運転者への指導管理を含む)」、「自動車の運行から利益を受けている人」、となるので自動車の所有者も当てはまります。

この運行供用者が賠償責任を免れるためには、以下のことを証明する必要があります。
1.故意・過失がなかったこと
2.被害者または運転者以外の第三者に故意・過失があったこと
3.自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったこと

これは、実質的な無過失責任を認めたものといわれています。
無過失責任とは、不法行為によって損害が生じた場合には加害者が、その行為について「故意・過失」がなくても、損害賠償責任を負うということです。

ということは、自動運転車が事故を起こした場合でも、やはり車の所有者や運転者が訴えられてしまう可能性が、かなり高いことになります。

もちろん、自動運転車の構造や機能に欠陥があった場合にはメーカーの責任が問われますが、訴訟実務の現場では被害者が加害者である運転車や所有者を訴えるということが当然に起きてくるでしょう。

また、自動運転のシステムの違いによって、法律の解釈も変わってきます。

たとえば、自動運転車といっても危険時の急制動、つまり運転者が急ブレーキをかけることができるような自動運転システムが採用されるのであれば、自動運転車に完全に任せきることはできず、普通の自動車を運転しているときと同様に道路や周囲に注意しておく必要があるわけですから、仮にブレーキが遅れたことで人をケガさせてしまえば、運転者の過失となり、民事事件では損害賠償責任は免れないでしょうし、刑事事件でも罪に問われる、ということになります。

では、運転席では何もできない、する必要のない完璧な計算と技術で創られた自動運転システムの車の場合はどうでしょうか?

もし、そうした自動運転車が完成したなら、現行の法律を相当改正しなければ公道を走行させることは難しいでしょう。

もし、自動運転車で事故が起きた場合、加害者が保険に加入しておらず、資力もなかった場合には、自動運転車のメーカーを訴えていく可能性があります。

しかし、被害者には、自動運転車の欠陥を証明してゆくことは難しいので、自動運転車の走行を認める時は、新たに「自動運転車による事故に基づく損害賠償法」というような法律を制定して立証責任を転換し、交通事故被害者の負担を軽減して欲しいと思います。

自動運転車と法律の関係とは?


2015年12月21日

1985年に公開された映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』。
ロックとコーラが好きな高校生の主人公が、親友である科学者が開発した「デロリアン」という名の自動車型のタイムマシンで過去や未来にタイムトリップするが…というストーリーで大きな人気を博し、パート3まで製作・公開されました。

パート2では、30年後の未来、つまり2015年の世界が描かれたことから、今年、ファンの間では現実の2015年との比較などでメディアを中心に盛り上がったようです。

さて、現実に目を向けてみると、タイムトリップできる自動車はまだ開発されていませんが、自動運転で走行する自動車の開発は現実のところまできています。

しかし、技術的な部分や事故時の損害賠償責任など、実用化にはまだ問題があるようです。

そこで今回は、自動運転車と法律の関係について解説します。

「自動運転実験車、公道で事故=民放リポーター乗車、けがなし―愛知」(2015年11月5日 時事ドットコム)

名古屋大学が開発を進めている自動運転車が、公道実験中に自損事故を起こしていたことがわかりました。

事故が起きたのは、10月22日。
名古屋テレビの女性リポーターが運転し、助手席には実験責任者の准教授が同乗。
名古屋市守山区の交差点を左折しようとした際、縁石に乗り上げて左前輪がパンク。
乗っていた4人にケガはなかったようです。

大学が事前に提出した計画書では研究者が乗ることになっていたようで、事故の報告を受けた愛知県産業振興課は、同大学に厳重注意をするとともに、再発防止のために実証実験に関するガイドラインの作成を求めたということです。

実験車は市販のトヨタ・プリウスに自動運転機能を搭載したもので、運転席からハンドルやブレーキペダルなどは操作できるようになっていたようです。

同課では、研究者以外の人間が運転席にいたため、ハンドルやブレーキの操作が遅れた可能性があるとみているということです。
こうした自動走行する自動車は、現在、日本では「自動運転車」と一般的には呼ばれていますが、世界的にはドライバーレスカー、ロボットカーなどとも呼ばれるようです。

じつは、自動運転車の歴史は長く、日本では1980年代に車線を自動認識して走行するシステムを試作していたようですが、実用化には否定的で消極的な風潮があったため、開発はあまり進展しなかったようです。

ところが、2010年になるとアメリカやヨーロッパで公道実験が行われるようになり、アメリカでGoogle(グーグル)社やテスラー社などが積極的な開発に乗り出したことで、2013年、日本でも日産が公道実験を開始。
トヨタやホンダ、スバルなども相次いで参入しています。

2014年、グーグル社の自動運転車の総走行距離が100万キロメートルを突破。
2015年には、テスラー社のシステムは日本以外では高速道路での走行が一部認可され、プログラムの配信を始めています。
また、トヨタは今年、高速道路での報道陣向けの試乗会を開催し、日産は2020年の実用化に向けて早くも一般公道での報道陣向けの試乗会を開催しています。

しかし、さまざまな問題も起きているようです。
テスラー社は、「システムは未完であり、完全な自動運転ができるわけではない。自動運転中に起きた事故については一切責任を負わない」と警告しているにも関わらず、一部ユーザーが一般公道で、ハンドルから手を離して新聞や本を読む、運転席から離れて後部座席でふんぞり返るなどの運転をしている様子を動画に撮影し、投稿サイトに続々とアップ。
中には、事故を起こしかけるなどの危険なシーンも投稿されているようです。

今後、こうした事態が日本でも起きる可能性は十分あります。
万が一事故が起きてしまえば、自分だけでなく他人を傷つけ、命を奪ってしまう危険もあります。

では、法的に見ると、現状の日本において自動運転車には、どのような問題があるのでしょうか?

公道における道路交通に関する法律としては、

「道路交通法」
「道路法」
「道路運送車両法」

があります。

道路交通法第70条は、「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない」となっています。

ということは、運転者がハンドルやブレーキなどを操作する義務があるので、自動運転車が走るためには、この部分を改正する必要がありそうです。

また、道路運送車両法第41条は、操縦装置などについて、国土交通省令で定める基準に合致した自動車でなければならない、と定めており、この部分も見直す必要が出てきそうです。

そして、自動運転車で事故があった時に、どうなるか、ということです。

自動車損害賠償保障法では、自動車事故で他人に傷害を負わせた場合、自動車を運行の用に供している者(運行供用者)が賠償責任を負う、となっています。

運行供用者が賠償責任を免れるためには、
①故意・過失がなかったこと
②被害者または運転者以外の第三者に故意・過失があったこと
③自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったこと
を証明しなければなりません。

実質的な無過失責任を認めたもの、と言われています。

したがって、自動運転車が事故を起こした時も、車の所有者や運転者が訴えられることになります。

訴える方としては、その方が立証をしやすいためです。

自動運転車の構造や機能に欠陥があった場合には、当然メーカー責任、ということになると思いますが、訴訟実務では、車の所有者や運転者が訴えられる、ということが起きてくるでしょう。

また、自動運転車とは言っても、危険時の急制動などは、運転者が制御できるようにするでしょうから、急制動などの措置をとらなかったことが運転者の過失となると思います。

となると、自動運転に完全に任せきることはできず、運転しているときと同様に道路や周囲に注意しておく必要がある、ということになります。

それを怠った時は、過失あり、としては、刑事事件でも民事事件でも責任を問われる、ということになります。

ただし、運転席では、何もできない、という自動運転車になると、また違った話になってきます。しかし、そうなると、かなり法律を変えないと、道路走行は難しいかもしれません。

TBSテレビ「ひるおび」生出演


2014年7月17日

2014年7月15日のTBSテレビ「ひるおび」に生出演しましした。

最近、頻発する脱法ハーブによる事故やひき逃げ事故について、これまでの事故に関する法律改正状況(道路交通法、刑法、自動車運転死傷行為処罰法)を解説するとともに、どうすれば同様の事故が防げるか、などについて解説をしました。

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