弁護士 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜 - Part 2
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
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  • マイナンバー法で初の立件

    2016年03月17日

    マイナンバー法違反で初の立件だそうです。

    「住居侵入容疑など 好意抱いた女性のマイナンバー不正撮影」(2016年3月15日 毎日新聞)

    香川県警高松南署は15日、好意を抱いていた女性のマイナンバーを不正に撮影したとして、高松市の会社員の男(56)をマイナンバー法違反と住居侵入の容疑で追送検しました。

    事件が起きたのは2015年11月18日~12月初旬頃。
    容疑者の男は、勤務していた会社の従業員だった女性(37)の住居に侵入。
    女性のマイナンバーが記載された通知カードをスマートフォンで撮影したようです。

    同署によると、男は今年の2月29日、女性の部屋に隠しカメラを設置するために侵入したとして、住居侵入容疑で逮捕されていましたが、男のスマートフォンから女性のマイナンバーが写った画像を発見したことで、今回の追送検となったとしています。

    男は、「女性に好意を抱いていた。将来何かに使えるのではないかと思い、撮影した」と容疑を認めているようですが、今のところマイナンバーを使って個人情報を取得、悪用した形跡はないということです。
    「マイナンバー法」は、正式名称を「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」といい、2013年5月に国会で成立しました。

    これは、住民票を有する全国民一人ひとりに対して割り振った12桁の番号(マイナンバー)が付与されることによって、社会保障や納税などに関する情報を一元的に管理する「共通番号(マイナンバー)制度」を導入、運用するための法律です。

    では早速、条文を見てみましょう。

    「マイナンバー法」
    第51条
    1.人を欺き、人に暴行を加え、若しくは人を脅迫する行為により、又は財物の窃取、施設への侵入、不正アクセス行為その他の個人番号を保有する者の管理を害する行為により、個人番号を取得した者は、3年以下の懲役又は150万円以下の罰金に処する。
    マイナンバー制度は、2016年1月からスタートしていますが、個人のマイナンバーは一度外部に流出してしまうと取り返しがつかなくなる危険があることから、マイナンバー法では、2003年5月に成立した「個人情報保護法」よりも厳しい保護措置が定められています。
    そのため、刑罰としてはかなり重いものが規定されているわけです。

    通知カードを盗んだわけではないのに、検挙されることに驚いた方もいると思いますが、マイナンバーを撮影したり、書き写したりすること自体で、個人番号を取得したことになりますので、注意が必要です。

    反対に、自分のマイナンバーも安易に他人に教えてはいけません。どのように利用されるかわからないためです。

    企業としては、従業員のマイナンバーを扱うことがあると思いますが、ルールを徹底して、決して社外に流出しないよう安全管理措置を策定・徹底をすることが大切です。

    また、税理士や社労士等に従業員のマイナンバーを提供する場合には、個人番号の取り扱いに関する覚書等を締結して、外部委託先にも安全管理措置を徹底してもらう必要もあります。

    今後、マイナンバーに関する事件が発生することが予測されますが、都度、社内ルールを見直してゆくことが大切です。

  • BS-TBS「ニュースまるわかり」出演

    2016年03月14日

    2016年3月12日放送のBS-TBS「ニュースまるわかり」に生出演しました。

    約50分出ずっぱりなので、長いと思っていましたが、意外にすぐ終わった感じです。

  • 日本テレビ「ZIP!」から取材

    2016年03月11日

    2016年3月10日放送の日本テレビ「ZIP!」から取材を受けました。

    今回は、収録や写真はなく、コメントのみが紹介されました。

  • 自動運転車が事故を起こしたら?

    2016年03月03日

    21世紀の技術革新の象徴、「夢の技術」のひとつとして近年、自動運転車が世界的に話題になっています。

    実用化に向けて、各社が急ピッチで開発を進めていますが、まだ技術的にクリアすべき問題もあるようです。

    同時に、自動運転車が事故を起こした場合、法律をどのように適用するのか、現行の法律ですべて対応できるのか、という問題もあります。

    そもそも、現在の日本の法律上、自動運転車を公道で走らせることはできるのでしょうか?

    今回は、自動運転車と法律について解説します。

    「米グーグルの自動運転車が事故 過失でバスと接触」(2016年3月1日 日本経済新聞)

    今年2月中旬、アメリカのグーグル社が開発中の自動運転車がカリフォルニア州の公道での走行実験中にバスと軽い接触事故を起こしていたことがわかりました。
    ケガ人はいなかったようです。

    グーグル社は2009年に自動運転車の開発をスタート。
    現在までに累計140万マイル(約225万キロ)以上を自動運転モードで走行し、20件近い軽度の事故を報告していますが、いずれも相手側の過失による「もらい事故」か、人間のテストドライバーが運転中のものでした。
    しかし、今回の自動運転中の事故はグーグル側に過失がある初めてのケースとなったということです。

    グーグル社は、事故の責任の一部を認めるコメントを発表し、再発防止に向けてソフトウエアを改良したとしています。
    では最初に、今回の自動運転車の事故をケーススタディとして、現状の日本の交通に関する法律の中から「道路交通法」と「道路運送車両法」に照らし合わせて考えてみたいと思います。

    「道路交通法」
    道路交通法は、道路における危険を防止し、交通の安全と円滑を図ることを目的としていますが、第70条では「安全運転の義務」として次のように規定しています。

    「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。」

    運転者にはハンドルやブレーキなどの装置を確実に操作する義務があり、人に危害を与えるような運転をしてはいけない、とありますね。

    ということは、運転者がハンドルやブレーキを操作できる状況にないといけないということであり、完全な自動運転車は、今の法律では許されない、ということになります。

    つまり、自動で運転できるけれども、運転者も常に前後左右に注意して、ハンドルやブレーキを確実に操作しなければならないということであり、あまり、自動運転の意味がないかもしれません。

    したがって、完全な自動運転車を実現するには、道路交通法を改正する必要があるでしょう。
    「道路運送車両法」
    この法律には次のような目的があります。
    ・道路運送車両について所有権の公証等を行う
    ・安全性の確保、公害の防止、その他の環境の保全
    ・自動車整備についての技術の向上を図る
    ・自動車の整備事業の健全な発達に資することで公共の福祉を増進する

    そこで、第41条「自動車の装置」を見てみましょう。

    「自動車は、次に掲げる装置について、国土交通省令で定める保安上又は公害防止その他の環境保全上の技術基準に適合するものでなければ、運行の用に供してはならない。」として、20項目が規定されています。

    その中に、3.操縦装置と4.制動装置がありますが、これらが国土交通省令で定める基準に合致していなければ運行してはいけない、とあります。

    ということは、道路運送車両法も改正しなければ自動運転車を走らせることはできないということになります。

    次に、「自動車損害賠償保障法」で、自動運転車の事故で人に傷害を負わせた場合の責任について見てみます。

    この法律は文字通り、自動車の運行によって人の生命や身体が害された場合の損害賠償を保障する制度を確立することで、被害者を保護し、自動車運送の健全な発達に資する目的で施行されたものです。

    「自動車損害賠償保障法」
    第3条(自動車損害賠償責任)
    自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。
    運行供用者とは、「自動車を運転していた人」、「自動車の運転・走行をコントロールできる立場にある人(自動車の管理と運転者への指導管理を含む)」、「自動車の運行から利益を受けている人」、となるので自動車の所有者も当てはまります。

    この運行供用者が賠償責任を免れるためには、以下のことを証明する必要があります。
    1.故意・過失がなかったこと
    2.被害者または運転者以外の第三者に故意・過失があったこと
    3.自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったこと

    これは、実質的な無過失責任を認めたものといわれています。
    無過失責任とは、不法行為によって損害が生じた場合には加害者が、その行為について「故意・過失」がなくても、損害賠償責任を負うということです。

    ということは、自動運転車が事故を起こした場合でも、やはり車の所有者や運転者が訴えられてしまう可能性が、かなり高いことになります。

    もちろん、自動運転車の構造や機能に欠陥があった場合にはメーカーの責任が問われますが、訴訟実務の現場では被害者が加害者である運転車や所有者を訴えるということが当然に起きてくるでしょう。

    また、自動運転のシステムの違いによって、法律の解釈も変わってきます。

    たとえば、自動運転車といっても危険時の急制動、つまり運転者が急ブレーキをかけることができるような自動運転システムが採用されるのであれば、自動運転車に完全に任せきることはできず、普通の自動車を運転しているときと同様に道路や周囲に注意しておく必要があるわけですから、仮にブレーキが遅れたことで人をケガさせてしまえば、運転者の過失となり、民事事件では損害賠償責任は免れないでしょうし、刑事事件でも罪に問われる、ということになります。

    では、運転席では何もできない、する必要のない完璧な計算と技術で創られた自動運転システムの車の場合はどうでしょうか?

    もし、そうした自動運転車が完成したなら、現行の法律を相当改正しなければ公道を走行させることは難しいでしょう。

    もし、自動運転車で事故が起きた場合、加害者が保険に加入しておらず、資力もなかった場合には、自動運転車のメーカーを訴えていく可能性があります。

    しかし、被害者には、自動運転車の欠陥を証明してゆくことは難しいので、自動運転車の走行を認める時は、新たに「自動運転車による事故に基づく損害賠償法」というような法律を制定して立証責任を転換し、交通事故被害者の負担を軽減して欲しいと思います。

  • 認知症の高齢者の監督義務に関する最高裁判決

    2016年03月02日

    愛知県大府市で、2007年12月に起きた、徘徊症状がある認知症の男性(91)がJR東海の電車にはねられ死亡する事故が発生した件に関し、同社が男性の親族に対して損害賠償訴訟を提起しておりました。

    第一審判決は、JR側の請求通り720万円の支払を命じ、第二審の名古屋高裁は、男性の妻に対して、359万円の支払を命じました。

    この件に関する最高裁判決が2016年3月1日に出されました。

    結論としては、JR側の請求を認めず、親族の賠償責任を否定しました。

    争点は、男性の妻や長男らが、民法714条の「責任無能力者を監督する法定の義務を負う者」と言えるどうか、という点です。

    ここで、民法714条を見てみましょう。

    「民法」第714条(責任無能力者の監督義務者等の責任)

    1.前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

    つまり、男性は、認知症で判断能力ではないので、賠償責任については「責任無能力者」となります。

    その場合には、責任無能力者を監督する法定の義務を負う者が、責任無能力者に代わって賠償責任を負う、ということです。

    「責任無能力者を監督する法定の義務を負う者」というのは、子どもの親権者(民法820条)、親権代行者(民法833条・867条)、後見人(民法857条・858条)、児童福祉施設の長(児童福祉法47条)等です。

    たとえば、小学一年生の子どもが自転車を運転中、歩行者をひいて死なせてしまった場合などに、親の責任を問えるか、というような問題で、この条文が使われます。

    さて、第一審、第二審では、親族の賠償責任を認めたわけですが、最高裁は、これを否定しました。

    その理由としては、同居の妻や長男というだけでは、「法定の」監督義務者とは言えない。つまり、法律に書いていない、ということです。

    ただし、「法定の監督義務者」ではない人でも、賠償義務を負担する場合がある。それは、次の場合である。

    (1)衡平の見地から、「法定の監督義務者」と同視して賠償義務を負担させることが相当である場合

    (2)では、それは、どのような場合かというと、第三者に対する加害行為の防止に向けた監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情がある場合である

    (3)では、どのような場合に特段の事情があるかというと、第三者の加害行為の防止に向けて、その者が「現実に監督を行っている」、か、あるいはそのように監督することが可能かつ容易であるなど、それが単なる「事実上の監督」を超えているような場合である

    (4)では、それは、どのように判断するかというと、以下の要素を検討します。

    ・監督している人の生活状況や心身に状況

    ・精神障害者との親族関係の有無・濃淡

    ・同居の有無その他の日常的な接触の程度

    ・精神障害者の財産管理への関与の状況などその者と精神障害者との関わりの実情

    ・精神障害者の心身の状況や日常生活における問題行動の有無・内容

    ・これらに対応して行われている監護や介護の実態
    この観点からすると、同居しているだけの場合や介護を行っている、というだけでは賠償責任は否定されることになります。

    たとえば、過去に徘徊して他人に迷惑をかけたことから、そのようなことがないよう責任を持って監督するため、同居して日常介護し、徘徊できないように常時監視したり、施錠をしたりしている親族が、その監督を怠ったような場合に責任が認められることになるのではないか、と思います。

    先の第一審判決、高裁判決のニュースに接した高齢者を介護する人達は、戦々恐々としたかもしれませんが、ひとまずは安心ということになります。

    今後、高齢化社会がますます進行することから、介護に対する萎縮効果が生じないようにしたい、という政治的配慮が働いているのかもしれません。

    なお、この最高裁判決は、5人の最高裁判事により出されたものですが、3人の最高裁判事による補足意見が出されています。

  • フジテレビ「直撃LIVE グッディ!」出演

    2016年02月26日

    2016年2月26日に放送されたフジテレビ「直撃LIVEグッディ!」に出演しました。

    内容としては、近隣問題について、法的に解決が可能なのかどうか、について取材を受けたものです。

  • バレンタインデーのチョコで公職選挙法違反!?

    2016年02月23日

    バレンタインデーの歴史は3世紀中頃のローマ帝国にまで遡るという説があるようです。

    日本での起源にも諸説あるようですが、それはともかく、今回はバレンタインデーにチョコレートをあげると法律違反になる可能性がある!? という報道について解説します。

    恋人たちの日に法律違反とは穏やかではないですが、一体どういうことでしょうか?

    市内の支援者21人にバレンタインデーのチョコレートを配っていた、兵庫県の市議の行為が、公職選挙法が禁じる寄付行為に当たる恐れがあるとして、兵庫県警三木署が事実関係を調べているようです。

    2月13日、市議は後援会幹事らの自宅を訪問。
    近況報告の手紙に、約500円のチョコレートを添えて配ったということで、手紙には「支援者のお一人お一人のご恩情に報いることのできるよう、襟を正して活動して参ります」などと書かれていたようです。

    市議は、バレンタインデーのプレゼントを支援者に贈ったのは初めてだったとし、「普段からお世話になっている人ばかりで、寄付行為に当たる認識がなかった。反省している」、「今後は一層注意をしたい」と話しているということです。
    公職選挙法では、選挙の有無に関わらず、公職の候補者等が選挙区内の人に対して、どのような名義であっても一切の寄附を禁止しています。

    第199条の2(公職の候補者等の寄附の禁止)
    1.公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。以下この条において「公職の候補者等」という。)は、当該選挙区(選挙区がないときは選挙の行われる区域。以下この条において同じ。)内にある者に対し、いかなる名義をもつてするを問わず、寄附をしてはならない。(後略)
    これに違反した場合、3年以下の禁固又は50万円以下の罰金に処されます。(第248条)

    今回の市議会副議長の行為、つまりバレンタインデーに支持者に対してチョコを贈ることも「寄付行為」にあたるのではないか、ということが問題になっているわけですね。

    一般的な感覚では、数百円のチョコをあげるくらい問題ないだろうと考える人もいると思いますが、寄付行為の禁止は公職選挙法における基本のひとつですから、「知らなかった」「認識がなかった」というのでは勉強不足、政治家の資質を問われてもしょうがないことです。

    では、どのような行為が寄付行為となるのでしょうか。
    総務省のホームページの「選挙・政治資金」のコーナーでは次のものなどが寄付禁止の対象になるとしています。

    ・お祭りへの寄付・差し入れ
    ・落成式・開店祝等の花輪
    ・秘書が代理で出席する場合の葬式の香典
    ・葬儀の花輪・供花
    ・入学祝・卒業祝
    ・病気見舞い
    ・町内化会の集会・旅行等の催物への寸志・飲食物の差し入れ
    ・秘書等が代理で出席する場合の結婚祝
    ・地域の運動会・スポーツ大会への飲食物等の差し入れ

    その他、政治家の後援団体(後援会など)からの寄付や、政治家が役職員や構成員である会社や団体からの政治家の名前を表示した寄付なども禁止されています。

    詳しい解説はこちら⇒
    「祭りへの寄附が問題に! 公職選挙法が定める規制とは?
    https://taniharamakoto.com/archives/1619

    なお、例外として寄付が認められているものに「親族に対して行う寄付」があります。
    親族とは民法上の親族と同じで、6親等内の血族、配偶者及び3親等内の姻族となっています。

    ちなみに、いとこは4親等、はとこは6親等。
    3親等の姻族としては、兄弟姉妹の配偶者の子や配偶者の伯父・叔父・伯母・叔母、配偶者の甥・姪などがあげられます。

    3月には、「ホワイトデー」があります。

    バレンタインデーにチョコレートをもらった公職の候補者等は、ホワイトデーにクッキーを渡すと、今回と同じように公職選挙法違反になる可能性がありますので注意が必要です。

    また、クリスマスも同様です。

    「クリスマスパーティがあるから、各自プレゼント持参で」と言われ、プレゼントを持っていくと、公職選挙法違反になる可能性があります。

    プレゼントは、親族だけにしましょう。

  • 警察官をかたると、犯罪が成立する可能性があります。

    2016年02月17日

    突然警察から電話がかかってきて、自分が犯罪に関係している、と言われたらビックリしますね。

    そして、捜査に必要だと言われ、下着のサイズや色などを聞かれたら?

    つい答えてしまう人も多いでしょう。

    今回は、そんな犯罪です。

    「警察官かたり、下着“サイズは”“色は”…わいせつ電話相次ぐ 奈良・大阪で93件」(2016年2月16日 産経新聞)

    奈良県と大阪府で、警察官をかたった不審な「わいせつ電話」がかかってくるという事件が相次いでいるようです。

    奈良県警によると、不審なわいせつ電話の声は中年の男で、昼前から夕方にかけて個人宅に電話をかけてきて、女性が電話に出ると警察署の警官をかたり、「下着泥棒を捕まえたら、犯人がお宅の電話番号を書いたメモを持っていた」、「被害はありませんでしたか?」などと言い、女性から下着のサイズや色などを執拗に聞き出そうとするようです。

    2015年6月から2016年2月12日までの間に奈良県警に寄せられた相談は93件にも上っており、同県警は軽犯罪法違反容疑で捜査を進めるとともに注意を呼びかけているということです。
    今回の事件では犯人は特定されていないようですが容疑は軽犯罪法違反です。
    報道内容からは正確なところはわかりませんが、15号に規定される「官名詐称」容疑だと思われます。

    「軽犯罪法」
    第1条
    左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

    15.官公職、位階勲等、学位その他法令により定められた称号若しくは外国におけるこれらに準ずるものを詐称し、又は資格がないのにかかわらず、法令により定められた制服若しくは勲章、記章その他の標章若しくはこれらに似せて作つた物を用いた者

    軽犯罪法については以前にも解説しています。
    詳しい解説はこちら⇒「ナンパは軽犯罪法違反!?」
    https://taniharamakoto.com/archives/2191

    軽犯罪法では、軽微な秩序違反行為として33の行為を罪として規定していますが、今回の事件、場合によっては上記以外の罪にも問われる可能性があります。

    会社などに電話をして従業員の業務を妨害したり、個人宅でも自営業を営んでいる人の業務を妨害すれば、31号の「他人の業務に対して悪戯などでこれを妨害した者」に該当する可能性があります。

    また、業務妨害の程度によっては「刑法」の「威力業務妨害罪」や「偽計業務妨害罪」に該当するかもしれません。

    「刑法」
    第233条(信用毀損及び業務妨害)
    虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

    「偽計」とは人をあざむく計略のことで、実際、過去には「中華料理店に3ヵ月足らずの間に約970回にわたって無言電話をかけた」(東京高判昭48・8・7高集26-3-322)という判例もあります。

    じつは日本には、迷惑電話そのものを直接規制する法律はありません。
    しかし、迷惑電話を受けた相手が相当の迷惑を被った場合は、上記以外にもさまざまな法律で罰せられる可能性があります。

    たとえば、迷惑電話には各都道府県で定められている「迷惑防止条例」です。
    奈良県の「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」では次のように規定されています。

    第10条(電話等による嫌がらせ行為等の禁止)
    何人も、正当な理由がないのに、電話その他の電気通信の手段、文書又は図画により、他人に対し、反復して、虚偽の事項、卑わいな事項等を告げ、粗野若しくは乱暴な言語を用いて、又は電話で何も告げず、著しく不安又は迷惑を覚えさせるような行為をしてはならない。

    さらには、迷惑電話を受けた人が、うつ病などの神経疾患を発症した場合には傷害罪に問われるおそれもあります。

    「刑法」
    第204条(傷害)
    人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

    昔、探偵のドラマとかで、探偵が、黒い警察手帳のような手帳をサッと出して、「警察ですが、この男を知りませんか?」などと聞き込みをしているシーンを観たことがありますが、あれは、実は軽犯罪法違反だったのかもしれません。

    また、コスプレで婦人警官の格好をして街を練り歩き、通行人に「逮捕しちゃうぞ」とか話しかける行為は、軽犯罪法違反なのかもしれません。

    世の中、不用意な行為が思わぬ犯罪に該当してしまうことがあります。

    気をつけましょう。

  • ナンパは軽犯罪法違反!?

    2016年02月11日

    男性が街角で好みの女性を見つけ、アプローチしたいとき、どうするでしょうか?

    当然、挨拶をし、話しかけ、会話をしようとします。

    歩きながら話すと、最低でも5.5メートルは必要でしょう。

    ところが、この行為が犯罪になる場合があります。

    「“彼女になってもらえると…”警官装い、女子高生につきまとった60歳無職男を書類送検」(2016年2月9日 産経新聞)

    大阪府警天王寺署は、警察官を装って女子高校生につきまとったとして、大阪市天王寺区の無職の男(60)を軽犯罪法違反(官名詐称、つきまとい)の疑いで書類送検しました。

    事件が起きたのは2015年11月4日。
    男は同区内の地下街で警察官を装い、大阪府内に住む10代の女子高生に接触。
    「はよちゃんと帰りや。おっちゃん少年課の人間やからほっとかれへんねん」などと声をかけ、その場から逃げようとする女子高生に約5・5メートルつきまとったため、女子高校生が同署に相談。
    現場の防犯カメラの映像から男の関与が浮上したということです。

    男は、2015年の夏ごろから女子高生に声をかけるようになったといい、声をかける際、自分の本名と住所が書かれた紙切れを渡していたようです。

    警察の取り調べに対し、「独り身でさみしかった」、「警官だと名乗れば補導の名目で名前や連絡先を知ることができると思った。その後に連絡を取り合い、彼女のような存在になってくれることを期待していた」などと話し、容疑を認めているということです。
    今回の書類送検の容疑は軽犯罪法違反です。
    早速、条文を見ていきましょう。

    「軽犯罪法」
    第1条
    左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

    15.官公職、位階勲等、学位その他法令により定められた称号若しくは外国におけるこれらに準ずるものを詐称し、又は資格がないのにかかわらず、法令により定められた制服若しくは勲章、記章その他の標章若しくはこれらに似せて作つた物を用いた者

    28.他人の進路に立ちふさがつて、若しくはその身辺に群がつて立ち退こうとせず、又は不安若しくは迷惑を覚えさせるような仕方で他人につきまとつた者

    ※拘留…受刑者を1日以上30日未満で刑事施設に収容する刑罰
    科料…1000円以上、1万円未満の金銭を強制的に徴収する刑罰
    軽犯罪法では軽微な秩序違反行為、たとえば、空き家に忍び込む、仕事をせずにうろつく、人などに害を加える動物を逃がす、騒音で近隣住民に迷惑をかける、うその犯罪や災害を申告した、他人の業務をいたずらで妨害したなど33の行為を罪として規定しています。

    ちなみに、28号のつきまとい行為は、条件が該当すれば「ストーカー規制法」が適用される可能性もあります。

    詳しい解説はこちら⇒「31歳年の差にストーカー規制法違反」
    https://taniharamakoto.com/archives/1944

    同法には「つきまとい行為」として次の8つが規定されています。
    1.待ち伏せ、尾行、および自宅や勤務先を見張り、押しかけること。
    2.行動を監視していると告げる行為。
    3.面会や交際、その他義務のないことを行うことの要求。
    4.著しく粗野、乱暴な言動。
    5.無言電話、連続した電話・FAX・メール。
    6.汚物・動物の死体等の送付。
    7.名誉を害する事項の告知。
    8.性的羞恥心を侵害する事項の告知、わいせつな写真・文章などの送付、公表。

    つきまとい行為は、同一の人に対して反復して行うことでストーカー行為になります。
    なお、上記のようなストーカー行為をした者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されるので注意が必要です。

    反復してつきまとわなくても、軽犯罪法には該当する、ということですね。

    道ばたで「ナンパ」をする人は、注意してください。

    声をかけて即座に笑わせたりすれば、「不安若しくは迷惑を覚えさせるような仕方で他人につきまとつた」ことにはならないので、軽犯罪法違反にはなりません。

    しかし、相手が嫌がっているのに声をかけ続けていると、軽犯罪法違反になりうる、ということです。

    逆にナンパされて不安あるいは迷惑な女性は、ナンパ師に対し、「それ、軽犯罪法1条28号違反のつきまといですよ。連絡先交換したらすぐ被害届出しますから、やめた方がいいですよ」と言って、断る方法もアリですね。

    「俺の後ろに立つな」(ゴルゴ13)

  • 読売新聞からの取材

    2016年02月10日

    2016年2月8日付読売新聞より取材を受けて、私の法的見解について、コメントが掲載されました。