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弁護士法律解説 リーガルアイ

 

社員への損害賠償を給与から天引きすると違法?


2015年8月5日

給料日が楽しみ! という人は多いでしょう。
一方、借金の取り立てに戦々恐々で、うれしくはないという人もいるかもしれません。

いずれにせよ、働いた分の給料をもらうのは当然、と多くの人は思っているでしょう。

ところが、給料から客への弁償金などを天引きしていたとして元従業員が会社を訴えるという騒動があったようです。

果たして、法的にはどちらに分があるのでしょうか?

「アリさんマークの引越社を元社員ら提訴“天引きは違法”」
(2015年7月31日 朝日新聞デジタル)

「アリさんマークの引越社」で知られる運送会社「引越社」と関連会社の元社員とアルバイトの男性12人(20~30代)が、引っ越し作業で生じた弁償金を従業員に負担させるのは違法だとして2社を相手取り、支払った弁償金や不当に減額された賃金など計約7千万円を求める訴訟を
名古屋地裁に起こしました。

訴状などによると、引っ越し作業で荷物が破損した場合、2社は担当した社員とアルバイトに連帯責任を負わせ、給与から弁済金として弁償費用などを違法に天引きしていたようです。

また原告の1人は、運送中の事故でトラックが傷つき、修理代金として40万円を負担させられたと主張しているということです。

さらには、不透明な評価基準による賃金の減額や、業績不振を理由にした一方的な減額もあり、長時間労働に対する残業代の未払いも横行していると訴えているようです。

弁護団は今後、東京や大阪でも集団訴訟を起こすとしており、原告の1人(28)は「お金を返してほしい。今働いている人が安心して働ける会社になってほしい」と語ったということです。
【賃金支払いの5つの原則とは?】
「労働基準法」の第24条では、賃金の支払いには、次の「5つの原則」が定められています。

・通貨払いの原則
・直接払いの原則
・全額払いの原則
・毎月1回以上払いの原則
・一定期日払いの原則

この規定に違反すると30万円以下の罰金に処されます。(第120条)

このうち、今回の件では「全額払いの原則」が適用されます。

会社は、勝手に労働者に支払う給与から天引きすることはできないのです。
ただし、例外があります。

・法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合
所得税の源泉徴収、社会保険料の控除などは認められています。

・当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合

上記の場合は、社宅・寮その他の福利厚生施設の費用、社内預金、組合費などを賃金から控除して支払うことが認められています
【使用者は労働者に対する損害賠償と賃金を相殺できるのか?】
以上のことから、今回のケースでは次の問題が争点となります。

使用者である引越社は、労働者である元社員らに対して有する「損害賠償請求権」と「賃金支払義務」を相殺することができるか?

過去の判例では、最高裁は次のように判断しています。
「労働者の賃金債権に対しては、使用者は、使用者が労働者に対して有する債権をもって相殺することを許されないとの趣旨を包含するものと解するのが相当である。このことは、その債権が不法行為を原因としたものであっても変わりはない」
(日本勧業経済会事件 最大判昭和36年5月31日民集15巻5号1482頁)

つまり、一般的には、使用者が一方的に労働者に対する損害賠償と賃金を相殺することはできない、と解されています。

労働協約または労使協定があれば天引きは可能ですが、普通は、不法行為に基づく損害賠償請求権と給与を相殺する内容は締結されていないでしょう。

また、労働者が自由な意思で天引きを認めた時は天引き可能となる可能性がありますが、今回は訴えているくらいなので、自由な意思で認めているかどうかは疑問です。

今回のケースでは、原告側は「過失のない労働者が注意を払う中で起きた損害は会社が負うべき事業上のリスクで、社員に支払わせるのは不当」と主張しているようです。

報道内容からだけでは詳しいことはわかりませんが、これから集団訴訟を提起していくということですから、今後の進展を見守りたいと思います。

なお、未払い残業代については以前、解説していますので参考にしてください。

詳しい解説はこちら⇒
「残業代を支払わない会社には倍返しのツケがくる!?」
http://taniharamakoto.com/archives/1574
今回と同じように未払賃金を請求したい労働者は
こちらから⇒ http://roudou-sos.jp/zangyou2/

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