危険運転致死傷罪 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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  • 北海道砂川市暴走事故:危険運転の共犯で懲役23年の判決

    2016年11月12日

    一家5人のうち4人が死亡、1人が重傷により重度の後遺障害を負った北海道砂川市暴走事故(2015年6月6日に発生)の被告に対する判決が出たようなので解説します。

    「<砂川5人死傷事故>2被告とも懲役23年判決…札幌地裁」(2016年11月10日 毎日新聞)

    2015年6月、北海道砂川市の国道を自動車2台で暴走し、歌志内市の会社員の男性ら一家5人を死傷させたとして、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)罪などに問われた2人の被告に対して、札幌地裁は裁判員裁判で求刑通りの懲役23年の判決を言い渡しました。

    検察側は、次のような理由から両被告に対して危険運転の共謀が成立すると主張していました。

    「赤信号は現場の約770メートル手前から認識可能だった」
    「防犯カメラの映像から、両被告は事故前の約2キロにわたり速度を競いながら走行し、張り合って運転している趣旨の発言を同乗者が聞いている」
    「以前にも速度を競って走行することがあった」

    また、ひき逃げについては、「引きずった衝撃や違和感があったはずだ」と指摘しました。

    一方、弁護側は「運転中に競い合う気持ちはなかった。落としたサングラスを探して赤信号を見落とした過失による事故だ」、「赤信号を無視するようなレースは過去にも今回もしていない。被害者が車外に投げ出されることは想定できず、引きずった認識もない」と反論していました。

    裁判長は、「類を見ないほど悪質。競うように高速で走行していたのは明らかだ。赤信号を無視し、身勝手極まりない」と非難し、両被告による共謀を認定したということです。
    今回の事件では、危険運転致死傷罪の共謀が成立するかどうかが争点となっていました。

    過去には、飲酒運転による交通死亡事故で、同乗者が「ほう助罪」に問われた事例はありますが、それぞれ別々の車を運転していた複数の被告による「危険運転の共謀」が認定される判決は異例なことです。

    危険運転致死傷罪の詳しい解説はこちら⇒「自動車運転死傷行為処罰法の弁護士解説(2)」
    https://taniharamakoto.com/archives/1236
    今回の判決は、懲役23年ということですが、「刑が軽すぎる」、「重すぎる」、「いや妥当だ」と、さまざまな意見があると思いますが、過去の判決例と比較すると、かなり重い刑となっています。

    それだけ、事故の「態様が悪質」であり、かつ、「結果が重大」であるというところでしょう。

    また、共謀を否認等していたので、両被告には反省の態度が見られない、という部分も考慮された可能性もあります。

    たとえば、危険運転致死傷罪の判例には以下のものがあります。

    【判例①】
    懲役10年(求刑懲役15年)
    2014年7月、埼玉県川口市でミニバイクに乗っていた65歳の女性が乗用車に約1・3キロ引きずられ死亡した事故で、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)と道路交通法違反(ひき逃げ)の罪に問われた元同市職員の男(26)の判決公判が2015年1月29日に行われた。
    裁判長は、被告が大量の飲酒で極めて危険な運転を行い、女性をはねたことに気づきながら逃走し、悪質な飲酒運転の隠蔽工作を行ったと指摘。「危険運転致死傷の事案の中では重い部類」とする一方、被告が反省の言葉を述べたこと、前科がないことなどを情状酌量の理由としてあげた。

    判決/懲役10年(求刑懲役15年)
    【判例②】
    京都市で2013年10月2日の夕方、飲酒運転の車が小学2年の男子児童ら3人をはねて死傷させた連続ひき逃げ事件で、危険運転致死傷罪や道路交通法違反(ひき逃げ)の罪などに問われた被告の男(60)に対する裁判員裁判の判決が2014年9月19日、京都地裁であった。
    被告の男はカップ酒数本を飲んで軽トラックを運転し、同市中京区の市道で自転車に乗っていた主婦(61)をはねて逃走。さらに約160メートル東で、祖父(67)が運転する自転車の後ろに乗っていた小学2年をはねて、児童は頭を強く打って死亡、祖父は重傷を負った。
    弁護側は公判で、「被告は事故に気づかなかった」と主張。しかし、裁判長は、「車のフロントガラスの破損状況などから、ぶつかったときの強い衝撃に気づいたはず」と退け、「人命を軽視し、思慮の浅い態度は厳しい非難に値する」と指摘した。

    判決/懲役12年(求刑懲役13年)
    【判例③】
    埼玉県熊谷市で2008年2月17日、2人が死亡、6人が重軽傷を負う飲酒運転事故を起こしたとして、危険運転致死傷罪に問われた元トラック運転手の男(34)の控訴審判決が2009年11月27日、東京高裁であった。
    被告の男は、約5時間にわたってビールや焼酎を飲み、乗用車で熊谷市内の県道を時速100キロ以上で運転。対向車2台に衝突し、自営業の男性(当時56歳)と妻(同56歳)を死亡させ、6人に重軽傷を負わせた。
    検察側は遺族の意向も踏まえ、懲役20年を主張。弁護側は、刑を軽くするよう求めていた。
    裁判長は、「遺族らの厳しい処罰感情は当然」としながらも、「被告は対人無制限の任意保険に加入しており、遺族に対する損害賠償が担保されている」などと指摘。一審判決を支持、検察、弁護側双方の控訴を棄却した。

    判決/懲役16年(求刑懲役20年)
    【判例④】
    2006年2月25日未明、愛知県春日井市内の交差点に赤信号を無視して時速70~80キロで進入し、タクシーの側面に衝突。運転手の男性と乗客の自衛隊員の男性3人、合わせて4人を死亡させるなどして危険運転致死傷罪などに問われた元会社員の男(29)に対して、1審名古屋地裁は危険運転致死傷罪ではなく、予備的訴因の業務上過失致死傷罪を適用し、懲役20年の求刑に対し懲役6年の判決を言い渡した。
    2007年12月25日、その控訴審判決が名古屋高裁で開かれ、裁判長は、「危険で乱暴な運転をしていた被告は信号表示を意に介することなく、交差点に進入。重大な交通の危険を生じさせる速度で赤信号をことさらに無視した」と指摘。そのうえで、「被害者が受けた肉体的、精神的苦痛は甚大で、遺族の悲しみは深い。被告は十分な慰謝の措置を講じず、自己の責任を軽減することに終始した」などと述べ、1審判決を破棄、被告に危険運転致死傷罪を適用し、懲役18年を言い渡した。
    その後、2009年6月2日の最高裁第1小法廷での上告審で、裁判長は被告側の上告を棄却し、名古屋高裁判決が確定した。

    判決/懲役18年(求刑懲役20年)
    【判例⑤】
    2005年10月17日午前、横浜市都筑区のサレジオ学院前で制限速度40キロのカーブを曲がり切れず、歩道にいた高校1年の男子生徒らの列に突っ込み、2人が死亡、7人が重軽傷を負った事故で危険運転致死傷罪に問われた被告の男(25)の控訴審判決が2007年7月19日、東京高裁であった。
    弁護側は、「1審が認定した100キロ以上の速度は出ておらず、危険運転致死傷罪に該当しない」として業務上過失致死傷罪の適用を主張。検察側は求刑通り懲役20年の判決を求めていた。
    1審の横浜地裁判決では、車両の破損状況などから時速100キロ以上と認定。「他者の生命身体に対する配慮を欠いた極めて無謀で悪質な犯行」と批判し、懲役16年の判決。
    2審では、1審の横浜地裁判決を支持し、弁護側、検察側双方の控訴を棄却した。

    判決/懲役16年(求刑懲役20年)
    【判例⑥】
    千葉県松尾町(現山武市)で、同窓会帰りの男女が飲酒運転の車にひき逃げされ、4人が死亡、4人が重軽傷を負い、被告の男(33)が危険運転致死傷罪などに問われた事故について、2007年3月5日、最高裁第2小法廷は上告を棄却する決定をした。
    事故が起きたのは2005年2月5日。免許停止中の被告の男が日本酒5~6合などを飲み、酩酊状態で乗用車を運転。午後9時15分ごろ、同窓会を終えて飲食店から出た8人(当時59歳)をはねて現場から立ち去り、駐車中の別の乗用車を盗んで逃げた。
    1、2審では被告に対し、懲役20年を言い渡していた。

    判決/懲役20年(求刑懲役20年)
    【判例⑦】
    北海道小樽市で、女性3人が死亡、1人が重傷を負った飲酒ひき逃げ事件で、自動車運転処罰法違反の罪などに問われた札幌市の被告の男(32歳)の裁判員裁判が2015年7月9日に開かれ、札幌地裁は求刑通り懲役22年の判決を言い渡した。
    事件が起きたのは2014年7月13日夕方。被告の男は酒の影響で前方注視が困難な状態でRVを運転。市道を歩いていた岩見沢市の会社員の女性(当時29歳)ら3人をはねて死亡させ、1人に重傷を負わせて逃走した。
    裁判長は、「被告は時速50~60キロで車を走行させながら、15秒~20秒程度、スマートフォンを見るため下を向いていた。“よそ見”というレベルをはるかに超える危険極まりない行動だ」と指摘。飲酒の影響による脇見運転が事故原因と認定し、自動車運転処罰法違反のうち、危険運転致死傷罪を適用した。
    その後、被告の男は2015年7月23日、1審札幌地裁の裁判員裁判判決を不服として札幌高裁に控訴したが、同年12月8日、札幌高裁は被告の控訴を棄却する即日判決を言い渡し、求刑通り懲役22年とした1審の札幌地裁の判決を支持した。

    判決/懲役22年(求刑懲役22年)
    【判例⑧】
    2014年10月30日、茨城県かすみがうら市の国道354号で無免許運転をして、6人を死傷させる事故を起こしたなどとして、自動車運転死傷行為処罰法違反(危険運転致死傷)や強盗などの罪に問われた被告の男(25)の裁判員裁判が、2015年9月17日、水戸地裁で開かれた。
    判決によると、被告の男は2014年9月~2015年1月、仲間と鉾田、潮来、鹿嶋市の事務所などで窃盗や強盗を繰り返し、2015年10月30日、乗用車を無免許運転し、前の車を追い抜こうとして対向車と衝突。同乗していた当時14~26歳の男女3人を死亡させ、対向車に乗っていた男性2人を含む計3人にケガを負わせた。
    裁判長は、「運転は無謀かつ相当危険で結果は極めて重大。強盗、窃盗は実行役で被害も多額」、「遺族への対応も誠実とは言い難い」として、懲役15年(求刑懲役16年)の判決を言い渡した。

    判決/懲役15年(求刑懲役16年)
    【判例⑨】
    2014年5月14日、長野県中野市の県道で、無免許のうえ危険ドラッグを使用して、時速126キロを超えるスピードで乗用車を運転し、対向車線を逆走して車に次々と衝突し、1人を死亡させ、2人に重軽傷を負わせたとして危険運転致死傷などの罪に問われた当時19歳の元少年(21)の裁判員裁判の判決公判が2015年11月20日、長野地裁で開かれた。
    公判で元少年側は、「危険ドラッグを使っても事故を起こすとは思わなかった」などと主張。裁判長は、「同乗者が危険ドラッグを使用して手足が硬直し、事故を起こす危険があるのを目にしているのに運転を継続した責任は重大だ」と述べ、懲役13年(求刑懲役15年)を言い渡した。
    死亡した中野市の男性(当時25歳)は、事故の3週間前に妻と入籍し、約4ヵ月後には挙式と披露宴を計画していたことから、裁判長は「突然の事故で人生を奪われた。その無念の情は察するにあまりある」と述べた。

    判決/懲役13年(求刑懲役15年)
    危険運転致死傷罪は、被害者の遺族からみると、「殺人だ」と感じられますが、加害者側からみると、「過失だ」と感じられる、という認識のずれがあります。

    昔は、危険運転致傷罪が存在しなかったので、このような事故は、業務上過失致死傷罪(最高刑5年)と道路交通法違反で処罰されており、被害者感情と著しく乖離した刑事処罰となっていました。

    今回は、懲役23年という刑を科されましたが、それでも遺族の被害者感情を癒やすことはできません。

    交通事故事犯に対して、どの程度の刑事処罰を科すかは、非常に難しい問題であります。

    今後、本件は、民事損害賠償請求にうつっていきます。

    任意保険に加入しており、適正な損害賠償がなされることを祈ります。

  • 北海道砂川市暴走事故で危険運転致死傷罪の共謀は成立するか?

    2016年10月19日

    今回は、昨年起きた、一家5人が死傷した交通事故で「危険運転致死傷罪の共謀」が成立するかどうかについて解説します。

    「危険運転 5人死傷“共謀”焦点 札幌地裁、2被告初公判」(2016年10月17日 毎日新聞)
    2015年6月、北海道砂川市で、共謀して車2台で暴走し、家族4人を死亡させ1人に重傷を負わせたとして、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷罪)などの罪に問われた2人の被告の初公判がありました。

    両被告は速度を競い合って赤信号を無視しようと共謀したとして、全国でも例の少ない危険運転の共謀で起訴されていましたが、一部を否認しているようです。
    どのような事故だったのか、以下にまとめます。

    【事故の概要】
    ・2015年6月6日午後10時35分頃、北海道砂川市の国道12号の交差点付近で、乗用車と軽ワゴン車の出会い頭の衝突事故が発生。

    ・計7人が病院に搬送されたが、軽ワゴンを運転していた男性(当時44歳)と妻(同44歳)、長女(同17歳)が死亡。次女(同13歳)が重体。乗用車に乗っていた3人もケガをした。また、現場から800メートル離れた路上で、家族の長男(同16歳)が死亡しているのが発見された。

    今回の初公判でのやり取りは次の通りです。

    【起訴の内容】
    両被告は赤信号を無視し、100キロ超の猛スピードで互いに競い合って交差点に進入。
    酒気帯び運転の被告AのRV(レジャー用多目的車)が一家の軽ワゴンに衝突し、車外に投げ出された長男を被告Bの後続車が引きずって逃走し、死亡させた。

    【弁護側の主張】
    被告Aの弁護側は、酒気帯び運転は認める一方、「被告は落としたサングラスを捜して、赤信号を見落とした。事故前に被告Bに追い抜かれることも気にしておらず、危険運転は成立しない」などと主張。
    また、被告Bの弁護側は、「共謀が成立しない以上、被告Bには被告Aが起こした事故に対する救護義務はない。人をひいた認識もなく、車外に長男が飛び出してくるとは想像もできない中、起きた事故で、過失責任も問えない」と無罪を主張した。
    次に、危険運転致死傷罪について解説します。

    「自動車運転死傷行為処罰法」は、危険運転への罰則を強化するために2014年5月20日に施行された法律です。

    この中でもっとも重い罪が危険運転致死傷罪で、以下の6つの行為を「故意」に行うことで成立します。
    最高刑は懲役20年です。

    ①アルコール・薬物の影響により正常な運転が困難な状態で走行
    ②進行を制御することが困難な高速度で走行
    ③進行を制御する技能を有しないで走行
    ④又は車の通行を妨害する目的で走行中の自動車の直前に進入その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ重大な交通の危険を生じさせる速度で運転
    ⑤赤色信号等を殊更に無視し、かつ重大な交通の危険を生じさせる速度で運転
    ⑥通行禁止道路を進行し、かつ重大な交通の危険を生じさせる速度で運転

    詳しい解説はこちら⇒「自動車運転死傷行為処罰法の弁護士解説(2)」
    https://taniharamakoto.com/archives/1236

    今回のケースを見ると、上の6つの犯罪類型のうち、

    ①飲酒
    ②高速度の進行
    ⑤赤信号無視

    の3つに当てはまりそうな感じです。

    しかし、報道の内容からは、⑤の赤信号無視で起訴されたようです。
    では、他の2つはどうなったのでしょうか?

    1.飲酒運転については?
    飲酒運転による危険運転致死傷罪が成立するには、「アルコール・薬物の影響により正常な運転が困難な状態で走行」をしたことが必要になります。
    当初、北海道警は、両被告が事故前に飲酒したとみて捜査したようですが、地検は被告Aのみを道路交通法違反の酒気帯び運転で起訴し、被告Bの立件は見送っています。
    これは、立件するには単純に飲酒の量が足りなかったのだと思われます。

    2.速度超過については?
    速度超過による危険運転致死傷罪が成立するには、「進行を制御することが困難な高速度で走行」したことが必要になります。
    今回の事故現場は、道路の幅員が十分にあり、見通しのよい道路であることから、自動車の制御が困難な高速度とはいえないとして不適用となる可能性が高いと思われます。

    3.赤信号の無視については?
    前述のように、危険運転致死傷罪が成立する条件のひとつには「赤色信号等を殊更に無視し、かつ重大な交通の危険を生じさせる速度で運転」することがあります。
    今回、検察側としては、飲酒運転と速度超過での起訴が難しかったことと、それでも両被告に危険運転致死傷罪を適用させるために、最終的には2人が共謀して赤信号をことさらに無視して危険運転をしたとして起訴したのだと思います。

    さて、危険運転致死傷罪に共謀共同正犯が成立するのか?

    裁判の行方を見守りたいと思います。

    交通事故の弁護士相談についてはこちらから⇒
    「交通事故を弁護士に相談すべき7つの理由と2つの注意点」
    http://www.jikosos.net/basic/basic6/bengoshi

  • 危険運転致死傷罪の量刑一覧(飲酒、危険ドラッグ、てんかん、無免許等)

    2015年07月08日

    「危険運転致死傷罪ファイル001」
    【事故の概要】
    2014年6月、京都府福知山市で高校1年の男子生徒が飲酒運転の車に約1キロ引きずられ、ひざ骨折などの重傷を負った事故で、自動車運転処罰法違反(危険運転致傷)罪に問われた被告の男(61)の判決公判が2015年3月27日、京都地裁で開かれた。
    弁護側は、「酩酊しており心神喪失状態だった」と主張。しかし裁判長は、被告が事故直前まで、ほぼ交通規則通りに運転していたことなどから、「是非善悪を弁識し行動する能力を完全に有していた」と退けた。また、飲酒の影響で、「引きずっている間に異常に気づき、停止することさえもできなかった」、「飲酒し、正常な運転が困難な状態を招いた責任は相当に重い」、「動機は自己中心的かつ身勝手というほかない」と結論づけた。

    【判決】
    懲役4年6ヵ月(求刑懲役6年)

    【参考】
    「福知山の男子高校生引きずり判決 被告に懲役4年6月」(産経WEST)
    http://www.sankei.com/west/news/150327/wst1503270082-n1.html
    「危険運転致死傷罪ファイル002」
    【事故の概要】
    2014年7月、東京都・赤羽で危険ドラッグを吸って車を運転し、2人にケガをさせ、自動車運転死傷処罰法違反(危険運転致傷)の罪に問われた被告(男・39歳)の判決が2015年3月23日、東京地裁であった。

    【判決】
    懲役1年4ヵ月・執行猶予4年(求刑懲役1年4ヵ月)

    【参考】
    「危険ドラッグ吸い事故、有罪 東京地裁」(朝日新聞)
    http://www.asahi.com/articles/DA3S11666199.html
    「危険運転致死傷罪ファイル003」
    【事故の概要】
    札幌市で2014年11月、危険ドラッグを吸って車を暴走させ、歩道にいた女子高生をはねて重傷を負わせたとして、自動車運転処罰法違反の危険運転致傷などの罪に問われた札幌市の会社員の男(26)に対する判決が2015年3月17日、札幌地裁で言い渡された。
    裁判官は、事故前の2014年10月にも被告が危険ドラッグを使用して自損事故を起こしていたことをあげて、「危険性を実感しながら絶縁せず、町中で車の運転中に使用した。刑事責任を厳しく問われるべきだ」と指摘。そのうえで、「危険ドラッグへの親和性が高く、危険をいとわない被告には刑の執行を猶予するまでの情状が認められない」と結論づけた。

    【判決】
    懲役3年(求刑懲役4年)

    【参考】
    「危険ドラッグ事故で実刑判決 「刑猶予、認められない」(産経デジタル)
    http://www.iza.ne.jp/kiji/events/news/150317/evt15031716190031-n1.html
    「危険運転致死傷罪ファイル004」
    【事故の概要】
    福岡市・天神で2014年2月、危険ドラッグを吸って乗用車で暴走し歩行者ら12人に重軽傷を負わせたとして自動車運転死傷処罰法違反(無免許危険運転致傷)の罪に問われた被告の男(37)の公判が、福岡地裁で2015年2月13日に行われた。
    「被告は目の焦点が合わず、問いかけても応えられない状態だった。極めて危険性が高く、死者が出なかったのは不幸中の幸い」と裁判官は指摘。そのうえで、重篤な後遺症を負った被害者がいないことや、ほとんどの被害者と示談が成立していることなどをあげ、執行猶予付き判決を言い渡した。

    【判決】懲役1年6ヵ月・執行猶予3年(求刑懲役1年6ヵ月)

    【参考】
    〇「危険ドラッグ暴走に有罪 福岡地裁「極めて危険」」(朝日新聞デジタル)
    http://www.asahi.com/articles/DA3S11600853.html
    「危険運転致死傷罪ファイル005」
    【事故の概要】
    ミニバイクに乗っていた65歳の女性が乗用車に約1・3キロ引きずられ死亡した、2014年7月、埼玉県川口市で起きた事故で、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)と道路交通法違反(ひき逃げ)の罪に問われた元同市職員の男(26)の判決公判が2015年1月29日に行われた。
    裁判長は、被告が大量の飲酒で極めて危険な運転を行い、女性をはねたことに気づきながら逃走し、悪質な飲酒運転の隠蔽工作を行ったと指摘。「危険運転致死傷の事案の中では重い部類」とする一方、被告が反省の言葉を述べたこと、前科がないことなどを情状酌量の理由としてあげた。

    【判決】
    懲役10年(求刑懲役15年)

    【参考】
    「飲酒ひき逃げ死亡で地裁判決 元川口市職員に懲役10年 埼玉」(産経ニュース)
    http://www.sankei.com/region/news/150130/rgn1501300044-n1.html
    「危険運転致死傷罪ファイル006」
    【事故の概要】
    制限速度を約30キロ超えるスピードで車を運転し、同乗者3人が死傷する事故を起こしたとして、危険運転致死傷罪に問われた無職の少年(19)の裁判員裁判が2014年12月8日、長崎地裁で開かれた。
    事故が起きたのは、2014年4月19日午前1時25分頃。長崎県島原市の制限速度60キロの市道で、乗用車を時速93キロで運転し、車は道路の起伏ではね上がり左側にあった自動販売機に衝突した。
    裁判長は、「結果は重いが、勾配の変化による浮遊感を同乗者全員と楽しむ目的で車を走行させており、経緯には酌むべき点がある」と指摘した。

    【判決】
    懲役3年以上、5年以下(求刑懲役5年以上、10年以下)

    【参考】
    「危険運転の19歳に実刑」(産経ニュース)
    http://www.sankei.com/affairs/news/141208/afr1412080019-n1.html
    「危険運転致死傷罪ファイル007」
    【事故の概要】
    2014年8月3日午後、北海道石狩市で、酒気帯び運転で5人に重軽傷を負わせる事故を起こしたとして、自動車運転処罰法違反(危険運転致傷)などの罪に問われた札幌市の被告の男(30)の公判が2014年11月27日、札幌地裁で開かれた。
    被告は制限速度50キロの国道を118~126キロで乗用車を運転中、隣の車線にいた乗用車に後ろから衝突。札幌市の男性と家族4人に胸の骨を折るなどの重軽傷を負わせた。
    検察側は6日の論告で、「日頃から速度違反と飲酒運転を繰り返し、規範意識に欠けている」と指摘。弁護側は、「反省して車を運転しないと誓い、被害者に謝罪した」として、懲役2~3年の実刑が相当と主張していた。

    【判決】
    懲役4年6ヵ月(求刑懲役5年)

    【参考】
    「危険運転で懲役4年6月 北海道の5人重軽傷事故で札幌地裁」(産経デジタル)
    http://www.iza.ne.jp/kiji/events/news/141127/evt14112711230010-n1.html
    「危険運転致死傷罪ファイル008」
    【事故の概要】
    2014年3月9日未明、飲酒後に無免許で乗用車を運転し、水戸市の県道のカーブで対向車線にはみ出し、33歳の会社員の男性が運転する軽乗用車に衝突、死亡させたとして危険運転致死罪などに問われた元少年(20)の裁判員裁判が2014年10月17日、水戸地裁で開かれ判決が言い渡された。
    裁判長は、「高濃度のアルコールを保有した状態で制限速度の約2倍の高速度で走行し、悪質で危険」と指摘。「以前から無免許運転や飲酒運転を繰り返しており、強い非難に値する」と述べた。

    【判決】
    懲役8年(求刑懲役9年)

    【参考】
    「飲酒死亡事故の元少年、危険運転致死罪で懲役8年 水戸地裁」(産経デジタル)
    http://www.iza.ne.jp/kiji/events/news/141017/evt14101718010038-n1.html
    「危険運転致死傷罪ファイル009」
    【事故の概要】
    飲酒運転でひき逃げしたとして、自動車運転処罰法違反(危険運転致傷)と道路交通法違反の罪に問われた別府市の会社員の男(29)に対する判決が、2014年10月7日に大分地裁であった。
    被告の男は、2014年6月24日未明、同市の県道で飲酒のため運転に支障が生じる恐れがある状態で軽乗用車を運転し、市内の会社員(当時19歳)が運転する軽乗用車と衝突。首などに14日間のケガをさせたうえ、救護などをせず逃げた。
    裁判長は、5時間にわたってビールを約2リットル、焼酎を約1合半飲んだこと、駐車場を出る際に精算作業に手間取ったうえ、約2分後には居眠りして事故を起こしたとして、「アルコールのため居眠りし、正常な運転が困難になったのは明らか」と指摘した。

    【判決】
    懲役1年6ヵ月・執行猶予4年(求刑懲役1年6ヵ月)

    【参考】
    飲酒ひき逃げ:危険運転致傷罪、初適用し男有罪−−大分地裁判決 /大分」(毎日新聞)
    http://mainichi.jp/area/oita/news/20141008ddlk44040360000c.html
    「危険運転致死傷罪ファイル010」
    【事故の概要】
    京都市で2013年10月2日の夕方、飲酒運転の車が小学2年の男子児童ら3人をはねて死傷させた連続ひき逃げ事件で、危険運転致死傷罪や道路交通法違反(ひき逃げ)の罪などに問われた被告の男(60)に対する裁判員裁判の判決が2014年9月19日、京都地裁であった。
    被告の男はカップ酒数本を飲んで軽トラックを運転し、同市中京区の市道で自転車に乗っていた主婦(61)をはねて逃走。さらに約160メートル東で、祖父(67)が運転する自転車の後ろに乗っていた小学2年をはねて、児童は頭を強く打って死亡、祖父は重傷を負った。
    弁護側は公判で、「被告は事故に気づかなかった」と主張。しかし、裁判長は、「車のフロントガラスの破損状況などから、ぶつかったときの強い衝撃に気づいたはず」と退け、「人命を軽視し、思慮の浅い態度は厳しい非難に値する」と指摘した。

    【判決】
    懲役12年(求刑懲役13年)

    【参考】
    「京都・中京のひき逃げ:3人死傷 危険運転、懲役12年−−地裁判決」(毎日新聞)
    http://mainichi.jp/area/news/20140920ddn041040015000c.html
    「危険運転致死傷罪ファイル011」
    【事故の概要】
    2014年6月7日、札幌市内で無免許のまま乗用車を運転中、持病のてんかんを発症し意識不明の状態に陥り人身事故を起こしたとして自動車運転死傷処罰法違反(無免許危険運転致傷)の罪に問われた被告の男(27)の判決が2014年9月2日、札幌地裁であった。
    事故は、被告が車線をはみ出して対向車と衝突し、運転していた男性が腰の骨を折る重傷を負ったもの。
    裁判官は、「持病を有する状態での運転は相当程度危険性が高い。それを認識していたのに運転したことは、強く非難される」と指摘。
    法務省によると、特定の病気の影響による交通事故での危険運転致傷罪の成立は全国初とのこと。

    【判決】
    懲役1年10ヵ月(求刑懲役2年)

    【参考】
    「“危険運転”初の判決 てんかん発症、人身事故 札幌地裁
    」(朝日新聞デジタル)
    http://digital.asahi.com/articles/DA3S11330404.html
    「危険運転致死傷罪ファイル012」
    【事故の概要】
    高松市の県道交差点で、車を暴走させて自損事故を起こし同乗者2名が死亡、1人に重傷を負わせた事故で危険運転致死傷罪に問われていた運転手の男(33)の裁判員裁判が、2013年1月31日、高松地裁であった。
    事故があったのは、2010年4月29日の夜。真ん中が隆起している交差点に法定速度(時速60キロ)を超える145キロで進入し、対向車線に飛び出して鉄柱に衝突した。
    被告側は、「スピードと事故との因果関係はない」と主張したが、裁判長は、「2人の命が奪われた結果は甚大で、被告に反省も認められない」と指摘。現場の状況や証言などから、危険運転致死傷罪は成立するとした。

    【判決】
    懲役7年(求刑懲役10年)

    【参考】
    「危険運転の男に有罪判決」(西日本放送)
    http://www.rnc.co.jp/news/index.asp?mode=3&nwnbr=2013013111&word=%82%C8%82%C7&page=253
    「危険運転致死傷罪ファイル013」
    【事故の概要】
    仙台市で2014年11月、飲酒運転で道路工事現場に突っ込み4人を死傷させたとして、危険運転致死傷罪に問われた元会社員の男(21)の裁判員裁判が、2013年5月29日に仙台地裁であった。
    弁護側は、より法定刑の軽い自動車運転過失致死傷罪などの適用を求めていたが、裁判長は、「時速75キロで13秒間も全く前を見ずに運転するのは異常で、原因はアルコールの影響以外に考えられない」と指摘。危険運転致死傷罪が成立するとした。

    【判決】
    懲役14年(求刑懲役18年)

    【参考】
    「危険運転罪で懲役14年 仙台地裁、4人死傷事故」(共同通信)

    http://www.47news.jp/CN/201305/CN2013052901001315.html

     

    「危険運転致死傷罪ファイル014」
    【事故の概要】
    2009年3月25日午前8時10分頃、山口県防府市の市道で、時速80キロで乗用車を運転し、中央線をはみ出して53歳の女性が運転する軽乗用車に衝突。女性を死亡させ、同乗していた長女(29)に重傷を負わせたとして危険運転致死傷の罪に問われた防府市内の少年(19)の判決公判が2010年1月20日、山口地裁であった。
    裁判長は、運転中の少年に同乗者がスピードの出し過ぎを指摘した点や、少年が事故現場のカーブの形状などを知っていた点などをあげ、「制御困難な速度の認識があった」、「運転態様は無謀かつ危険」と指摘。「被害者側には何の落ち度もなく突如生命を奪われた。遺族の処罰感情が極めて厳しいのも当然」とした。
    なお、本裁判は山口県内で初めて被害者参加制度が適用されたもので、公判では亡くなった女性の次女が少年に対して意見を述べた。

    【判決】
    懲役3~6年の不定期刑(求刑懲役4~7年の不定期刑)

    【参考】
    「県内初の被害者参加裁判 少年に3-6年不定期刑」(山口新聞)
    http://www.minato-yamaguchi.co.jp/yama/news/digest/2010/0121/7.html
    「危険運転致死傷罪ファイル015」
    【事故の概要】
    埼玉県熊谷市で2008年2月17日、2人が死亡、6人が重軽傷を負う飲酒運転事故を起こしたとして、危険運転致死傷罪に問われた元トラック運転手の男(34)の控訴審判決が2009年11月27日、東京高裁であった。
    被告の男は、約5時間にわたってビールや焼酎を飲み、乗用車で熊谷市内の県道を時速100キロ以上で運転。対向車2台に衝突し、自営業の男性(当時56歳)と妻(同56歳)を死亡させ、6人に重軽傷を負わせた。
    検察側は遺族の意向も踏まえ、懲役20年を主張。弁護側は、刑を軽くするよう求めていた。
    裁判長は、「遺族らの厳しい処罰感情は当然」としながらも、「被告は対人無制限の任意保険に加入しており、遺族に対する損害賠償が担保されている」などと指摘。一審判決を支持、検察、弁護側双方の控訴を棄却した。

    【判決】
    懲役16年(求刑懲役20年)

    【参考】
    飲酒運転の男、二審も懲役16年 8人死傷事故で東京高裁」(共同通信)
    http://www.47news.jp/CN/200911/CN2009112701000721.html
    「危険運転致死傷罪ファイル016」
    【事故の概要】
    2006年2月25日未明、愛知県春日井市内の交差点に赤信号を無視して時速70~80キロで進入し、タクシーの側面に衝突。運転手の男性と乗客の自衛隊員の男性3人、合わせて4人を死亡させるなどして危険運転致死傷罪などに問われた元会社員の男(29)に対して、1審名古屋地裁は危険運転致死傷罪ではなく、予備的訴因の業務上過失致死傷罪を適用し、懲役20年の求刑に対し懲役6年の判決を言い渡した。
    2007年12月25日、その控訴審判決が名古屋高裁で開かれ、裁判長は、「危険で乱暴な運転をしていた被告は信号表示を意に介することなく、交差点に進入。重大な交通の危険を生じさせる速度で赤信号をことさらに無視した」と指摘。そのうえで、「被害者が受けた肉体的、精神的苦痛は甚大で、遺族の悲しみは深い。被告は十分な慰謝の措置を講じず、自己の責任を軽減することに終始した」などと述べ、1審判決を破棄、被告に危険運転致死傷罪を適用し、懲役18年を言い渡した。
    その後、2009年6月2日の最高裁第1小法廷での上告審で、裁判長は被告側の上告を棄却し、名古屋高裁判決が確定した。

    【判決】
    懲役18年(求刑懲役20年)

    【参考】
    「4人死亡事故で懲役18年 名古屋高裁、危険運転罪を適用」(共同通信)
    http://www.47news.jp/CN/200712/CN2007122501000281.html
    「危険運転致死傷罪ファイル017」
    【事故の概要】
    2005年10月17日午前、横浜市都筑区のサレジオ学院前で制限速度40キロのカーブを曲がり切れず、歩道にいた高校1年の男子生徒らの列に突っ込み、2人が死亡、7人が重軽傷を負った事故で危険運転致死傷罪に問われた被告の男(25)の控訴審判決が2007年7月19日、東京高裁であった。
    弁護側は、「1審が認定した100キロ以上の速度は出ておらず、危険運転致死傷罪に該当しない」として業務上過失致死傷罪の適用を主張。検察側は求刑通り懲役20年の判決を求めていた。
    1審の横浜地裁判決では、車両の破損状況などから時速100キロ以上と認定。「他者の生命身体に対する配慮を欠いた極めて無謀で悪質な犯行」と批判し、懲役16年の判決。
    2審では、1審の横浜地裁判決を支持し、弁護側、検察側双方の控訴を棄却した。

    【判決】
    懲役16年(求刑懲役20年)

    【参考】
    「元警備員、2審も懲役16年 横浜の高校生9人死傷事故」(共同通信)
    http://www.47news.jp/CN/200707/CN2007071901000203.html
    「危険運転致死傷罪ファイル018」
    【事故の概要】
    千葉県松尾町(現山武市)で、同窓会帰りの男女が飲酒運転の車にひき逃げされ、4人が死亡、4人が重軽傷を負い、被告の男(33)が危険運転致死傷罪などに問われた事故について、2007年3月5日、最高裁第2小法廷は上告を棄却する決定をした。
    事故が起きたのは2005年2月5日。免許停止中の被告の男が日本酒5~6合などを飲み、酩酊状態で乗用車を運転。午後9時15分ごろ、同窓会を終えて飲食店から出た8人(当時59歳)をはねて現場から立ち去り、駐車中の別の乗用車を盗んで逃げた。
    1、2審では被告に対し、懲役20年を言い渡していた。

    【判決】
    懲役20年(求刑懲役20年)

    【参考】
    「危険運転、懲役20年確定へ 千葉の同窓会帰り8人死傷」(共同通信)

    http://www.47news.jp/CN/200703/CN2007030601000567.html

     

    「危険運転致死傷罪ファイル019」
    【事故の概要】
    北海道小樽市で、女性3人が死亡、1人が重傷を負った飲酒ひき逃げ事件で、自動車運転処罰法違反の罪などに問われた札幌市の被告の男(32歳)の裁判員裁判が2015年7月9日に開かれ、札幌地裁は求刑通り懲役22年の判決を言い渡した。
    事件が起きたのは2014年7月13日夕方。被告の男は酒の影響で前方注視が困難な状態でRVを運転。市道を歩いていた岩見沢市の会社員の女性(当時29歳)ら3人をはねて死亡させ、1人に重傷を負わせて逃走した。
    裁判長は、「被告は時速50~60キロで車を走行させながら、15秒~20秒程度、スマートフォンを見るため下を向いていた。“よそ見”というレベルをはるかに超える危険極まりない行動だ」と指摘。飲酒の影響による脇見運転が事故原因と認定し、自動車運転処罰法違反のうち、危険運転致死傷罪を適用した。
    その後、被告の男は2015年7月23日、1審札幌地裁の裁判員裁判判決を不服として札幌高裁に控訴したが、同年12月8日、札幌高裁は被告の控訴を棄却する即日判決を言い渡し、求刑通り懲役22年とした1審の札幌地裁の判決を支持した。

    【判決】
    懲役22年(求刑懲役22年)

    【引用】
    「飲酒ひき逃げで4人死傷の海津被告、2審も懲役22年」(2015年12月8日 産経新聞デジタル)

    http://www.iza.ne.jp/kiji/events/news/151208/evt15120812040019-n1.html
    「危険運転致死傷罪ファイル020」
    【事故の概要】
    2014年9月11日午前10時50分ころ、34歳の男が札幌市南区の道道で睡眠導入剤の影響で前方注視が困難な状態であるにも関わらず車を運転して対向車線にはみ出し、大雨被害の復旧作業に当たっていた4人をはね、当時62歳の男性1人が死亡、3人に重軽傷を負わせた事件の裁判が2015年7月15日に開かれた。
    自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)の罪に問われた札幌市の被告の男(34)に対し札幌地裁は、懲役4年6月(求刑懲役6年)の判決を言い渡した。
    弁護側は「服用から運転まで一定の時間が経過し、服用時点で運転する意思はなかった。危険運転致死傷罪は成立しない」と主張。しかし、裁判長は、「カーブでふらつくなどし、被告は自分の異常な運転が睡眠導入剤の影響だとわかっていたはずだ」と指摘した。

    【判決】
    懲役4年6月(求刑懲役6年)

    【引用】
    「睡眠剤事故で懲役4年6月 札幌地裁、危険運転を認定」(2015年7月15日 産経新聞デジタル)
    http://www.iza.ne.jp/kiji/events/news/150715/evt15071518040019-n1.html
    「危険運転致死傷罪ファイル021」
    【事故の概要】
    千葉市緑区の片側2車線の市道で、制限速度を超えた速度で乗用車を運転中、左車線をオートバイで走行していた男性(当時45歳)を妨害するため接近するなどして、男性をガードレールに衝突させ、死亡させた被告の男(37)に対する裁判員裁判の判決公判が2015年8月10日、千葉地裁で開かれた。
    危険運転致死罪と道路交通法違反(ひき逃げ)の罪で求刑8年のところ、裁判長は「極めて危険で人命を軽視する運転。強い非難に値する」として、懲役7年の実刑を言い渡した。
    検察側は、「バイクの存在を認識したうえで幅寄せをしたことが認められる」と指摘。弁護側は「車線変更をしただけで、走行を妨害するつもりはなかった」として無罪を主張していた。
    事件が起きたのは、2014年4月28日午前7時ころ。接触を伴わない交通事故での危険運転致死容疑での立件は全国でも珍しく、司法判断は注目を集めていた。

    【判決】
    懲役7年(求刑懲役8年)

    【引用】
    「「人命軽視の運転」 車で走行妨害の被告に懲役7年 千葉地裁」(2015年8月11日
    産経新聞デジタル)
    http://www.iza.ne.jp/kiji/events/news/150811/evt15081108320016-n1.html
    「危険運転致死傷罪ファイル022」
    【事故の概要】
    飲酒運転でパトカーから逃走中、赤信号を無視して死亡事故を起こしたとして、自動車運転処罰法違反(危険運転致死)などの罪に問われた東京都葛飾区の被告の男(23)の裁判員裁判が2015年9月11日、東京地裁で開かれた。
    事件が起きたのは、2014年12月。交差点に進入して女子大生(当時21歳)をはねて死亡させた。
    被告は、「赤信号に気づかなかった」として危険運転致死罪には当たらないと主張。裁判長は、「飲酒運転を恐れての事故できわめて身勝手だ」、「交通規制を気に掛けず、何としても逃げようとする強い意図があった」として、懲役9年(求刑懲役10年)の判決を言い渡した。

    【判決】
    懲役9年(求刑懲役10年)

    【引用】
    「危険運転致死、懲役9年 飲酒逃走「極めて身勝手」」(2015年9月11日 共同通信)
    http://www.47news.jp/smp/CN/201509/CN2015091101001710.html
    「危険運転致死傷罪ファイル023」
    【事故の概要】
    2014年10月30日、茨城県かすみがうら市の国道354号で無免許運転をして、6人を死傷させる事故を起こしたなどとして、自動車運転死傷行為処罰法違反(危険運転致死傷)や強盗などの罪に問われた被告の男(25)の裁判員裁判が、2015年9月17日、水戸地裁で開かれた。
    判決によると、被告の男は2014年9月~2015年1月、仲間と鉾田、潮来、鹿嶋市の事務所などで窃盗や強盗を繰り返し、2015年10月30日、乗用車を無免許運転し、前の車を追い抜こうとして対向車と衝突。同乗していた当時14~26歳の男女3人を死亡させ、対向車に乗っていた男性2人を含む計3人にケガを負わせた。
    裁判長は、「運転は無謀かつ相当危険で結果は極めて重大。強盗、窃盗は実行役で被害も多額」、「遺族への対応も誠実とは言い難い」として、懲役15年(求刑懲役16年)の判決を言い渡した。

    【判決】
    懲役15年(求刑懲役16年)

    【引用】
    「無免許運転、6人死傷させた男に懲役15年判決」(2015年9月18日 読売新聞)
    http://www.yomiuri.co.jp/national/20150918-OYT1T50091.html
    「危険運転致死傷罪ファイル024」
    【事故の概要】
    2014年5月14日、長野県中野市の県道で、無免許のうえ危険ドラッグを使用して、時速126キロを超えるスピードで乗用車を運転し、対向車線を逆走して車に次々と衝突し、1人を死亡させ、2人に重軽傷を負わせたとして危険運転致死傷などの罪に問われた当時19歳の元少年(21)の裁判員裁判の判決公判が2015年11月20日、長野地裁で開かれた。
    公判で元少年側は、「危険ドラッグを使っても事故を起こすとは思わなかった」などと主張。裁判長は、「同乗者が危険ドラッグを使用して手足が硬直し、事故を起こす危険があるのを目にしているのに運転を継続した責任は重大だ」と述べ、懲役13年(求刑懲役15年)を言い渡した。
    死亡した中野市の男性(当時25歳)は、事故の3週間前に妻と入籍し、約4ヵ月後には挙式と披露宴を計画していたことから、裁判長は「突然の事故で人生を奪われた。その無念の情は察するにあまりある」と述べた。

    【判決】
    懲役13年(求刑懲役15年)

    【引用】
    「危険ドラッグ暴走で3人死傷 元少年に懲役13年判決 長野地裁」(2015年11月21日 産経新聞デジタル)
    http://www.iza.ne.jp/kiji/events/news/151121/evt15112100350001-n1.html

     

    「危険運転致死傷罪ファイル025」
    【事故の概要】
    2015年8月23日、神奈川県葉山町で海水浴客の列に乗用車で突っ込み、歩行者3人を死傷させて逃げたとして、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)と道路交通法違反(ひき逃げ)に問われた会社員の男(20)に対し、横浜地裁は2016年5月24日、懲役11年(求刑・懲役12年)の判決を言い渡した。
    判決によると、被告の男は葉山町一色の制限速度が時速40キロの県道を、乗用車で時速78キロで走行。歩いていた海水浴客の列に突っ込み、1人を死亡させ、2人に重傷を負わせたという。
    裁判長は、「落ち度のない3人を死傷させた結果は極めて重く、事故を起こした経緯は身勝手で酌量の余地はない」と述べ、被告が飲酒した直後に運転していたことを隠そうと、帰宅後に飲酒したように装ったと認定した。

    【判決】
    懲役11年(求刑・懲役12年)

    【参考】
    「<葉山3人死傷ひき逃げ>懲役11年判決…横浜地裁」(2016年5月25日 毎日新聞)
    http://mainichi.jp/articles/20160525/ddm/041/040/166000c
    「危険運転致死傷罪ファイル026」
    【事故の概要】
    車を運転中に持病のてんかんの発作で意識を失い、車に追突して男性に軽傷を負わせたとして自動車運転死傷行為処罰法違反(危険運転致傷)に問われた山形県寒河江市の会社員の男(38)に対し、山形地裁は2016年6月1日、懲役10月、執行猶予3年(求刑・懲役10月)の判決を言い渡した。
    判決によると、被告の男は事故前日に深夜まで飲酒し、当日朝に抗てんかん薬を飲み忘れたまま、2014年11月18日昼頃、正常な運転に支障が生じる恐れがある状態で軽乗用車を運転。約10分後、寒河江市内の県道を時速約40キロで走行中に発作で意識を失い、信号待ちの車に追突し、運転していた60歳代男性に軽傷を負わせたという。

    【判決】
    懲役10月、執行猶予3年(求刑・懲役10月)

    【参考】
    「てんかん発作で追突、けが負わせる…有罪判決」(2016年6月2日読売新聞)
    「危険運転致死傷罪ファイル027」
    【事故の概要】
    東京・池袋の繁華街で、危険ドラッグを吸って車を運転し、7人を死傷させたとして自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)に問われた被告の男(39)に対し、東京高裁は2016年6月8日、懲役8年(求刑・懲役10年)とした1審・東京地裁判決を支持し、被告側の控訴を棄却した。
    被告側は、「危険ドラッグを使って意識障害に陥った経験はなく、運転に支障が出るとは思わなかった」と訴えたが、高裁判決は、過去に繰り返し使用し嘔吐などの症状があったと認めて主張を退けた。
    判決によると、2014年6月、被告の男は危険ドラッグを吸って車を運転し、JR池袋駅近くで7人をはね、中国籍の女性(当時30歳)を死亡させるなどしたという。

    【判決】
    懲役8年(求刑・懲役10年)

    【参考】
    「池袋暴走7人死傷 高裁も懲役8年判決」(2016年6月8日 毎日新聞)
    http://mainichi.jp/articles/20160609/k00/00m/040/057000c
    「危険運転致死傷罪ファイル028」
    【事故の概要】
    さいたま市浦和区で、自転車の女性(当時41歳)を飲酒運転の車でひき逃げして死亡させたとして、危険運転致死と道交法違反の罪に問われた被告の男(24)の裁判員裁判の判決公判が2016年9月6日、さいたま地裁で開かれ、裁判長は、懲役8年(求刑・懲役12年)を言い渡した。
    事件が起きたのは、2015年11月28日未明。被告の男は飲酒した状態で、友人(懲役3年保護観察付き執行猶予5年)の車を運転し、前方を走っていた浦和区の女性をはねて死亡させ、車を道路上に放置したまま逃走した。
    判決では、飲酒の影響で仮睡状態に陥っていたにもかかわらず、車の運転を中止しなかった点に触れ、「何ら落ち度のない被害者の生命を突如奪い、厳罰を望む遺族の心情は当然」とした。また、被告の男は友人と常習的に飲酒運転を繰り返していたことから、「安易に考えていたことは否めず、経緯や動機に酌むべき事情はない」と述べたうえで、罪を認めて反省の態度を示している点などを踏まえ、懲役8年が相当とした。
    【判決】
    懲役8年(求刑・懲役12年)

    【参考】
    「飲酒ひき逃げに懲役8年…さいたまの劇団員女性死亡“安易に考えた”」(2016年9月7日 埼玉新聞)
    「危険運転致死傷罪ファイル029」
    【事故の概要】
    大阪府東大阪市で、てんかんの発作で意識障害に陥ったまま自動車を運転し、歩行者ら3人を死傷させたとして、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)の罪に問われた被告の男(51)の判決公判が2017年2月17日、大阪地裁で開かれ、「てんかん発作で、正常な運転ができない恐れがあると認識していた」と危険運転罪の成立を認め、懲役10年(求刑・懲役12年)を言い渡した。
    判決によると、2015年3月、被告の男は運転中に発作で意識を失ったまま赤信号の交差点に時速108キロで進入。歩行していた当時37歳と41歳の男性2人を死亡させ、衝突した乗用車の男性に高次脳機能障害などを伴う重傷を負わせたという。
    公判で弁護側は、「薬を服用して体調管理をしていた。てんかん発作は予測できなかった」と無罪を主張。一方、裁判長は被告が走行中、胸のむかつきなど、てんかん発作の前兆を感じて車を停止させることも可能だったのに運転を続けたと指摘し、「危険運転の故意が認められる」と認定。
    また、事故前にも、てんかん発作で複数回意識を失ったことがあったのに、運転免許証の更新時に「意識喪失の経験がない」と虚偽記載を繰り返し、主治医にも車を運転していることを告げていなかった点を重視。「本来は専門医の指導のもとで安全な運転をすべきだった。事故は起きるべくして起きた結果といえ、強い非難を免れない」と厳しく批判した。
    【判決】
    懲役10年(求刑・懲役12年)

    【参考】
    「てんかん発作で危険運転、懲役10年判決 3人死傷事故で大阪地裁」(2017年2月17日 産経新聞)
    http://www.iza.ne.jp/kiji/events/news/170217/evt17021715290018-n1.html
    「危険運転致死傷罪ファイル030」
    【事故の概要】
    大阪府八尾市の国道170号で7人が死傷した交通事故で、自動車運転死傷行為処罰法違反(危険運転致死傷)などに問われた八尾市の会社員の男(45)の裁判員裁判の判決が2017年3月3日にあり、大阪地裁は懲役11年(求刑・懲役12年)の実刑を言い渡した。
    事件が起きたのは2015年1月4日。被告の男は、乗用車を運転中に対向車線にはみ出し、対向車線を走行していた乗用車と衝突。この車に乗っていた東大阪市の男性(当時80歳)ら2人を死亡させ、5人に重軽傷を負わせた。
    事故当時、被告の男は制限速度が時速50キロだったのに対し、時速163キロで走行しており、裁判長は、「制御するのが困難になる危険な走行で悪質だ」と指摘した。

    【判決】
    懲役11年(求刑・懲役12年)

    【参考】
    「163キロで暴走し7人死傷、被告に懲役11年」(2017年3月4日 読売新聞)
    「危険運転致死傷罪ファイル031」
    【事故の概要】
    神戸市中央区のJR三ノ宮駅前で、無職の男(64)が運転する乗用車が暴走して、歩行者5人に重軽傷を負わせて自動車運転処罰法違反(危険運転致傷)罪に問われた事故の裁判が2017年3月29日に神戸地裁であり、懲役3年、保護観察付き執行猶予4年(求刑懲役4年)が言い渡された。
    事件があったのは、2016年5月3日午前11時5分頃。被告の男はJR三ノ宮駅北側のロータリーを車で走行中、てんかんの発作で意識を失い暴走させ、歩行者5人をはねて重軽傷を負わせたという。
    弁護側は、被告がてんかんの診断を受けたことがないことなどから、「病気により運転中に意識を失う危険を認識できなかった」と無罪を主張。
    一方、裁判長は、被告が過去に意識障害に陥り、医師からてんかんを疑われたことや、2015年にも意識喪失による追突事故を起こしていたことなどから、「何らかの病気で、正常な運転に支障が生じる恐れを認識していた」と判断。「家族らからの警告を真摯に受け止めず運転を繰り返して事故を発生させ、認識の甘さは厳しく非難されるべきだ」と述べた。

    【判決】
    懲役3年、保護観察付き執行猶予4年(求刑懲役4年)

    【参考】
    「危険運転、男に有罪=三ノ宮駅前暴走事故-神戸地裁」(2017年3月29日 時事通信)
    http://www.jiji.com/jc/article?k=2017032901166&g=soc

     

    自動車運転死傷行為処罰法の詳しい解説は、こちら

    【1】自動車運転死傷行為処罰法成立までの経緯解説
    https://taniharamakoto.com/archives/1234

    【2】自動車運転死傷行為処罰法の内容解説
    https://taniharamakoto.com/archives/1236

  • 時速40キロで危険運転致死傷罪!?


    今年9月、京都府八幡市で自動車が集団登校中の児童の列に突っ込み、5人が重軽傷を負った事件で、京都地検が「自動車運転過失傷害罪」で起訴した派遣社員の少年(19)について、「危険運転致傷罪」に訴因を変更するよう京都地裁に請求しました。

    なぜ危険運転致死傷罪の適用が可能となったのか? まずは、事件の経緯を見ていきましょう。

    報道によると、9月24日午前7時55分頃、当時18歳だった少年が自動車を運転中、T字路を左折して府道に入ろうとした際、急加速してスリップ。

    歩道の柵をなぎ倒し、集団登校中だった小学生13人の列に突っ込み、スポーツカーはそのまま民家に激突。

    少年は昨年、2012年10月に自動車免許を取得したばかりで、すぐに親から車を買い与えられていたようです。

    父親は、「身の丈にあったものにしろといったが、本人は車関係の仕事に就きたいという思いもあり、小さい頃からの夢だった車を購入した。あこがれがあったと思う」と話しているといいます。

    自宅近所や事故現場付近では、少年がスピードを出したり、後輪をすべらせるドリフト走行など危険な運転を繰り返しているのがたびたび目撃され、その無謀運転は近所の人の間では有名だったようです。

    現場は以前にも事故が起こっていて、市に対してガードレールの設置要望をしていた市民もいたようで、事故直後は小学生たちが泣き叫ぶ声が響き、騒然とした空気に包まれていたといいます。

    少年は当初、自動車運転過失傷害容疑で現行犯逮捕されましたが、京都地検が危険運転致傷の非行事実で京都家裁に送致。しかし、家裁は自動車運転過失傷害の非行事実に切り替えて逆送し、地検も同罪で起訴していました。

    ところが、起訴後の調査で交差点への進入速度が時速40キロ以上だったことが判明。

    危険運転致傷罪の規定のひとつである、「進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為」にあたると判断したとみられます。
    昨年から、京都では暴走車が通行人に死傷を負わせる交通事故が頻発しています。

    「京都祇園軽ワゴン車暴走事故」
    2012(平成24)年4月12日、京都市祇園で起きた暴走車による8名が死亡し、11人が重軽傷を負った事故。事故原因は、運転者男性の持病のてんかん発作によるものであるとされた。

    「亀岡市登校中児童ら交通事故死事件」
    2012(平成24)年4月23日、京都府亀岡市で当時18歳だった少年が運転する軽自動車が、小学校へ登校中の児童と引率の保護者の列に突っ込み、計10人がはねられて3人が死亡、7人が重軽傷を負った事故。事故原因は、少年の遊び疲れと睡眠不足による居眠り運転とされ、2013年9月30日、大阪高等裁判所は一審判決を破棄し、懲役5年以上9年以下の不定期刑を言い渡し、検察・弁護側双方が上告しなかったため、この判決が確定した。

    今回の事故の訴因変更請求は、悪質運転による死傷事故の罰則を強化する新法「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」が参院本会議で全会一致により可決・成立した矢先のことでした。

    さて、この事故について、「自動車運転過失傷害罪」から罰則の重い「危険運転致傷罪」へ変更される可能性はあるでしょうか?

    先にも書いたように、交差点への進入速度が時速40キロ以上だったことが判明したことが大きなポイントです。

    しかし、時速40キロでの事故は、日常的に起こる事故であって、珍しいことではありません。

    では、どうして時速40キロが重要なポイントとなるのでしょうか?

    危険運転致傷罪の「進行を制御することが困難な高速度」とは、速度が速すぎるため、道路の状況に応じて進行することが困難な状態で自動車を走行させることを言います。

    条文では、具体的に「速度●●キロ以上」と決まっているわけではありません。

    具体的な道路の道幅や、カーブ、曲がり角などの状況によって変わってくるし、車の性能や貨物の積載状況によっても変わってきます。

    ということは、高速道路であれば、時速100キロであっても進行を制御することが困難とは言えませんが、曲がりくねった細い道路では、時速40キロであっても「進行を制御することが困難」となりうる、ということです。

    今回の事故では、T字路を左折して府道に入ろうとした際、急加速して40キロに至った、ということですので、道路状況を合わせて考えると、40キロであったとしても、「進行を制御することが困難」であると判断したということでしょう。

    さて、検察は勝てるでしょうか。

    弁護側は、

    「40キロも出ていない。当時の速度を測定することは不可能である」

    「T字路を左折する際にアクセルを踏んだのはブレーキと踏み間違えたからである」

    「40キロでも進行制御は十分可能であるが、運転操作を誤っただけである」

    など、いろいろな反論をしてくるはずです。

    裁判の動向を見守りたいと思います