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隣人トラブルから人間性が見える

 >隣人トラブルから人間性が見える

2014年3月6日




10年ほど前、「騒音おばさん」という人が世の中で話題になっていました。

奈良県に住む主婦が、2年半の間、24時間CDラジカセからユーロビートなどの音楽を大音量で流し続け、ときには「引っ越し、引っ越し」と大声で叫び、近所の住人が健康被害にあったというものでした。

ワイドショーや週刊誌などで連日報道されていたので、覚えている人も多いでしょう。

結局、2005年に傷害罪で逮捕され、2007年に最高裁で実刑が確定。懲役1年8ヵ月が言い渡されました。

その後、千葉や大阪、茨城などでも同様の事例で逮捕された人がいます。

これは極端な例だとしても、現代社会では隣人トラブルは日常茶飯事で起きています。

その中でも多いのが、騒音トラブルでしょう。

鉄道や道路、飛行機の音など公共機関の騒音から、ご近所間の問題まで、さまざまなトラブルが起きています。

マンション上階の住人の足音、隣の部屋の騒ぐ子供、隣家の飼い犬の鳴き声、大音量のテレビや音楽、自動車やバイクのエンジン音など、自分にとっては騒音ではなくても、相手にとっては不快な音になったりします。

また、対応の仕方で問題がこじれるケースも多々あります。

隣室の騒音を注意する意味で壁をドンドンと叩いたら、翌日ものすごい剣幕で隣人が怒鳴り込んできて関係が悪化したとか、感情的になって隣家に苦情を言いに行ったら、さらに騒音がひどくなったり嫌がらせをされた、などということもあります。

最悪の場合、放火や殺人にまで発展したケースもあります。

「ピアノ騒音殺人事件」
1974年、神奈川県平塚市の県営住宅に住んでいた男(当時46歳)が、階下の部屋のピアノの音がうるさいと苦情を訴えた。当時は、子供の習い事としてピアノやエレクトーンが流行していた時代で、騒音問題が取り沙汰されていた時代でもあった。自治体が主導して演奏時間の限定などの自粛を進めていたが、徹底されていたわけではなかった。次第に男は「わざと騒音を立てて嫌がらせをしている」と思い込むようになり、刺身包丁を持って階下の部屋に侵入。演奏していた長女(当時8歳)と次女(当時4歳)を殺害。帰ってきた母親も殺害し、逃亡したが3日後に自首。1977年に死刑が確定した。

話し合いで解決できたかもしれない問題が、悲惨な結末に発展してしまった例です。

騒音トラブルでは、まずは双方が冷静に対処することが必要ですが、人間ですからどうしても感情的になってしまうこともあります。

特に、心安らかに過ごせるはずの自宅で騒音に悩まされると、感情的になりやすいと思います。

もちろん、法律に訴えることもできますが、騒音トラブルがあるからといって、すぐに訴訟というのは早計です。

たとえば、隣の部屋の音楽など騒音がうるさければ、まずはマンションの管理会社や管理組合に相談して、第三者から伝えてもらうのがいいでしょう。管理規約、賃貸借契約書などには騒音など迷惑行為の禁止を義務付けているはずです。

その際、騒音元の部屋の両隣りと上下階の住人がどう感じているかを調査しておくのも有効です。

それでも騒音が治まらないようであれば、弁護士に相談するのも手です。

まず、「内容証明郵便」を送ります。効果がなければ「調停」や「訴訟」ということになります。

訴訟では、「損害賠償の請求」の他、あまりにひどいときは、部屋の使用を禁止する「使用禁止の請求」や、部屋を競売にかけて手放させる「競売の請求」などもあります。

その際、法律的には「受任限度」が問題になってきます。

「受任限度」とは、一般人が社会生活で我慢すべき限度のことです。

多数の人が生活する社会においては、ある程度のことは我慢せざるを得ませんが、一般の人から見ても我慢しがたい事態に至った時は、法が介入する、という考え方です。

ただ、自分がうるさいと感じているだけでは主張は認められません。訴訟を起こすにしても、客観的な証拠が必要となってきます。

騒音の内容や時間帯、継続性など、さまざまな要素で判断されますが、その中に、各地方公共団体が条例で定める騒音の規制基準というものがあります。

たとえば、東京都の「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例」(通称、環境確保条例)では、以下のように定められています。

第136条(規制基準の遵守等)
何人も、第68条第1項、第80条及び第129条から前条までの規定に定めるもののほか、別表第13に掲げる規制基準(規制基準を定めていないものについては、人の健康又は生活環境に障害を及ぼすおそれのない程度)を超えるばい煙、粉じん、有害ガス、汚水、騒音、振動又は悪臭の発生をさせてはならない。

別表第13には、たとえば一般的な住宅街(第一種区域)の昼間(午前8時~午後7時)では45デシベル、夜(午後7時~11時)では40デシベルが規制基準となっています。

ちなみに、東京都環境局の資料によると、掃除機の音は約60~76デシベル、テレビで約57~72デシベルとなっています。

45デシベルなら、場合によっては軽く超えてしまうかもしれません。

とはいっても、ご近所トラブルはできるだけ穏便に話し合いで解決したいものです。そこに住み続けるならば、今後も日常的に相手と顔を合わせたりしなければいけない場面も想定されるからです。

あるいは、「こういうことは、きっちりと話をつけないと!」と意気込む人もいるかもしれません。

ここでどのように対応するかについては、自分の人間性、生き方が問われます。色々な選択肢が考えられます。

①訴訟を起こす
②殴り込む
③壁を叩いて憂さを晴らす
④こっちも大きな音を出す
⑤隣近所と団結して抗議する
⑥柔らかく伝える
⑦耳栓をする
⑧我慢する
⑨引っ越す

などなどです。

あなたは、どのタイプですか?

自分の他人に対するスタンスが影響します。

たとえば、友人が気に入らないことをした場合、どうしますか?

①徹底的に糾弾する
②無視する
③友達に言いふらす
④柔らかく言う
⑤我慢する
⑥「きっと事情があったんだ」と思い込んで自分を納得させる

など、さきほどの騒音の例と比較して、同じ人なら、おそらく同じような対応を取るでしょう。

他人に不満を持った時、どのような対応をするのか、そこには人間性が表われるのです。

法は、権利を守ってくれるものですが、法を使うのは人間です。

他人との関わりの中で、自分がどういう人間で、どう生きてゆくのか、そんなことも考えさせられる問題です。

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